恣意的情報非開示型整合性皆無系文体非論理的展開連続男女出逢似非軽文学   作:若かりし頃を思い出して

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ストーリー展開が遅いという意見があります。
幸せな人程歩くのが遅いというデータがあります。
私は幸せです。


3日目

 魚住さんからの「待っててくれてたんですか?」という問いは思考という無限のアーカイブに今にも沈まんとしていた僕を多いに動揺させた。何てことはない、難しくもない。魚住さんから見れば、事務室まで案内した後に昇降口に向かわず同じ位置に立ち尽くしている人間、というのは"事務室から帰ってくる自分を待っていた"様に見えるだけなのだ。ストーカー、或いは変質者と言い換えても良さそうだ。それをわざわざ"待っていてくれてた"と言う所に、魚住さんの自然な思いやりが見て取れる。魚住さんは多分、現代文が得意だと思う。

 少し閑話だが、僕は至って正直者だ。それを説明するに当たって今から僕の過去の苦々しい記憶を引っ張り出すのは常套手段で、テンプレで、分かりやすいとは思う。過去にこういう事がありましたから、僕は今現在、こういう人間なんです、ってね。でも、僕はそれをエネルギー効率の悪い、もっと言えば無駄な事だと思っている。少なくとも、今は。

 わざわざ地面を掘り返して何になるのだ。捻曲がった僕という齢15の木は今にも枯れ果てそうなのだ。矯正する事を強制すれば、根本でぽっきり折れるだろうし、根っこから植え替えようにも植え替えれる地盤がない。僕という未完成ではあるが、既に失敗が確定している不要物が出来上がる過程に纏わる云々をくだくだ述べる様な説明の仕方は小説の中だけで充分だ。そんな分かりやすい説明で、僕の身勝手な、世間に世界に性格に対する思うところを安っぽく同情されて、共感されてたまるか。結果と問題点をレポートか何かにでも纏めれば事足りるんだ。まぁ、このモノローグを聞けるのは他ならぬ僕だけなので、そんな心配は無用の長物なのだけど。

 それに、人生は連続的な1フレーム未満の色彩が作る刹那的なものだと考えている。現在という今を生きていかねばならない僕達人間には、昨日を振り返る様な事も、今日に固執し後悔する様な事も、似合わない。ただ走り続けて、あると信じている、信じられている、信じないといけない明日だけを見るのがお似合いだ。だから、ここで僕の過去を明かす事には何の価値もない。全僕の独断と偏見からなる脳内直結型略式裁判所も同じ判決を下している。

 閑話休題、それはともかくだ。自分語りは特にしないので説得力が皆無だが、僕はとても酷く正直で真っ直ぐな人間なのである。まぁ、今までの発言や行動から、それは火を見るより確定的に明らかだろう。

 僕は魚住さんからの「待っててくれてたんですか?」という問いに「別に待っててはないけど」と返してしまったのである。確かに僕は思考の海で少し早めの、致命的に手遅れな海水浴をしていた。でも、魚住さんはそんな事知ったこっちゃあない。多分、僕に拒絶された、まではいかなくても確実にマイナスのフィーリングを与えただろう。「今来たとこだよ」とでも返せば良かったのだ。

 後悔したってもう遅いけど、それでも考えてしまう。僕はささっと気の効いた事が言えないから。ほんのちょっとのどうでも良い事にも、石橋を叩く様に確認して後悔して振り返る。なんで石橋を渡る前に出来ないのか。これの答えは単純で、単に僕のスペック不足。ディスクは常時100%、グラボ無し、インテル第二世代、Windowsアップデートは7で止まっている。勿論やろうとは思っている。しかし、早い男は好かれない、という一家言がある。嘘だ。僕の行動と発言は熟考に熟考を重ねられ、皺多き脳味噌の山からおむすびころりん、酸素と時間を巻き込み、手遅れというブラックホールへ吸い込まれる。これは一種の完結した自給自足の循環世界であり、干渉する権限は僕にはなかった。要するに、僕は何にも考えずに日々という財産を浪費しているだけで、それは日常の中のアクションの一つ一つを取っても変わらない、という事だ。思考停止意志薄弱日常的行動人間。ルビを振るなら、ノーシンクノーアクション。意味が変わってしまった。

 と、僕がここまで思考を進めた所で僕と魚住さんの間の沈黙は破られた。当然、沈黙を破るのに貢献したのは僕である。"きまずい"という感情は「何か喋らないといけない」「相手と仲良く、愛想良くしないといけない」といった脅迫観念から来るものであり、沈黙という重圧は小柄な魚住さんの方を先に押し潰した。確かに沈黙を破る切っ掛け、その一端は僕にあったわけだ。まぁ、なんだ。僕の方から喋り出すわけがないでしょう?

 

「えーと……私が方向音痴なの、覚えてたんですか?」

「…………うん」

 

 頭の中を某鉈系ヒロインが過る。まぁ、そんな設定もあったかもしれない」

 

「あ、それ戸部くんですよね。私、あのお話好きなんです」

 

 僕の脳内音声は声に出ていたか。恥ずかしい。

 しかし、戸部くんて誰やねん。僕は頭の中から知り合いやクラスメイトの名前を片っ端から照合していくが、戸部くんはいなかった。前いた学校の人だろうか。

 僕は今度こそ、ちゃんと考えて行動したい。僕はここで寡黙を破るのは些か戦略的ではないと判断した。

 

「にしても昇降口って、もう3日も通ってるのに全然覚えられないんですよね」

「……まぁ、そうだね」

 

 戸部くんは去った。しかし、何の話だったのだろうか。と、そこまで考えた所で気付く。魚住さんは「あのお話」と言っていたではないか。つまり、件の戸部くんは小説か何かのキャラクターの名前で、それなのにリアルの人名をサーチしていた僕はなんという阿呆だったのだろうか。恥ずかしい。

 

「あっ、自販機がありますね。この辺ですね、昇降口。段々と分かってきました」

「……まぁ、そうだね」

 

 魚住さんが方向音痴という新情報を僕は解析する。確かに、普通3日も通えば昇降口ぐらいは覚えそうなものだ。事務室なんて例外的使用回数低空飛行特別教室を除けば。ルビを振るなら、イレギュラースペシャルーム。酷い。魚住さんが方向音痴である事は、僕と魚住さんが一緒にいられた時間が大幅に増えた、将来的に増える可能性があるという点を考慮すれば悪い話じゃない。むしろ、僕という存在の頼り甲斐をピンポイントにぶつけられるし、利点だ。ただこれには一つだけ問題がある。それは、

 

「……僕も方向音痴なんですよ」

「あ、はい……はい?」

「……えぇ……はい…………」

 

 会話の方向性も見失ってしまう程の方向音痴だ、という事だ。

 

 




『戸部くん』というのは国語の教科書に出てくるお話『星の花が降るころに』のキャラクターです。
「あたかも」という言葉を使って短文を考える、という課題が作中に登場します。
戸部くんは「お前は俺を意外とハンサムだと思ったことが……あたかもしれない」などと言うのです。
たいそう面白い奴です。

これからの展開

  • 王道ボーイミーツガール
  • 青春は変化球チックなの
  • 叙述トリック(後付け)
  • 唐突にミステリィ
  • まさかの異世界転移チーレ無双
  • ○○オチなんてサイテー!!
  • 涼しいダジャレの憂鬱(セカイ系)
  • Rー17ぐらいのえっっっっっ
  • 挿絵plz
  • そんな事よりバトルを見せろよ!
  • そんな事よりダンロンの新作を!
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