やはり俺が黒の組織に居るのは間違っている。   作:ひよっこ召喚士

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見透かす目:File.7 Page.7


 

宇佐門大西さん、あの人はいささか鋭すぎる。このままおっちゃんの声を使って何時もの様に推理を披露すればまず間違いなく、俺の事に気付かれてしまう。

 

いや、仁科さんを殺させない為に慌てておっちゃんの声で白鳥刑事を動かした時点で気付いてるかもしれない。それでも誤魔化しながら事件を解決するにはこの人に麻酔針を撃ち込むしか無かった。

 

倒れ込む瞬間、俺に気付いてか気付かずかは分からないが柱の方へ視線が向いた気がした。俺が隠れていた柱の方へ……いや、今はこんな事を考えてる暇はないと蝶ネクタイ型変声機のダイヤルを回して合わせる。

 

【流石です毛利さん。貴方も真犯人に気付いていたんですね】

 

「へっ?いや、え、マスター?」

 

まぁ、何一つわかってないであろうおっちゃんは何のことだかって感じだろうが、先ほどの白鳥刑事への声を誤魔化す為に、おっちゃんも犯人に気付いてた事にして押し切る。

 

【警部さん、今度の一連の事件、犯人は村上丈ではないですよ】

 

「なんだって?!いや、それよりも宇佐門さん?!」

 

唐突な宇佐門さんによる推理ショーの開催に目暮警部も何がなんだかと言った様子だが、話し始めてしまえば後は内容で持っていける。阿笠博士の事を詳しく知ってたら不味いから…

 

【だって奈々さんについてたあの掴んだ手の跡からして犯人は右利きでしょう。村上丈は左利きと聞きましたよ。おそらく、阿笠さんでしたっけ、彼が撃たれた際も右だったのでは?】

 

「右利き?!はっ、助かりましたよ」

 

人工呼吸をしていた白鳥刑事も驚きを返し、その最中に無事に仁科さんが水を吐き出し、意識を取り戻していた。そして…

 

「後ろだな。これはどういう事だガキ?」

 

この博士特製の麻酔針たとえ象でも五分は眠るほど強力なんだぞ…とか、寝起きだからかこれが素なのか分からないが宇佐門さん柄悪いな…とか、色々な事が頭の中に巡った。

 

状況を端的に纏めると麻酔で無理矢理眠らせた宇佐門さんが起きた。そして、俺が何かやったと確信していて、俺の場所まで把握している。

 

やばい、どころじゃない話だった。きっと今も少しは混乱しているんだろうけど、それよりも先に思い浮かんだのはこの後の推理どうしよう?…だった。

 

固まってからまだ数秒だ。でもこれ以上喋らなかったら怪しまれる。麻酔針は一本しかないからもう一度眠らせる事も、代わりにおっちゃんを眠らせる事も出来ない。考えた末に…

 

【犯人は恐らく仮出所した村上氏と何処かで会い、十年前に毛利さんに撃たれた事や彼が元トランプ賭博のディーラーでジョーカーのあだ名があったことを聞いて、利用しようと考えたのでしょう】

 

「利用…」

 

俺はそのまま蝶ネクタイ型変声機を使って推理の続きを話し始めた。俺の出している声に対して宇佐門さんから何もアクションはなく、そのまま区切りまで話せた。

 

しかし、何とも言えない感情がヒシヒシと柱の裏の俺のいる場所まで届いているのがなんとなく分かる。話し始めた時から送られていたが、話し終えたくらいで一度途切れ、また六秒ほど経ってからまた声が届いた。

 

()()()()()()()()()()()()、仕方ありません。補足だけしてください」

 

そう言って立ち上がった宇佐門さんは如何にも自分が話していたかの様な堂々とした態度を作ると、続きを自分から話し始めた。

 

「犯人は自分が殺したいと思ってる相手と自分自身の名前に数字が入っている事に気付いてしまったのでしょう。そこでこの名前の数字とトランプを組み合わせ、自分の犯行を村上の犯行に見せかけた」

 

宇佐門さんが俺の考えと全く一緒である推理をスラスラと語ってる。普段のおっちゃんは眠ってるから動かないけど、宇佐門さんは身振り手振りも含めてこの場の雰囲気に合わせてて、さっきまで俺が勝手に話してた時より違和感がない。

 

「じゃあ私や英理さん、阿笠博士を狙ったのは村上の毛利くんへの復讐と思わせるカモフラージュだったというのか?!」

 

「そういうことです」

 

「では犯人が本当に殺したかった相手は?」

 

これは俺が変わった方が良いだろう。宇佐門さんもそう思ったのか身体の後ろ。俺だけに見える位置で手を振って合図をしている。

 

【旭さんと小山内さん、そしてこれは聞いた話からの推測ですか辻さんも含めた三人でしょう。彼へ取った手段が目薬をすり替えるというのは死ぬ確率が高いですからね。犯人の殺意も高かったと僕は思います】

 

おっちゃんと違うので話し方には注意しないといけないけど、あまり変な感じにはなってない筈だ。殺したかった人はまだいるけど、それよりも大事なのは…

 

 

「【犯人はこの中にいます】」

 

 

全く同じタイミングだったから良かったけど宇佐門さんと言葉が被っちまった。雰囲気が雰囲気だし、発言が衝撃的だったみたいだから気付かれてねぇな。

 

「そういや、あんた奈々ちゃんに恥をかかされたっけ?」

「違う、私は殺してない?!」

 

宍戸さんが皆の前で恥をかかされた仁科さんを疑い。懐疑的な表情と視線を送り、それを仁科さんは慌てて否定している。そう…

 

「いえ、仁科さんはむしろ危うく殺される所だった被害者側ですよ。あの海中レストランの爆破もおそらく泳げない仁科さんへのものでしょうしね。そして実際に慣れてない彼は水を飲んでしまい人工呼吸の必要がでました。彼が助かったのは白鳥さんの尽力があったからこそですが…」

 

【白鳥さんにお訊きしたいのですが、仁科さんに人工呼吸をする際にまず何からやりましたか?】

 

「何って、頭を後ろに反らせ首を持ち上げ気道を確保することですよ」

 

「では、あえて気道を確保せずに人工呼吸をするふりをして鼻と口を塞げばどうなってしまうのでしょうか?」

 

「死ぬに決まってるでしょう?! ま、まさか…」

 

【えぇ、旭さんと小山内さんを殺害して…】

 

「辻さんと仁科さんを殺そうとした犯人…」

 

「【それは沢木公平さん貴方だ!!】」

 

俺と宇佐門さんによって告げられたその答えに全員が驚愕の視線を彼に向ける。

 

「宇佐門くん、私だってボーガンで狙われたじゃないですか?!」

 

「事前に準備しておけば自作自演も可能でしょう。たとえば昨晩、このアクアクリスタルで旭さんを殺害した後とかですかね? 皆さんにも思い当たる所はあるんじゃないですか?」

 

否定されると宇佐門さんも思っていたのかスラスラとそれに対する反論を述べる宇佐門さん。そして、今までにあったおかしな出来事を考える様に促している。この人、バーのマスターだけあって話が上手いな。

 

「テーブルの下の落ちていた置き手紙はもしや…」

 

「俺たちに電話してきた秘書ってやつも」

 

「勿論奈々さんに夜光塗料入りのマニキュアを送ったのもですよね?」

 

確認する様に言っているが沢木さんは否定も肯定もしないでそのまま状況を見守っている。そんな中で目暮警部が疑問を叫んだ。

 

「では動機は…動機はなんなんだ?!」

 

これもあの策を一緒に行った宇佐門さんなら問題なく話せるだろう。カバーがいるとしたらその後だな。

 

「動機はおそらく味覚障害ですね」

 

「味覚障害…」

「味覚障害っていうと食べ物や飲み物の味がわからなくなるあれだろ?」

 

おっちゃんと宍戸さんが顔を見合わせて何故そんな言葉が出てくるのかと首を傾けている。けどそれがなければ彼はこうならなかった。

 

「沢木さんは味覚障害にかかっていますね?」

 

宇佐門さんが確認する様に全員に告げると驚きが一気に広がり、また沢木さんへ視線が集まり、彼の表情が少し険しくなる。

 

【味覚障害は精神的ストレスや頭部外傷が原因になることがあるそうです】

 

「頭部外傷、それじゃ奈々さんが起こした交通事故の相手が沢木さん。ちょちょちょっとまってくれ、君は味覚障害というが彼は奈々さんの持ってきたワインの銘柄を当てたじゃないか!!」

 

「沢木さんのワインの知識、そして感覚は本物ですからね。彼はワインの色と香りだけで銘柄を当ててしまえたんですよ」

 

宇佐門さんも沢木さんとの付き合いは長いのだろう。ソムリエとしての彼への尊敬が言葉の端々に感じられる。

 

「そんな事が…」

 

【沢木さんは残された視覚と嗅覚だけを頼りにその後もソムリエを続けていたのでしょう。しかし、それは完璧なソムリエでありたいという沢木さんの美学に反する行い。だから沢木さんはソムリエの仕事を捨てて田舎へ帰ることを決めた。一緒に小山内さんを含む自身を味覚障害に陥れた者たちへ復讐も決意して】

 

「しかし、どうして君はそんなことまでわかったんだ?!」

 

目暮警部が引き続き、沢木さんが何故味覚障害だと気付いたのか訊ねる。こりゃ話し始めは俺がやった方が良さそうだ。

 

【沢木さんが調味料の味見をしていたのを見たとコナン君に聞きましてね。彼が味見するほど珍しい調味料なんてあったのかと訊いてみると、コナン君が指差したのはチリパウダー、つまり唐辛子の粉でした】

 

ここまで言えば宇佐門さんもきっと合わせてくれるだろうといったん止まる。

 

「ソムリエの様に舌を使う仕事をする人は刺激物を口に含みませんからね。おかしいなと思いましたが、沢木さんに直接訊く訳にもいきませんので、勝手ですがコナン君に協力してもらって、沢木さんが味覚障害なのはミネラルウォーターで確認させていただきました」

 

「ミネラルウォーター?」

 

まだレストランが無事だった頃に俺が渡して回ったミネラルウォーター、あれには細工がしてあった。

 

「コナン君が貴方に渡したグラスにだけ塩が入っていたんですよ」

 

「それを私は気づかずに飲んでしまったのか、確かに私は味覚障害にかかっています。でもだからといって私が奈々さんを殺した証拠にはならないでしょう?」

 

「証拠ならあるでしょう?」

 

全く疑う事なく、笑いかける様に告げたのはおそらく沢木さんに対してではなく俺宛の言葉だろう。期待に応えるためにネクタイを抑える。

 

【貴方の上着左右どちらかのポケットを見てみては?】

 

沢木さんが左のポケットに手を伸ばし、何もなかったのを確認して右のポケットに手を入れた瞬間には表情が変わった。彼が取り出した手には一つの物が握られていた。

 

「それは奈々さんが、悪戯描きをしたコルク?!」

 

「小山内さんが殺される直前まで手にしていたそのコルク、なぜ沢木さんのポケットにあったのでしょうか?」

 

状況と証拠に合わせて話している宇佐門さん。その背中に向けてトランプを投げると話しながら後ろ手でしっかりキャッチしてくれた。

 

【小山内さんが刺された時に振り返り、しがみついたその時ポケットにコルクが入ってしまった。床に落ちていた付け爪もこのとき剥がれたのでしょう。もう一つあるでしょう?】

 

「おそらく貴方のポケットの中でまだ寝てる子がいる筈です。このトランプの柄と同じスペードのエース君がね」

 

二人がかりでの推理と言うと少し違う気がするが、言い逃れようとする沢木さんをきっちり追い詰められたのか。彼はおもむろにカードを一枚取り出して投げ捨てた。

 

「スペードのエース?!」

「おお?!」

 

それにより俺たちの推理が正しいことが証明され、全員が犯人である沢木さんの動きをじっと見つめる。

 

「宇佐門くん、全て君が言った通りですよ」

 

そのまま沢木さんは自身に起きた出来事を語っていった。店から帰る途中に奈々さんとの事故が起き、突然味が分からなくなった事。

 

医者からはストレスが原因の可能性があると言われ、事故の原因を作った奈々さん、そしてストレスの原因である旭さん、辻さん、仁科さんへの復讐を決めた事。

 

希少なワインを買い漁り適当に管理する旭さんも、多くの人にワインの間違った知識を植え付けた仁科さんも、ソムリエの尊厳を汚した辻さんも、沢木さんにとっては殺すべき相手だった。

 

「そんな事で辻さんを殺そうとしたのか」

 

目暮警部が咎める気持ちと驚きが混ざった声をあげる。俺も少しはそんな事でと思ったが、沢木さんにとってはそれだけ重かったのだろう。

 

「そんなことだと?!貴様らにあの時の私の気持ちは分からない!!私が天職として目指したソムリエの品格!!名誉!!プライド!!その全てをあの男は汚い足で踏みにじったんだ!!」

 

心の痛みがそのまま身体を引き裂くのではないかと思う程に悲痛な叫びとなって彼の怒りが撒き散らされた。

 

「村上丈を殺したのかね?」

 

「あぁ、村上とはあいつが仮出所した日に偶然毛利探偵事務所の前で会った」

 

村上が仮出所した日、八日前って事はあの食事会の日だから、おっちゃんが昼から麻雀に行ってた日か?!

 

「私は上手いこと村上を利用できないかと思い、毛利さんの知り合いだといって誘った。村上は事件当時こそ毛利さんを恨んでいたが今はただあの時の、事を謝りたくて会いに来たといっていた。その時だよトランプの数字を使って自分の犯罪をカモフラージュしようと思いついたのは、酔いつぶれた村上を、殺すのは簡単だった」

 

関係ない人間、それも更生して刑務所から出てきてばかりの人間を殺した事をさも良いことがあったかのように語るその目は既に狂気が見える。

 

「それじゃ毛利さんや目暮警部には何の恨みも無かったのか?!」

「その通り」

 

阿笠博士もおばさんも全く関係ないとばっちりだ。決して赦されることではない。

 

「僕と宍戸さんを呼び寄せたのも」

「足りない六と四を揃えるためか」

 

宇佐門さんは悲しげに宍戸さんは怒りを持って沢木さんに問いかける。すると沢木さんは少し微妙な表情を浮かべた。

 

「そうだと言いきりたい所ですが。宍戸さんはそうですが、宇佐門君、君は少し違う。積極的ではなかったが君も殺せたのなら殺したかった。若くして自分の店を持ちながら店に集中しない君に対して妬ましい気持ちが少しあった。そして今日この日まで味覚障害だと知らずに私を頼り、尊敬してくる君の事を視界に映したくなかったんだよ」

 

苦しげに語るその姿はもちろん。全てを見破られた沢木さんのその声に偽りは感じられなかった。若くして大成し、店を持ちながら好きに生きている彼が急に夢を失った沢木さんには毒だったのだろう。

 

「五と三の毛利さんと白鳥刑事は私が旭さんに呼ばれた話をすれば当然ついてくると思った。本当は一の工藤新一も来る事を期待していたんだが、それは残念ながら叶わなかった」

 

「関係の無いものが死んだらという事は考えなかったのかね」

 

「海中レストランを爆破したのもただ仁科を殺すためだ。他の連中は死のうが生きようがどうでもよかった。後はここが崩れ落ちて村上の行方はつかめず迷宮入りになるはずだった」

 

ここが崩れ落ちて?さっきの爆発だけでここが全部壊れるとは思えない。だけど沢木さんはここが爆発する事を確信している。

 

「沢木さんもう逃げ場所はない観念するんですな」

 

【白鳥刑事!! 沢木さんを取り押さえるんだ!!】

 

素早く伝える為に命令口調にしないといけなかったので、ダイヤルを戻しておっちゃんの声で白鳥刑事に伝えた。

 

だけど声を使われたおっちゃんも、伝えられた白鳥刑事はもちろん気付いてない目暮警部も間に合わない。沢木さんがポケットから手を出し、そのスイッチが…

 

「これ以上泳ぐ羽目になるのは勘弁してください」

 

…押される事はなく、脚を振り上げた宇佐門さんによってスイッチは飛んでいき、宍戸さん達がいる方まで転がり、海に落ちるギリギリで止まった。

 

「なっ、爆弾のスイッチか?!」

「まだ持っていたのか?!」

 

「くそっ?!邪魔をするなぁ?!」

 

爆弾のスイッチだけでなくナイフも隠し持っていた様だ。彼の視線の先は…マズイ?!宇佐門さんはスイッチを取りに行ってる。おっちゃんは少し距離があるし、動き出しが早くて白鳥刑事は間に合わない。

 

「動くな!!」

 

気付いた時には遅く、沢木さんは蘭を人質にとって俺達を牽制した。そして、秘書の名前で呼んだであろうヘリコプターを目指してアクアクリスタルの屋上へと逃げていった。

 

俺はもちろん、おっちゃん、白鳥刑事、目暮警部で沢木さんの後を追いかける。宇佐門さん、宍戸さん、仁科さんは危ないので待機して助けを持つことになった。

 

そして屋上まで追い詰めたものの、蘭を助ける手段もなく、沢木さんは人質を盾にして拳銃を要求してきた。

 

拳銃を拾う隙を突こうとしたおっちゃん達の動きに気付き警戒した沢木さんは俺に拳銃を持ってくるように追加で要求する。

 

手元にある拳銃、人質を取った犯人、おっちゃんが村上丈を相手にした時の状況と同じ、蘭を助ける為には……そうか! 分かったぜおっちゃん。






『0』


???「おいおい、麻酔針喰らっても起きるのって俺の役じゃないのか?」
宇佐門「いや、そんな事で絡まれても」
作者「世界的大泥棒とのコラボはまだまだ先なので貴方も帰って帰って」

名前も出してないし、後書きだけに登場させた場合もタグは要るのだろうか?そんな疑問を呈している暇もないな。最後にもう一つあげますのでさいなら。あ、本日四話目の投稿です。

読んでくれている方々に多大なる感謝を。
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