『腸狩り』になったスバル~エルザの肉体にTS憑依~   作:腸狩り

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episode.2 美女にTSしてやることと言えば…

先程までコンビニの前にいたはずなのに、気付いたら中世ヨーロッパのような場所にいたスバル。

周りには竜車や、獣人や爬虫類のような見た目の亜人種、様々な見た目の二足歩行の生物が闊歩していた。見たところ、人間同様の知性があるように見える。

 

「まさかこれって…TS異世界召喚ってヤツ~!??」

 

それだけではなく、自身の肉体が女性の姿になっていたのだ。

目視だけでも分かる。

胸にある大きな乳房やくびれた腰つきなどのグラマラスな体つき。

股間に感じるあるはずのものがない感覚。

そのどれもが、スバルの肉体が女性になったということを証明していた。

 

「いやいや待て待て、ありえねぇって!!そんなまさか、異世界召喚…それも女体化だなんて…。」

 

まさか自分がそんな目に遭うなど、彼は思いもしていなかった。

異世界召喚、ましてや女体化など、漫画やアニメの中だけの出来事だと思っていたからだ。

しかし現実に今、自分の目の前でそれが起こっている。

TS願望ほどではないが生まれ変わり願望自体は以前からスバルはあった。小さい頃は将来の夢はカブトムシやライオンだ。

強いものに憧れていた。小さい子あるあるだった。

子どもは将来の夢と聞かれたら、将来なりたい職業ではなく自分の憧れている動物を答える。スバルもそれと同じクチだった。

高校生になってからは憧れの父を思い描き父の職業を答えるようになったが今のスバル自身と想像する理想の自分とのギャップに押しつぶされ、スバルは次第に自己嫌悪に陥るようになった。

それ以来スバルは「他の誰でもない別人になってみたい」とふと考えるようになりだした。

 

「そうだオレ、今どういう見た目になってんだ。」

 

スバルが一番最初に気になったのは、自身の容姿だった。

召喚された自分の容姿が美人なのか、またはそうじゃないのかによって話は変わってくる。スバルにとって女性の姿になった自分の容姿は一番気になる重要要素だった。

 

 

(どこかに鏡ねえかなあ…。)

 

鏡を借りる際の話しかけ方をイメージするスバル。

 

『よっと兄弟!手鏡貸してくんねえか!』

 

軽快に近くにいる青年に声をかける想像をするスバル。

 

(いや待て、ホントにこんな話し方でいいのか?)

 

「え、ええ〜っと…そこの、殿方…?オ…私に手鏡を貸してくださる?」

 

スバルは物腰柔らかな女性をイメージした口調で、近くを通りかかった男性に話しかけた。

 

「少し…え〜っと、その…化粧直しを…ね、しようと思って…」

 

スバルには女装の心得があった。高校一年生の時、スバルはしばらくの間女装をして登校し、クラスメイトを数カ月間騙し通したことがある。

 

青年から鏡を借り、スバルは自分の容姿を確認することにした。

 

「おおっ…!!」

 

鏡には小さい頃から見慣れた目つきの悪い自分の容姿とは程遠い美人の姿が映し出されていた。

外国人なのだろうか。日本人であるスバルの外見的特徴とは違い彫が深く、顔立ちがはっきりとしている。

ツリ目だったスバルとは違い、目尻が下がっておりタレ目気味でまつ毛も長い。その姿は誰がどう見ても「絶世の美女」に映る容姿だった。

 

(おっしゃあ〜!!美人キター!!」

 

心の中で、自分自身の姿が美人の姿になっていたことを喜ぶスバル。

 

(せっかく美人になれたんだ、心機一転美女ライフをエンジョイしてやるぜ!!)

 

スバルは興奮のあまり、手を掲げガッツポーズをした。

 

(というかそもそも、ここが本当に異世界なら日本人も外国人も関係ねぇか…。)

 

「あのすみません、もういいですか?」

 

青年が鏡を返してほしそうにこちらを見ている。

 

「あっすまねえな、ありがとよ兄弟!!」

 

スバルは興奮のあまり、つい口調が戻ってしまった。

 

「…?」

 

スバルから鏡を返される青年。

突然変わったスバルの口調に困惑しながらも、青年は遠くへと行ってしまった。

 

 

「…それにしても、だ。」

 

「男なら、興味がわかない方が逆に不健全だよな…。」

 

目の前の手に届く位置に映る果実に興味が向くスバル。

 

「っていやいや!もしかしたら別人の身体かも知れねえのに、勝手に触るのはよくないだろオレ!!」

 

「けど…少しくらいなら、誰も文句は言わねえよな…。減るもんじゃねえし…。」

 

スバルはつい、好奇心に負け揉んでしまった。

 

指が吸い寄せられるように、乳房の中に沈み込んでいく。

胸部についている乳房は特殊メイクなどではなく、確かに感覚を持ってそこにあった。

 

(うお…柔らけえ…。これ…、本物の胸じゃねえか…!)

 

(マシュマロみてえ…、ずっと揉んでられる…。)

 

胸に触れるのなんて、スバルは赤ん坊の頃以来だった。

つまり物心がついて以来、スバルは女性の胸に触れたことはない。

 

(ストレス解消にちょうどいいわこれ…。)

 

初めて揉んだ胸の感触が自分についた胸の感触になるなどかつてのスバルならば思いもしなかっただろう。

しばらくの間、乳房を揉む感触に浸っていたスバル。

しかしここは、人通りが多い都市の中心街。

傍から見れば美女が自身の胸を揉みしだきながら、奇妙な笑みを浮かべているように見えるだろう。

スバルの興味が胸から更に下へと向かおうとしていた、その時だった。

 

「なあ…なんであの人自分の胸揉んでんだ…?」

 

「痴女?痴女なの?」

 

「あんな風になっちゃダメよ」

 

美女が公衆の面前で胸を揉みしだくその様子に、周りを通る雑踏も少しづつ気付き始めていた。

 

(あ、あれ…?なんで周りの連中はオレの方を向いてるんだ?)

 

周りが自分のことを見てひそひそ話をしていることに気付き始めるスバル。

 

(チクショウ…!!なんか見られると急に恥ずかしくなってきた!!)

 

周りの好奇の目に気付きスバルは、胸を揉むのを止めた。

 

「………。」

 

「…にしても、だ。」

 

(そういや、オレ自身がTSして異世界召喚されたのか?それともオレがこの世界の別の誰かに憑依したのか?分っかんねえ…)

自分が今どのような状況にいるのかを冷静に分析するスバル。

 

「そういや服装も…」

 

そういえば、着ていた黒のジャージは一体どこに行ってしまったのだろうか。

そこでスバルはふと、自身が手持ち分沙汰なことに気付いた。

 

「あ、あれ…!?さっきまで持ってたコンビニ袋がねえ!!」

 

左手持っていたコンビニ袋が無くなっていたことに気付くスバル。その中に弁当もスナック菓子も飲料水もなくなってしまっていた。

 

「さ、財布もねぇ…!!携帯電話もねえじゃねえか!!!」

 

スバルの財布には、高校の学生証などの個人情報を含むものもあった。

 

つまりスバルは自分が異世界人であると示す証拠も自分がナツキ・スバルであると証明する証拠も無くしてしまったのだ。

 

 

 

「…はあ、これからどうすれば。」

 

近くにある噴水のふちに座り、スバルは今後の行動指針を立てようとする。

 

(コンビニ袋もねえ…、身分証もねえ…、財布もなけりゃ携帯電話もなくなっちまってる…。これから一体どうすればいいんだ…)

 

まず、ここがどこなのかも分からない。

中世風の異世界であるということと、自分の姿が女性になっていること以外、スバルは現状を一切把握出来ていなかった。おまけに身分を証明するものも一切ない。

八方ふさがりの状況にいることを改めて認識させられるスバル。

こういう時、父なら何をして何の行動を起こすだろうか。

ここがどこかも分からなければ、自分がどういう状況にいるのかさえ分からない。

スバルは過去に父と共に出かけたキャンプの時のことを思い出そうとした。

あの時は一体、何をどうやったのだろうか。

 

 

 

「………よし。」

 

 

 

「さ〜て、やってやりますか異世界探索!!」

 

 

 

しかし、この時のスバルは予想にもしていなかった。これから自分自身の身に降りかかる様々な苦悩を。

そして、自分が憑依している女の正体を…。


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