前作より前、前前作より後。
要するにキーラとダーズをぶっ飛ばした後です。
DLC組を全員出すという裏目標達成。
要するにSPのDLC組の出会い話です。
「よいしょ……と。」
白い封筒、赤いシーリングスタンプをつけた手紙を手に、久々にリュカは大乱闘の世界に降り立った。
ここはいつか、ワリオと対峙した遺跡の前だ。思うところがない訳ではないが、過去の話。自ら掘り返そうとは思わないし、そもそも場所に罪はない。
「みんなはもう来てるかな……?」
「リュカ」
「ひゃっ」
突然声をかけられて、見上げた先には自分よりも薄い色の金髪の青年がいた。なぜだろう、はじめてみたいなのにどこか既視感がある。
「えっと……クラウド……さん……?」
「ああ、そのクラウドさんだ」
「髪が……」
リュカの知るクラウドの髪は、もっといろんな角度でとんがっていたはずだった。しかし、今見るクラウドは主に後ろへと逆立たせている。
「あれから、時間がたったからな。リュカは……あまり変わらないようだが」
「一ヶ月ぐらいじゃ、そんなに変わらない、です……」
「一ヶ月……?」
クラウドは首を傾げる。自分の感覚では2年もかかっていたはずなのだが。
スマッシュブラザーズが光の化身キーラ、そして混沌と闇の化身ダーズを討伐してから、ある者は数日、ある者は数年が経った。
闘争に際し、多くのダメージを受けたこの世界の復興のため、大乱闘のしばしの中止を余儀なくされたのだ。
そして、その復興が終わったのか、再び召集されたのだ。
「ああ……時の流れがなんとか……と誰かが言っていたな。俺の世界とリュカの世界ではかなり時間の流れが違うらしい」
「なるほど、です」
少しだけ、リュカはクラウドがとっつきやすくなったと感じた。無口で少し不器用だけど、見守ってくれるお兄さんのような。
「ネスと……むらびととか、見ません、でしたか? 久しぶりに会えるから……」
「すまない、俺もここに着いたばかりなんだ。一緒に探そう」
「え、でも、ご迷惑じゃ」
「そんなことはない。特に急ぐ用もないしな」
「じゃ、じゃあ……」
控えめに返事をしたリュカは見た。自らの背後に何かを見たクラウドが、途端に警戒と戦意を込めた表情になったことを。
「クラウドさん……?」
振り返ってみても何もおかしなものはない。あるとすれば黒色の羽根だけ。カラスでも飛んでいたのだろうか。
「あの……」
「下がれ!」
それに応える前にリュカを押し退けたクラウドの大剣がリュカを守る。大剣が防いでいたのは見たこともないほど長い刀。カムイの使う夜刀神・終夜よりもずっと長い刃。それを振るうは長い銀髪の男。
「あんったがっ……! 何故ここにいる……!」
「つれないな。おまえに会いに来たに決まっている」
正宗を弾くとセフィロスを追うため、リュカを地上に残し空中へ飛び出した。少年の耳には次元の違う、刃がぶつかり合う音しか聞こえない。
「いい加減にしろっ!!」
横の一振りを潜り抜け、フレアの魔法を掻い潜り、足裏で蹴り飛ばす。空中で勢いを殺し静止した相手に渾身の一振り。それは大きな衝撃波となって辺りを揺らす。
「うわああ……!」
腕を顔の前へ動かして、踏ん張って吹き飛ばされないようにするので精一杯だ。
その声に、今はじめて気づいたと言わんばかりに、つばぜり合いを続けるセフィロスがチラリとリュカの方を見た。
「気になるか?」
「何!?」
その言葉にクラウドがうすら寒いものを感じた時には、黒い羽だけを残してセフィロスは消えていた。ハッと気づき、リュカの元に急いで向かう。
「あっ……!」
リュカの眼前に迫る刀の先。間に合わない。
「たああっ!!」
しかし、その刃は第三者の足によって退けられた。
「おいおい、子供相手に不意打ちたぁ……よくねえな、そんなに相手を増やしたきゃオレが参加してやるぜ!」
伝説の狼、テリー・ボガード。大乱闘の大地に立つ。
「え、え?」
「怪我!ないか!?」
「え、えっと……あっ、はい……」
見慣れぬ赤い帽子の男の連れらしき、金髪の青年。親子、だろうか?
見知らぬ人に襲われて、見知らぬ人に救われて、見知らぬ人に助け起こされた。
その三連コンボに持ち前の人見知りが発動して、あなたは誰ですかとか、聞くべきことも聞くことができない。
「(もしかしてこの人達、前の僕やクラウドさんと同じ……)」
実際には、側についてくれている青年だけは違ったのだが。その答えは当たっていた。
「案内、感謝する」
「気にしなくていいって、僕もはじめて来た時は驚いたから」
「僕の場合は過去に参加してたから、そこまで驚きはなかったけど、やっぱり急に異世界とか言われても戸惑っちゃうよね」
黒い外套に身を包み、ゆらりと力を抜きながらもすぐに剣を抜ける姿勢は、カムイやロイにはない隙を見せない様子がある。アイクのそれを彷彿とさせる彼は事実、傭兵であったとのこと。
「教師……なんだよね。どんなことを教えているの?」
「うむ……様々だな。剣術や槍術といった武具の扱いに戦時の指揮……」
「僕がオスティアへ留学していた時とあまり変わらないな。似ている世界かもしれない」
「確かに貴族や王族も生徒にいる」
だからなのか、その貴族や王族に属する2人に対して、臆する様子も遜る様子もない。身分社会とは無縁に育ってきたからかアイクと同じようにいい意味で身分に無頓着だった。
ベレト。傭兵上がりの教師という異色の経歴。彼が参戦することで大乱闘にどんな変化が生まれるか、柄にもなく楽しみだ。
「あ、」
「シュルク!」
背中に背負った不思議な形状の赤い剣。一見骨組みしかないようにも見えるが、大きな力を秘めた剣。その持ち主は、彼だ。見慣れた服とは若干違う、差し色の少ないシンプルな装いになっている。
「ロイにカムイ!久しぶりだね、それと……」
「ベレトだ。ファイターとしてこの世界に呼ばれた」
「へえ、よろしくね。それと、こっちも紹介しておこうか」
シュルクが脇に逸れると、後ろにいた2人の少女と1人の少年と目が合った。穏やかな印象を与える赤いショートカットの少女と、挑戦的な笑みを隠さない長い金髪の少女。顔はそっくりなのにまったく別の印象を受けた。そして不満げな複雑そうな顔を見せている少年。
「へえ~……あなたたちもファイターなのね、どれほどかと思ったけどそれほどでもなさそうね」
「ヒ、ヒカリちゃん!」
「ヒカリと、ホムラ。それにレックス。ちょっと縁があって一緒に戦うことがあったんだ」
「そっか、これからよろしく!」
不遜ともとれるヒカリの言葉にも、気にすることもなく挨拶をかわす。ぎこちなくレックスは答えた。
「う、うん。これからホムラとヒカリをヨロシクオネガイシマス……」
「どうかしたのかい?」
「あいや……レックスの方はファイターじゃなくて……」
こっそりとロイに耳打ちをするシュルク。以前のクロムみたいなものかと納得してしまった。
オレが参戦するんじゃないの、と嘆きの呟きが聞こえてきた。
「ねえ、何してるの~?」
だが、掘り続ける。
「捜し物?」
しかし、掘り続ける。
「ちょっと道迷っちゃって」
「諦めなさいよ、聞いてないわよコイツ」
カズーイは諦めた。呆れた。しかし、話し続けた甲斐はあったか四角い体をこちらに向けてとあるものをどこかからか取り出した。それは無地白の便せんに赤いシーリングスタンプで封をした、2匹にとっても見覚えのあるものだった。
「それって大乱闘の招待状?」
「はあ!?ってことはコイツもスマッシュブラザーズなの!?頭おかしいんじゃないの!?」
流石に酷い言い草だが、気にする者はこの場にいなかった。
「はあ……百歩譲ってコイツもファイターなのはいいとして、どうすんのよ。コイツも新参だったら道なんて知らないわよ」
「う~ん……それじゃあさ、しばらく一緒にいていい?」
コクンとうなずいた。肯定の意味だろう。
──そして数刻後。立派な家が完成した。
「いやなんでよ!!」
丸石は土台に。穏やかで目に痛くない程度の明るさの原木と木材をつかった家は、素朴ながらも温かみのある仕上がりになっている。
「中入らないの?カズーイ」
「訳わかんないわ……ファイターってこんな奴ばっかなの?」
✳︎スマッシュブラザーズは厳正かつ公平な独断で選考されています。byマスターハンド
招かれたバンジョーとカズーイは簡単に形を取り繕ったイスに腰掛ける。必要最低限だけがそろった、シンプルな部屋だ。出来たてホヤホヤなら当然だろう。
謎のファイターは、机を挟んでバンジョーの向かい側のイスに腰掛けた。
「おー!ベットもテーブルもイスもある~」
「もう突っ込まないわよ……で、あんた、名前は?」
沈黙。
「喋れないのね……」
がっくり。もう道を聞くどころじゃない。お暇して他の者に改めて聞くべきだ。
「ウホッ!見たことない家!」
『失礼する。新たなファイターがまだ来ていないから迎えよと言われたのだが……』
扉から入るドンキーコングとミュウツー。いつまで経っても来ないので、偶然近くにいた2人に迎えに行くように言われたようなのだが。家にお邪魔して目についた四角人間、スティーブを見て、しばらく無言になった後。
『…………命の形はそれぞれなのだな』
「無理矢理納得してんじゃないわよ」
余談だが、その時点で彼ら以外のスマッシュブラザーズは既に合流していた。家なんて建ててるからである。
ミェンミェンはイライラしていた。
大乱闘に招かれたはいい。拳や脚を使い戦い合う大会は既知であり、慣れたものである。
まあ、己の知るものより癖の強いものであるが、その闘志は何も変わらない。別に大会やその主催者に特別不満があるわけではないのだ。
あるとすれば、目の前の男をなぜ招待したのかである。
「ちょっと~!まだ試合は始まってもないネ!なんで殴りかかってくるヨ!」
「ルール?試合?関係ない。戦いの世界だろう?ここは」
後ろ髪を逆立てて、火山の火口をバックに見下している男。筋骨隆々で鍛えられた肉体は確かに強者。しかしそれ以上に選ばれた支配者のような、殺意で上から押しつぶしてくるような圧倒的な威圧感を感じる。
「俺様がルールだ。ファイターとやらの実力を見せてみろ」
「なんて俺様野郎ネ……」
ドン引くほどの天動説男。間違いなく彼にとって地球は自分だ。スマッシュブラザーズはこんな奴ばかりなのかと近い未来を不安視する。
とはいえ、戦いたくありませんと言ったところで、問答無用に殴ってくるだろうことはわかる。ここは一戦交えるしかない。
「んもう!試合じゃない戦いを強引になんて、気が進まないネ!!」
「当然だ。俺達は格闘家である以前にファイターなのだから」
ミェンミェンの背後からきた男。白い格闘着に赤の鉢巻き。その男を確認した瞬間、目の前の男が心底面白そうにニヤリと笑った。
「お前もいるとはな……!なるほど、少しは期待してもいいらしい」
「マスターハンドも悪趣味だ。ここで会うとは思わなかったぞ、三島一八」
それ以上、会話は要らなかった。
拳と拳が、闘志と闘志がぶつかり合う。
「このレベルが大乱闘……!」
しかしミェンミェンもまた戦士だった。
いずれ戦う相手に、口角が上がるのが止められない。ドラゴンのアームを構え、まずはその俺様面を剥がしてやると、タイマンに嬉々として飛び込んでいった。
悩む悩む。難しい顔をしながら、手に持ったその招待状を睨み続けていた。
「ここが大乱闘の世界なのか……」
「変なところは今のところない……か……って蓮!?その格好……!」
「そういうモルガナも……」
自身と、付き添いの仲間がいつもの姿でないことに驚く。
とはいえ、見覚えのない格好というわけでもない。その姿はイセカイにいた時の怪盗服なのだ。
「やっぱりこの招待状も送り主も怪しいな……わかってたことだが」
「俺達の正体を知っているだけじゃない。認知の世界を使って俺を呼び出した……?」
普通の高校生、雨宮蓮。裏の顔は世間を騒がせた心の怪盗団リーダー、ジョーカー。
仲間しか知り得ないその2つをつなげて送られた招待状。そこには大乱闘なる大会を開催している異世界へ、ジョーカーを招待する旨が書かれていた。
怪しさたっぷりの招待状。仲間内で相談しつつも、彼の住む地元に気軽に行けるわけもなく。とりあえずジョーカーとモナの2人だけで招かれてみることになったのだ。
「やあ」
「……!俺か?」
1人の参加者で大乱闘はできない。もちろん自分以外にも参加者はいる。声をかけてきたのもその参加者だろう。中世の旅人を彷彿とさせる軽装にどこか気品も感じさせるサラッとした、肩に届かないほどの髪。
「うん、君もファイターなんだよね?」
「……ああ」
本当にそうなっていいのかはまだわからない。しかし、ここは話を合わせておこうと思い、肯定を伝える。相手はそうか、これからよろしくね、と笑った。その顔に悪意は感じられない。
「僕はイレブン。勇者って呼ばれてるけど……あんまり気にしないでほしいな」
「勇者ねえ……いかにもRPGって感じでフタバが興奮しそうだな……」
「……猫?」
「この姿は猫じゃねえよ!」
フシャーと毛を逆立てる幻が見える。
「俺はあま……ジョーカー。こっちはモナ」
「よろしく、ジョーカー、モナ」
本名を言いそうになって、今の自分の格好を思い出し、コードネームを語った。
そのせいで通常時すらジョーカーと呼ばれることになるのだが、それは後の話である。
「あのさ、この世界のどこに行けばいいとか、聞いてるかい?」
「いや……知らないが……」
「他ノ奴等ガ集マッテル場所アルゾ」
「そうなんだ、じゃあそこに……」
「待て、さっきの誰の声だ?」
ゆっくりそっちを向く。赤い球体を切り取って、牙を生やしたそれは茎が伸び、その先には双葉と植木鉢。
「ヨウ、新参」
「花が喋ってるぅ~!!?」
「黙レ喋ル猫!!」
代わりにと言わんばかりにモナが2人の代わりに驚く。ただパックンフラワーもお前には言われたくないだろうよ。
「自分ハ先輩ダ、敬エ後輩」
「無理だよこんな植物!!」
「オマエニ言ッテナイ!」
「えっと……どこに行けばいいのか知ってるんだよね?」
「ふぁいたートナルノハハジメテダガ、コノ世界ハハジメテデハナイ」
どおりで、と納得する。
「じゃあ案内してくれないかな?よろしくね、えっと……」
「ぱっくんト呼ベ」
「よろしくね、パックン」
疑うことも知らず、とことこと先に行くパックンフラワーの後ろをイレブンは着いていく。
「……どう思う、モナ」
「う~ん……ワガハイ達が気にしすぎだったか?だが、少なくとも秘密がどこから漏れたかは特定しておかないとな。とりあえず流れに任せてみようぜ」
「ああ」
先に言っておくと、ただの杞憂でしかなかった。
これから再び始まる、大乱闘の舞台の幕開けだったのだ。
「さて、と」
「ま~た始まりやがったな……」
初期から来ていたフォックスはもう慣れたものだ。どこに行けばいいのかも完璧に知っている。
隣を歩くファルコはいやいやである。マスターハンドに不信感を持つファルコは完全に気が乗らない状態だ。
「ほんと嫌いだな、マスターハンドが……」
「まあな、スマッシュブラザーズには罪はねえが」
「あはは……」
もう気にしない。直る気がしないし。
2人横に並んで海の近くを進む2人。パイロットとして鍛えられた視力は遠く先にある異質な何かを捉えていた。
「ファルコあれは……」
「何じゃありゃあ?」
早足に確認しようとした脚はダッシュに変わる。それが人であることに気づいたからだ。
「おい、大丈夫か!?」
うつ伏せに倒れる茶髪。駆け寄りひっくり返して見た瞳は閉じられていた。年若い少年。人間の歳は2人には判断しづらいが、ロイと同じくらいの年齢に見える。肩を後ろから支え、揺らし呼び続けるとようやく目を開いた。
「…………うっ………………ここは………………?」
「よかった、怪我は……ないようだな」
頭のてっぺんから赤の差し色に黒の服。つま先まで人通り見たが、目立った傷はなさそうだ。状況が読めてないのか、青い目をぱちくりしている。
「寝てたって訳じゃなさそうだな」
「えっ?」
「ここで倒れてたんだぞ」
「倒れてた?ここで?」
「……本当に大丈夫か?」
混乱している様子で問いかけにしっかり答えられていない様子に本気で心配するフォックス。古参の彼も理由もわからず倒れている人を見つけるのははじめてだった。
「あ、うん。多分大丈夫。ここは……ディスティニーアイランドじゃ……ないよな?」
「ここは大乱闘の世界だ。お前は、招待されたんじゃねえのか?」
「招待?いや、されてないけど……」
「友達に誘われたとかは……」
「ううん、違う」
状況を飲み込むように少し間を開けて、それから落ち着いたように話した。
「オレさ、カイリ……友達を助けるために帰れなくなるかもって言われても頑張って……送り届けたまでは覚えてるんだけど……気づいたらここだったんだ」
「ハア……どうするフォックス」
「……マスターハンドに聞いてみるか。とりあえず何か知ってそうな人のところに案内するよ。オレはフォックス。こっちはファルコだ」
フン、と言わんばかりに腕を組んでそっぽを向く。失礼だが、目の前の少年に気にした様子はない。
「オレはソラ!よろしく!」
ソラは、いったい何者なのだろう。
なぜこの大乱闘の世界に迷い込んだのだろう。
あの支配者は。
マスターハンドは何か、知っているだろうか。