溺愛姉妹   作:トクサン

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空に挑む

 

『良いですか小太郎、決して無茶はしない事……最近付近の生態系の乱れが深刻化しています、百竜夜行の兆しすら見えない状況で大型モンスターの痕跡すら発見出来ないのは異常よ、ギルドはこの事態に他ギルドからの調査団派遣を依頼しています、既に事態は私達カムラのみで収拾可能な範囲を逸脱していると断言しても良い程に』

 

 小太郎は任務地へと赴く前、神妙な表情でミノトが口にしていた事を思い出していた。最近、狩猟環境が変化し生態系に歪みが生じているという話は聞いていたが、他所のギルドが出張って来る程に悪化している事は知らなかった。

 今回の任務は本来であれば里の防衛網に引っ掛かる狩猟対象が存在しないかを確かめる警邏任務──しかし生態系の歪みから痕跡調査へと切り替わったのが今朝の事。

 

『今回の任務はモンスターの痕跡、及び生態系の調査、調査団が現地に到着する前にある程度情報を纏めておきたいの──無理をしない範囲で、お願い』

 

 小太郎は任務地へ到着し暫く周囲を散策した後、そっと呟いた。

 

「嫌に静かだ」

 

 視線を左右に散らす。風に揺れる草木、笹の葉、木漏れ日の向こう側に見える雲。しかしモンスターの姿は影すら見えない。オトモの二匹を連れたまま周囲を歩き、すんと鼻を鳴らす。

 

「……生命の匂いがしない」

「にゃあ、匂いですかにゃ?」

「あぁ、雪山とか、あの辺なら分かるのだけれどな、森林でこうも匂いがしないとなると──流石におかしい」

 

 氷の世界は生命の匂いがしない。音もなく、ただ白が広がる死の世界。反し、森というのは生命に溢れた世界。当然、そこで生き死ぬ動植物の匂いが必ず存在する。小太郎が嗅いだ匂いは過去のそれと比較し、余りにも薄い。モンスターの活動が弱まっている証拠だった。

 

「登るぞ、上から一望する」

「バゥ!」

 

 一声かけ、小太郎は翔蟲を用いて壁を駆け上がる。苦無に翔蟲の糸を括り付け投擲、刃先を壁に突き刺す事で支点とし飛び上がる。ウツシ教官直伝の壁駆けである。

 狩猟地区中央に鎮座する山脈、その頂まで一気に登った小太郎は周囲を一望出来る位置に立った。肌寒く、風の強い場所だ、しかし一際背の高い山は狩猟地区を丸々見渡すには丁度良い監視場所であった。

 風に纏いを揺らしながら下界を見下ろす小太郎は、ガンランスを肩に担いだまま目を細める。ハンターとして鍛えられた視界は確りと現状を映し出していた。キャンプ近くの川辺、平地、山岳へ続く山道、滝つぼに廃寺、それらに満遍なく視線を配り。

 

「情報通りだ……大型も、小型も、環境生物すら」

 

 存在しない。

 思わず漏れた呟き。本来この周辺を縄張りにしているモンスター達の大移動、水辺も、社近辺も、森林地帯も、平原部分も、我が物顔で闊歩しているモンスターが一匹たりとも見当たらない。それは大型に限らず、草食、肉食問わず小型モンスターまで。更に不可解なのは環境生物までもが姿を消している事だった。百竜夜行の吉兆があれば小型、大型モンスターが姿を消す事もある。しかし、環境生物は違う、彼らは縄張りや地域にどのような変化が起きても一斉に姿を消す事はない。必ず過程が在る筈だった。変化があったとしても、それは緩やかでなければならない。

 どうなっている? 小太郎は思わず唇を噛んだ。小太郎が苦悩する時の癖だった。今まで全く見られなかった異常、果たして何が起ころうとしているのか。少なくとも、良い予感だけはしない。

 これでは調査がどうのという話ではない。一応地道に周囲を回って痕跡を探すつもりではあったが、果たして成果に期待出来るかどうか。

 

「──?」

 

 不意に、小太郎は自分の指先が震えている事に気付いた。山頂は肌寒い、寒さから来る震えだろうかと思い、しかし斜面にへばり付く二匹のオトモの姿を見て違うと確信する。

 

「にゃ……だ、旦那様、何だか妙な寒気が」

「……あぁ、俺もだ」

 

 そこまで口にして、ぶわりと小太郎は毛が逆立った。それはハンターとしての勘か、或いはウツシ教官に鍛えられた生存本能か。咄嗟に空を仰いだ小太郎は、天空にきらりと光る何かが見えた気がした。細く頼りない、糸くずのような白。

 気のせい? 否、違うと小太郎の本能が告げる。徐々にはっきりと視界に映るそれは空を流れる星の様で、思わず口に出す。

 

「──流れ星?」

 

 蒼穹を流れる星、それはそうとしか表現できない。しかし数秒その星を見つめていた小太郎は、件の流れ星が段々と近づいて来ている事に気付く。その速度はかなりのもの、小太郎の目測が誤りでなければ落下地点は──。

 

「ッ!」

「にゃ、旦那様!? 何──」

 

 咄嗟に二匹を掴み、小太郎は山頂を飛び降りた。余りに急な事でオトモ二匹から非難の声が上がる。しかし、構っていられる程の余裕はなかった。それこそ、一言を惜しむ程に。

 次の瞬間、山頂に何かが衝突し、衝撃波が爆音と共に飛来した。天より飛来したそれは山頂を抉り、宛ら千切る様な形で岩石諸共粉砕する。宙に身を投げ出した小太郎は翔蟲を使って減速、しかし咄嗟の事で体勢が悪く半ば叩きつけられるような形で地面に転がった。キャットとドッグも斜面を蹴って減速し、辛うじて受け身に成功する。

 三人が落下したのは水辺、滝の近くであった。水に塗れながら小太郎がガンランスを掴めば、山頂を粉砕し、そのまま地面に着陸を果たした星の正体が、水飛沫を浴びながら待ち受けていた。

 

「バルファルク──」

 

 奇妙なシルエット、竜という種をどこまでもシャープに、流線形で描いた生物。空駆ける姿、彗星の如く。その文言に偽りはなかった、流れ星と見まがう程の飛行速度、山の一角を消し飛ばす威力、そしてそれを成して尚砕けぬ肉体。

 小太郎は頭上を仰ぎ見る。先ほどまで自分たちが立っていた山頂は、まるで最初から存在しなかったかの様に抉られ粉々になっていた。

 小太郎はバルファルクと対峙しながら固唾を飲む。圧し掛かる威圧感、肌を刺すような殺気。特殊個体だろうとあたりを付ける。上位ではない、恐らく称号持ちが相手をする様な──【伝説級】の存在。

 バルファルクそのものが遠方からの目撃例こそあれ、こうして人と対峙する事自体少ない、それこそカムラでは。唐突な襲撃は興奮故か、僅かに首を上下させ此方を鋭く睨みつけるバルファルク。相対し、注視していたからこそ小太郎はその違和に気付いた。

 

「……片目が」

 

 潰されている。

 まるで上から炎で焼かれた様な爛れ具合。視界は完全に塞がっているだろう、残った片目で此方を見据える彼の竜はどこかで一戦を交えた後だったのか。

 小太郎を挟むようにして合流したドッグとキャットは、半ば狂乱しながら進言する。

 

「にゃっ! ご主人様、あのバルファルクは尋常じゃないニャ! 普通の個体ならまだしも、どう見ても特殊個体! 此処は一度退いて里にッ……!」

「無理だ」

 

 ドッグの言葉を遮り、小太郎はガンランスに弾薬を装填した。明らかに気が立っている相手を前に背中を見せて易々と逃げられるとも思えない。それに先程見せた、彗星の如き飛行能力。単純な速力比べでこいつに勝てる存在など、そうは居まい。

 下手をすれば、こいつを引き連れて里に戻る事になる。

 

「此処で狩猟する」

 

 それだけは駄目だった。

 こいつは此処で止めなくてはならない。少なくとも、今回の異変と無関係という事はないだろう。

 ガンランスを構える。途端、目前のバルファルクから放たれる殺気が一層濃くなった様な気がした。唐突な死闘、明らかな強敵。風魔小太郎という存在が戦って来たモンスターの中で間違いなく最強クラスと云える。

 普段の小太郎であれば泣き言を云いつつ、撤退の方向で固めていたかもしれない。

 安全に、安寧に──それが小太郎の狩猟に於けるモットーだ。命がけなど馬鹿げている、死なない程度に、効率良く、

 けれど今だけは。

 

「ふーッ……」

 

 こいつを踏み越えて、己は高みに登る。

 

 死にたくないからこそ、この武器を担いだ。

 けれどこの年になって──死なないだけでは届かぬのだと知った。

 死線に身を置くからこそ超えられる壁がある。挑戦するからこそ得られる強さがある。呆然と見上げるだけでは届かない、頂きへ。

 

「いつも通りだ、俺達なら狩れる、そうだろう?」

「──にゃあ、こうなればやけっぱちニャ! 文字通りオトモしますニャ、何処までもッ!」

「バゥッ!」

 

 叫び、オトモ二匹も覚悟を決める。否やはない、狩ると決めたのならば怯えも恐怖も捨てる。

 各々が武器を構えると同時、バルファルクの足元から飛沫が上がり巨体が加速した。目を焼く閃光、爆音を打ち鳴らす翼に小太郎達は各々飛び退く。

 一瞬間を置いてバルファルクが虚空を穿つ。

 

「ッ、うお……!」

 

 通過した風圧と衝撃に地面を転がる小太郎。慌てて後方を見れば地面を踏みしめ、減速し反転したバルファルクの姿。見てから躱せた訳ではない、突進の予備動作──地面を踏みしめ、沈んだ姿勢から辛うじて回避が間に合ったに過ぎない。想像以上の加速、思わず舌打ちを零す。

 

「速いのは分かっていたが……その巨体で、どういう速度だッ!?」

 

 通常の個体より、遥かに速い──少なくとも真っ当なやり方では追いつけないと悟る。

 超高速による突進、攻撃と回避を兼ね備えた行動。そもそも向こうに追いつけないのならば攻撃の手が無い。鉄糸を張って待ち構えるか? 小太郎は翔蟲に手を掛けるも、分の悪い賭けだと内心で悪態を吐く。

 

「旦那様、ドッグが動きを止めますニャ!」

「っ、出来るのか」

「お任せあれ!」

 

 告げ、ドッグは地面に潜り消えた。何をするのかは分からない、しかし出来るというのならば信じるのみ。小太郎はガルクと視線を交わし共に飛び出す。

 

「キャットッ!」

「バウッ!」

 

 足元に刃を差し込み、竜撃砲。爆音と共に水飛沫が上がり、熱によって蒸気が噴き出す。白い蒸気を切り裂いて飛び出すガルクことキャット、敵の眼球目掛けて苦無を投擲。しかし高速で駆ける彼の竜にとって飛来する苦無など余りに鈍い、軽くステップを踏み苦無は虚空に消える。しかし、バルファルクは苦無に結び付いた糸に気付いた。

 

「即席の代物としては十二分だろう!」

 

 回避した筈の苦無は唐突に軌道を変え、まるで意志を持ったかのようにバルファルクの頸元に突き刺さる。そのまま糸は何重に巻き付き、小太郎の手元へと糸は続く。

 バルファルクはそのまま身を沈め、小太郎はそれを跳躍の前動作と判断。瞬時に糸をもう一本の苦無へと括り付け、地面に深く打ち込んだ。僅かにバルファルクの体が傾くも、小太郎はバルファルクの頸元に突き刺さった苦無を見て舌打ちを零す。

 

「浅いか……!」

 

 それに本数が足りていない。あの翼、空気を吸い込む異音、尋常ではない推進力を誇るのだろう、鉄糸一本では到底足りない、四方を糸で雁字搦めにして漸く制動出来るかどうか。

 

「キャット!」

「ガウッ!」

 

 即座に指示、意図を汲み取ったガルクが更に苦無を投擲。しかし此方のやり方を察したのだろう、バルファルクは飛来する苦無を見るや否や両の翼を使って空間ごと苦無を薙ぎ払う。勢いを失った苦無は糸による操作が効かない。しかしそれで良い、馬鹿正直に何度も同じ手を繰り出すつもりはない。小太郎はその隙にリロードを済ませ、肉薄。

 

「直接打ち込めばッ……!」

 

 右手にガンランス、左手に苦無を持って外殻に飛びつく。ガンランスの杭にて穴を穿ち、其処に苦無を撃ち込むつもりだった。しかし、直前でバルファルクの地力が勝り、固定していた地面の苦無が引き抜かれる。

 振り抜いたガンランスの刺突は空振り。バルファルクは大きく跳躍、距離が空く。

 距離が空けば──小太郎は咄嗟に叫んだ。

 

「突進が来るぞッ!」

 

 警告と同時にバルファルクの突進が真横を掠めた。水面に転がりながら辛うじて回避に成功する。まるで水面を裂くように飛沫を上げて飛来する影、轟音と共に突き抜ける一陣の風。ガルクと小太郎は吹き抜けた疾風に体を押される。あの体を自由にしてしまった。

 

「クソ……!」

 

 もう一度苦無を突き刺して、地面に堕とすしかない。太腿の装具に手を掛け鉄糸を巻き付ける。耳に届く異音──空気を取り込む吸引音。

 もう一度突進が来る、構えようとして。

 

「旦那様ッ、準備完了にゃ!」

「ッ!」

 

 聞くや否や小太郎は地下より戻ったアイルーであるドッグの傍へ駆け寄った。やはり狙いは小太郎、飛来する巨体は瞬く間に彼我の距離を潰し。

 

【網大砲】(ネットランチャー)ニャ!」

 

 ぽん、と軽い音と共に放たれた大網に捉えられた。ドッグが肩に担いだ大筒には落とし穴にも用いられるネットが装填されており、それを真正面に射出する機構を有す。よもや空間に網が張られるとは思っていなかったのか、唐突な妨害に直線を描いていた突進は曲がり、そのまま地面に激突する。水飛沫と土砂を撒き散らしながら転がったバルファルクはネットに絡めとられ、思う様に動けない様子だった。手足を振り回し、足掻いている。上手くいった、小太郎はドッグに喝采を挙げたい気分であった。

 

「ここで決める……ッ!」

「ニャア!」

 

 大筒を投げ捨て、小太郎とドッグ、遅れてキャットが一気に肉薄、動きを止めたバルファルクに飛び掛かる。小太郎はガンランスを振りかぶり、隙だらけの頸元目掛けて突き出した。刃先は確かに肉を穿ち、同時にトリガー。竜撃砲が直撃する。

 爆炎と轟音、反動で後退しながら爆炎を裂く。確かに手応えはあった。見れば抉れた爛れた頸元、血を撒き散らしながら咆哮するバルファルクは、しかし健在。

 上位とは比べ物にならない、桁違いの生命力。通常ならば息絶えてもおかしくない致命傷、或いは想像以上に内部が硬かったのか。一発で駄目なら二発、此処まで肉が露出すれば竜撃杭とて致命傷だろう。

 小太郎はそう考え第二撃を加えようとリロードを行い、はっと顔を上げる。

 異音、翼から──否。

 

「胸元が……!?」

 

 空気を取り込んでいるのか、或いは別の何かか。一切の動きを止め、胸元の外殻を開きながら光り輝くバルファルク。まるで赤い線の様に、身体の各部位が輝く。見知らぬ動作だ、しかし静観できる状況ではない。何か途轍もなく嫌な予感がする。少なくとも何かしらの予備動作である事は確実であった。

 

「鉄糸を!」

「ニャア!」

 

 小太郎は本能的に叫んでいた。全員が攻撃の手を止め苦無をその体に打ち込み、地面へと繋ぐ。背中、横腹、左足、打ち込んだ楔は三点。深く、確りと打ち込んだ。強靭な翔蟲の糸で三点を拘束されれば、如何に古龍と云えど飛び立つ事も出来まい。

 

 しかし、小太郎達の予想に反しバルファルクは凄まじい衝撃波と共に消えた。

 

「ッ、馬鹿な、抜けられたっ!?」

 

 凄まじい爆音と衝撃だった。地面が捲り上がり、水飛沫が膜となって飛び散る。余りの衝撃に目も明けられず、再び開いた視界にバルファルクの姿はない。千切れ、引き抜かれた鉄糸と苦無が虚空を舞う。姿は見ない、しかし駆動音は聞こえる。はっとして頭上を仰げば遥か向こう、蒼穹に見える一筋の光。

 邂逅の一撃と同じ突進技──違う、それよりも速い。

 

 その煌めき──彗星の如く。

 

「避け──」

 

 着弾。

 水面が捲りあがり、世界から音が消える。目で捉える事も出来なかった、理解出来たのは辛うじて直撃を避けた事。しかし攻撃範囲が余りにも桁違い過ぎた。着弾地点を中心に龍気爆発が発生、小太郎とドッグ、キャットは宙に打ち上げられる。

 キャットは近場の木に叩きつけられ、ドッグはそのまま体を水面に打ち付ける。小太郎は衝撃で捲れ上がり、露出した滝の内壁に叩きつけられ、一拍遅れて飛来した滝に呑まれた。水中に呑まれながらもガンランスを握り、躊躇わずにトリガー。方向感覚を失う前に水中で爆発が巻き起こり、小太郎の体が外界へと打ち出される。

 反動で地面へと打ち上げられた小太郎は咳き込みながら顔を上げる。

 頸元より夥しい血を撒き散らすバルファルクは、凹み抉れた地面に立ったまま小太郎を見据える。

 

 ──鉄糸での制動は不可能。

 

 交わした視線は一瞬、次の瞬間にはバルファルクが飛び上がり、自身の翼をランスの様に掲げていた。小太郎は這った姿勢のまま横へと身を投げ、打ち下ろされた一撃を裂ける。地面を穿ち、舞った砂塵を裂きながら後退する。

 全身を襲う鈍痛、額から流れる血を拭う暇もなく視線を走らせる。オトモ二匹はどちらも戦闘不能状態、単独で状況を切り抜けなければならない。後退した小太郎目掛けて更に翼での一撃、辛うじて回避するも翼の先で小規模の爆発が起き、横合いへと吹き飛ばされた。

 

「痛、ッ……クソ!」

 

 地面を転がりながらガンランスを地面に打ち付け減速、素早くリロード。バルファルクは翼を後ろに向け突進の姿勢を見せる。最早動きを止める事すら叶わない、機動力に差があり過ぎる。

 どうする? 小太郎は内心で問いかける。最早彼奴の動きを止める術を自身は持っていない。罠は持ち込んでいない、そもそも持ち込んでいても設置している暇などないと断言できる。鉄糸は千切られる、苦無で地面に固定した所で全力を出せば拘束たり得ないと奴自身が証明した。

 考える──攻撃自体は通る、外殻は頑丈だが脆い部分は存在する。喉元は己の竜撃砲で抉れている、出血も酷い、長期戦を行う腹積もりではない筈。危険を感じたからこそ、彼奴は胸を開いたのではないのか。であれば勝機が零という訳ではない。此方も一撃入れられる状況に持っていければ。

 小太郎はバルファルクを見据え、血の混じった唾を呑んだ。

 

 超高速で突進を行う相手に、確実に攻撃を撃ち込める方法。

 

 小太郎はガンランスを構えたまま覚悟を決めた。左手で苦無を抜き、鉄糸で苦無と自身の腕を強く縛った。

 失敗すれば──死ぬだろう。

 

「来いッ!」

 

 叫ぶと同時、バルファルクが爆音を打ち鳴らして突進。それに合わせる形で小太郎は後方へと跳躍。間を置かずに着弾。小太郎の全身が鈍い音を立て、四肢が捥げたと思う程の衝撃が走った。

 しかし、生きている。バルファルクの顔面に張り付く形で小太郎は突進を受け、強引にクロスレンジへと持ち込んだ。

 腹に凄まじい衝撃、せり上がった鉄臭いそれを呑み下す。同時に苦無を突き刺し、翔蟲を使って自分の腕とバルファルクの頭部を固定。

 ぐんぐんと高度が上がる。空を駆ける彗星、蒼穹を抜け、雲を突き抜け、それでも尚止まらない。凄まじい速度の中で、小太郎は歯茎を剝き出しにしてガンランスを振り上げる。ぎょろりと、此方を睨みつけるバルファルクの瞳と目が合った。

 

「勝ったァ──ッ!」

 

 風圧に舌を揺らしながら全力で叫んだ。

 矛先が振り下ろされる。

 狙いは眼球。

 ぞぶりと埋まった刃先はバルファルクの瞳を穿ち、小太郎はトリガーを引いた。

 

 ■

 

 爆炎と血潮が舞う。

 キャットとドッグが見上げる空の先で、小さな音が鳴った。本来であれば鼓膜を打つ爆音が余りの距離にほんの小さな残響のみが届く。それと同時に遥か宙へ向かっていた彗星が──ゆっくりと堕ちる。

 

「や、やったニャ──」

「ばうッ!」

 

 キャットとドッグが声を張り上げ、小太郎がバルファルクを仕留めたのだと確信する。しかしはっと目を見開くと、ドッグはキャットの前足を叩く。

 

「あ、あそこからどうやって戻って来るにゃ!? あんな高さから落ちたらっ、旦那様ミンチになるニャ! キャット、墜落地点へ急ぐにゃあああ!」

 

 背に乗り、急げ急げと横腹を蹴とばすドッグ。キャットは一つ吼えると全速力でバルファルクの墜落地点へと駆けた。

 

「────ぅ」

 

 一方、至近距離で竜撃砲を撃ち込んだ小太郎は先の負傷もあって一瞬意識を飛ばしていた。凄まじい浮遊感に目を覚ました小太郎は、自身がバルファルクと共に落下している状況に気付く。一瞬パニックになりかけるも、かなり高度を上げていた事が幸いした。未だ地面は遠く、猶予がある。

 それでも落下速度を考えれば然程余裕はない。

 

 ──こんな所で、死んで堪るか……!

 

 バルファルクの頭部に差し込んでいた苦無、鉄糸を解除し抜き放とうとする。しかし緊張からか、がちがちに固まった掌が動かない。苦無は強く突き刺さり、握った拳は微動だにせず。宙は酷く寒く息苦しい。早く、早くと鳴らされる警鐘に背中を押され、何とか引き抜いた苦無を手放す。そのまま頭部を蹴り飛ばせば小太郎の体はバルファルクから離れ、巨体は独りでに地面へと吸い込まれていく。

 間を置かずしてバルファルクは地に衝突し、赤い華が咲いた。

 地面が、近い。

 

「頼むッ!」

 

 ガンランスを背負い、両手に糸を巻き付け翔蟲を飛ばす。落下していた肉体は急激に減速し、両腕が軋んで思わず呻き声が漏れた。

 しかし、辛うじて間に合った。地面に足が触れると同時、糸を手放して地面を転がる。砂塵を撒き散らして地面に這いつくばった小太郎は、飛び散ったバルファルクの血に塗れながらも五体無事。荒い息を繰り返し、地面に衝突して肉塊となったバルファルクを呆然と見る。頭部は竜撃砲によって破壊され、全身は地面に叩きつけられた衝撃で折れ曲がっている。

 討伐したのだ──自分が、自分たちが。

 

「だ、旦那様ァ! ご無事ですかニャァ!」

「バォッ!」

「あ、あぁ……」

 

 駆け寄って来たオトモに気のない返事をしつつ、小太郎は膝立ちになる。実感が湧かなかった。生存し、途轍もない偉業を成し遂げた筈なのだが、どうにも歓喜よりも疲労が勝る。思わず溜息を吐き、尻餅をつく。

 必死になっていた為に気に留めていなかった全身の痛みがぶり返してくる。手足や腹の鈍痛が、今だけは生の実感として機能していた。

 

「生きている……よな」 

 

 よもや飛竜と共に空を泳ぐ事になろうとは思わず、死闘からの大空ダイブに精神が追いついていない。擦り傷だらけの肌を撫で、固まった血を爪で剥がす。小太郎の傍に駆け寄ったドッグが器用に傷の具合を確かめている。その忙しない動きを見つめながら、小太郎は背を丸めた。

 

「にゃあ、旦那様は生きていますニャ! こんな大物、まさか本当に狩猟出来るなんて……天晴見事ニャ!」

「ははは、こりゃあ、フゲンさんに特別報酬を強請らないと」

 

 乾いた笑い声を上げながら、小太郎は少しだけ気力を取り戻した。じわじわと内側から、成し遂げた達成感と自尊心が湧いてくる。そうだ、勝った、勝ったのだ。担いでいたガンランスを手に杖代わりにして立ち上がる。潰れたバルファルクを一瞥し、少しだけ得意げな顔で。

 

「よし──里に戻ろう、断定は出来ないけれど異変にこのバルファルクが関わっている可能性が高い」

「にゃあ、凱旋にゃ!」

 

 キャットが小太郎の足を鼻先で突き、そのまま自身の背中を見る。乗って行けという事だろう、正直自分で歩くのも億劫に感じる程だった。有難い、小太郎はそのままキャットの背中に手を掛け。

 

 音がした。

 何か、空気を裂く様な落下音。披露した肉体で、億劫そうに音の聞こえる空を見上げれば。

 

 

 影が宙から降って来た。

 

 

 爆音、衝撃、礫が小太郎達の肌を打ち、体が急激に冷え込む感覚。

 

「────」

 

 それは着地、というよりも【着弾】という表現が正しいだろう。バルファルクの突進に負けず劣らずの衝撃、しかし問題なのは──影に翼が存在しなかった事。

 凄まじい轟音と地鳴りを巻き起こしながら、一つの影がバルファルクの頭部を踏み砕いていた。骨肉の砕け潰れる音、巻き起こる砂塵、足元から感じる確かな揺れ。

 全員の意識、その間隙を縫った襲来。誰一人として言葉や音を発する事が出来ず、ただバルファルクの頭部を粉砕し、血に塗れた影に視線が集まった。

 血霧を裂き、赤い瞳で小太郎を射貫く──人型の何か。

 

「────ぁ」

 

 確信があった訳ではない、知識があった訳でもない。けれど確かに、目があった瞬間理解した。

 

 伝説とは──こういう規格外を示すのだと。

 

 ほんの十三尺──四百センチ前後のモンスターが、余りにも強大に映った。

 外見は──マガイマガドに通じるものを感じる。甲冑、鎧、人が造り出した人工物を外殻として着込んでいるかの様。人型だからこそ、余計にそう感じてしまう。頭部には特徴的な一本角。兜を貫く様な形で存在するそれは伝承に存在する【鬼】に酷似している。総じて見た事も聞いた事もないモンスター。否、これをモンスターと呼んで良いのかも小太郎には分からない。

 不意に影が消える。目を離した覚えはなかった、しかし気付いた時には既に振り被った拳が迫っていた。小太郎の二倍以上の背丈、しかしモンスターと比較すれば小柄。

 だというのに小太郎は、飛来する拳にバルファルクの突進を幻視した。

 

 左右に居たオトモを後方へ蹴り飛ばし、咄嗟にガンランスの展開装甲で受けた。

 風を切り、装甲に叩きつけられた拳は。火花を散らし、表面を拉げさせ、小太郎の踵を地面に減り込ませた。

 重い──等という言葉では足りない。

 呻き声ひとつ上げられず、小太郎は自身の肉体から異音が鳴り響くのを聞いた。骨や筋繊維といったものが、たったの一撃で、装甲越しに破壊される。目前に広がる装甲が飴細工の様に拉げ、小太郎の足元が沈む。どろりと、小太郎の全身から脂汗が滲んだ。

 痛みからではない、恐怖からでもない──それは確信だった。

 

 戦えば、負けて死ぬ。

 

「キャット、ドッグ、行けェッ!」

「にゃッ──」

「バゥッ!」 

 

 決断は一瞬。二人に向かって血反吐を吐く想いで叫ぶ。かたかたと、武器を掴む小太郎の腕全体が震えていた。

 

「旦那様、何をッ!?」

「里にコイツの襲撃を知らせろ! 今分かった、周辺の狩猟環境が乱れたのはバルファルクが原因じゃない──コイツだッ!」

 

 装甲越しに光る紅、無機質染みたそれは小太郎のみを射貫いている。とてもではないがマトモではない。拳から伝わる力量も、此方を見抜く眼光も、全身を圧し潰さんと放たれる圧力さえも。

 後方へと押し出されたオトモ二匹が叫ぶ。

 

「一人では無理ニャッ!」

「全員で掛かっても同じだ! 良いから早く行きやがれぇェッ!」

「ッ~……! ご武運を!」

 

 葛藤は数秒、ドッグが悲壮そのものと云える表情を浮かべキャットに跨った。本能的に小太郎が云っている言葉が正しいと理解したのだ。一人では勝てない、二人でも勝てない、三人纏まって仕掛けても──尚、勝てる未来が見えない。

 対峙する事そのものが敗因。小太郎と共に数多の死線を潜り抜けて来た二匹の本能は、小太郎と同じ決断を下していた。そうであるのならば最善はなにか? フクズクのみでは伝えられない狩猟対象の情報を持ち帰る事。対象の数、姿形、力量、能力、それらを余すことなく全て。里の防衛設備で以て迎え撃てば或いは、そうでなくとも里には小太郎を凌ぐ実力者が詰めているのだ。

 

 このモンスターを無防備な里に近付けてはならない、絶対に。

 例えそれが──風魔小太郎という狩人の生命を対価としても。

 小太郎の使命は此処で足止めに徹する事。

 

 カムラの里を守る事。

 その達成に【風魔小太郎は必要ない】。

 

 キャットとドッグのオトモ組が狩猟区域を離脱していく。背を見せて逃げる獲物を追わず、小太郎だけをじっと見つめているモンスター。小太郎は辛うじて支えていた拳圧を横に反らし、そのまま後方へと下がる。たった一度、攻撃を防いだだけで小太郎の両腕は小刻みに痙攣していた。先程まで立っていた場所を見れば、足の形に窪み凹んだ地面。ゆっくりと呼吸を整えながら対峙するモンスターを見る。

 

「人型のモンスター……新大陸の方で目撃例はあったな」

 

 何でも人型の樹と称されるモンスターだったらしい、これもその類かと疑る。果たして自分は勝てるのか。小太郎は思う、自問自答する必要すらないと。ドッグは「武運を」と云った、しかし口にしたドッグ自身、信じてはいないだろう。

 勝ち筋が全く見えない。

 どんな相手であっても、百分の一、千分の一、或いは億分の一の確率で勝てる確率は見える。里長のフゲン、ウツシ教官、ギルドマスターのゴコク、どれもこれも里の誇る英雄豪傑、真っ向から小太郎が戦えば叩きのめされて終わる相手。それでも、ほんの僅かな可能性は存在する。勝利の可能性は零ではない、どれ程低く気の遠くなるような攻防の果てであれ、【絶対に勝てない】と断念する相手ではない。

 しかし、この相手には──それがない。

 百、千、万、挑んだとして一度も勝ちを拾える未来が見えない。戦えば戦った分だけ、挑めば挑んだ分だけ、自身が敗死する未来が広がっている。

 小太郎が今生、その未来を見たのはたったひとり──たったの一人だけだ。

 つまりそれは、目前の存在が彼女の領域に足を踏み込んでいるという証左に他ならない。

 

 勝てる訳がない、小太郎の冷静な部分がそう云った。

 けれど退くという選択肢も存在しなかった。

 故に小太郎は静かに武器を構えるのみ。

 

「上等だ、付き合ってやるよ……!」

 

 吐き出した言葉は強がり以外の何物でもない。

 不意に風が生まれる。それは瞬く間に嵐となり、小太郎を含む狩猟全域を覆い隠した。先ほどまであれ程に晴れ渡っていた空が暗雲に呑まれ、雷鳴が轟く。狩猟環境の急激な変化──古龍と呼ばれる存在は天候すら操ると耳にした事がある。

 これで逃げる事も出来なくなった。ただ静かに覚悟を決める小太郎。

 

 絶望的な戦闘が始まろうとしていた。

 

 ■

 

 カムラの里に緊急招集が掛かった。本来であれば百竜夜行が襲来した際に掛かるそれが平時に、それも何の予兆もなく。広場に集まって村人達の前に里長であるフゲンが立つ。太刀を片手に階下の面々を眺めた彼は、「既に凡その事態はフクズクにて告知されている事だろう、時間がない、手短に話す」と結んだ。

 

「調査任務に出ていた小太郎のオトモより、【新種のモンスターと遭遇、伝説位と判断、襲撃を受けやむを得ず交戦、敵モンスターの脅威は甚大、逃走不可能】との報告があった」

「! 新種のモンスター」

 

 村人達の間でざわめきが起こった。何やら里の近辺で生態系の異常が発生しているらしいという噂程度は知っていたが、彼ら、彼女らからすれば寝耳に水。あの小太郎が脅威甚大と報告する程の大物、ざわめきは波となって伝搬する。

 

「──ギルドはこの新種のモンスターを仮称として【餓鬼】と命名、この異常事態に対し、我等カムラの里は」

「待って下さい」

 

 フゲンの言葉を遮る形で、群衆の中から声が上がった。視線を向ければミノトが急行して来たのだろう、息を切らせながらフゲンを睨みつける様にして見据えていた。一歩、群衆より踏み出した彼女は問いかける。

 

「小太郎は──どうするのですか」

「……該当狩猟地帯には強力な嵐が吹き荒れ梟が飛べぬ、ギルドの飛行船も然り、現状内部を窺い知る事叶わず──小太郎が生きているかも分からぬ」

 

 フゲンは一言一言を噛み締める様に、目を閉じ告げた。

 

「生死不明、ギルド側はそう判断を下した」

「──―」

 

 その一言にざわめきを含んでいた広場は一気に沈黙に包まれた。生死不明、何と絶望的な字面か。ミノトは僅かに肩を震わせ、何かを口にしようとする。しかし自身を見下ろすフゲンの瞳に気付くと、吐き出そうとしていた言葉を飲み込んだ。

 代わりに両手を強くに握り締め、そして何も言わず踵を返しギルドへと向かう。

 

「何処へ行く、ミノト!」

「決まっています、小太郎を──」

「ならぬッ! 小太郎をして【甚大】と云わしめる脅威、単身で出向くなど……」

「──あらあら、独りではありませんわ、里長」

 

 声は丁度、ミノトが向かおうとしていたギルドの中から。金属同士の擦れる音、それらを引き連れランスと弓を担いだヒノエの姿。「姉様!」とミノトが駆け寄れば、彼女は微笑みを浮かべながら担いだランスを手渡し、二人を見下ろすフゲンを真っ直ぐ見据えた。恐らく、彼女も救援に赴くつもりだったのだろう。背嚢と愛用の弓を担いだ彼女の姿は殺気と闘志に満ちていた。

 

「姉様、やはり」

「当然、救助に向かいます」

 

 普段の温厚な表情、その中に刃物の様な鋭利さを孕んでいる事にフゲンは気付いた。片手に持った太刀を強く握り締め、口を開く。

 

「ヒノエ、よもや」

「私たちは元より二人で一人──伝説位、何するものぞ」

 

 弓の弦を張り、指先で弾く彼女は告げる。自分達の力があらゆる困難を乗り越えられる程に強大であるとは驕っていない、しかし二人ならば、ヒノエとミノトという片割れの存在があるのならば。どれ程の存在であろうと、例え伝説と呼ばれる存在であろうと──打ち勝てると信じている。

 何より風魔小太郎という存在が危険に晒されている状況で何もせず動かないなど、出来る筈もない。

 

「里一丸となって挑む以上、これは百竜夜行と同義、我々が打って出ても構わぬでしょう」

「敵が一匹ならば知れた事、里に近付く前に排除します」

 

 各々の狩猟武具を手に、二人は断固とした口調で告げた。フゲンは口から息を吐き出し暫し目を閉じ沈黙を守る。その動向を村人全員が見守っていた。ややあって、彼は太刀の鍔を親指で弾き一度鳴らす。

 

「……ウツシ」

「此処に」

「備えは」

「警邏と守衛は直ぐにでも、しかし敵の脅威度合いによっては不足かと」

「供廻りを呼び戻せ」

「宜しいので?」

「二度は云わぬ、後詰めと編成を急がせろ」

「──承知」

 

 背後に音もなく現れたウツシと短くやり取りを済ませ、フゲンは閉じていた瞳を開く。その双眸を真正面から見返した二人は静かに問うた。

 

「先遣隊として認めて頂けるので?」

「止めた所で止まるまい、立ちはだかるならば殴り倒してでもという気概が透けて見える」

「生憎、性分ですので」

「ならばもう止めぬ──だが約束せよ」

 

 重々しい音が鳴り響く。フゲンが鞘で石床を打った音であった。瞳から放たれる重圧に、常人であれば竦み上がる程。しかしこの場はカムラの里なれば、常在戦場を地で行く者共にとっては微風に等しい。

 

「逸るな、お前たちの役目は足止めと救援、小太郎を救えたのならば即座に撤退せよ、無理ならば生存を第一とする──本隊到着まで無理な攻勢は控えよ」

「……承知致しました」

「それと、万が一小太郎が殉死していた場合は」

 

 そこまで口にしたフゲンを前に、姉妹は手を突き出して遮る。全く同時に、最初からそうする事が当然の如く。

 

「それはあり得ません、だって──」

 

 最愛の危機、けれど──彼女達は微笑みを浮かべていた。

 

「私たちの小太郎ですもの」

 

 


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