『腸狩り』になったスバル~エルザの肉体にTS憑依~   作:腸狩り

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プロローグ 大罪人エルザ・グランヒルテ

ルグニカ王国首都ルグニカの大広場にて、たった今『ある大罪人』の「公開処刑」が行われようとしていた。

女の名は『エルザ・グランヒルテ』。

『腸狩り』の異名で世間に名を轟かせた彼女は、筋金入りの快楽殺人鬼にして暗殺者であり、殺し屋である。姓のグランヒルテは通名で、彼女自身と縁のある火酒『グランヒルテ』が由来となっているという噂もある。

要人や官僚を暗殺することを稼業としていた彼女は、ルグニカやその近隣諸国の国民を大いに恐れされた。

ルグニカ王国を始めとした周辺諸国は、一切身元がつかめない彼女の存在に手を焼いていた。

そんな彼女がどういうわけか、つい一月前にルグニカ王国の憲兵らの手により捕まったのだ。

 

「どうやら、あのエルザ・グランヒルテか捕まったんだってよ。なんでもルグニカに潜伏してたらしい。」

 

街中は連日「エルザ・グランヒルテが捕まった」というニュースで持ちきりになっていた。

 

「これはあくまで憲兵から聞いた噂なんだが、なんでも道を聞いてる最中に捕まったんだと。」

 

彼女が「道を訪ねていた最中に捕まった」という情報を聞き、呆気に取られている国民達。

 

「隣の国なら自分のことを気付かれないとでも思ったんだろう。笑っちまうぜ。」

 

エルザ・グランヒルテは、元々ルグニカではなくグステコ聖王国を拠点にし活動をしていた。

グステコ聖王国とは、ルグニカ王国から見て北方に位置する宗教国家である。グステコ聖教を国教とし、国民の大半はこのグステコ聖教を信仰している。

寒冷地帯のため作物のなかなか育たない不毛の大地であるグステコ聖王国は、精霊信仰を行うことで彼らから加護を得て大地を潤わせ農耕を行っていた。

彼女はその国の要人を暗殺したことでグステコから後を追われ、結果このルグニカ王国に流れ着いたのだ。

 

「おい見ろ!!エルザが処刑台の前に連れていかれてるぞ!」

 

「うう…寒そう…」

 

断頭台へと連れていかれている彼女は、一糸纏わぬ姿で連行されていた。

 

「うへへ…こりゃあ眼福だぜ」

 

一人の男性が、一糸纏わぬ姿で連行されているエルザを見て鼻の下を伸ばしている。

エルザは北国の寒冷地の生まれであった。幼少期は貧しく、満足な衣服も買えないほどであったという。

そんな彼女が衣服を着ることも許されず辱めを受け処刑されるとは、皮肉な話である。

しかし今の彼女は、死の恐怖で恥辱よりも恐怖の感情が勝っていた。

 

彼女の処刑を耳にした国民が、街の中心に次々と集まってくる。

野次馬のように集まったもの、憎悪を向ける者、全裸のエルザに情欲を向ける者など、様々な人間がいる。

誰かが言った。「エルザの処刑は、ルグニカ王国において必ず有益をもたらすだろう。」と。

エルザの度重なる悪行にルグニカ王国・グステコ聖王国・カララギ都市国家などの各国は手を焼いていた。

そのため『エルザ・グランヒルデを処刑した』という功績は各国からのルグニカ王国に対する信用を生み、また国際政治を行ううえで有利な位置を築けるというのだ。

今回ルグニカはエルザを処刑することにより、グステコとの国交をより盤石なものにしようとしていた。

そして今回、多くの市民がエルザの処刑を見学しに広場に集まっている。

言わば彼らは、「エルザを処刑した」という事実を他国に証明するための証人なのだ。

 

「ねえママ~!!なんであのひとはだかなの~?」

 

エルザの処刑を見に来た野次馬の男児がエルザを指差し母親に問いかけた。

 

「コラっ、見ちゃダメよ。あれはね、悪いことをした人なの。」

 

親子の隣にいた少女は、エルザの一糸纏わぬ姿を見て幻滅する。

 

「うわ…あんな風にはなりたくないわね。あんなの、女としての恥よ。」

 

彼女が暗殺者であり、暗器使いである。故に処刑中に暗器を使い抵抗する危険性があった。そのため王国は彼女を一糸纏わぬ姿で処刑することを決めたという。

勿論理由はそれだけではない。見せしめのためもある。

女性である彼女が、ただ処刑されるだけではなく辱めを受け処刑される。それは「罪を犯せばこのような目にあってしまう」という女性への犯罪抑止に繋がるだけでなく、男性達に対するパフォーマンスも理由としてあった。

世界的な大罪人であるエルザが全裸姿で処刑される。それは一種の催しにもなり、彼女の処刑を人目でも見たいと思った王国中の人間が集まり興行にもなると王国側が踏んだのだ。

 

事情聴取中の拷問で受けた傷だろうか。

彼女の肉体には無数の切り傷や鞭打ちの跡や痣などが目立っていた。

彼女は吸血鬼と呼ばれる存在である。本来ならば彼女の肉体は一切傷を付けることが出来ず、傷もすぐ再生するように出来ていた。いわば彼女は不死の肉体だったのだ。

しかし彼女の肉体は、一切回復する様子を見せていない。

彼女の再生できる回数には限度がある。ルグニカ王国は拷問することにより再生能力を弱らせ、彼女の不死性を一時的に無力化することに成功したのだ。

つまり今の彼女は、首を跳ねれば失血死してしまうし、電撃を受ければ感電死してしまうし、首をくくれば窒息死してしまう。

つまり彼女を確実に殺せるタイミングは、再生能力の低下している今しかないのだ。

 

「おい、さっさと歩け。まあさっさと歩いたところでお前の死が早まるだけだけどな。」

 

刑務官が歩いていたエルザの背中を蹴とばす。エルザはその場に倒れ込んだ。

その衝撃で、エルザの肘に擦り傷が出来てしまう。しかし、その傷が治ることはない。

 

「おらっ!さっさと歩け!」

 

処刑人がエルザの腹を蹴り上げる。

 

「ゔっ…!!おぇえ…」

 

腹を強く蹴られた衝撃で、彼女の口から吐瀉物が溢れ落ちた。

 

「ははっ、汚え。」

 

再び、彼女がその場で崩れ落ちる。

そして訴えかけるように、エルザは処刑人を睨みつけた。

 

「………。」

 

「…ちが…う…。」

 

(オレは…エルザなんかじゃな…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

否、彼女…いや「彼」はエルザ・グランヒルテではなかった。

彼の名はナツキ・スバル。

コンビニに夜食を買いに出かけた彼は帰る途中、突然異世界へと転移させられた。

「エルザ・グランヒルテに憑依する」という形で。スバルは突然の異世界召喚に興奮し町中を駆け巡った。

しかしスバルは次第にこれが夢ではないということに気付く。エルザは指名手配犯である。

そして不用心にも憲兵に道を聞いてしまったことにより逮捕されてしまい、いま彼女はこの処刑台にいた。

 

「オ、オレは…」

 

スバルは「自分がエルザではない」と声を挙げようとした。

しかし、思うように言葉が発せない。

これまでも何度も自分がエルザではないことを言おうとした。

しかしそれを言おうとすると、「何らかの力」が働いて喋れなくなってしまうのだ。

 

(クソ…どうしてだ。どうしてエルザじゃないことを訴えようとしただけで声が出なくなるんだよ…。)

 

何故自分はいまこんな状況にいるのだろう。何故自分はいまこんな目に遭っているのだろう。

ついこの間まで日本で平和に暮らしていただけなのに。

スバルは今の自分が置かれている状況に絶望していた。

 

見かねた処刑人はエルザの処刑を宣誓する。

 

「これより、大罪人エルザ・グランヒルテの処刑を執り行う!!」

 

国民達は、処刑台の上に立つエルザに好機の視線を向けていた。

 

「…………!!!」

 

(そんな…。嘘だろ…?オレはこんなところで死ぬのか?)

 

エルザの髪を処刑人が強引に掴み、頭部を斬首台にセットする。

エルザの処刑を見に来た野次馬の視線が、一斉に処刑台の上にいる彼女の方に集まる。

衆人環視の目に晒される彼女は、自身に向けられる憎悪や情欲の目に絶望していた。

 

(どうして…どうしてオレがこんな目に遭わないといけないんだよ…。)

 

(コンビニに行ってただけなのに、気付いたらこんなところにいて…)

 

(道を聞いただけなのに、捕まって…拷問されて…)

 

「あの時ティーカップを洗ってさえいればここにいなかったのだろうか」と後悔するスバル。

 

(そんな…オレは死ぬのか?こんなところで?誰にもオレのこと気付かれないまま…?)

 

誰も自分のことを気付かないまま、異世界で死ぬ。それも自分の姿ではなく、見ず知らずの別人の姿で。

そしてこの世界には、「菜月昴」を知る人物は誰一人としていない。

 

(父ちゃん…、お母さん…。)

 

頭の中に、尊敬する父親と母親の姿が思い浮かぶ。

小さい頃から憧れだった父親の賢一。いつでもスバルの味方だった母親の菜穂子。

ふたりのことが頭に思い浮かび、彼女はつい大粒の涙を溢してしまっていた。

 

(そうだオレ、お母さんに「いってきます」も言ってねえ…)

 

 

刃は高所から落ち大きく音を立てる。

 

「たすけ────」

 

その瞬間、刃は彼女の頭部と胴体を切り離し彼女…「彼」は絶命した。

「彼」が最期に思い浮かべた光景は、帰りを待つ父親と母親の姿だった。

 

「ウオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

歓声が湧き上がり盛り上がる大広間に集まった野次馬達。

胴から切り離されのた打ちまわるエルザの胴体。頭から切り離された彼女の胴体は打ち上げられた魚のようにピクピクと痙攣し、頭部と切り離されたショックで失禁してしまっていた。

 

 

 

 

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