飛ばされてベルゼルグ城   作:全ての道はところてんに通ず

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最後に私は次回の話は長くすると約束したな....アレは嘘だ
(次回こそは!次回こそは長くするのでご勘弁を!!)


十九話 突き穿つ死翔の槍

修練場に巨大な剣を打ち合わせたかのような異音が響き渡る。

その音は、リヒターの槍を防いだジェシカの籠手から鳴り響いたものだった。

籠手はリヒターの槍と衝突し、激しい火花を散らしているが壊れる様子は見られない。どうやら、相当に硬い素材で作られているらしい。

一度攻撃を防がれたリヒターは、すぐに体勢を立て直すと、猛烈な勢いで連続攻撃をジェシカに向けて放つ。

しかしジェシカはその攻撃を籠手に滑らせるようにして受け流し、ガラ空きとなった奴の体に次々と拳を叩き込んでいく。

 

「◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️!!」

 

リヒターから苦悶の声が上がる。だが、奴もただやられているわけではない。奴は体を海老のように瞬時に引くことで彼女の攻撃を回避すると、バックステップをしつつ体勢の崩れた彼女に新たな一撃を振りかざし、彼女の頭を吹き飛ばそうとする。

 

「させねぇ.....よッ!『フラッシュ』!」

 

「◾️◾️◾️◾️!?」

 

俺は横から割り込むようにして彼女達の間に入る。奴の一撃に合わせるようにして俺は奴の槍を弾き飛ばし、その眼前で魔法を発動させる。

瞬間、俺の持っていた魔導札は準備していた俺ですら目のくらむような光を放った。

 

「◾️◾️◾️〜〜!!」

 

眼前でそれを見たリヒターは、うめき声を上げながら自身の目を押さえる。その間に俺はジェシカと共に後ろへと下がる。

そして俺は先程の一撃でボロボロになった剣を捨てると、代わりに剣製でナイフを作り出す。そして奴の周りに円状となるようにして投擲し、それらを支点に糸で拘束した。

 

「レイン!」

 

「了解です!『ライトニング・ストライク』!」

 

さらに、拘束されて動けなくなったリヒターに対し、追い討ちをかけるようにしてレインの詠唱をしていた上級魔法が直撃する。

奴の真上から降り注いだ雷撃は、周りの地面を抉り取るようにして奴を吹き飛ばした。

 

「......◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️ッッッ!!!」

 

しかし、それでも奴は倒れない。依然としてその相貌に正気は感じられず、こちらの攻撃があまり効いている様子も見られない。どうやら、彼は魔法耐性も相当な物のようだ。

だとしたら、奴に攻撃を与えるには強力な物理攻撃を打ち込むしかない。

ただ、奴が持っているのは不幸にも槍だ。間合いに入ろうとするならこちらも相当な無茶をする必要があるだろう。

俺は湧き上がってくる緊張と恐怖を飲み込みながら、ジェシカの隣へ立つ。

 

「ジェシカ、まだいけるか?」

 

「大丈夫よ!それで、アタシはどうすれば良いのかしら?」

 

「とりあえず、しばらくはさっきみたいに攻撃を捌いててくれ。準備ができたら俺と交代、下がったら回復魔法の準備を頼む」

 

「ちょっと....また全力全開でパンチとかするつもりじゃないでしょうね」

 

ジェシカがこちらをジト目で睨んでくる。しかし、しばらく俺の目を見るとため息を吐きながらリヒターと相対する。

 

「.....わかったわよ。ただし、さすがに死んだらいくらアタシでもなんともできないからね?転生者は一回死んでる判定だから、リザレクションが効かないのよ」

 

「大丈夫だ。もとより死ぬつもりの作戦じゃないからな」

 

俺は、そう言いながらリヒターの様子を伺う。

リヒターは、まだ目が治っていないのか少しフラフラとしている。あの状態では、さっきのような高速の連撃はできないだろう。

俺はジェシカと共に奴との距離を詰め、奴が振るった薙ぎ払いの一撃はジェシカが籠手で止める。

凄まじい衝撃と火花が、その攻撃の強力さを物語っている。しかし、ジェシカはその攻撃を防ぎ、奴に向かい交戦的な笑みを浮かべている。

リヒターはさらに力を込めて、その防御を破壊しようとする。しかし、そのために踏み締めた足は、クレアの死角からの攻撃によって崩される。

俺はその隙に剣製でいくつものナイフを作り、それを周囲に投擲する。投擲した螺旋状の刀身のナイフは床、壁、天井などさまざまな場所へと突き刺さった。

仕込みはこれで完了、後は俺の努力と根性で作戦の結果が変わる。

俺は、自身のナイフがキチンと目的の場所へと刺さったことを確認しながら顔を上げて叫ぶ。

 

「今だ!交代!」

 

ジェシカは、俺の声に背を向けたまま頷くと、奴の攻撃に拳を合わせる。

 

オオオオオオオオオオオオ!!!!

 

さっきまでオネェ言葉で喋っていたとは思えないほどの雄叫びを上げながらジェシカが放ったその一撃は、リヒターの剣と衝突して盛大な火花を散らした。大音量と共に両者はノックバックし、間合いができる。

そのタイミングを逃さず、俺はジェシカとポジションを入れ替える。

硬直から回復したリヒターは、俺に素早く槍を突き放つ。

紅い閃光と共にこちらに迫ってきたその槍を、俺は新しく作った剣で受け流すと、剣の柄を放し、力を充填した拳で奴の胴を殴る。

すると、今まで攻撃によってダメージを受けていたのか奴の着ていた防具は粉々に砕け散る。

 

「◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️!!」

 

苦悶と憤怒が入り混じったかのような叫び声を上げながら、リヒターは再び槍を放つ。俺はその下に潜り込むようにして回避をすると、鎧を失った奴の胴に向けて拳を放つ。空気を掻き分けるような音と共に、腕から溢れる青緑色のオーラが雷電のようにリヒターの身体に走る。

 

「うおおおおおおおおお!!!」

 

自分の拳に少しずつ亀裂が入り、血が噴き出しているのを無視し、俺は雄叫びを上げながら自身の拳をさらに押し込む。全身からアドレナリンが駆け巡り、脳が危険信号を発しているのか視界がチカチカする。

 

「◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️!!!!!」

 

するとリヒターは、最後の抵抗だと言わんばかりに自身の槍を無理矢理に身体を動かすことで振り上げ、雄叫びを上げながら俺に向けて突き入れる。そしてその一撃は、容易く俺の身体を貫いた。

 

「ッッ!!があああああッッ!!!」

 

身体を貫通する槍の感覚に、思わず叫び声を上げる。貫かれた部分からはとめどなく血が溢れ、自分の足元には血の水溜まりができる。

リヒターは、ようやく敵に致命傷を与えたことに優越感を覚えてたのか、薄い弧を描くようにしてニヤリと笑った。

 

「いや.....笑うのはこっちの方だぜ.....リヒター!」

 

「◾️◾️◾️!?」

 

俺は、リヒターが敵を殺したと確信したことで生じた隙を見逃さず左手に隠していた糸を自身と奴に巻きつける。

リヒターは、目の前の敵は作戦によって槍に貫かれたと気づいたのだろう。すぐさま俺に刺さった槍を引き抜き、体勢を立て直そうとする。

しかし、リヒターの身体は一歩たりとも動かない。何故なら、彼が今拘束されているこの糸は周囲のありとあらゆる場所に刺さっているナイフにつながっており、それらが複雑に絡み合うことで脱出困難な巨大罠となっているからだ。

 

「さて....さっきは随分と重たい一撃くれたじゃねぇか.....お返しだぜ!!」

 

俺は、驚愕に染まっているリヒターの首根っこを掴むと、身体全体を使い大きく後ろに引く。そして、それを引き戻すようにして放った俺の渾身の頭突きは、リヒターの顔面へと突き刺った。

 

「◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️!!」

 

奴はしばらくの間絶叫していたが、次第にその咆哮が弱々しいものへとなっていく。そして、俺が糸の接続を解除した瞬間崩れ落ちるようにして地面へと倒れ伏した。

 

「俺の.....勝ちだ.....」

 

戦闘による余熱と大量に血を失ったことによる眩暈を感じながら、俺は身体に刺さった槍を引き抜く。溢れ出る散血により、もう槍がどこにあるかもわからない。

当たり前だが、身体に刺さった物はすぐに引き抜いてはいけない。無理矢理引き抜けば、空洞になった傷口からさらに血が噴き出すからだ。

だから俺の今の行動は、側から見れば自殺行為に見えるのだろう。

 

「『セイクリッド・ハイネスヒール』!!」

 

しかし、それは傷口を瞬時に塞ぐ手段がなかったらの話である。

ジェシカが魔法を放つと、俺の身体が淡く輝き、全ての傷が何事もなかったかのように塞がっていく。感じていた倦怠感も無くなったことから、どうやら失った血も回復してくれたらしい。さすがチートだ。

 

「ちょっと!アンタなんて無茶な作戦立ててんのよ!そのレベルの一歩間違えたら死んでたわよ!」

 

俺が自身の怪我が治っていく様子をしげしげと眺めていると、ジェシカがすごい勢いで走ってくる。顔を見なくても分かりきったことではあるが、めちゃくちゃ怒っていた。

 

「あー....やっぱまずい?」

 

「当たり前でしょ!アンタがアイツに貫かれた時なんて、回復魔法の詠唱が途切れそうになったんだから!!」

 

どうやら、結構な心配をかけてしまったらしい。心の中で少し反省する。

 

「まぁ、結果倒せたんだからなんでも良いじゃん?あとはアイツを正気に戻してやるだけ.......!!」

 

瞬間、後ろから濃密な殺気とエネルギーを感じる。振り返るとそこには身体中から血を流し、満身創痍となりながらも立ち上がるリヒターの姿があった。そして、奴の持っている槍から放たれる紅いオーラは燃え盛る炎のようになっている。

 

「ジェシカ!結界を!」

 

「ダメよ!結界は一日一回しか出せない大技なの!今日はもう使っちゃったから無理よ!」

 

「レインッッ!」

 

「ダメです!もう魔力が!!」

 

クソ!しくじった!決着を急ぎすぎて必殺技の存在の可能性を失念していた!

俺は心の中で歯噛みしながら、必死止める方法を模索する。

奴との距離はかなり離れてる。今からアイツに向かって走ったところでもうアイツの攻撃を止めることはできないだろう。しかし、俺にも、ジェシカにも、レインにも、クレアにも、アレが放たれた後の迎撃手段が存在しない。

しかし、奴の姿を見て俺は気づく。既にその目は俺以外を移していない。それは奴の思考能力が低下したからなのか、俺だけを必ず殺すと決めたのか。どちらにせよ、奴はもう俺以外を狙わないだろう。

 

「全員退避!城の中に避難してろ!コイツの標的は俺だ!!」

 

その言葉に彼女らは一瞬の間動揺していたが、この場にいても足手まといになるだけだと判断したらしい。迅速に後方へと下がっていく。

俺はそれを確認すると、リヒターの方へと向き直る。リヒターは少しの間力を貯めるようにしていると、両足でしっかりと地面を踏み締め空高くへ飛び上がる。そしてーー

 

「『◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️』!!」

 

彼の全魔力を凝縮した真紅の極光は、曲折しながら俺を目がけて空を翔ける。その一撃は、凄まじい轟音と死を錯覚させるほどの威圧感を放っていた。

俺はその一撃に対し、回避行動を取ろうとする。

 

 

だが、()()()()()()()

突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)。それはケルトの大英雄、クー・フーリンが影の国の女王スカハサから受け継いだ魔槍の名であり、その一撃は()()()()()()()()()()()()()()()という性質を持つ。

狙いは必中、穿つは心臓。であれば、真正面から受けるしかない。

僕は右肩に存在する呪いの穴に手を入れると、そこにある"ナニカ"を掴み、引き出す。

引き出された"ナニカ"は、あたりに紅黒い呪いの泥を撒き散らしながら胎動する。しかし、しばらくすると"ナニカ"は黒く、血管のような紅い模様が浮き出た腕へと変貌した。

僕は"ナニカ"が正常に右腕へと変化したことを確認する。そしてその右腕を飛翔する槍へと向けると、歌い上げるようにしてその名を示した。

 

「『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』!」

 

瞬間、俺の手から放たれた7枚の光の盾が桜色の光を放ちながら花弁のように展開し、迫りくる必殺の一撃を受け止める。

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)、それはギリシャ神話におけるトロイア戦争にてアイアスが英雄ヘクトールの投擲を防いだといわれる盾の名である。一枚一枚が古の城壁と同等の防御力を持つそれは、前方から迫る真紅の極光を完全に防いだ。

 

「まぁ、使う相手の熟練度の低さにも原因はあるがね。力不足にほどがある」

 

僕は完全にその効力を失った魔槍を地面へと突き刺すと、リヒターの元へと向かう。リヒターは自身の全魔力を使った影響からか、完全に沈黙していた。

それを確認すると、僕はリヒターの髪を掴んで顔を持ち上げ、奴の口に手を突っ込む。そしてぐじゅぐじゅと不快な音と感触を感じながらお目当ての"ソレ"を見つけ出すと、勢いよく"ソレ"を引き出した。

出てきたのは、全長30cmはあろうかという巨大な百足だった。百足は急に外の世界へと追い出されたことに困惑しているのかウネウネとのたうち回るようにして蠢いていた。

僕はその百足を剣製した剣でもって切り刻む。百足は緑色の血を撒き散らしながら悲鳴のような声を上げて絶命した。

 

「これでコイツの暴走も止まるか....まったく、この身体の主も無茶をする。僕が出てこなかったらどうやってあの槍を止めるつもりだったのやら」

 

僕は剣についた緑色の血を切り払うと、その剣を消滅させる。

すると、戦闘音が止んだことに気がついたのだろう。ジェシカ、クレア、レイン、修練場にいた兵士達がこちらへと駆け寄ってくる。

 

「ものすごい音と衝撃がこっちまで届いていたんだけど!大丈夫なの!?怪我は無い!?それにその右腕!一体何があったの!!」

 

そんなジェシカの言葉を皮切りに次々と心配の声が上がる。

わかっていたことではあるが、この身体の主は城に居る間に随分と彼らと心を通わせたらしい。

 

「ジェシカ様下がって!この気配、いつもの彼と明らかに違う!貴様!一体何者だ!」

 

勘が鋭いのか、それとも色々な意味で警戒していたからか、どうやらクレアは僕の存在に気づいたらしい。腰の剣を抜剣しながら、こちらを警戒している。

 

「とりあえず、貴方達にもこの身体にも敵対はしないと言っておこう。緊急事態だったものでね、一時的にこの身体を借りさせてもらっただけだ。すぐに返す」

 

「その言葉を私が信用すると?」

 

「信用してもしなくても、僕が現れていられる時間は少しだけだ。情報を引き出すために揺さぶりをかけるのは一向に構わないけど、詳しい話はこの身体の主にしておくから、戻ってきたら聞いてくれ」

 

「え、あ、ちょっ!」

 

僕は彼女にそう言い残すと、困惑した状況を置き去りにして、この身体へのリンクを切り離すのであった。




多作品ネタってことで出しましたけど、ここまで露骨だとタグとか付けた方がいいんですかね?

感想、評価、指摘などくださるとモチベーションがとても上がります!

王都でのストーリーは大体決まっているんですが、長いです。どうすればいいでしょうか?

  • 王都での話をフルで書いても良いんだゾ☆
  • 早くアクセルに行くんだよ。あくしろよ
  • ちくわ大明神
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