前作と違って比較的に明るいのでお楽しみください!
良いお年を!
「母ちゃん、買ってくれよ~」
「あかん」
「父ちゃん、言ってくれよ~」
「そういうことは母ちゃんに任せてる」
と高校生のムロウとその両親は晩ごはんの場である話し合いをしていた。お題は、昨日発売された「ヒーローウォッチ」(54,000円)についてである。アメリカから来たこの商品は、電話機能・インターネット機能・撮影機能がある中で他と違う目新しい機能があった。それが「スーパーパワー機能」である。
「今日、友達がそれ学校に持ってきたんだよ。指パッチンで火を出してたし!あと別のクラスのやつが飛んで登校してきたりすごかったんだよ!他にもいろんな人が持ってたし!」
ムロウは、今日のことを興奮しながら説明する。実際には、自分のクラスでは30人のうち2人で他クラスも同じであり持ってない生徒の方が多いわけだが、ムロウはとにかく欲しいのでそこのところはどうでも良くなっている。
「あんた、それがどういうものかわかってる?付けてるだけで指から火は普通つかないよ」
「えぇぇぇ...」
母親の問いかけに言葉が1つしか出ないムロウ。このヒーローウォッチは、ウォッチの内側から小さな針が腕に刺さり神経に接続することでスーパーパワーを1つだけ使うことができることを昨日の朝・夜のニュースで説明されていたのだが、覚えてるのは、つけるとスーパーヒーローのようにスーパーパワーが使えるということだけである。
「あんな危ないもの買って病気になったらどうすんの」
「友達は別に病気とかなってなかったし...」
「ネットだと事故起こす人の動画出てるぞ」
「!?」
ネットサーフフィンが趣味の父親の言葉とその動画を見せられたことで、ムロウは致命的な一撃を食らってしまう。
「ゲームなら買ってあげるからやめとき」
「あっはい」
そして、母親から言われた「ゲーム」に釣られたムロウはヒーローウォッチをとりあえず諦めた。その後、何気なく夜を過ごし、就寝し1日を終える。
朝。今日は休日であったのもあり、8時過ぎた頃に起きた。
妙な音が外から聞こえてくる。SF映画くらいでしか聞かない爆発音や何かが風を切るような音など騒々しい音がする。何かがおかしいと起きて早々思うムロウは、カーテンを開く。
カーテンを開いた先、外の世界は、SF...スーパーヒーロー映画のようになっていた。近場では、老人がムロウのいる2階を超えるジャンプでピョンピョン跳ね上がっていたり車を持ち上げる人、空では自由に飛び回る複数の人が赤い光を出していたり、遠くではさっきの爆発音がまた鳴る。
「一体、何が起きてるんだ」
おそらく、「ヒーローウォッチ」によるものと思うムロウだが、昨日はこうはなっていなかったのになぜこうなったのかと考える。しかし、結論に至るだけの知識はムロウには備わっていなかったため、10秒考えた後、両親がいる1階へ降りる。
降りると両親がテレビを見ていた。テレビでは今起きている状況について放送されていた。各地で同じようなことが起きている。番組のキャスターは、警察や自衛隊がヒーローウォッチをつけたとされる人々の妨害を受けてしばらく出動できないため家にいるよう勧告をなんども話していた。
「やっぱり、あれは危ないわ!」
と母親の声を聞くムロウ。
途中でテレビのチャンネルがリモコンを家族全員触れていないにも関わらず変わり、いま劇場公開されている映画の本編が突然流れ始める。おそらくヒーローウォッチ...もうやりたい放題である。
「キャァァァァ!」
突然、さまざまな騒音を貫いて外から声が聞こえる。声の方向にたまたま窓があったためそこに移動して外を覗くムロウ、父親、母親の3人。そこには、3人の男が1人の女の子を囲んでいた。遠いようで近い距離であったため、はっきり見える。男たちはヒーローウォッチをつけており女の子はつけていないことなどだ。何かを話しているようだが、さっきの悲鳴以外ほとんど聞こえない。だが、襲われていることははっきりとわかった。
さっきの悲鳴と女の子の怖がっている顔を見たムロウは、途端に何かせねばと動き始める。彼はいろんな人の言ってることに影響される人間ではあるが、突然の状況で正義感が働いて勢いのまま行動するバカでもあった。
「ちょっと、何してるの!?」
「おい、危ないぞ!」
母親と父親の警告を無視して、焼肉で使う鉄板をガムテープでぐるぐるに巻き胴体に固定し、オーブンの鉄板をガムテープで左腕に固定し盾にして、父親が芝刈り用に買ったフェイスガード付きのヘルメットを身につけて外へ。外の倉庫から武器になりそうなものをありったけ...とまでは頭が働かず、目にとまった大きめのスコップを右手に女の子のいる場所まで位置的に遠回りになるが駆けていく。
目に見えるところまで来た時、勢いよく走るムロウの足音に気づいた1人の男がムロウの姿を見て他2人を呼び2人よりも早く攻撃体制に入る。腕を前へ出して光輝くボールを複数飛ばす。1発目は外れたが、ムロウは敵の攻撃を認識してどうにかしようと走りながらスコップをブンブン振っていく。
一心不乱に両手で振り続けるスコップで自分へと向かってくる光のボールを跳ね返すことに成功するムロウ。それに負けじと撃ち続ける男だが、自然と自分も前に動いていたことに気づかず距離感がずれてしまう。
その結果、ムロウが目の前に来ていることに対応できず、ムロウの振るスコップが男の撃っている腕にぶつかる。ぶつかった腕はそのまま自分の顔に向かってしまい、光のボールを近距離で受ける。
ボールが弾けて男は顔が真っ黒になって倒れる。いつの間にか1人倒していたことに気づいたムロウは、動きを止める。気がつけばもう敵は近くにいた。
「よっよくもぉぉぉ!」
と2人のうちガタイのある方が叫び。何かを溜めるかのような体制になり、ムロウはその場で構える.....
「おおぉぉ...うっ!?あ、ああぁぁぁぁぁぁ!」
「「「!?」」」
が、急に男は、地面の更に下へと足からめり込むように降りていった。ムロウ、残りの男、女の子はその状況に驚愕する。その後声が聞こえなくなるまでの距離になったのか声は聞こえなくなった。残ったのは、地面に空いた穴のみである。
「隙あり!」
と我に戻るのが早かった最後の男はムロウに殴りかかる。声に気がついたムロウは、左腕の鉄板の盾で拳を防ぐ。拳というよりバットのような衝撃が盾に響き後ろに下がるムロウ。
盾から覗いた男は、いつの間にか上半身裸だったが驚くべきは色が鉄のような銀色だった。細マッチョな体型で銀色なこの男は、先の2人はわからないが、おそらく体を鉄へと変えるスーパーパワーを持っていると推測するムロウ。
「そこのあんた!早く逃げて!」
「あ、ありがとうございます!」
ムロウは、女の子を先に逃そうと声をかける。声をかけられた女の子は、急いで立ち上がろうとする。
「あっしまった!」
最後の男は、女の子の方へと顔をむける。その隙をついてムロウはスコップで頭を殴る。だが、ムロウの思っていた通り、男は鉄のように硬く。思いっきり振り下ろしたスコップは男の頭に沿って変形する。わかっていたため、戸惑わないムロウ。時間稼ぎのためにもう一撃かまそうとするが、スコップの棒の部分を男の拳で折られてしまう。そこからコンボを繋げるように男はムロウの腹に一撃を入れる。
「ぐっ...!」
胴体は鉄板で守っていたため無事だったが、衝撃が響いて痛みを感じるムロウ。しかし、ここで怯んではいけないと考え男を挑発する。
「あんたが、ヒョロヒョロだからまだ無事だぞ!来い!ヒョロ坊!」
「なっなんだと!?」
挑発に乗せられた男は、怒って向かってくる。鉄の拳の連打を腕の盾で必死に耐えるムロウ。武器が破壊された以上防いで時間を稼ぐしかない。
(これなら、芝刈り機とかハンマーとか持ってくるべきだった...)
と後悔するムロウ。ふっと男の先を見ると女の子はいなかった。無事にどこかへ逃げたことに安堵するがムロウはひたすら耐えるしかない。
盾の表面はボコボコに変形し、ムロウの体力も流石に限界になってくる。その時!
「ムロウ!避けろ!」
父親の声が聞こえその方向を向くと父親と母親が乗った車がやってくる。ムロウはなんとか男を盾で押して後ろへと急いで下がる。
対処できなかった男は、何もいう暇もなく車にそのまま轢かれる。下敷きになり金属が削れるような音を鳴らしながらも車はそのまま前進。車は轢いたあと止まる。その後ろには轢かれた男だけが残る。両親の急なサポートもあってこれでやったかと思ったムロウ。だが、男は、ゆっくりと立ちあがろうとする。
「ちょっと!もう一度バックして!バック!」
窓から母親の声が聞こえる。この言葉のあと車がバック。
「ちょ、ちょっと待て!」
男の言葉も聞かず、もう一度轢く。そして、また倒れる男だけが残る。
またまた、起きあがろうとするが、もうしつこい!っとムロウは、胴体に巻いていた鉄板を無理やり外しながら、男の前へと早歩き。そして、思いっきり鉄板で頭を殴る。スコップやオーブンの鉄板よりも厚く硬い焼肉用の鉄板で殴られた男は、先の車のダメージもあり流石にここでダウン。
「ハァ... ハァ...ハァ......」
戦いが終わり、息を吸っては吐いてを繰り返しながらその場に座り込むムロウ。そして、ムロウの元に両親が急いで車から出て向かっていた。
その後、警察と自衛隊の活躍で治安は元に戻った。ムロウと両親は、女の子の証言があり正当防衛ということで逮捕されることはなかった。3人の男たちは死んではおらずその場で逮捕された。
そして、さまざまなことがわかった。ムロウにとっては3つである。
1つ目は、今回の原因は転売屋によるヒーローウォッチの転売にあった。発売日に大量に買い込んだ転売屋が定価よりも安く売っていたため、多くの層の人がそれに目をつけて買っていったことにあったという、そのほかの詳しいことについてはムロウにはわからなかった。
2つ目は、あの戦いの後、警察と自衛隊の出動であっという間に鎮圧してくれたようだが、なぜ妨害で出動できずにいたのにあっという間に鎮圧できたかというと、ムロウが戦った男たち同様にスーパーパワーを使いこなしていなかったため、そこをつけばあっという間だった。
3つ目は、スーパーパワーを悪用する人に立ち向かった人がムロウと両親以外にもいたことが数日後の学校に行ってわかった。ムロウの友達の1人は、スーパーパワーで立ち向かったみたいだ。スーパーパワーとスーパーパワーの戦いもあったが、スーパーパワーを持たない人が立ち向かったと言うのは意外と多かった。特に学校で目立ったのは、ムロウの学年でも不良に属している複数の生徒だ。見ず知らずの人を助けるために爆弾人間に挑み重体になったらしい。ムロウは、どこも折れていなかったが、命をかえりみず挑んだ不良たちには感服した。
こうして、いろんなことがわかり、現在は元の平和を取り戻すこととなった。ムロウは、今回のことで両親にはこっぴどく怒られた。ヒーローウォッチももう欲しくはなかった。
自分の部屋で寝転ぶムロウは思う。こうして自分の身を挺して誰かを守ろうと行動する人が自分以外にもたくさんいるのなら今後、このようなことが起きても大丈夫そうだなと。が、その反面、
(次は、こないでほしいな…)
と思うムロウであった。