やはり俺が黒の組織に居るのは間違っている。 作:ひよっこ召喚士
何も分からずに闇にポツンと浮かんでる
痛い辛い寒い怠い暗い怖い苦しい淋しい
数多の負の感情達がその身を取り巻いて
絡み付いて締め付けられ縫い付けられる
そのまま一歩も戻って来られなくなって
自分がその闇の一部になって消えていく
その光景に何故か安心感を抱いてしまう
消えて良い居なくて良い死んでも良いと
そんな時声が響いてきた大丈夫大丈夫と
何が大丈夫だそんな保証なんてないだろ
いったい何に向けた大丈夫の言葉なのか
それすら確かでないってのに目を開いた
見覚えのない部屋の中の知らない天井に
着替えた覚えのない服に見知らぬベッド
そこまで考ると拳銃の存在を思い出した
利き腕が動かないので反対の手を伸ばし
探すが見当たらず服が違うからだろうと
取り上げられたなら周囲にある筈もない
なのに無理に起き上がって探そうとする
上半身を起こした所でベッドの脇を見て
俺は数秒の間だが動きも思考も止まった
酷使し過ぎで感覚の薄い腕を握り締めて
そのままベッドに倒れて寝ている寒川幸
こいつが居るという事は寒川関係の家か
敵地になり得る可能性もなくはないのに
完全にでないが安堵している自分がいる
息を吐いてふと枕元の照明付近を見ると
俺があの日持ち出した銃が置いてあった
他にも携帯端末等も一通り置かれている
バーボンから渡されたチケットまである
律儀なのかなんなのか知らんが呆れるな
「目が覚めた様ですね」
寒川は起きておらず声も完全に男のもの
先程までの空気は無くなり即座に構える
視線を向けた先に居たのは白衣を着た男
男と言えど初老でこの怪我でも負けない
そう自信をもって言えれば良いが無理だ
弱っていて殺気も力ないとは言え無反応
片腕が動かず体も重いとなると厳しいな
着ている白衣から推測するに医者だろう
この場所が組織の研究所でない限りはな
「反応が戦場のそれですね…安心しなさい私は寒川家に雇われてる医師の一之宮です。そしてここは千葉にある寒川家の別荘の一つ…そうそう危険はないでしょう」
一之宮と名乗った男は距離を保ったまま
俺の怪我などの状態を淡々と話していく
頭の傷は縫ったが無理な動きは禁物だと
火傷の方は軽度で水ぶくれも出来てない
二週間で治るが薬は毎日塗る必要がある
身体が動かないのは疲労と出血が原因で
休んでしっかり食事を取るのが一番だと
肩は外れ腕の筋肉は断裂寸前だった様だ
ギリギリで耐えている事が奇跡だと言う
一日も経たずに起きた事もおかしいとも
外れた肩はきちんとはめられている様で
腕全体の腫れなども含めて完治するまで
数ヶ月は掛かるだろうとの診断を受けた
「それと拳銃の方も血が入り込んでたので整備はしておきました」
カルテを読み上げるついでに軽い口調で
何気ない世間話の延長線の様な雰囲気で
拳銃の整備をしたと言われフリーズする
「昔は外国を巡ってましてね。戦場にも何度も赴いて、その際に知り合った方に一通り教えられたんですよ。護身に一つ持っていけと実物と共にね」
通りで弱りきってる殺気が効かねぇ訳だ
戦場で殺気も怒号も聴き慣れてるんだろ
他にも何かあると俺の勘が告げているが
互いに深入りしても良いことはないだろ
それでも拳銃の整備のサービスは馬鹿だ
何者かも分かんねぇ奴にやる事じゃねぇ
「お嬢様が望まれましたのでね。そうそうこの別荘には私しか呼ばれておりません。お嬢様と私以外は他に誰もおりませんし、旦那様にも貴方の事は報せていませんのでご安心を」
一之宮は食事を持ってきますと出ていき
ボロボロの俺と寝たままの寒川が残った
普通の声量でそれなりに話していたのに
一切起きる様子はなく疲れてるのだろう
こいつも怪我を少しはしている様だしな
掴まれてる腕は振り解こうにも動かない
というか何故怪我をしてる方の腕を取る
部屋が広くてベッドの左右に空間はある
無事な方の手を持った方が良いだろうに
そんな事を考えていると一之宮が戻った
明らかに二人分の食事をカートに載せて
寒川は寝てるがまさかお前も食べるのか
「ああ、いえこれはお嬢様の分です。お嬢様お食事のお時間ですよ」
「……ごはん?」
寝惚けながら顔を起こして声に反応する
腕を離せ持ったまま行くな痛むだろうが
反対の手で促すととても簡単に腕を離す
寝ていた時の力はなんだったんだろうか
そして離した後はじっと食事を見ている
確か成人していた筈なんだが幼稚園児か
「こいつ幾つだ?」
「今年で二十六歳になられました。並べておきますのでお嬢様はお顔をお洗いになってきてください」
そう言って部屋の外に促すと歩いて行く
ふらふらしているがあれで大丈夫なのか
心配ではなく純粋に疑問を覚えるのだが
寒川家に仕えてる一之宮がやってるのだ
他人の目のない所では常にああなんだろ
セッティングするのをただ待っていると
部屋の外からドタドタと足音が聞こえる
「目が覚めてたんですね?!」
ああ覚めていたよお前よりも早くになあ
顔を洗った所で思い至ったのか水が滴る
とりあえず落ち着いて顔拭いてから来い
そう告げると顔を赤く染めて駆けていく
恥ずかしがるだけの常識は持ってる様だ
どうして良いか分からない事ばかりだが
しばらく成り行きに任せて何とかしよう
食事の準備は直ぐに終わり寒川も戻った
全員が席につき整った食事を食べ始める
舌にもそれなりに自信はあるが毒はない
体力回復も兼ねてしっかり食べておこう
燃費が良いとは決して言えない体だしな
「おくちにあった様で良かったです」
発言から考えるに一之宮でなく寒川作か
寒川が作っておいたのを持ってきた様だ
というかお嬢様なのに料理が出来るのか
武術も習ってる様だし結構活発なんだろ
それで食べながらでも会話位出来るよな
なんでお前は俺を此処に連れてきたんだ
この怪しい奴を秘密裏に助けようとする
「…? 先に助けられたのは私ですし、貴方はそんなに悪い人に思えませんでしたので……そう言えばお名前はなんて言うのですか?」
連れ込んだ相手を調べてすらいないのか
「お嬢様が本人から聞きたいと調べようとする私を止めましたので。私は見覚えがありますので予想は出来ますがお嬢様は知らないかと」
顔の変装も取られているし持ち物からも
調べようと思えば簡単に出来ただろうに
それこそ寒川の力を使わなくても出来る
なのに起きるまで待つとか馬鹿ばかりか
とは言え貴方なんて呼び方は虫唾が走る
本名にコードネームそれに偽名もあるが
顔もバレてて偽名を名乗っても意味ない
ましてコードネームをばら撒く気はない
「比企谷…比企谷八幡だ……」
「よろしくお願いします八幡くん」
いきなりくん呼びに変えてくるかこの女
年齢差的には呼ばれてもおかしくないが
距離の詰め方をそこの医師に一度教われ
「やはりそうでしたか。世間からは総武高校の麒麟児と呼ばれる天才高校生、スポーツ万能、学力もトップクラス、数多の大会で優勝をもぎ取る姿から八幡神が遣わした勝利の使者とも言われてます」
「へぇ、八幡くん凄いんですね」
天才だのなんだのは聞いたことがあるが
他の呼び方はどれも初めて聞いたんだが
自分の評判なんて調べる事はない弊害だ
余程のボロを出さない限りは優秀ならば
大抵の事は許されるし疑われないからな
その為に結果を残してるのが始まりだが
こうも知れ渡り過ぎたのは正直失敗した
まぁ俺の話はどうでもいい本題に入ろう
寒川は俺と今後はどうするつもりなんだ
「どうすると言うと?」
色々と理由はあれど俺とお前は関わった
お互いに一度助け合って貸し借りはなし
命の件はそれでお終いで構わないだろう
あるとすれば脱出時の貸しだがもう良い
後はこれから先のことを決めてしまおう
全てなかった事にして忘れてさよならか
それとも何かしら取り決めでも決めるか
なぁなぁで済ませられる関係でなくなり
方針の決定はどちらかと言うとお前次第
なんやかんやちょうどよく食事も終わる
決めるタイミングがあるなら今この時だ
「言いたい事は分かるんですけど。私としては付き合いを続けたいと思ってます」
はっきり言って犯罪者の俺と関係を持つ
その意味を分かっていて言っているのか
仮に何かあればお前だけの問題ではない
そこまで告げると表情がキリっと変わる
「分かってます。これでも会社の一部門を預かる立場ですからね。それでも折角の縁を失いたくないんです」
とは言っても思い切り犯罪は出来ません
なんて困った様に笑う寒川をじっと見る
「私は比企谷八幡くんと秘密を共有し助け合う協定を結びたいです。貴方が『
俺は朦朧とした時そんな事を叫んだのか
意識が無いとはいえ何を言ってるのやら
あと俺が夢で聴いた大丈夫は寒川の声か
何が駄目で何が良いか決める必要がある
寒川グループではなく寒川幸との関係だ
そんな得がある関係とは決して言えない
だが伸びた手を振り払うには遅すぎたな
「はぁ、今後はよろしく頼む」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
不利益が生じない限りは続く関係が増え
当分は色々と準備が必要になってくるな
とりあえずバーボンに何て言うかからか
言い訳を考えてると一之宮が慌てて来た
「大変ですお嬢様?!」
「何があったんですか?一之宮さんがそんなに慌てるなんて……」
「たった今旦那様から連絡があったのですが、旦那様の代わりに鈴木財閥の園子お嬢様とご友人の毛利蘭様、そして蘭様のお連れとして子どもが一人がお見舞いにやってくると!!」
「嘘でしょう?!せっかくお父さんの追求を振り切って此処に来ないように伝えたというのに……一之宮急いで八幡くんを家まで送って…」
寒川が一之宮に指示を出した瞬間に音が
来客を告げるインターホンが鳴り響いた
「手を取るのはやまったか?」
そう溢してしまった俺は悪くないだろう
『0』
園子蘭コナン「来ちゃった♡」
幸一之宮八幡「来ないで……」
という事で八幡個人への味方として寒川幸さんが正式に決定しました。グループとしての協力は出来ませんがそれでも手を回したり、情報を渡したりは出来るかな。
そして今回から登場したのは一之宮、これも例のごとく地名から貰っております。基本的に医師ですが幸さんの執事に近い役割もこなしています。(本当は幸さん付きの執事の予定だったけど、八幡の怪我が酷いのでただの執事設定だと厳しいかなと思って医師設定が後から追加されたのは内緒)
基本的にオリキャラばかりの作品にはしたくないのでこの二人以外はしばらくは出ないと思います。(保険をかけて絶対にとは言わない小心者)
という事で比企谷八幡=フィーヌとは知られて無いですがコナン君との出会いが持ち受けております。まぁ逆にコナン=工藤新一もバレてないけどね。
ちなみに新一と八幡はもちろんですが、様々な部活の助っ人をしている関係で蘭&園子とも面識はあります。会ったら必ず話すような中では無いですが、話したことはあるし、互いに認識はしてる。
視点はこのまま腐り目です。見透かす目にはなりません。そしてそれが終わったらようやく例の彼女の話へと進んでいきます。
という事で今日からまた仕事なので次の更新がいつになるか未定になります。(おそらく早くても土日)あぁ、楽しかった四連休。おかげでたくさん投稿出来た。
それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。