飛ばされてベルゼルグ城   作:全ての道はところてんに通ず

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3期やるっぽいなー…描かねば(使命感)


二十三話 その場のテンションは後々後悔するってそれ一番言われれるから

「ここ、だな」

 

「ここ、ですね」

 

俺とアイリスは周りに見える施設の中でも一際大きな施設の前で立ち止まる。

その建物の横に突き立ててある看板には『冒険者ギルド 王都支部』と書かれており、時折重厚な装備を身につけた冒険者と思わしき男達がこちらを怪訝げな表情で見つめながら通りすぎていく。

どうやらここが冒険者ギルドで間違いないらしい。

しかし巨大だな。まあこの国の中心近くにある建物だし当然といえば当然なんだが。

 

「私の別荘と同じくらいの大きさはありますね....大きいです」

 

「.....一応聞くが、それは誰に貰ったんだ?」

 

「お父様が避暑地に使えと5歳の誕生日に....」

 

加減を知らないのかあの国王は!?

5歳の女の子の誕生日に王都の中心クラスの屋敷一棟与えるバカがいるか!大体その金どっから出したんだよ!革命起こっても知らんぞ俺は!

とりあえず、今度その辺の問題について財政管理の担当と一緒に話し合いをすることにしよう。これ以上あの人に散財をさせるわけにはいかない。

 

「....そろそろ中に入るか。こんなところに突っ立っていたら周りに迷惑が掛かる」

 

「目がここではない虚空を見つめていますよ!?この一瞬の間に一体何があったんですか!」

 

「.......なんでもないです。ほら、行くぞ」

 

「なんですか今の間は!?」

 

流石に『お前の父親のことで悩んでるんだよ』とは実の娘には言えない。俺はアイリスの背中を押すようにして冒険者ギルドの中へと入っていく。

冒険者ギルド、それは国から独立したモンスター専門の傭兵組織であり、腕に自慢のある荒くれ者達の巣窟である。俺達が中に入れば何かしら絡まれるかもしれない。

多少緩んでいた気を引き締め、俺はギルドの内部を観察する。

店内はやはり王都の中心部にある店ということもあってか豪華な調度品が幾つも並べられており、天井には大きなシャンデリアがぶら下がっている。そしてそこかしこには鎧やローブを着た連中と彼らに豪華な食事を給仕する職員達の姿を見ることができる。

 

「強そうな方達が沢山いらっしゃいますね....一戦お願いしても大丈夫なのでしょうか...」

 

やめてください。ただでさえ王女をギルドに連れてきたってだけでも結構ギリギリのことなのにこれ以上騒ぎを起こそうとしないで?ください。

俺は狂戦士(アイリス)の肩に手を添えると横に首を振る...おいやめろ、そんなに悲しそうな顔をするんじゃない許可したくなっちゃうでしょうが。

 

「と、とりあえず落ち着いて内装を見てみろよ。たしか冒険者については授業で何度か聞いているだろう?」

 

「はい、冒険者というのはギルドに集められる依頼を受注してそれを達成することで報酬を受け取る職業...でしたよね」

 

「その通り。プラスとしてギルドないしそこに所属している冒険者は国の管轄ではなく一つの独立した派閥であるってことを覚えておいても良いかもな」

 

「そのためにいくつかの街では冒険者育成を目的として国と税の減少や免除をギルド職員が交渉を行っていると…たしか授業でやりましたよね」

 

「その通り、よく覚えていたな」

 

アイリスは冒険者ギルドに設置されている照明などの豪華な設備を見やると、怪訝そうな顔をする。

 

「しかし、ここのギルドを見る限りでは冒険者の詰め所としてはあまりに豪華すぎるように感じます...お父様に進言したほうがよろしいのでしょうか?」

 

「いや、あくまで税の減少とかは田舎の方の冒険者ギルドに対しての制度で、ここのギルドはちゃんと払っているはずだ」

 

むしろこのギルドは王城の目の前にあることもありギルド長は本来納めるべき税に加えて、国の発達のために多額の寄付を行っているらしい。しかも見返りを必要としない旨を記した公的な書類と共に寄付を行なっているので彼が不正に手を染める確率はゼロと言っても良いだろう。

そのこともあり国王はせめてもの恩返しとして田舎の方の冒険者ギルドの拡大を援助する政策を打ち出しており、冒険者への減税を積極的に許可するのもその一環となっている。

 

「なるほど、状況に応じて国からの支援にも差があるのですね」

 

「それに、魔王軍が活発化してきてる今は冒険者の数がより必要になってくるだろうからな。いい設備にしてギルドに長くいてもらった方が国にとっても得なんだろ」

 

『無駄な豪華さに関しては王族にとやかく言われたくないと思う』という喉元まで出てきた言葉を飲み込みつつ、俺は入り口近くの宣伝用のパンフレットを手に取る。

どうやらこのギルドには依頼受注用のカウンターを始め酒場や冒険者のニーズに合わせたさまざまな店舗、果ては賭博場や劇場まであるらしい。

…すまんギルド長、アイリスの言う通りちょっと豪華すぎるわ。

いやなんだこれ、マジで豪華すぎる。下手したらそこいらの貴族の屋敷より金かかってるだろこれ。特に賭博場なんか隣の国のエルロードの店レベルの設備だろ。

パンフレットに書いてあるギルドの豪勢さに驚愕をあらわにしていると、しばらくの間硬直したまま動かない俺を怪訝に思ったのかアイリスが肩を叩く。

 

「シロ?どうかしましたか?」

 

「あ、ゴメン。ちょっとぼーっとしてた」

 

「もう…それで、ギルドに来たということは冒険者登録をするのですよね?人々を守るためにモンスターを討伐するなんて、わくわくしますね!」

 

「え、しないけど」

 

「え?」

 

「ん?」

 

「「............?」」

 

首を傾げた俺たちの間に、しばらく無言の時間が流れる。

 

「…えええええ!?ここまで来たならそういう流れじゃないですか!私たちなら近くにいる魔王軍幹部くらいだったら余裕でしょう!?」

 

「よしんば倒せたとしても後で俺が殺されるわ!イリスはもうちょい自分の立場を考えろ!」

 

「今更とってつけたようにクレアのようなこと言わないでください!ねぇお願い!今日だけ、今日だけでいいの!私がごねればレインとクレアの意見はねじ伏せられるから!」

 

やめてあげてください。レインとクレアが後で涙目になりながら俺につかみかかってくる姿が容易に想像できます。

アイリスはそんな俺の心情など知らぬといったように駄々っ子のごとく俺の服を掴み左右に振ってくる。

 

「ねぇおねがい!おーねーがーい!」

 

「いだだだだだだ!!慣性、慣性で首持ってかれてるから!あーもう!いい加減離せこのゴリラ娘が!」

 

「またですね!また言いましたね!しかも今度ははっきりと!もう許しませんからね!」

 

「言われるのが嫌なんだったらこの手を放せやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

俺は冒険者ギルドの真ん中でアイリスと取っ組み合いを始める。

お互いの叫び声に一瞬冒険者の視線が集まるが、賭博場まであるギルドでは常日頃から罵声が絶えないのだろう。彼らの視線はすぐに霧散し俺たちを気にするような人物は誰もいなくなる。

 

「いい加減にしろよテメェ!!」

 

「「はいッ!ごめんなさい!」」

 

いや嘘だわ、全然居たわ。ブチ切れてたわ。

後方に目を向けてみれば声の主はギルドの受付であった。しかし、その罵声は俺たちに対してではなく受付のカウンターに立っている女性に向けて放たれていた。

彼女は目深にフードをかぶっており、身に着けている装備から推察するに魔法職の冒険者なのだろう。

職員はフードからはみ出るほどの黒髪の長髪を睨みつけながら言葉を紡ぐ。

 

「だからテンセイシャのテメェらに出す仕事はねぇんだよ!ただでさえここ最近は王都の各地で黒髪の奴らが暴れまわってる!そんな状態で黒髪のお前に依頼を受注させてみろ、向こうから今後依頼が来なくなるだろうが!」

 

「そんな…そんなこと私には関係ないでしょ!」

 

「関係あるなしはこっちにとっては問題じゃないんだよ!」

 

「それに、あの森には依頼でしか立ち入れないんでしょ!私の娘を治せる薬草はあの森にしか生えてないのよ!」

 

「それこそギルドには関係ないね!それにその薬草は重病者に効くっていうレア薬草だろ?どうせ簡単には見つかりはしないんだ。こんなところで時間潰してる暇があったら娘を埋める墓でも探して来たらどうなんだ?」

 

「ーーーッ!!」

 

その言葉がとどめとなったのだろう。彼女は血がにじむほどに唇を噛みしめ、ギルドの扉を蹴り破り飛び出して行ってしまう。

異様なのは、飛び出していった魔法職の彼女のことを追いかけるパーティーメンバーが誰もいないばかりかその彼女をギルドにいる全員が冷ややかな目線を向けていることだ。

どうやら、こちらが思っていたよりこの国の転生者に対する印象が悪くなっているらしい。こちらは外出するにあたり髪の色を茶色に染めたが、黒髪のままだったらヤバかったかもしれないな。

それに黒髪が暴れてるという大量の事例、思い起こされるのはリヒターの一件だ。あんなおぞましいことがまだ続いているなら…今王都において黒髪の転生者は最も危険な立場にいることになる。

 

「ごめん、俺が誘っておいて申し訳ないんだけど外出はいったん中止!俺はあいつのこと追いかけるからイリスは家に戻っていてくれ!」

 

俺はパンフレットに書いてある職員一覧から彼女を対応した職員に印をつけると彼女の後を追うためアイリスから手を離し走り出す。

ここまで深く王都に入り込んで情報操作をしている以上、今までの騒動の犯人には政界に属している貴族が含まれている可能性が高い。

相手が貴族ならあらゆる可能性を考察する必要がある。今この瞬間にも何らかの刺客をギルドを飛び出した彼女に差し向けている可能性はゼロじゃない。状況は刻一刻を争っている。

 

「クソ、あいつ何処に行ったんだよ!」

 

「街の外に出たのかもしれません!彼女の言っていた森は遠いですが走って行けない距離ではないので!」

 

「そうだな!じゃあまずは…」

 

ふと足を止め、隣を見ればそこにアイリスの姿がある。

いやいや、いやいやいや。

 

「なんでついてきた!?」

 

「以前、あなた危機が迫った時、一緒に戦うといったことを忘れましたか?」

 

「まだ危機が迫るかはわからないだろ!」

 

「いいえ分かります!あなたが独断で動くときはいっつも危険な目に合うんです!右腕失ったりとかお腹におっきな穴開けられるとか!」

 

畜生!身に覚えがありすぎて何一つ否定できねぇ!!

 

「それに私がこのまま城に戻るとして、誰がそこまでの護衛をするのですか?今現状で最も安全で確実なのは私とシロが一緒に行動する事だと思います」

 

「…あーもう!分かったよ連れて行けばいいんだろ!こうなりゃヤケだ!速攻で終わらせて暗くなるまでには城に戻るぞ!イリス!」

 

俺はアイリスの手を引き彼女を文字通りお姫様抱っこの要領で抱えると、街の外へと繋がる大通りを人混みを掻い潜りながら疾走していく。

すれ違う人々は間を潜り抜けていく俺達に驚いた様子だったが、あまりの速さに状況を理解できなかったのかポカンとした表情のまま固まってしまっている。

 

「あははははは!速い速い!お城の外をこんなに速く走れるなんて夢みたい!ねぇもっと速く走って!もっと速く!」

 

彼女は抱えられたことに一瞬驚いた様子だったが、すぐにこの光景を楽しみ始めているのか急かすようにして俺の背中を叩いている。

…早まったかなぁ。

半ばヤケクソ気味だった思考に若干の後悔が生まれてくるが、背に腹は変えられない。

何より、この状況を俺自身も楽しく感じ始めているのも事実なのだ。後のことは後の自分が考えるとして、初めての王都の外に心を躍らせてしまうのも仕方ないことだろう。

そう自分の心を納得させつつ、俺は王都の正門をトップスピードで通り抜けていくのであった。




次は早くに出したいな…。

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