やはり俺が黒の組織に居るのは間違っている。   作:ひよっこ召喚士

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おっちゃんの知り合いで九がつく人が誰なのか全く分からなかった為、先に八番であろう沢木公平さんの家に訪ねる事となった。

 

ワインに関する話でおっちゃんだけでなく、白鳥刑事も盛り上がり、事件の話から大きくそれつつあったが、目暮警部が軌道修正を図って予定を訊ねる。

 

「旭勝義さんってご存知ですか?都内で十数軒のレストランを経営する実業家なんですが?」

 

「あぁ、旭さんなら一度、仕事の依頼を受け会った事があります。妙に気に入って貰えて、紹介制のバーに連れて行って貰いましたよ。確か今度東京湾に海洋娯楽施設アクアクリスタルをオープンするとか…」

 

「はい、そこのレストランを一軒任せても良いとおっしゃってくださって」

 

旭勝義、旭の字…そう俺が頭の中で思い付く頃には手元に名前も書かれているリーフレットを持っているおっちゃん達も思い浮かんでいる様だ。

 

「旭?」

「待てよ…」

「九だ!!旭の字に九が入っている!!」

 

気付いた驚きと共に皆が声を上げ、おっちゃんも思考しているが何処か納得がいっていないみたいだ。

 

「と言うことは次に狙われるのは旭さん」

「しかし、私はペットの猫探しの依頼を受けただけですし、バーに紹介はしてもらいましたが飲んだのも依頼を完了した日の夜だけで…親しいと言える程ではないんですが…」

「村上はそう思っていないかもしれん。とにかく沢木さんのガードも兼ねて旭さんに会ってみよう」

 

警部さんの言う通り、村上が正しくおっちゃんの交友関係を把握しているかは分からないから備えておくに越したことはないだろう。

 

それから蘭とおっちゃんとで少し問題はあったが、沢木さんの了解を得てみんなでアクアクリスタルへと向かう事になった。

 

駐車場でも一悶着会ったが、人気モデルの小山内奈々、カメラマンの宍戸永明、バーのマスターである宇佐門大西、エッセイストの仁科稔と共にレストランへと向かった。

 

「うっははは、まるで水族館みたい!!まじ海中レストランね」

 

海の中に建てられたレストランは奈々さんの言う通り水族館の様で、ガラスの向こうに見える景色に全員が少なからず圧倒されている。

 

モノレールに乗り、エレベーターでレストランまで降りている間に既に三時にはなっていると思うが招待されている面々と約束している相手である旭さんの姿は見られない。

 

「旭さんが見当たらないようですが」

「妙ですな。客を招待しておいて」

「まさかもう村上に」

 

そう、姿が見えないと言うことはし既に村上の手にかかってしまい死んでいる可能性がある。異常がないか調べにいくおっちゃん達に紛れて俺も施設の中を見て回る。

 

フロアに帰ってくると全員が固まって壁の近くの席へと座っていて、既に大まかな説明を目暮警部が終えた所だった。

 

「うぅん、となると六は俺の事かもしれないな」

「なんで?」

「宍戸の宍には六が入ってるだろ?」

「はぁ、確かに!!」

 

事件の事を聞いても飄々とした様子で六が自分かもしれないと語る宍戸さん、目暮警部が納得の声をあげるが、数字が入ってるのは宍戸さんだけじゃない。

 

「他の三人にも数字が入ってるよ」

「何?!」

「ほら、奈々さんは七、仁科さんは二、マスターは名前が大西で西のしたが四に見えるよ」

「そうか、これで三と一居れば全部の数字が揃う」

「三なら居るぞ君の目の前にな」

 

この場に足りない数字の事をおっちゃんが言及するとなんでも無いように目暮警部が三が目の前にいると言う、おっちゃんの前にいるのは白鳥刑事、まさか…

 

「おい、まさか?」

「私の名前は白鳥任三郎なんです。でも流石に一はいないようですね」

「新一、一はもしかしたら新一の事じゃないかしら?」

「工藤くん、ここに来るのかね?!」

「いいえ、でもふとそんな気がしたんです」

 

 確かに、俺が小さくなってなければ当然この事件に興味を持って一緒についてきていた筈だ。てことは一はやっぱり俺の事か…

 

「皆さん、年のためにお聞きしますが村上丈との関係は?」

「あるわけないじゃないそんな男」

 

目暮警部が村上丈と関係がある人がいないか訊ねると真っ先に奈々さんが否定を返す、まぁ十年間刑務所にいたから関わりがない方が当たり前と言えば当たり前だが…否定の言葉は続かなかった。

 

「私はあります。エッセイストになる前は犯罪ルポライターをやっていましたからね。村上丈の事件を取り上げた事があります」

「俺もあるな。前に殺人犯の肖像という写真集で村上丈を撮影したんだ」

 

仁科さんと宍戸さんはそれぞれ仕事で村上丈と関わりがあったそうだ。仁科さんは記事にするという間接的な形だが、宍戸さんは写真を撮るという直接的な面識まであると言う。

 

「その時、なにかトラブルは?」

「別になかったよ」

 

トラブルがないとしても一方的な逆恨みなんかも考えられる為に何とも言えない。宍戸さんだけでなく自分について調べてる際に記事を見て仁科さんに反感を抱いてる可能性もある。そして最後…

 

「僕自身は思い当たる所はありませんね。十年前なんてまだ十四ですしね。ただ、暗黙の了解でお客同士も探られない様になってますし、流石に真っ黒な方は居ないと思いますが、何処かで繋がりがあってもおかしくはないですね」

 

この人、若いと思ってたがまだ24なのか。それで自分の店を持ってて、それ以外でも何かしら収入を得ているとなると相当だな。

 

っと事件も関係ない事に意識を割いてる暇はないな。確かに秘匿性が高い店となると客の中に村上と関わりがある人が居る可能性は零ではない。

 

ただ村上は一匹狼で有名だったのであればその線は薄い。狙われるとすればおそらくおっちゃんが通っているバーのマスターだからになるだろう。

 

それぞれが理由を話していると奈々さんの表情に少し陰りが見え、目暮警部が確認し、奈々さんも出所日を確認するが詳細は語らずに話が変わった。

 

そこから奈々さんが仁科さんの本に文句をつけ、ブラインドテイスティングに発展。結果は仁科さんは銘柄を外してしまい、沢木さんが的中させ、仁科さんは恥をかいた形になった。

 

「沢木さんがそう言うなら良い熟成の様ですね。僕も少し気になります」

「じゃぁ、みんなで飲もう。持ってくるよ」

 

沢木さんのテイスティングの結果を聞いてワインに興味を持った宇佐門さんに仁科さんに苦言を呈してご機嫌な奈々さんがグラスとワインの準備を始める。

 

「俺はビールだ。厨房は?」

「あっちだよ」

「よし、小僧案内しろ」

 

宍戸さんはワインよりビール派の様で厨房の場所を聞かれて答えると案内する様に言われる。ただ、誰が小僧だっての。小僧呼びは変わらなかったが冷蔵庫の中にはジュースもある様でついでに蘭の分も持っていくとするか。

 

帰り道、奈々さんとは真逆に機嫌の悪くなった仁科さんが少し離れた席に一人で座っているが声を掛けてもこれはしゃあねぇな。蘭にジュースを手渡していると無理して何本も持ったからか落として机の下に転がしてしまった。

 

「あぁ、奈々さん。頼んでおいてなんですが少量でお願いします」

「あれ、どうしたのマスター?マスターけっこう飲める人じゃん」

「実は怪我をしてまして完治まで多くは飲めないんですよ」

 

バーのマスターをしてるぐらいだからお酒は好きなんだろうし、ワインを気になるって言ってるんだから飲めないって事はないと思ったけど怪我をしてんのか宇佐門さん。

 

「あら、それはお大事に。それじゃこんくらいで良い?」

「えぇ、ありがとうございます。沢木さんが言う通り中々良いですね。熟成具合が良いのか香りは特に…」

「沢木さん、もう一杯どう?」

「いえ、私はミネラルウォーターにします」

 

ワインを飲んでいる人たちの声を横に、座ってる人の足に気をつけながらジュースを拾って出てくると手に持っていた二本をおっちゃんに取られる。

 

「すまんな」

「えっ、おじさんビールじゃないの?」

「あったりまえだ。いつ村上が襲ってこないとも限らないんだぞ。あ、警部一本どうぞ。」

 

ビールじゃないのかと思ったが理由を聞いて確かにと納得してしまった。とは言え人の分まで取っておいて人に勝手に渡すなよな。

 

「コナンくん私は良いからこれどうぞ」

「良いよ。また持ってくるから」

 

そんなに厨房まで距離があるわけでもないし、沢木さんも厨房に向かってるし、もう一度行くくらいは別になんでもないと駆け出した。そっと扉を開くと沢木さんは調味料の棚から一つ取り出して舐めていた。

 

「ミネラルウォーターなら冷蔵庫の下の引き出しだよ」

「ありがとう。珍しい調味料なんでちょっと味見をしていたんだ。コナンくんのジュースは上かな?」

 

珍しい?…俺の見間違いじゃなければそこまで貴重なものとかではないし、あまり使われないものでもないと思ったが、俺が子どもだから分かりやすくそう言ってるのか。

 

招待された面々はワイワイとした雰囲気の中で時間が流れていく、既に村上の事なんか忘れたかの様に感じられ、危うさはあるが緊迫し過ぎで疲弊したり、ギスギスするよりはマシか。

 

「所で皆さん今日はどういう理由で呼ばれたんですか?」

 

呼ばれた理由は村上と直接関係は無いだろうが、念の為か目暮警部が訊ねる。

 

「秘書の人から電話があったんですよ。旭さんが俺のファンで一度会って話がしたいと、たぶんこの施設の宣伝でもして欲しいって事なんじゃないの?」

「私なんかプレゼントまでもらっちゃったもんね。このマニキュア、フランス製ですっごい高いんだ」

 

宍戸さんが呼ばれた理由は本人が語る様にもうすぐオープンする施設に関する事と考えればおかしくない。奈々さんに関しても人気モデルが話題に出せばこの施設も箔が付くと言った所か。

 

「仁科さんもそうですか?」

「あぁ、そうだよ」

 

少し離れた位置の仁科さんも此方の話には耳を傾けていた様で苛立ちながらもしっかり応えていた。

 

「宇佐門さんもですか?」

「僕は違いますね。秘書ではなく旭さん本人に少し前に声を掛けられまして、レストランで働かないかと言う話をまたしたいのだと思います」

 

呼ばれた理由は沢木さんと同じって訳か、それにしても()()ってのが気になるな。以前から誘われていたとすると旭さんとの関わりは長いのか、おっちゃんをバーに紹介したのも旭さんだっていうしな。

 

そんな事を考えていると奈々さんはマニキュアとワインのコルクで遊んで宍戸さんがからかって笑っている。その傍らで宇佐門さんがふと下へ視線を向け、何か紙を拾い上げる。

 

「沢木さん貴方のです。下に落ちてました」

「沢木公平様、遅れるかもしれないのでワインセラーのM-18番の棚からお好きなワインを取ってきて皆さんに出しておいてください。鍵はレジカウンターにある袋の中にはいってます。よろしく。旭勝義」

 

どうやら約束の時間に間違いはないが旭さんは遅れてくるそうだ。しかし、さっきジュースを拾った時にあんな紙あったっけ?見逃してたのか?

 

「ねぇ、あたしワインセラー見てみたい」

「俺もどんなワインがあるか覗いてみてぇな」

「じゃぁ一緒に行きましょう」

 

奈々さんと宍戸さんがワインセラーに興味を持ち、沢木さんに便乗する形でワインセラーへと向かい、それに他の面々もついていく事になったのだが。

 

「すみません。興味はあるんですが、患部をあまり冷やさない方が良いので僕は遠慮します。厨房の方から新しいグラスを用意しておきますね」

 

右腕をさする様にして宇佐門さんが一人で残ると言った。今のところ村上が順番に危害を加えているとは言え、命を狙われてる状況で危険だとおっちゃん達が言ったが大丈夫と笑って歩いて行ってしまった。

 

少し心配だがここにいる人の中で一番数字の大きい沢木さんの方が危ないと思い俺もワインセラーの方についていく。

 

「ほぉーこれは」

「壮観ですな」

 

沢木さんがドアを開けて照明のスイッチをいれると、立ち並ぶワインの棚の数々がそこにあった。部屋の中は外と比べて少し気温が低く、蘭が腕をさする。

 

「涼しい」

「いいえ、暖かすぎるくらいですよ。温度は十度から十四度くらいがワインを保存するのに理想的な条件なんですが、ここは十七度と高過ぎますね」

 

なるほど、だから宇佐門さんも来る事を躊躇ったのか。これよりも三度から七度も低いとなると身体に障るというのも分かる。あの人も沢木さんとよく話してるだけあってワインの知識は深いんだろう。

 

「M-18番の棚は?」

「あれだよ…危ない!!」

 

沢木さんと一緒に棚を探してワインセラーの中を歩いていると棚の前に見えにくい線が中に浮いているのが見え叫んだ。

 

その直後に後ろから鋭いボウガンの矢が飛んできて沢木さんのすぐ隣を通り、反対側の樽へと突き刺さった。

 

「ブービートラップだ!!おじさん、警部さん!!」

「これは私の脇腹を撃ったのと同じ矢だ」

 

飛んできた方向を確認するとワインの後ろに隠されていた様で割られた瓶の奥にボウガンの仕掛けが見える。

 

「スペードの八?!やはり仕掛けたのは村上であの置き手紙も村上が…」

「だとしたらなぜ村上は九を飛び越えて八の沢木さんを……まさか?!」

「警部、ひとまずこの建物から避難しましょう」

 

沢木さんが狙われたという事はトラップへ誘導しているあの置き手紙も旭さんのものではない。つまり、旭さんが生きている保証もない。

 

同じ様な仕掛けがこの建物の何処にあるか分からない以上はとどまり続けるのは危険だろう。おっちゃんの意見に目暮警部が賛同し、皆で出ることになり、レストランの入り口へと揃って脚を進めるが…

 

「あれ、しまっているぞ。出口はここではなかったかね」

「いえ、確かここです」

「帰るんならコート取ってきて良い?」

「どうぞ」

 

降りる際に使ったエレベーターがある場所への扉が閉まって通れなくなっている。白鳥刑事が確認しようと扉に向かう傍らで奈々さんがコートを取りに席へと向かったかと思うと、何かに気付き高い叫び声が響いた。そして海中レストランの外、海の中に浮かんでいる旭さんの姿が全員の目に映った。

 

「旭さん?!」

「スペードの九、やっぱり村上が?!」

「警部このドアは電子ロックされていて開きません」

「なんだと?!よし、応援を…だめだ圏外か!!」

「切られてる。警部非常口を見てきます!!」

 

旭さんの死亡に続き、ドアが開かず、この施設に閉じ込められた事が判明する。受付に置かれている電話は線が切られている様でおっちゃんが非常口を見に走ったが、帰ってきたおっちゃんの顔は暗く、どうやらセメントでドアが塞がれていたらしい。

 

「どうやらワインどころではない様ですね」

 

ワインのグラスだけでなく、ついでにツマミの類も用意していたのか手にいくつか皿を持っている宇佐門さんも、それらを別のテーブルに置いて少し険しい表情で何が起きたのか聞きに来た。

 


〜Close〜

 

「えぇ、そうね。対象の家の捜索は上手くいったみたいよ。探られて痛い情報はなかったらしいわ」

 

『そうか、それでなんで俺に連絡を寄越した』

 

「あら、伝えとかないとまた貴方の好きな疑わしきは罰せよで動いちゃうじゃない」

 

『それが組織のやり方だろう』

 

「やるんなら組織の面子を潰した奴にしたらどう?不服だけど貴方のお気に入りの宇佐が動いてるわよ」

 

『はっ、随分と適当な牽制だな。煽らなくても今回は動かないでおいてやるよ』

 

「なに、既に酔ってるのかしら?気持ち悪いくらい素直ね」

 

『なに、俺が出る意味もねぇってだけだ』






『0』


本日二話目の投稿です。
思ったより長くなってる。

またまたCloseで、電話相手として新しい人は出てきてますが、視点は増えてませんし、今回は地の文もないですね。まぁ、誰かは分かると思います。

とりま、続き書きますので
読んでくれている方々に多大なる感謝を。
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