飛ばされてベルゼルグ城   作:全ての道はところてんに通ず

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書きたいことは湯水のようにあるのに、それを文章にする時間が無いのです。スタ○ドのザ・ワー○ドが欲しい。切実に。


五話 チートが!選んだチートがオシャカになった!

「さぁ!行きますよ!セイヤ様!」

 

早朝、いつものようにハイデルさんに朝食を届けてもらい、鏡の前で身支度を整えていると、突然、アイリスによって扉が開け放たれる。

彼女は、服こそはきちんとした薄青色のドレスを着ていたが、右手にはスコップ、左手にはなぜか水鉄砲を持っており、背負っているバッグからは剣やら虫眼鏡など、めちゃくちゃに物がはみ出している。

 

「いや、あの、すいません、どこに?」

 

思わずツッコミをいれてしまう。そんな重装備で一体どこへ行くんだ?

 

「あぁすいません、説明がまだでしたね。あの、よろしければ今日一日、あなたの時間をいただけませんか?案内したい場所があるんです」

 

じゃあその沢山の荷物は一体何に使うんだい?そう聞きたくなるが、話が進まなくなりそうなので聞かないでおく。

 

「王女としての仕事とかは?」

 

「終わらせてきました!」

 

いや、アイリスさん?今まだ朝の八時くらいよ?早ない?終わらせるの早ない?

 

「それなら、まぁ、いいんですけど。そういえば護衛のレインさんとクレアさんはどちらに?」

 

「あぁ、クレアは今、魔王軍対策会議に行ってて居ないんです。レインは有休を取っています」

 

そういえば、この世界って魔王軍がいたんだっけな。

というかクレアがそういう会議に参加するイメージが無いのだが。

どちらかと言うと前線で何も考えず蛮族みたいに剣振り回してるイメージだった。

 

「えっと、じゃあ、今日の護衛は?」

 

そう聞くと、アイリスは何も言わず、俺に向けて真っ直ぐに指を指してくる。

……そういえば俺、客人兼ここの護衛でしたね。

客人扱いが長引いていたからかすっかり忘れてたわ。

 

「……えっと、じゃあ、お願いします」

 

「はい!」

 

そうして俺は、アイリスと今日一日を過ごす事となった。

ちなみに、アイリスの持っていた荷物は俺が片付けさせた。本人いわく、案内に要ると思ったらしい。

本当にどこに行くんだよ。怖えよ。

 

 

 

 

俺がアイリスに先導されて歩いていると、古代ローマを彷彿とさせるような施設の前を通り掛かる。

お城の雰囲気に合わないその施設に困惑していると、アイリスが口を開いた。

 

「ここは修練場、この城の兵士達が日々、鍛錬に励んでいるんですよ」

 

確かに彼女の言うとおり、そこでは王国の鎧を着た兵士達が、それぞれ思い思いの武器を使い、鍛錬を行っていた。

 

「アイリス様、こんなところにいらっしゃってどうしたのですか?もしかして、また鍛錬に参加するのですか?」

 

すると、その中の兵士達の隊長らしき男が俺たちのことに気づき、近づいてくる。

というか、また?またってどういうことだ?

 

「あぁ、今日は鍛錬のためではなく、この人を案内するのに通りかかっただけなんです。でも、せっかくですから参加します!」

 

そう言うと彼女は壁にかけてある訓練用の剣を手に取ると、兵士達の中心へと向かっていく。

いやいやいや待て待て待て!危険だろ!というかなぜ周りは止めないんだ!止めろよ!

そう思い、俺は彼女を制止しようとする。しかしーー

 

「ぐっはああああああ!!!」

 

「え」

 

アイリスを相手していた、鎧を含めたら九十キロはありそうな男が宙を舞う。そんな光景に思わず固まった。

 

「まだまだいきます!」

 

「ぐへぁ!」

 

「あばぁ!」

 

「ぐほッッ!」

 

そしてアイリスは、その他に相手をしていた兵士全員を、一瞬で持ち倒した。

 

「セイヤ様!どうですか!私頑張りました!」

 

動かなくなった兵士達が死屍累々と横たわっている中、アイリスはそう言って俺に微笑みかける。

 

「うん、待って?いろいろツッコませて?」

 

あ...ありのまま、今起こった事を話すぜ!

 

『俺は、アイリスを守るため走り出そうとしていたら、いつのまにか戦いは終わっていた』

 

な……何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何が起きたのかわからなかった。

頭がどうにかなりそうだった……催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……

なんでアイリスがあんなに強いんだよ!おかしいだろ!兵士達瞬殺だよ!どうなってんだよ!

 

「なんだい兄ちゃん、知らなかったんかい?アイリス様みたいな王族とかは、昔から強い勇者の血を取り入れて潜在能力を飛躍させてる。その上経験値が豊富な高級食材を惜しみなく食べてるから強いんだ」

 

俺がアイリスの強さに混乱していると、先程アイリスと話していた隊長が教えてくれる。なるほど、だからアイリスはここまで強いのか。

というか、そんなに強いなら王族とか貴族が魔王倒しに行けよと思う俺は間違っているんだろうか。まともなのは俺だけか。

 

ーー隊長、もし余力があるなら、私ともう一戦打ち合ってはいただけませんか?お時間はさほど掛かりませんから。

 

ーーいや、あの、アイリス様、私はもう、

 

ーーそれでは行きます!てやっ!

 

ーーアー!

 

「……まぁ、なんでもいいか」

 

結局俺は考えるのを止め、しばらく隊長と、途中意識を取り戻した兵士達が蹂躙されていく様を眺めることにしたのだった。哀れ隊長、安らかに眠れ。

 

 

 

 

 

「さぁ、着きましたよ。ここです」

 

その声を聞いた俺は足を止め、その扉を開ける。

そこは、ところせましに本が並べられている図書館のような場所だった。

しかし、その広さは俺が今まで見てきたどの図書館よりも圧倒的に大きく、改めてここがこの国の中心であるということを感じる。

 

「え、あ、これはアイリス様!何故このような場所に!?」

 

蔵書室の司書らしき人は、先程の人達とは違い、突然国のトップが来たことに、遠目でもわかるくらいオロオロしている。

そりゃ、現代で例えるなら職場にいきなり社長がやってくるようなものだ。普通の人ならそりゃビビるわ。ビビらなかった兵士達の方が異常だったわ。

 

「今日はこの者に冒険者カードを発行しようかと思いまして」

 

「は、はい!承りました!すぐに準備いたします!」

 

そう言って司書は奥へと引っ込んでしまう。

というか、俺に冒険者カードを発行するってどういうことなんだろう。俺はいつから冒険者になったんだろうか?

 

「あの、冒険者カードってなんですか?」

 

そう聞くとアイリスは説明をしてくれる。

冒険者カードとは、正確には戦闘行為を行う全ての者が所持しているゲームでいうステータスのようなものであり、ゲームでできる大体のことは、この冒険者カードで出来るらしい。

 

「ちなみに冒険者カードは、身分の証明にも使えるんですよ」

 

なるほど、確かにそれは発行しておいて損はなさそうだ。

すると、司書が小走りで戻ってきて、俺に免許証くらいの大きさのカードを差し出してくる。

 

「えっと、では、こちらの、カードにふれっ、触れてくだしゃいッッ」

 

「まずあなたが落ち着いてください」

 

司書は緊張からか声も身体も震えてる。今にもぶっ倒れそうだ。

俺は一旦、司書を落ち着かせると、それからカードに触れた。

 

「おお!幸運はかなり低いですが、それ以外の全てのステータスが大幅に平均値を超えていますよ!特に魔力が....無限ってどういうことですか!?ええ!?」

 

司書は俺の冒険者カードに書いてある表記に驚いている。

しかし、俺は驚かない。何故なら、俺はこうなることを知っていたからだ。

そう、俺が持って来たチートを二つ目は『無限の魔力』である。

選んだ理由は、魔法がいっぱい使いたかったからというシンプルな理由だ。特にビームが打ちたかったりする。

隣のページにあった『どんな魔法も使える杖』と悩んだけど、杖が奪われたら意味がないと思いコレにした。なに、大した違いはないだろう。

 

「このステータスなら、高い幸運が必要とされるギャンブラー以外なんにだってなれますよ!」

 

それに、一度魔法使い職になってしまえばあとから魔法はいくらでも覚えることが出来る。まさに完璧な布陣、いやー、にやけが止まりませんな!

そんなことを思いながら俺はニヤニヤしていたのだが、異変が起こる。

 

「……アレ?おかしいですね。職業がカードに表示されない……」

 

「「え?」」

 

そんな司書の言葉に、一瞬で我に帰る俺、アイリスも驚いている。

 

「そんなことってあるんですか!?」

 

「いえ、長年城に勤めてきましたがこんなことは1度も起きた事がありません!」

 

「……あのー、それってもしかして相当不味かったりします?」

 

司書とアイリスがあまりに慌ているので、不安になって尋ねる。

 

「当たり前ですよ!職業が無いってことは魔法やスキルが習得できないって事ですよ!?不味いどころの話じゃないですよ!」

 

……マジで言ってんのか!?

こんなゲームみたいな異世界で魔法もスキルも使えないとか何の拷問だよ!!

 

「冒険者カードが壊れている可能性は?」

 

「無いです、あり得ません。このカードに書かれている情報は、触れた対象の魂を情報を元にしています。こんな事が起こりえる可能性なんて、あなたの魂に問題がある以外考えられません。何か心当たりはありませんか?」

 

「そんなものーー

 

そんなものあるわけ無いじゃないか。俺は即座にそう否定しようとする。しかし、俺の頭の中には、一つの心あたりがあった。

そう、アレは確か、俺が異世界転移をしようとした時にーー

 

『そこに行けばもう一度、俺は生きることができるのか?』

 

『えぇ、ただあなたは死んでしまう前に魂を身体から抜き取ったから、()()()()()()()()()()()はあるけど……まぁ大丈夫でしょ』

 

『じゃあ、それでお願いするわ』

 

お前かあああああああああああああ!!!!

あの駄女神ふざけんなよ!何回俺の異世界生活邪魔すれば気が済むんだよ!

つーかちょっとしたデメリットってなんだよ!がっつりデメリットじゃねぇか!生きていく上でもだいぶ欠陥だよ!

 

「というか、職業が無いってことは、俺の魔力無限っていうのは……」

 

「あの、その、非常に言いにくいのですが、その、全くの無駄ってことに……やっ、やめてくださいよ!そんな今にも泣きそうな子供みたいな顔をするのはやめてください!……あっ、止めてください!ホントに泣き始めるのは止めてください!可哀想ですけど私にもどうにもできないんですって!」

 

なんだろう。どうして俺の異世界生活はいつも邪魔が入るんだろう。

あれか、初めに女神を脅したのが悪かったのだろうか。

俺には異世界転移者あるあるのステータス自慢すらできないのか。選んだチートの一つも使いものにならなくなったし。

 

……そんなことを考えていると、唐突にけたたましい鐘の音が王都に響き渡る。

 

『魔王軍襲撃、魔王軍襲撃!騎士団はすぐさま出撃。冒険者の皆様は、街の治安の維持の為、街の中のモンスター侵入に警戒してください。高レベルの冒険者の皆様は、御協力をお願いします!』

 

そのアナウンスを聞いた司書は表情を瞬時に引き締めると、カウンターの下から魔法の杖のようなものを取り出す。

 

「私は魔王軍鎮圧に出向かなければなりません!アイリス様とセイヤ様は防御魔法を張っておくので、この部屋から出ないようにお願いします!」

 

そう言って、彼女は俺達を置いて部屋の外に飛び出して行ってしまうのだった。

 

 

 

 

「おい、本当にこんなバカ正直に突っ込んでって、ホントに効果あるのかよ」

 

王都から少し離れた森の中、王都へと侵攻していく魔物達を一瞥しながら、大柄の悪魔は隣の男に問いを投げかける。

 

「大丈夫だ。元よりこの部隊は雑兵、効果があるように編成してはいないよ。よくて肉壁、悪けりゃ犬死さ」

 

「なんでそんなことを」

 

「目的が別にあるんだよ。コイツらはそのための時間稼ぎ要因。本命は俺達でやるんだ」

 

男はそう言って風で微かに揺れる()()をかき上げると、不敵に笑う。

 

「仕込みは上々、目的はただ一つ、ベルゼルグ王国王女、ベルゼルグ・スタイリッシュ・ソード・アイリスの殺害……さぁ、楽しもうか!」




ラブコメとか書いておいて一切ラブコメ書いてない作者が通りますよー....
ちゃんと書くから許して下さい。

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