財団になるはずだった組織が人類が安全に生存できる地区を設定し、基本外部からの侵入禁止。
朱里くんはそこからハブられているため、人外と危険団体蔓延る世界を力強く生きてる。そして誰かに見初められたらそのまま人生の墓場を直行です。
そんな世界の話。
腹の奥に放たれた熱が、体中に幸福感を伝えてくる。無理矢理襲った罪悪感も、セックスの余韻に潰されてしまった。
いつも、いつもそうだ。
ようやく落ち着いてきて、肩で息をする朱里と目が合う。こんなことをされているのに、こいつはオレに笑いかけてくるんだ。
オレみたいな怪物に優しくするなんて、本当に変わった奴だ。
「朱里」
名前を呼ぶと、血の通った暖かい手が伸ばされ、オレの頬を撫でた。
朱里は、いつも欲しいものをくれる。優しさでも愛情でも、溺れるような色欲さえも。
「朱里、好きだ」
そうだ、オレは朱里を愛してる。いや、きっとこれは依存に近いんだろう。
「だから、何処にも行かないでくれ」
だって、朱里の愛情がないと壊れそうなんだから。
お兄ちゃん。そう、私にはお兄ちゃんがいる。血が繋がってるわけではないし、家族でもない。親戚でも、近くに住んでいたわけでもない。
けど、朱里さんは私のお兄ちゃんだ。
両親のいない私を拾ってくれて、自分だけで精一杯だろうに私の分のご飯を作ってくれる。毎日危険な場所に売れる物を探しに行っているから、ボロボロで帰ってくるなんてこともよくある。
「なんでそんなに頑張るの?」
私は聞いた。
「お兄ちゃんっていうのは、妹や弟を守ったり、助けたりするために産まれてくるからだよ」
お兄ちゃんはそう答えた。
だから、朱里さんは私のお兄ちゃんなんだ。
「だから、邪魔をしないで」
転がっている肉塊、それらが持っていた無線機に私は語りかけた。こいつらはお兄ちゃんを殺そうとしてきた。だから私を殴って死んでもらった。
「私ね、お兄ちゃんとの生活が幸せで幸せで仕方ないの」
肉塊から拳銃を得る。
「この生活を誰にも壊されたくないの」
撃鉄を鳴らす。
「これ以上邪魔をするなら全員殺すから」
銃声1回。無線機からは何も聞こえなくなった。
「さて、もうすぐお兄ちゃんが帰ってくる頃だし、私も戻らないと」
慣れというのは、恐ろしい。何人か殺しているのに私の心は明るかった。
「おはよう、ございます、朱里さん」
「うん、おはよう」
私の一日は、朱里さんへの挨拶から始まる。その後は朝ご飯を作って、朱里さんと食べて、昼ご飯の材料を奪ってきて、作って朱里さんと食べて、夜ご飯を作って朱里さんと食べて、朱里さんとお風呂に入って朱里さんと寝る。
これが一日のサイクル。
朱里さんは、もう十分頑張った。だからもうこれ以上頑張らなくてもいいし、頑張ってほしくない。
朱里さんは優しいから、外へ出て困っている人に出会ったら、また頑張って助けてしまう。私以外を助けてしまう。
そんなの嫌だ。
だから脚を切り落とさせてもらった。
切った当初は混乱していたけど、今はもう理解してくれている。こんな私のわがままに付き合ってくれる、本当に優しい人。
私が唯一、この顔を合わせられる、人。
だから、私だけの物にしたくなった。
私を知っているのは朱里さんだけでいい。朱里さんを知っているのは私だけでいい。
それ以外は、みんな死んでしまえばいいんだ。
朱里くんの寝顔を見ていると、可愛いなぁ、と思う。
私は、弱い人間が嫌いだ。強い信念を持った強い戦士にこそ誉があり、闘うに値する。そうでないものは、蹂躙し、殺す。ずっとそうしてきた。
その点で言えば、朱里くんはとても弱い。でも、誰にも壊せない強い信念が宿っているように見えた。
不思議な少年だった。だから、ちょっかいを掛けてみることにした。
「って、最初は味見程度のつもりだったのになぁ」
気付けば沼地に嵌るようにズブズブと沈んでいった。
朱里くんは優しくて、頑張り屋さんで、これまでに闘ってきた誰よりも魅力的に見えた。今じゃ同棲もして、身体を重ねることもしばしば。
「あー、満たされてる」
血の沸くような死闘は最近してないけれど、静かな日常もいいかもしれない。そう思ってしまう程、甘い日常。
「カインが見たら、どう思うかな」
唯一家族と
「にしても、可愛いなぁ」
今までの殺伐とした生活が嘘みたいに幸せ。
だから、弱い朱里くんは、私が守るからね♡
続きは書くかもしれない。