恣意的情報非開示型整合性皆無系文体非論理的展開連続男女出逢似非軽文学   作:若かりし頃を思い出して

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「動かないってのは楽だね」「卒業式」「立ってるだけでも大変だね」

「立場が変われば、周囲の人間の態度が変われば別の人間になれる。でも、姿形とか言動とかが変わっただけなら、おんなじ人間なんだ」

 

 僕は言った。彼女は頷いた。「もっと他にないのかい?」と先を求められる様な台詞だったけれど、無視して手に持っていた牛乳パックからカルシウムを摂取する。普通の男女なら、年頃の男女なら、彼女はきっと僕の彼女ないし彼氏または恋人、もしくは家族で、僕の意味深な発言に「哲学か何かにでも目覚めたの?」とでも返す所なのだろう。それが普通の文脈ってものだろう。だが待って欲しい。異常ってのはつまる所、基準となる"常識"に対してのマイノリティの事だ。僕の独断と偏見と主観からなる脳内直結型略式裁判所では間違っているのは世界の方、との判決が出た。僕の常識や価値観に世界がズレているんだ。そして、彼女は僕の意味深な台詞に付き合ってやる常識を持ち合わせていない。そもそも僕と彼女は赤の他人だ。そういう事だ。そして、僕と彼女の関係もそういう事だ。どういう事だ。

 

「僕は本心で世界平和とか何やらを望んでいるのかもしれない。いつだって不幸な事から逃避行。他の人に言わせれば、思考も飛んでいるらしい」

「逃げられなくなったら。世界が平和で満ちてしまったら」

「異常というのはつまる所、基準となる"常識"におけるマイノリティだ。基準は常に無意識下で生成され、意識下で修正される。こうして僕がエレベーターよりも下らない思考を持続している限り、世界は平和なんかで綺麗さっぱり清浄されやしないんだ。指を二つぐらい賭けたって良い」

「……特許使用料」

 

 噛み合っていない。何が? 勿論、会話が。一応、やり取りという形は保てているハズだが。それにしても"飛躍"が過ぎる。彼女と僕の台詞の間の繋がりもそうだし、何より僕の言う事が"跳んでいる"。これがこの僕の表現で、僕と彼女の関係だ。会話をしているわけじゃなく、お互いに独り言を言っている。偶然、似たような発音をした、知らない言語での独り言が聞こえて来たり、それに反応したりするだけの何ら変哲のない独り言。最近はちょっと意思疎通が図れそうな気もしている。

 

「恋をするって行為は人間としての価値が濃いと思うんだ」

「無駄。愛は本能だけど、恋は後付け。生物としての価値が薄い」

「無駄な事だから恋たり得て、最高に人間臭いんだよ。それに、無駄な事もやっておかないと価値のある事なんて分からないんじゃないかな」

「人生がぶっつけ本番でリセット出来ないのなら、時間的に無駄な事は何一つない。ただ、それをする事で行為の前に変な思考が挟まって、間が崩れる。それで気付いたらみーんな例外なくデッドエンド。それで最後に呟く。無駄だった、と。でも、何かに夢中になるのは……無駄にはならない……と、思う」

「エンディングに、僕達を含めた人間達に例外がないから恋をしてるんじゃないかな。僕らも彼らも故意に人生を無駄にしている。必要な事は色褪せていて、とっても現実で堅実で眼前にあって、嫌になっちゃうから」

 

  僕はすらすらとモノローグを垂れ流す。僕の台詞は自分でも未だに何を言ってるか、何を僕の無意識が伝えようとしているのか不明瞭な所が多いが、それは何も僕に限った話じゃないと思う。本心なんてのは自分にだってよく分からない事が多いんだ。僕のだって全体的に腐っていて、曲がっていて、歪んでいて、酷く婉曲で迂遠で間接的な面倒臭い表現になっているだけで、そこは他の人と変わらない。それに自分で言うのも何だが、即興にしては良くやっている方だと思う。逃"ヒコウ"する僕の考えは"飛んで"いるし、世界が"平和"や"正常"なんかで満ちる事はなく"清浄"されない、という結論に"二つ指"を賭けても良いらしい。以下略。

 

「神が絶対で神を信じないと救われないのなら、信じてくれる人以外を救わない救えない様な奴が神なら、人間を救うのは神様じゃないんだろうね。そうなると人間は天国には行けないんだけれど」

「天国は空に浮かないと。浮いていて今なのに、無理……天国は落ちたら、頭を打って救からない。しんじゃうよ、あんなたかいところ」

「今、立っている場所ですら落ちたら、死にそうなぐらい落ち込んじゃうのに天国とか僕には無理だね、うん」

 

 彼女はポケットに手を突っ込むと壁掛け時計を出して時刻を確認した。ポケットに壁掛け時計、とか意味不明な文字列だが何の事はない。彼女が取り出したのは、見た目も性能もただのアナログ腕時計だ。ただしベルト無し。以前、僕がそれを腕時計と呼んだ時に彼女が「これは壁掛け時計」と言った。だから壁掛け時計なんだ。そこにどんな意図や拘りや過去があるのかは分からないし、知る様な関係でもない。過去に踏み込んで許されるのは本人と二次元の中だけだ。地雷は踏んでから気付いても遅い。地雷自体も爆発するし、踏んだ奴も怪我するし、破片が飛び散って周りも傷付けしるし、後処理だってしないといけない。飛び込んで行くのは勇気ってよりかはただの阿呆だ。勿論、コロンブスとかだって、実際に買えってこなけりゃただの阿呆だったわけだから、それ自体を否定する気はない。ただ、僕はそんな石橋をハンドスプリングしながら渡る様な真似はしないってだけで。僕は石橋を殴って、叩いて、壊そうとするけど、結局力が足りなくてそのまま諦めて、傷付いた橋を渡るって感じの人間なのだ。

 彼女は壁掛け時計をしまうと、牛乳パックからストローを外した。そう、彼女は牛乳を飲んでいた。いや、いる。これもどんな理由があるか分からない。僕の方に言語化する程の明確な理由があるわけじゃないからと言って、彼女もそうだとは限らない。まぁ、牛乳を飲んでいると言う事実だけが、明確になっているなら理由なんてどうでも良いんだけどね。僕と彼女は主に毎週月、水、金辺りにふらっとやって来て、独り言を言い始める。彼女はいつも紙パックの牛乳を右手に持っている。因みに、牛乳はここに来る途中の自販機で買える。彼女以外は誰も買わない様だけど。最近の僕を除いて。

 僕は一言「面倒」と呟いて、空っぽになった牛乳パックをストローと一緒に放り捨てた。彼女の方を見ると、両手でほっぺを触っていた。

 

「僕達さ、先生に怒られちゃうかもね」

「可能性なんて」

「でも、僕の青春を青春たらしめているのは僕自身の不可能性なんだ。だから……」

「帰る」

「そだね」

 

 僕は屋上を出る前に振り返った。当たり前だけど、見慣れた景色には何にもなかった。振り返るのを止めたら、彼女も振り向いていた。ちょっと笑っていた。 

 

 

 




一応、作中で出てきた何やかんやのアンサーになっている回です。アンサーになっている事自体は分かりやすいと思うのですが、肝心の結論が良く分からないという。こんな主人公でごめんなさい。
哲学とかなんかじゃなくて、ただのタジャレや屁理屈が大半なんですけど、そういうのを大事に出来るのは中高生の特権なので、許して欲しいですね。

これからの展開

  • 王道ボーイミーツガール
  • 青春は変化球チックなの
  • 叙述トリック(後付け)
  • 唐突にミステリィ
  • まさかの異世界転移チーレ無双
  • ○○オチなんてサイテー!!
  • 涼しいダジャレの憂鬱(セカイ系)
  • Rー17ぐらいのえっっっっっ
  • 挿絵plz
  • そんな事よりバトルを見せろよ!
  • そんな事よりダンロンの新作を!
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