恣意的情報非開示型整合性皆無系文体非論理的展開連続男女出逢似非軽文学   作:若かりし頃を思い出して

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本作は一人称ですので、『僕』が焦ると文章が感情的になって読みにくくなります。
『僕』に余裕があると、余計な事を考えて文章が思考中心になって読みにくくなります。



3日目

僕は方向音痴だが、魚住さんも方向音痴である。それが事実である事が目の前で、正確に言えば僕の後ろで証明されていた。

 

「昇降口は二階にないよ……」

「えっ? あ、あぁ……そうですね」

 

 昇降口に向かっているのに何故階段を上ろうとするのか。僕は振り向いて魚住さんに戻るように伝える。

 

「で、でも、それじゃあ何で二階に上がろうとしているんですか?」

 

 僕は言葉を発する前に少しだけ考える。僕は魚住さんを事務室まで案内していて、昇降口の目印となる自販機が見えて来たので役目を終了した。ハズだ。魚住さんも自販機を確認していた。だから、そもそも魚住さんが僕の後ろをまだ歩いている事がおかしいのだ。何で帰っていないのか。まさか、僕の事が好きなのだろうか。冗談だ。嘘だ。願望だ。魚住さんが僕の後ろに引っ付いて階段を登る理由はない。僕の方の理由は単純で、屋上に行こうと思ったからだ。

 

「……ちょっと用事があってね」

「ようじ?」

「用事というか部活だけどね」

 

 またしても僕の正直が出てしまった。もっとも、これは別に先程の様に相手を怒らせる正直ではないので問題ないけど。

 

「部活ですか……そう言えばまだ私、決めてません。何部に入っているんですか?」

 

 僕は言葉を発する前に少しだけ考える。僕は部活には入っているが、部活動はしていない。幽霊なのではなく、部活動自体が死んでいるのだ。果たして、ここで正直に「天文部」と告げて大丈夫だろうか。魚住さんがスターとかサンとかライクなパーソンだったら大変だ。プロブレムだ。

 しかし、僕は失念していた。僕が思考するという事は脳が働いて、血が巡って、酸素が流れて、世界が廻る、という事に他ならない。口は回らないけど、秒針は回る。

 魚住さんと僕の間には沈黙が表側守備表示でフィールドに。当たり前の如く、沈黙を破ろうと思考を巡らせる。沈黙の効果、"きまずい"という感情は「何か喋らないといけない」「相手と仲良く、愛想良くしないといけない」といった脅迫観念から来るものであり、沈黙という重圧はLPが少ない僕の方を先に押し潰した。

 

「……天文部」

「へぇ……そうなんですか……」

 

 またしても間に合わせの突貫工事で、その場しのぎでやってしまった。適当に対処すればその分だけ反動を付けて帰ってくる、それが直面した問題、というやつなのだ。魚住さんの好奇心は天文部で衰えなかった。流石にこれは僕にも分かった。まだ何か聞きたそうだ。というよりもう口が開いている。

 

「で、何で二階に上がろうとしていたんですか?」

 

 それについてのアンサーが先程の部活の話なのではなかろうか。それとも何だ。さらに踏み込んで"部活で何をやっているのか"を聞きたいのか。多分そうだ。僕は困った。まさかここまで来るとは思わなかった。好機だが、戦術不足、準備不足、経験不足でもある。こういう時の行動は昔から決まっている。ふんっ、戦術的勝利等くれてやろう!

 

「ちょっと……ね」

 

 魚住さんと目が一瞬合ってしまった。慌てて、ネオソラス週刊「煮始めて」築いた。あっといけない。今日家を出る前にお湯ガスを止め忘れたかもしれない。

 と、ネタチョイスが古い僕の逃避を嘲うかの様に、魚住さんは進撃する。これが進撃の巨人か。そんなもん階段の狭い壁に囲まれたここには呼んでないんだけど。ちなみに今のは、読んでないと掛かっている。天才か?

 

「……空を見るには、天井が邪魔だから」

「……?」

「あぁ、えぇっと……そう! 天体ショーだよ! Nみたいな」

「……? す、すみません」

「すみま……? えっ、あっ、こちらこそ……」

「? いやいや、謝るのはこちらですよ!」

「? いやいや、あやまってるのはどっちもだと思うよ」

 

 何という事だ。会話が噛み合わない。致命的だ。致命傷だ。1イニングに一人はランナーが出るけど後続が続かない、みたいな感じだ。

 僕は言葉に困る。何を言えば再び墓地から死者蘇生された"沈黙"を除外出来るだろうか。しかし、僕が熟考に熟考を重ねる暇もなく、魚住さんがバトルフェイズに移行。またしても僕は女の子に気を遣わせてしまった。これは男子としてのプライドやら何やらに関わる問題だ。でも、それは一昔前の考え。男女平等男女平等。うん、僕は悪くない。

 

「えーと……はい。なるほど。分かりました、多分」

「そ、そっか……なら、良かった。うん……あっ、一つ聞いて良いかな?」

「はい、何でしょう?」

「二等辺三角形は?」

「えっと……底角が等しくて、頂角からの二等分線が底辺の中点になる三角形ですか?」

「いや、まぁそうなんだけど。ほら、屋上では点対称じゃない?」

「屋上が点対称なんですか?」

「二等辺三角形だったら分かりづらかったら、遊園地でも良いんだけど」

「遊園地……?」

 

 何という事だ。会話が噛み合わない。致命的だ。致命傷だ。ランナーは出すけどセットポジションからのクイックが出来ない、みたいな感じだ。

 僕は反省した。Aカップの様に深く。何故こんな意味不明の会話を振ってしまうのか。いつだって自分の事しか考えられなくて。相手を思いやれる魚住さんが如何に凄いかが身に染みる。僕なんてタコだ。まぁ、僕は泳げないからタコにはなれないのだけど。

 と、僕がここまで思考を進めた所で僕のエクストラデッキから召喚された"沈黙"は再び墓地へ送られた。再三だが、沈黙を破壊するのに貢献したのは僕である。"きまずい"という感情は「何か喋らないといけない」「相手と仲良く、愛想良くしないといけない」といった脅迫観念から来るものであり、沈黙は魚住さんの方に攻撃宣言。すかさずトラップカード発動。と、そんな感じで魚住さんは脱線した話題を、何とも言えない空気を元に戻してくれた。なるほど。この前、親が空気清浄機でもポチろうか、なんて言っていたがその必要はなさそうだった。

 

「天文部なんですよね? どんな活動をしているんですか?」

「色々と」

「へぇ、どんなですか?」

「色々と」

「分かりました、ありがとうございます」

 

 素晴らしいコミュ力。僕なら「色々って、それを聞いてるんだけど」とか何とか余計な事を言って、夜中に布団にあらぬ怒りをぶつける場面だ。

 そうだ。僕も魚住さんを見習おう。何かそれっぽいあれをこう、そんな感じにしよう。具体的に行くと、会話始点自発的自然供給。ルビを振るなら、カンバセーションイノベーションセンセーション。せんせーしょんてなんやねん。

 

「魚住さんは何部に入るか決めてないんですよね? やっぱり文化部?」

「あっ、はい。よく分かりましたね……何でですか?」

 

 「何となく」とは言えなかった。僕は地雷を踏んでしまったかもしれない。やってしまった。小柄なのは可愛いと僕は思うが、本人がどう思っているかは分からないし、そういった特徴で自分を計られるというのは気分の良いものではない。何より僕がそういった特徴で魚住さんを勝手に理解した気になってしまっていた、というのが問題だ。それに「やっぱり」なんてのも言ってしまったし。僕は魚住さんに"文化部にいる様な娘"になって欲しいのか。最低だ。偏見だ。最悪だ。僻見だ。

 

「……ご、ごめんなさい」

「え、っと……何でですか?」

 

 とりあえずだが謝った。

 ここで、僕は、言うべきだ。「僕は貴女を型に嵌めようとしていた。僕は貴女じゃなくて、魚住さんじゃなくて、僕に優しくしてくれる、僕好みの都合の良い女の子が欲しかった」って。魚住さんからすれば知ったこっちゃない事だ。どうでも良い事だ。でも、僕にとっては、ずっと引きずって、夜中に布団をバフバフするのに値するミスだった。言動に出たって事は紛れもなく、僕の本心だ。都合良いってのは聞こえは悪いけど、悪いだけじゃない。便利ってのは少なくとも自分に合ってるって事だ。それを求めるのは自然だし、直す必要はないと思う。でも、僕は、何というか。スッキリしたい。

 何でか分からないけど、僕の語彙力では言語化出来ない感情に包まれていた。

 僕は長い時間、黙っていたらしい。魚住さんがまた沈黙を破った。今日だけで一体何度、この役目を魚住さんにやらせた事だろう。

 

「だ、大丈夫ですか?」

「あぁ、はい。ごめんなさい。大丈夫」

「そうですか。それなら良いんですけど」

「……あっ、帰らなくて良いんですか? もう時間結構経ってるし」

「えっ、あっ、そうですね。じゃあ、帰りますね。引き留めてごめんなさい……では、また」

「……では」

 

 昇降口にてくてく歩いて行く魚住さんの背中から「ごめんなさい」のメッセージ。何でだ。何やっているんだ。僕は。情けない。

 僕は言うべきだった。ちゃんと、言葉で、面と向かって。この感情を。言葉に出来ないこいつを。

 そうだ、感謝だ。この感情は。何で今更出てくるんだ。岡目八目? 何かそんなやつだ。遅いんだ。

 最悪だ。周回遅れだ。致命的だ。致命傷だ。

 僕は、魚住さんに、ありがとうって、言いたかったんだ。

 何でだろうか? 論理性のかけらもない。でも、そんなの決まっている。優しくしてくれたからだ。

 僕に話しかけて、僕が近くにいても嫌な顔一つしなくて、僕に優しくしてくれた。嬉しいんだ、嬉しかったんだ。僕は"愛を知らない"なんてそんな主人公ぶった重い過去を持っているわけじゃない。両親だって、良い人で、健在だ。友達だって完全にゼロってわけじゃない。良い環境にも甘んじている。むしろ愛なんてのには慣れている方だと思う。でも、嬉しく思えないわけじゃない。

 魚住さんとの出会いもラノベチックで、事実は小説よりも何とやらで、僕は本当に主人公になれるかもしれなかった。だから僕は、ちょっとだけでも変わろうって。少しでも小説の中の主人公みたいに格好良くなろうって、多分、心の底で思っているんだ。いろんな創作物を嗜んできた積み重ねが、もっとやれるだろって囁いているんだ。

 でも、それだけ。また出来なかった。また思ってるだけで、脳内だけで、痛々しいモノローグだけで終わってしまった。本当に清々しいぐらい、僕だ。

 

「良い線は行ったんだけどなぁ……」

 

 僕は呟いた。普通、こういう事を本当に呟いちゃう奴はいない。今は現実離れしたかった。

 僕は階段を降りて、もう見えなくなった魚住さんの背中を見つめた。

 何となく、自販機で誰も買わない牛乳パックを買った。

 

 

 




いつもにまして意味不明なので解説。
魚住さんの方は『僕』の事を事務的な関係としか思っていません。当たり前です、出会って3日ですからね。
『僕』はコミュ障ボッチなので、出会って3日のくせに友達になった気分です。早すぎます。
そのせいで「何コイツ独りで葛藤してるの? 何に葛藤してるの? 姿形の見えない敵と不毛な争い繰り広げてんの?」って感じになってます。
優しくしてもらった、とか言ってますけど、初対面の人に暴言吐く奴なんていませんからね。普通ですよ。
もっと対人経験を積みましょう。

これからの展開

  • 王道ボーイミーツガール
  • 青春は変化球チックなの
  • 叙述トリック(後付け)
  • 唐突にミステリィ
  • まさかの異世界転移チーレ無双
  • ○○オチなんてサイテー!!
  • 涼しいダジャレの憂鬱(セカイ系)
  • Rー17ぐらいのえっっっっっ
  • 挿絵plz
  • そんな事よりバトルを見せろよ!
  • そんな事よりダンロンの新作を!
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