辺りが完全に闇に覆われ、人々が床につき、一部の
そしてその応接室には、俺の他に3人の姿がある。
一人は俺の弁護をしてくれた女の子改めアイリス。彼女はこの国、ベルゼルグ王国の第一王女であるらしく、本名はベルゼルグ・スタイリッシュ・ソード・アイリスなんだそうだ。長い、すごい長い。
彼女は俺の座っているソファーからテーブルを挟んだ反対側のソファーへと座り、年相応の少女のように微笑んでいる。
そして先程はワンピースのような寝巻きを着ていたのだが、今はしっかりとした純白のドレスを着て、髪も櫛で整えられていた。
そして彼女の両隣には二人の年若い女性が立っている。
一人は黒いドレスを身に纏った、一切の武器を持たない地味目の女性レイン。
手にファッションとはまったく合わないゴテゴテの指輪を幾つもつけており、アイリスから事情を聞いた時に真っ先に謝ってくれた三人の中で一番の常識人である。
それに彼女からは明らかに苦労人のオーラを感じる。彼女とは固い握手が交わせそうだ。
そしてもう一人、ドレスではなく白いスーツを着用し、腰に剣を帯びている短髪の女性、クレア。彼女はこの国の貴族シンフォニア家のご令嬢でありーー
たった今、俺のことをまるで親の仇に相対したかの様な目で睨み、剣呑なオーラを放つことでこの場の雰囲気を氷点下の如く低下させているやばい人である。
どうしてこんなに睨まれているのかまったくと言っていいほど検討がつかない、誰か弁護士を呼んできて欲しい。ついでに駄女神への訴訟もさせて欲しい。
「クレア、彼は敵では無くダメガミという邪神によって人生を歪められた被害者よ?だからそんな敵視しないであげて?」
「なりませんアイリス様!この男は理由はどうであれ城壁を破壊し、この城へと侵入してきた不届き者です!それに、彼が本当のことを言っているのかも分かりません!即刻尋問し、情報を吐かせるべきです!」
どうやら、クレアは俺が魔王軍の手先ではないかを強く疑っているらしい。アイリスの嗜める様な言葉にも反抗している。
そしてクレアは俺が自分を見ていることに気づくと、アイリスから視線を離し、俺を睨みつける。
「おい、下賤の者、気安く私を見るな。本来ならばお前程度の身分の者はこの私を直接見ることも叶わないのだ。頭を下げろ、目も合わすな。貴様はただ、地面だけを見て私の質問に答えるだけでいい」
おっとこれは随分と嫌われてるご様子。さっき泣き喚いて涙を枯らしていなければあまりの罵声に泣いてしまう所だった。危ない。
分かっちゃいたが、コイツは庶民が嫌いらしい。俺もお前のこと大嫌いだよ!両思いだな!ぺっ!
まぁ、俺も良識のある文化人、こういう人間の扱いは心得ている。こういうのは反応することはまったくの無駄、スルーが正しい大人の対応だということはわかってる。
「私はお前の様な人間が一番嫌いなんだ!分を弁えず、貴族の偉大さを知らない人間がな!」
この程度の罵倒の一つや二つ……。
「貴様ら庶民には学が足りんのだ!貴様はその中でも特に!大体貴族に対して身の程を弁えるなど常識ではないのか?親に教わらなかったのか?貴様の親はよっぽど学のない者だったのだろうな!」
三つや四つ……!!
「おい」
「おいとは何だ!口の聞き方が...!!」
俺は足にパワーを込めると彼女の話を遮る様にその足を振り下ろし、間のテーブルを破壊する。自分のことは百歩譲ってもまだ良い。だがコイツは俺のことをここまで育ててくれた家族を侮辱した。それだけはちょっと我慢ならない。
「余計なトラブルを起こしたくないからおとなしく要求を聞いてりゃあ随分とまぁ好き勝手言ってくれるじゃねぇかよ白スーツ。お前こそ、この状況の口の聞き方じゃねぇよな?親に教わらなかったのか?」
そんな俺の言葉に我慢ができなくなったのか、激昂し、顔を真っ赤にした彼女は腰の剣を抜き放つ。
やばい、俺今な○う系のうざい主人公と同じムーブしてる。今すぐやめたい。
「何だと貴様!私はシルファニア家の娘だぞ!どんな状況であれ、私が貴様ごときに「誰もアンタの家の話はしてねぇんだよ!!」
俺は彼女にそう叫ぶ。彼女はまさか叫ばれるとは思っていなかったのか驚きのあまり剣を抜き放った状態のまま金魚の様に口をパクパクとさせている。
「今大事なことは、俺が客人として招かれてることなんだよ。お前がどれだけ俺達庶民のことを嫌っているのかはどうでも良い。だけどアンタの主人のアイリスが俺を客人として扱っている以上、お前もそうしなきゃ主人の品位が疑われるでしょうが」
その言葉にクレアはハッとしたような顔をする。
よかった。俺王族のしきたりとか知らないから一から十までデタラメで話していたが、どうやら筋は奇跡的に通っていたらしい。
そしてその他の二人も理解が追いついてきたのか同じくハッとした様な顔をし、その後、アイリスは即座に顔を引き締める。
「クレア、あなたの庶民嫌いは私の知るところです。しかし、彼の言う通り彼の今の立場は客人なのです。剣を収め、彼に謝罪を」
その言葉にクレアは奥歯を噛み締める様な顔をするが、やがて観念したのか剣を収めーー
「....申し訳ございませんでした」
俺に向かい、ぺこりと謝罪してくる。そしてそれっきり俺から顔を逸らしてしまう。
顔には嫌悪が満ち溢れているけど、そこはもう仕方ない。性格だから一長一短で変わる様なもんじゃないし。
大体、貴族を謝らせることそのものが前代未聞だろうしな。
その後、しばらくとりとめのない会話で空気が仕切り直される。
「というか、俺は何のためにここに?俺を客人として招いたということは、俺を捕らえるためじゃ無いんだよな?」
「それについては私から説明させて頂きます」
そう言って前に出てきたのはレインである。どうしよう、さっきドギツイのがあった手前、すごく安心感がある。
そして彼女は、以下のことを語る。
今回の騒動は、俺が急に空の上から転移させられたということが城の魔法管理システムによって証明されたため、今のところは俺の言い分が信用されたこと。
ただ、今回の騒動によって失われた城の結界はかなり予算がかかる大掛かりな物らしく、俺にはそれを弁償して欲しいらしい。
オーマイグッネス。なんてこった、というか国がかなり予算がかかると言うってことは庶民的にはありえないくらい莫大な借金ってことじゃねぇか。
「ちなみにそれはおいくらほどで?」
「そうですね……まだ正確に計算はしていないのですが、大体10億エリスほど……」
ちなみにエリスとはこの国の通貨らしくレート的には1円=1エリスくらいらしい。なるほど、つまり俺には今10億円の借金があるらしい。
──悲報、俺の異世界生活、借金返済で大体終わりそうな件──
俺がその事実に膝から崩れ落ちると、レインはすごく申し訳無さそうな顔で俺を見てくる。なんて優しい人なんだ。初対面で影が薄そうとか思ってごめんなさい。
しかしその他、アイリスとクレアの二人は俺が膝から崩れ落ちたことに対し、不思議そうに首を傾げている。クソッ!この箱入り娘のブルジョア共め!
「そんなこと言われても俺この国に来たばっかだしお金を稼ぐ方法も知りませんよ?」
後そんな額の借金返済できる気がしないゾ☆
「そのことなんですけど、私達に雇われてみる気は有りませんか?」
「どういうことですか?」
俺は彼女に説明を促す。
「今、我々の国は魔王軍の手によって未曾有の危機に晒されています。よって外部に戦力を費やしているので、城内の警備がどうしても手薄になってしまうのです。そこであなたにはアイリス様の護衛の一員に加わっていただきたいのです。幸い、あなたは我が国が誇る防御結界を破るほどの力があるご様子。不足はありません」
なるほど、確かにそれは問題だ。
進行してくる魔王軍に気を取られて守りが薄くなっているとあっては中に魔王軍の手先が入ってきたときに何かと心配だろう。
ただ、幾ら人手不足だからとはいえ、俺の様な部外者を簡単に雇って良いものなのだろうか。それにーー
「雇うといっても、言いたかないですけどそういう付き人って偉い身分の騎士がやるものでは?」
そう言うとアイリスが複雑そうな顔をする。
「以前はそういう人達に頼んでいたんですけど、何度か彼らが私に求婚をしてくることがあったので、今は彼女達しかいないんです」
うーんこの。確かに彼女は可愛らしい見た目をしているし身分も高いし、それに王女護衛というただでさえ舞い上がりそうな仕事なのに王女の護衛には今のところ女性しかいないのだ。狙いたくなる気持ちはわからなくもない。
でも、さすがに11才の女の子に大の大人が、それも護衛が護衛対象に求婚していいものなのか?異世界だからいいのか?よくわからん。
というかそんな事情がある仕事なら俺だってやりたくない。よし、断ろう。
「雇われていただけるのであれば、あなたの借金を我が国で肩代わりすることをお約束しますよ?」
「やります」
アイリスのそんな言葉に俺は反射的にそう返事する。この間0.1秒、鈴木誠也14歳、お金には逆らえない男であった。あと壊したテーブルはお金が貯まったら弁償しよう。そうしよう。
クレアは原作の時より前は庶民のことをめちゃくちゃ毛嫌いしている設定となっています。まぁ、主人公を嫌ってる理由は他にもあるんですけどね?
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