人間がウマ娘に勝てるわけ……あれ?   作:賢さG

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前話投稿したらすごい勢いで閲覧いただいたみたいでありがたや……!
1/3で休みが終わるのでバクシンで次を書いてとりあえずぶん投げることとします(賢さG)(パワーC)


ゴールドシップ、沈没する

 早朝のグラウンド。乱立する木の影に、巧妙に――本人視点では、だが――隠れる、長身芦毛のウマ娘がひとり。

 

「大丈夫、大丈夫だ落ち着けアタシ。なんも変わったことをする必要はねえ……そうだろ? パッと出てって挨拶するか、イチ、ニ、サンのステップで『わーい、わーい、とりゃー!』すりゃいいだけじゃねーか。百頭バのゴルベロスを冥界から引き摺り出すより楽勝だ……ゴルゴルアスのウマ小屋程度だ。よし、よし今だ行くぞ……いや待てもう少し様子を……」

 

 明らかに掛かり気味のウマ娘。その視線の先には――

 

◆ ◆ ◆

 

 ターフの名優メジロマックイーンと身長253cmの巨大トレーナーとの出会いから、明けて翌朝。トレーナーは、メジロマックイーンを伴って、とある用事のために学園の一室を目指し、グラウンドを歩いていた。時刻は始業よりも幾分か早い、午前六時三十分。

 この時間であれば、朝練を行うウマ娘は居れど数はそう多くない。メジロマックイーンとそのトレーナーは、その『少ない』コンビであった。おそらく、変に注目を浴びるだろう――と危惧した、メジロマックイーンの英断によるものである。

 その方策は、一応の成功を見た。現に、やたらと目立つこのトレーナーに突撃を行うウマ娘は、ここにはいない。――花壇の陰に隠れている、特徴的な被り物の芦毛を除けば、だが。

 

「それで、ですけれども。お話の前にひとつ、トレーナーさんに伺いたいことがございますの」

「私に答えられることであれば何でも、メジロマックイーン」

ただ歩いているだけで、ターフとダートに深い足跡を残すのはどうにかなりませんの?

すまない。残念ながら不可能だ

「即答ですわ!?」

 

 まさかの『あきらめる』宣言。メジロマックイーンは溜息を吐いて、後ろを振り返る―― グラウンド中央から今いるこの場所まで点々と続く、10cmほどの陥没痕。トレセン学園に備えられたレース場は全国有数の質を有するものの、ウマ娘が全力で踏み込んだ際に耐えられるほどの強度を有している訳ではない。

 即ち、トレーナーの一歩に耐えられる道理もない。

 

「まったく。側から見れば怪奇現象ですわよ?」

「そのようだ。昨日も、突然地響きが頻発するようになった――と、白衣を着たウマ娘が辺りを駆け回っていた」

「あなたねえ……気をつけた方がよろしいですわよ?」

 

 そのウマ娘の名はアグネスタキオン。ターフに残された足跡を追い、トレーナーを発見し、興味と興奮――そして三徹の疲労の煽りを受け、その場で昏倒したウマ娘だ。なお、彼らはそのウマ娘の名も、昏倒した事実も認知してはいない――昨日一日で、トレーナーが各方面に与えた衝撃が、大きすぎるためだ。

 『ちょっとした手伝い』と称して、トレーニング用のタイヤ(ダンプトラック用)を三つ肩に抱えたトレーナーを見て、目を……その後、己の正気を疑ったウマ娘は、十を下るまい。その姿はまるで、天を支える大英雄の如き勇壮さであったと言う――なお、桐生院トレーナーはその衝撃から未だ立ち直れず、本日は病欠である。

 

「……それで、話を戻しますが、トレーナーさん。チーム『シリウス』が存亡の危機である……というのは、確かなことですの?」

「ああ。百パーセントではないが、かなり高い確度でそうなるだろう。このトレセン学園の規定では、チームの発足に最低限必要なのは……トレーナーが(いち)に、ウマ娘が五。我々は、その基準を満たしてはいない」

「そう、ですわね。仕方のないことではありますが……。ですが、トレーナーさん。それでは何故、そんなに落ち着いていられますの? あとなんで荷物搬入口から校内に侵入しようとしていますの?

入校のたびに正面玄関の扉を全て取り外す訳にはいかないからだ。……落ち着いている訳ではないとも、これでもな。ただ……駿川たづな殿、と言ったか。彼女には、師……先代トレーナーから、話が行っている筈だ」

 

 トレーナーが、トレセン学園裏門付近、設備搬入用の大入り口から校舎に踏み入る――ズドン、と地鳴りがする。メジロマックイーンは、その後を追って軽やかに廊下へと着地した。

 天井は高く、トレーナーが直立しても頭を擦ることは――辛うじてであるが――ない。ウマ娘用のトレーニング機材を運ぶためであるとか、()()()()ウマ娘が突然暴れ出した際に頭をぶつけないようにであるとか、理由は実しやかに囁かれてはいるが……それが幸いした形である。

 なお、同様の理由で、トレセン学園校舎は耐荷重、耐震能力も高い。トレセン学園は、広く、大きく、頑丈なのだ。

 

「ちなみにですが……許可は貰っていますのよね?」

「ああ。近いうちに扉を改修するから、それまでは此方から通勤するように、と。その代わり、君が授業に出ている間に、軽い手伝いを請け負うことになったが」

「それならば良いのです。下手に不法侵入などされて、トレーナーを廃業になられても――ああ、ビクトリーズに入団するために敢えて、と言うのならば涙ながらに見送りますが

「君はレースと野球のどちらが大切なのだ……?」

「メジロジョークですわ」

 

 メジロとは一体。

 思わず真顔になるトレーナーを引き連れ、メジロマックイーンは打ち合わせの場所である、というトレーナー用のミーティング・ルームへと入室した。

 

◆ ◆ ◆

 

「ハチミ-ハチミ-ハッチッミ-、ア-ボ-クハテイオ-……ピェッ!? キノウノトレ-ナ-ダ!! ……ってあれ。ゴルシじゃん。木の裏側(こんなトコ)で何してんの」

「やめろォ! おまっ、ちょっ、テイオーふざけんじゃねえぞバレるだろうが!!」

 

◆ ◆ ◆

 

 ミーティング・ルームのテーブルを挟んで、片側に理事長である秋川やよいと、その秘書である駿川たづな。もう片側には、『シリウス』のトレーナーと、メジロマックイーン。トレーナーさん用に用意しました、と駿川たづなが持参した椅子は顔合わせの挨拶が終わると同時に粉砕したため、トレーナーのみ本日も引き続き床に直座りである。

 駿川たづなの業務に、トレーナーに耐えうる椅子・机を用意する、というタスクが追加された瞬間であった。

 

「さて、トレーナーさんから問い合わせを頂いていた件ですが……理事長含め、様々な方へ問い合わせと確認を行いました。結果ですが……」

「……陳謝ッ! 君たちの責任では決してない、ないが……チーム編成の規則は規則ッ! このままでは解散も止む無し、という状況に変わりはないッ!」

 

 駿川たづなは目を伏せ、理事長――椅子に座ってなお、床に座るトレーナーから見下ろされている――は、ばっ、と扇子を開く。でかでかと、達筆で『筋肉ッ!』と記された扇子を突き出す彼女の顔もまた、たづなと同様に暗い。

 

「……なるほど。厳しい状況ではありますが、決まっている規則を変えづらい、ということも理解はしております。なにせ、師の最後に担当したウマ娘は、『オグリキャップ』でした故に」

「……! 納得ッ! トゥインクルシリーズの、クラシック登録の件か……! だが、対策ッ! 『前例』があるが故に、我々も迅速に結論を出したッ!」

 

 理事長の扇子が閉じ、また開かれる。彼女の扇子は、彼女の発言――正確には、発言時の内心とリンクし、その文字を変える。結論を出した、と胸を張る彼女の扇子には、これまたでかでかと『精悍ッ!』と記されていた。

 

「……ごほんッ! 結論ッ! チームメンバー集めに関しては、上期……六月の末まで猶予を設けるッ!」

「六月。であれば――彼女の、当面の目標までは、それを気にすることはない、ということか。それを、早くに知れたのは有り難い――感謝します、理事長。駿川殿」

「無用ッ! もっと融通を利かせられれば、良かったのだが……力不足だ、すまないッ!」

「私からも。出来ることがあれば、可能な限りお手伝いをいたします。……それと、私のことは駿川ではなくトキ……でもなく、たづな、と呼んでください」

 

 トキ……? と首を傾げるメジロマックイーンをよそに、トレーナーは両手をテーブルにつき、頭を下げた。

 

「尽力に感謝いたします、御両人。そちらについては追々考えますが……今のところは、メジロマックイーンの使命を果たすことに、全力を尽くそうかと」

「それが良いと思いますよ、トレーナーさん。私の方でも、チームメンバーの件は考えてみますから。……あっ、名案が浮かびました!」

「名案、ですの? たづなさん、それはどのような――」

私がメンバーとして加入しちゃいます!

「何を仰っておられますの!?」

 

 両手をぽん、と合わせ、にこりと笑うた駿川たづなと、目を見開くメジロマックイーン。どういうことなの、と言いたげなマックイーンをよそに、秋川やよいが横槍を入れる。

 

「静止ッ! たづな、流石にそれには無理があるッ!」

「理事長さん……! ええ、そうですわよね。いくらなんでも、たづなさんでは――」

――お前だけではメンバーが足りないッ!

「そういうことじゃありませんわ!?」

 

 理事長の扇子が『承認ッ!』と切り替わる。

 

「あら……確かにそうですね。じゃあ、友達も呼びましょう」

「呼んでどうにかなるものではありませんわよ!?」

「そうですね……シンザンセントライトにでも声をかければ大丈夫でしょうか?」

伝説(レジェンド)ですわ!?!? というか、その方々を呼べるものなんですの!?」

「……? ええ、ウマッターで呼べば。昔からの友人ですし、トレーナーさんの話をすれば確実かと。後ひと枠には……理事長、参加されますか?」

「うむッ! 楽しそうだッ! どうせならばアオハル杯も復活させ、チーム戦と行くかッ!」

「……どういうことですのぉぉ!?!?」

 

 新生・チーム『シリウス』。メンバー、シンザン。セントライト。トキノ……駿川たづな。ノーザン……秋川やよい。そしてエースのメジロマックイーンと、大英雄トレーナー。

 あまりにも、メジロマックイーンに辛すぎるチーム編成であった。方向性は違えど伝説、伝説、伝説、伝説、名優、そして伝説。いくらメジロマックイーンが将来的にそこへ並び得る優秀なウマ娘だとあっても、これではやけスイーツとユタカに逃避せざるを得ないというものである。

 

「うふふ、流石にたづなジョークですよ、マックイーンさん」

「その通りだ。気に掛けて頂いているのは有り難いが……依怙贔屓はよろしくない。我々にとっても、他のチームにとってもな」

「流石です、トレーナーさん! ところで今晩お暇ですか?

先日貸与いただいた部屋の備え付けのベッドが一夜で粉砕したため片付けをしなければならない

「そうですか……それは残念です。マックイーンさんのトレーニングもありますし、無理は言えませんね」

「済まない。また時間があれば、近場の美味い店でも教えて頂きたい」

「……! はいっ!」

スイーツですの!?

「夕食だ」

 

 わいわい、と俄かに活気立つミーティング・ルーム。それより数刻後、とりあえずの方針として、メジロマックイーンが軽く勧誘を行いつつ、当面はトレーニングに集中する……と決定したのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

「それでゴルシー。いつになったらあのトレーナーに声かけるのさ」

「おま、ちょっ……こういうのはタイミングがだな。下手に飛び出したら轢かれるんだよ。見ろよあの筋肉、ロードローラーだぜ」

「でもあのトレーナー、もうどっか行っちゃったよ。ゴルシが下向いてぶつぶつ言ってる間に」

「……ウォァァァアッ!!」

「ワッビックリシタ-! キュウニサケバナイデヨ-!」

 

◆ ◆ ◆

 

「ところで、メジロマックイーン」

「なんですの、トレーナーさん」

先程から木の影に、一着の(妙な)ポーズで隠れているウマ娘の名は?

「……ゴールドシップさん、ですわ。あの方、自己紹介もしてませんでしたのね……」

 

 なお。余談ではあるがトレーナーは、シンボリルドルフから「ゴールドシップを調伏した」として、賞状とカフェテリアのスイーツ一週間パスを授与されたのだった。




ぱかチューブのゴルシとテイオーの回ほんとすき。
※9時くらいに投稿予定だったけどはちみーのうたのJASRACコード調べてたら遅くなったのはナイショ。おのれテイオー。
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