やはり俺が黒の組織に居るのは間違っている。   作:ひよっこ召喚士

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予想を外れ、夢見は悪いどころでなかった

 

夜中に跳び起きて一睡も出来ていない

 

珍しくもないが頭が痛く、視界は歪む

 

はっきり言って最悪な気分だ

 

こういう時に主席の名は便利だ

 

放課後は部活の助っ人としての約束がある

 

それに備えてせめて体を休ませようと保健室を目指した

 

何も言わずにベッドを借りて横になる

 

眠ることなくただ目を閉じ時間が過ぎるのを待った

 

こんな日はよくある事でもう慣れ過ぎている

 

だが、今日は少しボーっとしてしょうがない

 

少し思考に意識を割くことにした

 

今日入る予定なのはサッカー部だったか

 

サッカー部と言えば去年のアイツを思い出す

 

あの時も助っ人として俺が入ったのだが

 

大会で結果を残すほどの東京の高校と試合とあって

 

かなりの勢いで頼み込まれたのを覚えている

 

俺のおかげでうちの高校もあちこちで結果残してるからな

 

それで優秀校同士でと練習試合が決まったんだった

 

たしか帝丹高校という名前だったか?

 

俺と同じく助っ人として入っていたアイツが

 

高校生探偵”工藤新一”が居たあの試合

 

Jリーグにスカウトされるレベルなのに

 

探偵業の為に退部したという馬鹿だったが

 

才能と言う面では化け物と言っても良い奴だった

 

それは勿論探偵としてもだ

 

俺が相手の思考を読んで動いてるのを見破り

 

仲間に見破られても良い指示を出し

 

自分が読まれた上で出し抜こうと動いた

 

テクニックよりパワーに任せた戦法だが

 

こちらの戦略に対抗するには合っていた

 

読んでも意味が無いなら後は実力が物を言う

 

試合の殆どが俺とあいつの一騎打ちだった

 

戦局は常に拮抗し、結局点は互いに0点で終わった

 

俺の感情を感じ取るのとは違う

 

思考することで見破るあの目は嫌いだ

 

自分の内側を勝手に覗き込まれるあの感覚……

 

そこまで思い出した所で気分が悪くなった

 

精神は休まることなく気怠さを隠さずに起き上がる

 

出てく際も何も言わないがもう何も言われない

 

面倒がなくて良い事だろう

 

助っ人については断わりを入れた

 

今日は()()()に居たくなくなった

 

嫌な気分を塗りつぶしたかったのか

 

俺は仕事場へと足を運ぼうと校舎を後にした

 

足を使い、一つの場へと顔を出した

 

見慣れた顔もそうでない奴もそこそこいる

 

「【フィーヌ】か……」

「珍しいね。あんたがここに来るなんて」

 

「どうだっていいだろう。それより何かやる事ないのか」

 

直接の指令以外にも仕事は存在する

 

だが自分から受ける事なんて滅多にない

 

それ故に目の前の二人は驚きを見せてる

 

「珍しい……」

「荒れてるあんたを見るのは久しぶりだね」

 

「放っておけ【コルン】【キャンティ】」

 

煩いと視線を向けるが流されるだけだ

 

開き直る方が面倒が無くていい

 

「アタイらも暇をしてるしね。丁度いい仕事なんてないと思うよ」

「そうか……分かった。【ジン】や【ウォッカ】はどうした?」

「仕事、ボスから指令、言ってた」

「一応感謝しとく」

 

そう伝えるとその場から去った

 

【ベルモット】については訊くだけ無駄だ

 

彼女が何をしてるか把握してる奴なんていないだろう

 

ここに直接顔を見せるのは久しぶりだ

 

犯罪組織で言うのも変な気持ちだが

 

たまには友人に会っていくとしよう

 

研究施設が置かれている場所まで移動し

 

幹部クラスに渡されたIDでその部屋まで向かった

 

「何の用?って【フィーヌ】?……こっちに来てるなんて珍しいわね」

「気分が悪くてな。表に居たくなかったんだよ【シェリー】」

 

組織に入ってから2番目の友人で

 

1番目の友人の妹である彼女は

 

組織の幹部であり優秀な科学者だ

 

「ここは休憩所ではないのだけど……はぁ、お茶位は出すから座ってて」

「悪いな」

 

彼女との関係はそこそこ長い

 

1番目の友人より関わった時間は長いだろう

 

同じく理不尽に組織に縛られ

 

家族を人質にされた同類同士だ

 

そしてそれを知る数少ない1人でもある

 

知ってるのはベルモットと友人2人だけで

 

それ以外には俺は望んで組織に居る事になっている

 

組織に捕らわれた彼女と違い

 

俺はベルモットの玩具(おもちゃ)なのだ

 

微妙な所だが事情に差異がある

 

人質が姉か妹の違いもあるしな

 

まあ、そんな事はどうでも良いだろう

 

互いに傷をなめる趣味も無ければ

 

この関係にも意味は無いのだろう

 

そう結論づけて彼女の支度をただ眺めていた

 

だが少しだけ居心地が良い時間には違いはない

 

「はい、どうぞ」

「ああ……悪くないな」

「はぁ、素直に礼くらい言ったらどうなの?」

「……」

 

面倒な性格をしている自覚はある

 

だが改める気は無い

 

そして出来る気もしない

 

「急にやって来て終始無言でいるつもり?」

「……最近どうだ?」

 

自分で言っておいてこれはどうなんだ

 

はっきり言って友人に対する問いかけでは無い

 

久しぶりに会って気まずい父親の様だ

 

だが話の切り出し方など俺が知る訳も無い

 

【シェリー】もため息を吐きながら答えてくれた

 

「どうって言ってもねぇ……いつも通り研究よ。今やってるのは最近できた新薬の確認中……なのに【ジン】の奴が勝手に薬を持ち出して使ってるのが腹立つくらいかしらね。そっちは?」

「殺しと盗みが殆どだ。苛つくが支障はない……いや、学校の方で少し面倒な事にはなったな」

 

あれは本当に面倒で仕方がない

 

苛々をぶつけるべきでは無かった

 

余計に面倒な事態になるなんて考えて無かった

 

そんな感じの軽い愚痴のつもりだった

 

だけど彼女はそう受け取らなかったらしい

 

「まさか気付かれたわけじゃ無いでしょうね!?」

「ち、違う!?ただ作文に苛々をぶつけたら呼び出しを喰らって、強制的に部活に入れられただけだ!!」

「はぁ……もう、焦らせないでくれない」

「……悪い」

 

謝ってばかりだが俺が悪かった

 

確かに誤解しそうな文脈だった

 

謝罪しながらその後も拙い会話は続いていった

 

互いに近況報告や愚痴ばかりだった

 

それでもこの時間は偽りでは無いだろう

 

 

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