やはり俺が黒の組織に居るのは間違っている。 作:ひよっこ召喚士
木々に紛れ眠る少女を運ぶ男子高校生
字面だけで犯罪の匂いが漂ってくるが
現状と関係のない所での犯罪者である
いや威圧で気絶させたのも十分な罪か
まぁ今さら罪の一つや二つは関係ない
高校生は川に出ていて帰ってはこない
平塚先生も小学校側と話し合いに出た
小学生も此方の建物に来る時間でない
人目を避けるだけで簡単に移動出来る
そのまま気絶してる少女と服を洗って
着替えさせている途中で身動ぎをする
思っていたよりも早い回復に感心する
下っ端にやった時には数時間寝てたが
あの下っ端が少女以下なのかそれとも
「うぅ…ここは……っ?!」
目を合わせた瞬間に意識を覚醒させる
浮かび上がる恐怖に声も出ず息を呑む
騒々しくないのは面倒がなくて良いが
このまま硬直され続けていてもなんだ
「身体は軽く洗い流した。服は洗濯してビニールに入れた。今お前が着てるのは少しでかいが妹の物だ」
理解するよりも早く説明だけをぶつけ
それを呑み込んでいく様子を観察する
様々な感情が渦巻いているのが分かる
だが表情は不思議と落ち着きを見せる
状況と言葉に対して必死に頭を回して
何かに納得していくに連れて少しずつ
恐怖を薄れさせて静かに視線も向けて
それでも口を開くには勇気が足りない
いや勇気は十分か、足りないのは場数
音も出さずに口を開閉だけさせている
それだけで称賛に値する精神力だろう
面白いと思え、手を貸そうと口を出す
「自分の立ち位置を理解出来たか?」
何から話せば良いかも分からない奴へ
最大限の優しさに溢れた問いを投げる
「…うん、私が一番の馬鹿だった」
馬鹿ばっかと他者を評価していた事か
自身の発言を覚えていて流用するとは
中々にユーモアが感じられる評価方だ
「惨めだとか言ってたのも…全部が馬鹿馬鹿しくなっちゃった……ねぇ、名前教えて」
「知りたいと思うのか?」
八つ当たり時ほどではないが圧を送る
こんな事になっておいて知りたいのか
そして俺へと踏み込む気があるのかと
「知っとかないといけない気がする」
真っ直ぐに此方を見てそう言い切った
「比企谷八幡だ」
もう周りからの救けは必要ないだろう
これで高校組がどう動くのか次第だが
別にわざわざ伝えてやる必要もないか
そう結論づけると鶴見に帰るよう伝え
とりあえずこの場は解散して終わった
結果として川を離れた時間は長めだが
鶴見が早く起きたからまだ誤魔化せた
少し疑いの目もあったが大丈夫だろう
そのまま時間いっぱいまで川で過ごし
今日の自由時間は終わり仕事の時間だ
予定してるイベントは夏らしく肝試し
お化け役にと衣装は用意されているが
子供向けの為にそこまで恐ろしくない
「何この安っぽいコスプレ」
「たかーまがーはらーに〜!」
「魔法使いってお化けかなぁ」
文句や疑問が飛び交うが他の物はない
それぞれ適当な物を選んで着替えてく
「お兄ちゃんお兄ちゃん、ジャーン!!」
何か猫っぽい格好の小町が姿を現した
「それは猫のお化けなのか?」
「多分?よくわからないけど可愛いから何でもいいかなーって」
どうでもいい事は基本的にノリで動く
だからこういうイベントと相性が良い
褒めつつ会話を続けると笑顔を見せる
そんな兄妹の会話を楽しんでいる横で
「それで件の問題はどうするの」
このタイミングでなのは最後だからか
にしても諦めが悪いとしか言えないな
打つ手なしとまで言わないが案もなく
ただ気になるまま話題を掘り返すとは
「イベント中に個人に話し掛けるのは難しいよね」
「僕は変わらず、本人の意思を優先かな」
「とりあえずその子のグループを気に掛けておくくらいしか出来ないかも」
何があると言う訳でなく会話は終わり
そのまま配置につき肝試しは始まった
〜Close〜
肝試しのコースに沿って歩くグループ
それはイジメに関わってる子ばかりだ
その中に居てもだからどうしたと思う
無視は勿論、小さな悪口も聞こえてる
だけどただただ馬鹿馬鹿しく感じれる
私は昼間に本当の恐怖を味わっている
この暗がりの風景すら可愛らしい闇を
身体の底から震え上がる様なあの瞳を
あの人を前にして、私は壊れちゃった
それが何なのか言い表す事は出来ない
だけど私を作り上げる大事だった物で
失った筈なのに何処か清々しく思えて
それは新しい自分を私は得たからかな
こんなので惨めだとか言ってられない
これまでの全てが馬鹿馬鹿しく無意味
可愛いイジメも学校も母さんの考えも
今となっては全部がどうでもいいから
投げ捨ててようやく気分も軽くなった
楽しくて、嬉しくて、舞い上がってる
それもこれも全部全部あの人のおかげ
悩みと一緒に私を壊してくれたあの人
比企谷八幡、うぅん、八幡、他と違う
私にとっても特別な、大事な唯一無二
今の私はきっと八幡の為に存在してる
そんな風に私は私を結論づけて笑った
彼女達は何故か私から更に距離を取る
殆ど一人で歩いているのと変わらない
八幡の言う通り独りって楽で良いかも
そんな事を考えてると八幡を見つけた
あの時と同じ空気を纏って佇んでいる
思い出したからかまた少し漏らしてる
流石に恥ずかしいけどそれ処じゃない
此方をじっと見つけてくる血濡れの姿
私は取り込まれる様に八幡に近付いた
あぁ、こんなにかっこいい八幡なのに
なんでみんな叫びながら逃げるんだろ
そんな事を考えながら八幡に抱き着き
私はここ最近で一番の幸せを味わった
〜Open〜
有事の際にと血糊を荷物に入れていた
着替えの途中でそれを思い出した俺は
メイク道具とも合わせて自身を飾った
衣装はボロボロで着心地も悪い服だが
これならば怖さは十分と言えるだろう
結果は上々でインパクトある見た目に
小学生達もしっかり驚いて帰っていく
同時にワイワイ来ても怖くはならない
それなりに時間が掛かるのは仕方ない
そしてようやく最後のグルーブが来た
そこには見知った顔が組み込まれてる
俺に気付いた瞬間に顔を綻ばせている
本の少しだが試してみたくなった俺は
昼間程では無いが圧を強めた顔を作る
その瞬間にまだ気付いて無かった面々
鶴見以外の連中が俺の存在に気付いた
そして一瞬で顔を青くして恐怖を示す
一歩近付くと阿鼻叫喚といった様子で
我先にと押し合いながら逃げていった
そして残った一人は俺へと飛び付いた
「八幡いた!!…やっぱかっこいい」
抱き着きながら呟かれて聞こえない等
惚ける必要は無いが言及する気もない
それ以前に存在を喜び抱き着く時点で
此奴が何処まで堕ちたか分かるもんだ
少し自覚を促すだけのつもりだったが
元々そう言う素質があったんだろうな
飼うには小さ過ぎるし、流石にマズイ
下手な噂でも流されれば面子問題だし
それ以前に使い道だって現状ではない
放置する気はないがまぁ追々考えよう
騒ぎになりつつ肝試しも終わりを迎え
高校生組に顔を出すとギョッとされる
そう言えば血糊を落としていなかった
「通りで小学生が泣いてる筈だわ」
「私もふつーに怖いんだけど……」
「べーわ。ガチすぎじゃんヒキタニ君」
「流石だね。よく似合ってるよ比企谷君」
呆れや感心、腹の立つ評価を受け取る
平塚先生も痛そうに頭を押さえてるが
向こうに知られない限りは平気だろ
自前の道具でササッと赤を落としてく
これで小学生が少し怖がりだっただけ
俺はお化け役に真面目に徹しただけで
小町のノリにつられた訳ではないのだ
いや二日三日関わらないのはデカいか
自分の知らない所で引っ張られている
やはり俺は潜入には向かないだろうな
まぁ、それでもどうせ直ぐに戻るだろ
諦めなんかではなくただの事実確認だ
「八幡!!」
使い終わった道具をしまい込んでると
楽しげな声と共に背中に衝撃が加わる
まぁ、近付いているのは分かってたが
「何の用だ?」
「連絡先ちょうだい」
離れる気はないと主張する様に言った
この状況とその発言に周囲はざわつく
「えっ、留美ちゃんだよね?!」
「いつからそんなに親しくなったのかしら?」
「へぇ、既に手は打ってたのか。彼らしいね」
勘弁したい勘違いはされてない様だが
流石に丁寧に説明をしてやるのも何だ
とは言え絶対止まらないのが一名いる
「は、え、ちょっとなんでお兄ちゃんに抱きついてるの?!小町の許しもないのに?!今すぐ離れて!!」
「…………」
「聞こえてるでしょ!!無視しないでよ!!」
「誰?…うるさい…」
「小町はお兄ちゃんの妹なの!!お兄ちゃんは小町のなんだからあなたは離れて!!」
「八幡の妹…!!…よろしく」
「え、あ、よろしく…じゃない!!なんで抱きついてるの?!」
「八幡が居たから?」
淡々と思うままに行動している鶴見と
動揺して感情のままに喋っている小町
面倒になったので鶴見を引っ剥がして
メモを放り投げ早足でその場を離れる
なんとも騒々しい最後になったもんだ
その後は特に語る様な事柄は起こらず
ボランティア合宿自体も終わりとなる
そう、語る様な事は何も無かったのだ
〜Close〜
ボランティア合宿も終えて帰る途中で
迎えの時間じゃないのに姉さんが居た
友人と買い物して帰ると言う当たり前
私にとって数少ない機会を消し去った
今までは諦め、恨み、泣き寝入ってた
「姉さん…なんであんなに無理やり攫うように帰らせたの?」
あれ以来考える事があって顔は出した
やっぱり考えてる事は分からないけど
それでも関係性は良くなっている筈よ
実家で母と話す機会だって最近はある
用事があるのなら連絡が送られてくる
それなのに連れ去る様に私を回収して
いったい何をそんなに焦っていたのか
私には全然見当もつかない事ばかりで
ただただ疑問を解消する為問い掛けた
「雪乃ちゃんは私に怖いものってあると思う?」
「えっ?」
いきなり関係ない様な質問を返されて
一瞬思考が鈍るけど頭を回して考える
しかし、出てくるのはあの姉さんに?
と欠片も思い付かないと言う事実だけ
口に出すのは憚られたけど沈黙が答え
姉さんは怒るでも笑うでもなく頷くと
「そう思われても仕方ないよね……でも、私にもどうにもならない怖いものはあるんだよ?」
そう言い普段の作った笑みを浮かべる
だけどその笑みはどうにも穴だらけで
取り繕う事さえ出来ない素顔が見えた
『0』
留美「八幡の妹…いずれ私の妹…」
小町「いやそのりくつはおかしい」
はい、と言うことでこれにて合宿ボランティア編は終わりとなります。関係性を壊して解決ではなく、意図せずルミルミが壊れて解決と言うことで、やはり破壊は全てを解決する。
まぁ肝試しの阿鼻叫喚で結局関係性も壊れてるけどね。根本的なイジメ問題はきっと平塚先生が頑張る。
いやぁ、Page3を午前5時書き上げて、寝て10時に起きて、のんびり続きを書いて今(午後4時)の投稿です。平塚先生、小町に続いての〜Close〜ですね。(※三人称視点は除く)
まぁ、色々と含むところはありますが、ルミルミは今後もチラホラと出てくるかもしれませんね。
そして最後にもう一人〜Close〜を挟み込み、チラッと登場しました例のあの人、まぁ誰かは分かりきってますが魔王とよく評される雪ノ下陽乃さんでございます。
見えない所で雪ノ下家の関係性は原作と変わってるんですよね。八幡との関わりで地味にそれぞれ成長してるので、効いたよね早めのユキノンと言う感じで関係改善。
まぁ、今回の話はルミルミと陽乃さんがまぁ原作キャラであるのも含めてキーな部分が強く、幾つか案がある中でどれにするか決めるのに手間取ったのも一応Page3の投稿の遅れの一因です。(ほぼサボりなのは変わらず)
そして私の独断と偏見と今後の流れを踏まえてようやく決定した結果、出来上がったのが闇落ち気味ルミルミと不穏な発言の陽乃さんです。
色々と悩んでた分、私の中でなんとなく書き切った感が強いんですがこの小説はまだまだ続きます。次はFile.5の終わりで予告していた劇場版になりますのでお楽しみに。
それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。
(後書き書くのに20分掛かった)