この短編は作者の拙作の設定を流用しています。
ですが、この話だけでも楽しめるようになっているのでご安心ください。

どうやら、テリー・ボガード氏がテレビゲーム総選挙の結果に対して、言いたいことがあるようです。

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「エー、今日はわざわざ集まってもらって感謝するぜ」

 

 

ゲンドウポーズで待っていたのはテリー・ボガード。餓狼伝説の主人公である。誰だポケモントレーナーとか言った奴は。

 

高貴なもののための机はとても縦長で、どう考えても人数的に必要ない大きさだった。椅子だって呼び出した人数しか用意されていない。呼び出した本人は誕生日席に既に座っていた。

 

 

「で、何のようなんだ? 別に暇じゃないんだぜ?」

 

 

机に頬杖をつける音速のハリネズミ、ソニック・ザ・ヘッジホッグ。机の高級さとは似合わず、机の下で足を組んでいる。

 

 

「……?」

 

 

その正面にはパックマンがいた。声を音として伝えられない彼は不機嫌さを隠さない。

 

 

「ソニックも? ぼくもこのあと予定入ってて…」

 

 

青組どうし、ロックマンがソニックに同意する。足が床につかないため、ぶらぶらと揺らしている。

 

 

「アタシたちは特に用事はないけど、無意味に付き合ってられるほど暇でもないのよ」

 

「まあまあ、一回聞いてみようよ」

 

 

赤色のパートナー、カズーイを宥めるのはバンジョー。背中のリュックは机の上だ。

 

 

「サンキュー、バンジョー。…………お前らは見たか? 2021年12月27日午後7時からの番組。」

 

 

その年、その日にち。忘れるはずもないだろう。見逃したはずもないだろう。少なくとも彼らにとっては。

 

 

「そりゃあ……」

 

「確かに……」

 

「見たけれど……」

 

「うん、見た」

 

「コクコク」

 

テリーは彼らの顔をズラーと見渡す。言葉を発さないパックマンも頷いているのを見て、話を続ける。

 

 

「そう、テレビゲーム総選挙だ。当然結果は見ただろう。」

 

「そりゃあ……」

 

「確かに……」

 

「見たけれど……」

 

「うん、見た」

 

「コクコク」

 

 

先程と全く同じことを繰り返す。そんな応答でもテリーは満足なのだ。

 

 

「ここは任天堂オールスターだ。票がバラけるのも無理はない。だから彼らを抜いたとしても…… オレ達、だけなんだ……!!」

 

 

正確には、呼んでも来そうになかったから、はなから呼んでいない三島一八とベヨネッタも含めてだが。

 

 

「他社キャラの中でオレ達だけが!! 人気テレビゲームベスト100に入ってないんだよ!!」

 

 

 

 

 

テリー・ボガードはテレビゲーム総選挙の結果に物申したいようです

 

 

 

 

 

 

「あー、無駄な時間くった」

 

「そうだよねー」

 

「帰ってXBOXやりましょ」

 

「またねー」

 

「フリフリ」

 

「ちょっと待て待て待て待て!」

 

 

立ち上がって踵を返す同志達をテリーが逃すはずもなかった。

 

 

「悔しくないのか!? 一応オレ達あのスマブラにいるんだぜ!? それなのに」

 

「結果は結果よ。見苦しいわよ」

 

「ぐうう……!」

 

 

カズーイのこの上ない正論ストレートがグサッときた。確かにその通りだ。その通りだが…… 納得できるかどうかとはまた別の話である。

 

 

「今のオレ達ならどんな敵にだって負けない! シリーズを背負った奴らをぶっ飛ばせばオレ達が上! ようは餓狼伝説もソニック・ザ・ヘッジホッグもパックマンもロックマンもバンジョーとカズーイの大冒険も勝ったシリーズより人気だってことだあ!!」

 

 

テリーの持論を聞いた彼らの反応は、

 

 

「お子ちゃまじゃない」

 

「というか勝つ=人気という図式がわからないよ」

 

「いい加減夢から覚めた方がいいぜ」

 

 

冷めた反応である。

それを見て、テリーはあからさまにガクッと肩を落とした。

 

 

「おいおい…… そりゃないぜ…… 折角同志を見つけたと思ったのにさ……」

 

 

このままいけば、体操座りで土でも弄りそうな勢いである。しかし、同志扱いされるのは不名誉なのだ。なぜなら少なくとも目の前で落ち込んでるポンコツとは格が違うのだから。

 

 

「というかさ…… 確かにロックマンシリーズはランクインしなかったけど、カプコンっていう枠ならしっかりとランクインしてるんだよ」

 

「なぁっ……!?」

 

 

・CAPCOM

29位 大神

32位 バイオハザード

70位 モンスターハンター:ワールド

86位 モンスターハンター

87位 モンスターハンターダブルクロス

91位 ストリートファイターII

92位 モンスターハンター4G

 

 

そう、ロックマンは一人ではない。

社会現象となったモンスターハンター シリーズを中心として中々の成果を発揮しているのだ。

 

 

「んなこと言ったらオレもそうだぜ、そもそも用事っていうのはアルルを祝いに行くことだからな」

 

 

・SEGA

38位 ぷよぷよ

 

 

正確にはぷよぷよを発売したコンパイルから買った結果であり、当時はSEGAは関わっていないのだが…… それでもぷよぷよシリーズが現在SEGAの元にあることは変わりはない。更に子会社のアトラスも加えればテリーは勝てやしない。

 

 

「だったら二人はどうなんだ!? Microsoftの作品はなかったはずだぞ!!」

 

「確かにMicrosoftの作品はなかったけど」

 

「忘れてないかしら? アタシ達が昔どこにいたのか」

 

「あっ……!!」

 

 

余所者のテリーもようやく思い出した。バンジョーもカズーイも一人ぼっ…… 二人ぼっちではないのだ。

 

 

「折角だし二人に習ってアタシ達も祝いに行こうかしら!!」

 

「この裏切り者おぉぉぉ!!!」

 

 

・ドンキーコング シリーズ

57位 スーパードンキーコング

 

 

裏切ったつもりはない、はじめから信じる道などなかった、と言わんばかりにカズーイは胸を張った。声も張った。そしてテリーの心は砕けた。

 

ヘロヘロと床にorzするテリーを尻目に裏切り者達は退室していく。全ての希望を失ったテリーにポンポンと両肩を叩く者がいた。

 

 

「ああ…… パックマン…… オレの味方はお前だけだぜ…… 一緒に頂点、目指そうぜ……」

 

 

目からナイアガラを流すテリーは感動した。彼に比べてアイツらは。流石こう見ても親なだけある。親の心、子知らずなのだ。真にわかり合えるのは親だけなのだ。

涙が止まらないテリーをパックマンはそっと椅子に座らせた。そして再びポンポンと両肩を叩く。それは同情ではなく、落ち着かせるための動作であった。あれ、そういえば、パックマンの会社は。もとい、パックマンと三島一八の会社は。

 

 

・バンダイナムコ

53位 テイルズオブジアビス

62位 ゼビウス

 

 

俺は悪くなかった。

 

 

「こんの裏切り者おおおぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

役に立たない同志(裏切り者)に早々に見切りをつけ、テリーは行く。全ては人気のために。所詮この世は弱肉強食。勝った方が正義なのだ。

 

 

「さて、まずはどのシリーズを狙うかだな。」

 

 

本当ならば、六人で人気シリーズを叩くつもりであったのだが、思わぬ裏切りにあって単独になってしまった。この選択を間違えれば、死ぬ。負けちゃいましたで済めば大金星なのだ。

 

 

「もちろん、オレだって馬鹿じゃない。任天堂の本拠地で任天堂全員に喧嘩を売っても勝てやしない。だから狙うのは任天堂の一つのシリーズか他社枠だ。」

 

 

まずは手堅く人数もシリーズも少ないものを狙わせてもらおう。当然、それで満足する気はない。足掛かりにさせてもらうのだ。

 

 

「そうだな、まず狙うのは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

足しか動かない村人の視線を無視。家の影に隠れたテリーはターゲットの姿を確認した。

 

 

「(みっけ、相変わらず何考えてるかわかんねー奴だな)」

 

 

原木で囲まれた畑で回収と種植えに働いているのはスティーブだった。表情は変わらないし、喋れない人種。それでいて、パックマンのような手振り仕草もない、カクカクした人間だった。……いや、人間なのか?

 

 

・Mojang Studios

20位 Minecraft

 

 

「(どっちでもいいや。とにかくまずそっぽ向いてから…… 奇襲!!)」

 

 

こんな奴相手なら、飛びかかったところで良心は痛まない。こちらに背中を向け、腰を下げたタイミングを見計らって…… 不意をつく!

 

 

テレビゲームに詳しい画面の前のあなた方ならわかるだろうが、テリー・ボガードは敗北した。

この戦いにテレビゲーム総選挙の結果改変を賭けている以上、ランクインしているゲームのブーストがかかるのだ。普通の大乱闘ならば、勝つことだってできただろうに。

 

 

「な、何故…… 一つしかランクインしてねえなら、オレにだって勝ち目が……」

 

 

ここまで言って、ようやくテリーは気づいた。

 

 

「そうだ…… Minecraftは世界一売れたゲームだ……!!」

 

 

Minecraftは世界で一番の売り上げ本数を記録したゲームなのだ。一本は一本でも大きな一本なのだ。

そして、Minecraftが一本でも勝てる理由は、シリーズとして出す必要がないからだ。

Minecraft Dungeons等の外伝作品こそあるものの、さまざまな機種に登場しているため手が出しやすく、一本がアップデートで進化し続けるためゲーム同様終わりがない。

一本であるということは、言い換えれば同シリーズの別ゲームに票が分配されず、アップデートがあれば続編を作る必要がない、ということでもある。

 

 

「敵の実力を見誤った…… 冷静になんなきゃな……!」

 

 

どうして闘志を燃やしているの。

テリー・ボガード再起。無駄とか言わないであげて、本人は至って大真面目なのだ。

 

 

「作品が少ないところ…… そんでもって所属してるファイターが単独で…… いやMinecraftみたいな化け物ゲームはそうそうないだろうが……」

 

 

思いついた。アイツならば。

オレの方がイカしていると指の関節をバキバキ鳴らして準備オッケー。

 

 

「ぐうう……!」

 

「ヘッ! よく粘った方だぜ……! いい加減負けを認めてその順位をオレに寄越しな!」

 

 

・スプラトゥーン シリーズ

5位 スプラトゥーン2

21位 スプラトゥーン

 

 

テリーの相手はインクリングだ。

年下相手に何やってんだ中年男性と思われるかもしれないが、今は大人しく見守ってやってほしい。どうせバチが当たるんだ。

 

 

「ははは…… もしあたしが倒されてもお前の思い通りにはならないよ、魔王テリー」

 

「ああ?」

 

 

勝手に魔王にされている。こういうノリにはむしろ自分から乗っていくのがインクリングという少女だった。テリーも悪い方ではない。

だが、ゲームどころか、物語という存在そのものに刻み込まれた勧善懲悪という枠組みに収められたことに、テリーは気づくのが遅かったのだ。

 

 

「あたし達を待ってくれる人がいる……! その思いがある限り、あたしが倒されても……えっと……倒れない!!」

 

「何ィ!?」

 

 

少しセリフが思いつかなかったところがあるが無視しよう。

彼女が決死の思いで撃ち放ったホットブラスターはテリーの体を的確に射抜いていた。

 

 

「バカな……! 幾らランクインしているといっても所詮二作品! 埋められない差ではないはずだ!」

 

「二作品じゃない!! この順位は!! 新作を待ってくれる人の思いの強さだアアアァァァ!!!

 

 

スプラトゥーンシリーズは、新作が発表済みのシリーズなのだ。二作品の順位は新作を待っているファンの期待の結果でもあるのだ。ま新しければその分、目について投票されやすくもなる。

Minecraftが圧倒的な個で戦うならば、スプラトゥーンは仲間の協力で戦うのだ。目に見えただけの数で判断したテリーの負けだった。

 

 

「おの……れ…… 勇者……インクリング……め……ガクッ……」

 

「勝った…… 勝ったよ、みんな……」

 

 

ところでコレはなんの戦いだったんだろうか。

 

 

インクリングは故郷に帰っていった。これから国王から名誉を賜り、お姫様と結婚するのだろう……あれ?

 

 

「……なんでテリーそんな全身全霊ボロボロなんだ?」

 

「おお、ブロウか。ちょっとインクリングとバトっててな」

 

 

満身創痍で徘徊するテリーに声をかけたのは格闘タイプのMii、ブロウだった。表現が変だが、そもそもスマッシュブラザーズが変の塊みたいなものだから。こんな変なことしてるテリーとかテリーとかテリーとか。

 

 

「バトって……? なんでそんなことに……」

 

「テレビゲーム総選挙の結果に物申したかった」

 

 

ここで全創作者が手本にすべき不自然のようで自然ではないタイトル回収だ。

テリーがブロウに飛びかからないのは当然、Mii組の該当作品がなかったからだ。

 

 

「トモダチコレクションとかWii Partyとかワンチャンあるかなと思ったんだがな……」

 

「ソレは違うよ、ブロウ!!」

 

「うおっと…… ってソードにガンナか」

 

 

剣術タイプのMii ソード、射撃タイプのMiiガンナも登場。Mii組のトラブルメーカーだ。

 

 

「いや、オレ達仲間だろ? ランクインしてなかったし……」

 

「アーユーオッケー? オレ達のシンボルマークなにか知ってるよな?」

 

「まあ、そりゃあ知って……ハッ、まさか……」

 

 

彼らの言いたいこと、わかってしまった。自分がどう語るべきだったのかも。

 

 

「つまり私達の出身はスマブラシリーズ!」

 

「当然オレ達がランクインしてることになる!!」

 

「「なるかァ!!」」

 

 

・大乱闘スマッシュブラザーズ シリーズ

7位 大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL

61位 ニンテンドウオールスター! 大乱闘スマッシュブラザーズ

74位 大乱闘スマッシュブラザーズ X

 

 

横暴だ。独裁政治だ。アナーキストだ。

しかし、ここでテリー選手思いつく。自分が参戦している最新作だけなら自分の作品だと言えるのではないか。そうだ。これなら誰も悲しまない、傷つく必要もない。誰も死ぬ必要がない優しいランキングだ。実際には乗り気なソードとガンナ二人にぶん殴られることになるのだが、テリーの頭になかった。そう口に出そうとした時、

 

 

「異議あり!!」

 

 

四人まとめて針吹き出しが叩きつけられることになる。白い翼、ピットだった。背後にはうんざりしているブラックピットと微笑ましく見守っているパルテナがいた。

 

 

「スマッシュブラザーズは株式会社Soraのものだ! つまりボク達のランクインだ!!」

 

「シンボルマークを変えてからデナオシするんだな! オレ達のマークがズレた十字架囲ったボールなのがベストの証拠!」

 

「こんなことのために呼ばれたのか……」

 

「鳥頭どもに考える知能があったとはね、クリスマスは終わったぞ、ターキーは欲してないからな!」

 

「ンだと、ガンナテメェ!」

 

「あらあら、ではブロウとボコメキョにすればいいのかしら?」

 

「俺! 巻き添え!!」

 

 

勝手に始まった大乱闘。いや、どっちの言い分もわかるが。ピット、ソードの火種をガンナが大きくしたこの大戦に入るほどの度胸はテリーは持ってなかった。

 

 

「くそっ! 出遅れた!!」

 

「デデデに…… カービィ組か!?」

 

 

デデデ、メタナイト、カービィの三人組。

そうだ。シンボルマークが同じなら出身ゲームになるという論がまかり通るなら、テリーは星のカービィ組の同志となる。

 

 

・星のカービィ シリーズ

45位 星のカービィ Wii

72位 星のカービィ スーパーデラックス

76位 カービィのエアライド

 

 

もはや、ソード達と同じレベルまで落ちているが、テリーは気づかない。彼らのおこぼれをいただくのに必死だ。どうしてここにいるのかなんて考えつかなかった。

 

 

「スマブラの(実質)主人公がカービィならば、スマブラシリーズは私達のものだ!」

 

「もにょだ!」

 

「えええええええ!?」

 

 

彼らも同じこと考えていた。三人組を三組相手にして、ソロのテリーが敵うはずがない。

スマブラシリーズを諦めるしかなかった。三人を見送って、掟破りの九人乱闘を尻目に後を去った。そこ、アイクラを含めたらいけるなんて言わない。

 

 

「はあ……」

 

「どうした、テリー」

 

 

完全にくたびれたテリーにすれ違いのベレトが声をかける。

 

 

「いや…… 票が欲しかったなって」

 

「票…… テレビゲーム総選挙か」

 

 

会話が穏やかであるが、それもそのはず。テリーはファイアーエムブレムシリーズを狙うつもりは初めからなかった。

 

 

・ファイアーエムブレム シリーズ

23位 ファイアーエムブレム 風花雪月

94位 ファイアーエムブレム 聖戦の系譜

 

 

ファイアーエムブレムシリーズからは最新作と比較的最近スーパーファミコンオンラインに登場した過去作品がランクイン。

基本的な任天堂作品では手が届かない中年層をターゲットにできるシビアな世界観。

確かに二作品しかランクインしていないが、ファイター数はトップクラスだ。単独のテリーでは敵わない。その上、ソシャゲであるファイアーエムブレム ヒーローズの課金率は任天堂アプリの中でもトップクラスだ。過去から学べるテリーはそうやってターゲットを除外していた。

 

 

「ところで聞きたいことがあったんだが」

 

「どうした?」

 

「ポケットモンスター、あるだろう?」

 

 

ポケットモンスター。縮めてポケモン。この世界の不思議な不思議な生き物。

 

 

・ポケットモンスター シリーズ

11位 ポケットモンスター ダイヤモンド・パール

14位 ポケットモンスター ソード・シールド

24位 ポケットモンスター 赤・緑

26位 ポケットモンスター ブラック・ホワイト

36位 ポケットモンスター 金・銀

50位 ポケットモンスター ルビー・サファイア

60位 ポケットモンスター ブラック2・ホワイト2

64位 ポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー

68位 ポケットモンスター X・Y

99位 ポケットモンスター プラチナ

 

 

モンスターハンター シリーズが携帯機に登場するまではポケットモンスターこそが携帯機を牛耳っていたのだ。それこそ一強レベルに。

もちろん、テリーのターゲットにポケットモンスター シリーズは含まれていない。ゲームの数もファイター数も圧倒的なのに勝てるわけないだろ!!

 

 

「あるけど…… なんだ?」

 

「あれの…… げえむぼういだったか? あれいつぐらいのハードなんだ? 3DSの前ぐらいか?」

 

「ぐはぁ!?」

 

 

こんなところでこんなダメージを喰らうとは思わなかった。3DSの前の前の前だ。

テリー出身の餓狼伝説は大体スーファミ辺りの登場。つまりゲームボーイと大体同期である。これが携帯機を知らないSwitch世代の認識だ。

 

 

 

 

「そんなことを…… 落ち着けテリー」

 

「なんだよ、異常者扱いすんなよな!!」

 

 

冷めた目だ。完全に大人として舐められている。そもそもロックマン(子供)に同じような反応をされていたし。

 

 

「何をしたって餓狼伝説がランクインしなかった結果は変わらない。」

 

「ううう……! そんなことわかってんだよ……」

 

 

ベレトのなんの敵意もない正論は余計にグサグサくる。哀れもしなければ、慰めるような感情も込めてないからだ。

 

 

「だが、冷静に考えれば君は大乱闘を挑んでいるだけだからな。結果は変わらないが、勝利することで気が収まるのならば……」

 

「おおお…… ほんとサンキュー……!」

 

 

ベレトの片手を両手で挟んで感激。まともに取り合ってくれたのは今までいなかったからだ。

 

 

「君の狙い目はランクインしたシリーズ数が少なめで、ファイター数も少なめか……」

 

「どこか心当たりないか?」

 

「君が会っていない相手ならば……」

 

 

それで選ばれたのはMOTHERでした。

 

 

「は?」

 

「あれ? テリー、どうしたの?」

 

 

涙が止まらないリュカを慰めているネス。彼が顔面を青褪めているテリーを見つけて声をかけた。

 

 

「ごめん、ね……! 僕だけ、3だけが……」

 

「そんなこと気にしてないって! 他のゲームが人気だっただけだから!」

 

 

・MOTHER シリーズ

28位 MOTHER 2

95位 MOTHER

 

 

リュカ少年は自身が主人公のMOTHER 3がランクインしなかったことを悔やんでいるのだ。

しかし、ネスはそんなこと気にしていない。というか、MOTHER 3の序盤の展開は明らかに鬱ゲーのそれだ。だから票が入らなかったのではないだろうか

 

 

「おまっ!? ベレト、ふざけんな!! こんないたいけな子達と下らない理由で戦えっていうのか!?!?」

 

「下らない自覚はあったのか」

 

「うるせえ!!」

 

 

肩を掴んでぶんぶん揺らすが、ベレトの表情は変わらないままだ。

 

 

「君が出した条件通りに選出したんだが。」

 

「オレの良心が痛む!!」

 

 

元来子供好きのテリーがあの二人相手に本気で戦える訳がない。いつもの大乱闘でもなかなか本気になれず、手加減されるのが嫌いなピチューが喚いていた。それがわかる程度の正気は残っていたようだ。

 

 

「くそっ!! 次だ次! こうなったらやけだ! どこでもいいから勝ってやる!!」

 

 

ドカドカとテリーはどこかへ歩いていく。取り残されたのはMOTHER主人公の二人と先生。

 

 

「あっ! MOTHER組!」

 

「そういう君たちはぶつ森組!」

 

 

合流した、子供組。テリーが去った後でよかったのかもしれない。

 

 

「えへへ、私たちも人気者ですよ! 最高4位ですっ!」

 

「すごいな、しずえさんは。自分は23位だった」

 

 

・どうぶつの森 シリーズ

4位 あつまれ どうぶつの森

22位 とびだせ どうぶつの森

58位 どうぶつの森

75位 おいでよ どうぶつの森

 

 

発売日近辺にとどまらない。

発売から一年経ってもなお、売れ続けるシリーズ。年代を問わずに売れるジャンルであることも幸いだ。なんせ、現実と同じ時間が流れているのだから。

 

 

「じゃあ、僕たちが先輩だね!」

 

「わかった。先輩、テリーが人気を欲しいみたいだ。人気シリーズになるためにはどうしたらいい?」

 

 

ベレトは真面目だった。こんな大人の願いでも叶えてやりたいと思えるのだ。年上の生徒相手でも、臆することなく教鞭を取るからこそ、テリーの力になってやりたいと思えるのだ。彼自身が年齢を気にしていない以前に、テリーに聞く気があるのかというのは別として。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤムチャしやがった屍を見下ろす…… いや死んではないが。黒焦げの体躯は地面にひれ伏す。まるでコレが結果だと言わんばかりに。

 

 

「えっとさ、やりたいことはわかったよ?」

 

 

目線を正面から逸らして、言いづらそうに次の言葉を放った。

 

 

「それでこっちに喧嘩売るのはバカなんじゃないのか……?」

 

 

青年、リンクは夢を見過ぎるとこんなしょうもない大人になることを実感した。

 

 

・ゼルダの伝説 シリーズ

1位 ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

17位 ゼルダの伝説 時のオカリナ

52位 ゼルダの伝説

80位 ゼルダの伝説 ムジュラの仮面

88位 ゼルダの伝説 スカイウォードソード

 

 

奴は1位だ。語るまでもなく1位だ。よしんば私が2位だとしたら? 世界……1位です……

一時期オープンワールドを流行らせたほどの王者に3Dゲームに革命をもたらしたZ注目を中心に文字通りの伝説となったゼルダの伝説。

リンク一人でも圧倒できるレベルの差がついていたのだ。

 

 

「くそっ! 任天堂の本拠地で任天堂シリーズに喧嘩売るんじゃなかった!! 狙うは他社だ! どこだ、どこにいる!!」

 

「あ…… うん、ガンバレ……?」

 

 

的外れな声援を送るしかできないリンクはどうしていいのかわからない。ふと視線を感じたような気がして、森の方を振り返る。

 

 

「ん? どうした?」

 

「いや……なんでもない……と思うけど……」

 

 

首を傾ける。が、現実は変わらない。

存在するが、気づかなかったという意味で。

 

 

「(危ない…… ソニックが教えてくれなかったら変に喧嘩を売られるところだった……!)」

 

「(今日ほど自分たちのゲームがスニーキングでよかったことはない……)」

 

 

・アトラス

42位 ペルソナ5

93位 ペルソナ5 ザ・ロイヤル

98位 ペルソナ4

100位 ペルソナ3

 

・KONAMI

18位 メタルギア ソリッド3 スネークイーター

19位 幻想水滸伝II

65位 幻想水滸伝

79位 メタルギア ソリッド

 

 

二人とも、自身のゲームシステムを活かして茂みに隠れていた。ジョーカーは親会社にいるソニックから、スネークはジョーカーからテリーのことを聞いて隠れていた。どうやらギリギリだったらしい。

ペルソナ5に至っては、何故かオリジナルと完全版が両方ランクインするとかいう異常事態だ。他の誰にも成していない。嫉妬される理由は十分だった。

 

 

「そこにいるな、ジョーカー、スネーク!!」

 

「うわあああ!?」

 

「くそ、ダンボールに隠れてたのに何故バレた!?」

 

「突き進むオレにそんなハッタリが通じると思うな!!」

 

「わー!? 逃げてー!!」

 

 

ちなみにバレた理由はペルソナ5特有のオシャレで派手なBGMとUI(ユーザーインターフェース)のせいだ。他ゲームのBGMと間違えたりしない。

リンクがテリーを羽交い締めにし、その隙に二人が逃げ出した。

 

 

「お前、リンク、誰の味方なんだ!!」

 

「誰の味方も何もテリーの味方した覚えねえよ!?」

 

 

いつもボケのリンクをツッコミに引き摺り込む程度の能力持ちのテリー。暴れる暴れる。だが、満身創痍のテリーがリンクを振り切れるはずもなく、二人の背中を見送った後に拘束を離されて自由になった。

 

 

「……………………」

 

「なんか……ごめん……」

 

 

すらすらと謝罪の言葉が出てきた。本心であるかは別として。

ばきばきに折れたハートをどうにかしないと。きっと永遠に立ち直れない。

 

 

「えっと…… 俺も手伝うからさ、気が済むまで頑張ってみようよ」

 

「オッケー!! オレはまだまだ挫けない!! 次だ次! 次の他社は誰だぁ!!」

 

「騙された!?」

 

 

演技だった。

全ては1位を味方につけるために。いつの間に絡み手を使用するようになったのか。

 

 

「あれ、でも残る他社枠って……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・スクウェア・エニックス その他

8位 クロノ・トリガー

31位 タクティクスオウガ

40位 ゼノギアス

48位 ニーア オートマタ

82位 聖剣伝説 LEGEND OF MANA

 

 

「あれ? テリー、リンク、どうしたの?」

 

 

・キングダム ハーツ シリーズ

16位 キングダム ハーツ II

49位 キングダム ハーツ

 

 

先鋒、ソラ。

ディズニーとのコラボで外部への宣伝力はナンバーワン。

 

 

「絶望を……感じたぞ……」

 

「こいつは気にするな」

 

 

・Final Fantasy シリーズ

3位 Final Fantasy VII

9位 Final Fantasy X

33位 Final Fantasy VI

34位 Final Fantasy V

37位 Final Fantasy IX

47位 Final Fantasy XIV

51位 Final Fantasy IV

63位 Final Fantasy III

84位 Final Fantasy XI

90位 Final Fantasy VIII

 

 

中堅、クラウド、セフィロス。

大RPG時代を築いた最終幻想。

 

 

「みんなでお祝いしようってところだったんだ。よかったら一緒にどうかな?」

 

 

・ドラゴンクエスト シリーズ

2位 ドラゴンクエストV 天空の花嫁

6位 ドラゴンクエストIII そして伝説へ

15位 ドラゴンクエストIV 導かれし者たち

27位 ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて

44位 ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン

46位 ドラゴンクエストII 悪霊の神々

54位 ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君

81位 ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島

83位 ドラゴンクエストVII エデンの戦士達

85位 ドラゴンクエストVI 幻の大地

 

 

大将、イレブン。

日本のRPGとイコールで結ばれる伝説。

 

 

「………………は?」

 

 

敵うはずがない。

外伝やオンラインゲームまでランクインさせる化け物ども相手にリンクという味方がいたところで何になると言うのか。

 

 

「待たせたわね」

 

「遅れてしまってごめんなさい!」

 

 

場違いな声。でもまるきり場違いでもない。

 

 

「でも、いいのかな? 僕たちも一緒に祝って貰って。」

 

「ゼノシリーズなんだから気にすることないって!」

 

 

・ゼノブレイド シリーズ

35位 ゼノブレイド 2

43位 ゼノブレイド

 

 

援軍までしっかりしている。

遂にテリーの心は砕け散ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テリーが去った後、スクエニ+ゼノブレイド組はその話で持ちきりだった。ちゃっかりリンクも招かれている。

 

 

「結局なんだったのよ、あいつは」

 

「良い絶望の味がしたな」

 

「セフィロス、ハウス」

 

「うわー、関係性までそっくり」

 

 

悪役が混じっているとは思えない和やかな雰囲気に話が上手くオチた。

 

 

「しかし、墓の立て合いしてた仲とは思えねえよな」

 

「墓の立て合い?」

 

「昔の話だよ…… 気にしないで、シュルク」

 

 

昔だからできることだ。シュルクとて新しい方の人間ではないが、それ以上に話が古い。

 

 

「しっかし、テリーも流石にマリオシリーズに下剋上は狙わなかったんだな」

 

「俺としてはマリオ64がランクインしなかったことに驚いたな」

 

 

・スーパーマリオ シリーズ

10位 スーパーマリオブラザーズ3

12位 スーパーマリオカート

56位 スーパーマリオギャラクシー

69位 スーパーマリオRPG

71位 ドクターマリオ

77位 マリオカート Wii

89位 スーパーマリオギャラクシー2

97位 スーパーマリオワールド

 

 

任天堂の顔たるマリオシリーズもそこそこの順位を手に入れているが、この化け物達と比べると流石に見劣りしてしまう。

シリーズが多いからこそ、票が分かれることにも繋がるのだから。

 

 

「俺はサンシャインがないことに驚いた!」

 

「オデッセイ!」

 

「うーん… マリオカートDSですかね」

 

「スーパーペーパーマリオ」

 

「ルイージマンションはー?」

 

「どう……かしら」

 

「えー…」

 

 



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