英雄は勘違いと共に   作:風に逆らう洗濯物

12 / 19
大変遅くなり、本当に申し訳ありません!
某感染症により、会社がゴタつき、遅れてしまいました。
次話は予定通り土日に投稿する予定です。

それでは、第十二話です。よろしくお願いします。


第十二話 洋館の中で

 

 ○

 

 洋館の一室、物の散らかった書斎のなかで。

 男を一撃で倒した彼は、安息を願う様に、男の骸を寝かせつけていた。

 その背中は何処か儚げで、彼の望んだ救いはこんな形では無かったのだろう事を感じさせる。

 

「大輝……」

 

 思わず声をかける。

 優しい彼が、どんな事を考えて居るのかはわからない。

 それでも、その悲しみの半分でも背負えたら……そう思う。

 

「大丈夫だ」

 

 普段と変わらぬ一言。他人の死を背負うその『英雄』らしい姿に憧れとやるせ無さが入り混じる。

 

「でも……」

 

「いいんだ! 俺が泣くわけにはいかない」

 

 彼の赤いバイザーがこちらを睨みつける。

 鋼鉄の仮面は、彼を戦士へと変えていた。

 なんて残酷なんだろう。

 いくつ、悲しみを背負ってきたのだろう。

 そんな言葉が脳裏に浮かび、涙が流れる。

 

「うん……わかった」

 

 ボクの涙に驚いたらしい彼は、ワタワタと動き、血濡れでない手をボクの頭に乗せる。

 泣きたいのは彼の方だろうに。

 

 ……なんて残酷な事だろうか。

 

 ●

 

 突然泣き始めた少女にキョドり頭を撫でる。

 ……今になって傷が痛み出したのか!? 

 正直キャパオーバーである。

 それでも傷つき、涙を流す少女を放っておく事はできない。

 

 凛花はおじさんの側で手を合わせ、黙祷している。

 年齢の割に強かな少女だと思うが、唯一の肉親が叔父だと言うし、壮絶な人生を送って来たのだろう。

 

「大丈夫か」

 

 俺が声をかけるとレッドは涙を拭い取り、無理矢理作ったような笑顔で返す。

 

「ごめん、大丈夫。それより馬岱さんを探さなきゃ」

 

 大丈夫とは思えないが。傷が痛むならすぐにでも脱出した方がいいだろう。

 俺は頷くと凛花を呼びに行くべく、遺体の方へ歩み寄る。

 

 ──“ダイキさん。アレを持っていって。”

 

 少女が指差すのは小さな錨、何の変哲もない灰色のソレは、よく見ると薄く輝いているようだった。

 

 少し嫌な予感がしつつも、ソレに触れると小さな爆発。

 灰色の閃光が辺りに散らばり、ゆっくりと鎧の中に入ってくる。

 バイザーの内側に浮かぶのは“Bind anchor”の文字。

 どう言う理屈かは分からないが、2回目となれば予想もつく。

 攻撃用の技が増えたらしい。

 

「ありがとう、凛花ちゃん」

 

 少女に感謝を告げるとゆっくり立ち上がり、レッドの方を向く。

 

「行こう」

 

 そうして俺達は書斎を後にした。

 

 ○

 

 廊下に戦闘音が響く。

 音は明らかに下から聞こえ、この洋館の地下で何かが起きているのは明確だろう。

 ボクは治療のため腕に回した魔力を一部、眼に纏わせる。

 視界に遠く映る、以前見た倍はある黄金の魔力、そして対峙する赤と金と紫が混ざった赤銅色の魔力。

 どちらも圧倒的な輝きを誇り、その存在の格が高い事は間違い無かった。

 

「建物中央下、何か、混ざり物と戦ってるみたい」

 

 呟き、ボクは回復に集中する。

 そして大輝は、ボクを抱えたまま早足に歩き出す。

 ──そう、抱えたまま。

 何を思ったのか。

 部屋を後にした彼はボクを……横抱きにし、歩き出したのである。

 おかげで余剰魔力を身体に回し、回復に徹する事ができるが……。

 

 ……恥ずかしいんだけど!? 

 思わず顔が赤くなる。

 なんで!? さっきシリアスな感じで心傷を心配したつもりだったんだけど! 

 ソレがどうしてボクが抱き抱えられることに繋がるのさ!? 

 

「どうした?」

 

「な、なんでもない」

 

 何か感じ取ったのか、心配そうに声をかけてくる彼から目を逸らす。

 まぁ、彼が怪我を心配してくれているのはわかる。

 ゼロ距離で結晶化した魔力が炸裂した以上、傍目から見て大怪我に見えるのは間違い無い。

 

 ……ソレにしたって! 

 知人を自らの手で打った後に、自分の悲しみよりも他人を気遣うなんて……! 

 どうして、こうも『英雄』らしいんだ! 

 思わず魔力操作を誤り、傷口に魔力結晶が生じる。

 

「いたっ」

 

 大輝は慌てたように肩を跳ねさせると、光に包まれ鎧が消える。

 ボクの体が一瞬浮き、その力強い腕に抱えられる。

 

「すまない、気づかなかった」

 

「鎧は固いよな」とボクの顔を見て語る彼。

 じんわりと感じる人肌に、思わず体温が上がる。

 彼の顔は近く、こんな時なのにどうしてか心が踊ってしまう。

 

「……あ」

 

 頭が真っ白になり何かを口走りそうになった所で。

「カシャ」っと言う聞きなれない音。

 思わずそちらを向くと、階段下で四角いキカイをこちらに向け構える女性が一人。

 

「お兄さんも隅に置ませんね〜」

 

 見覚えのない女性は、戦闘音に揺れる扉を背後に、ニコニコと笑いながら立っていた。

 

 ●

 

 長い廊下を抜け、階段を降りようと言うタイミングで響いたシャッター音。

 聞き覚えのあるその音と声に思わず目を向けると、階段下で微笑む女性が一人。

 

「なぜ、君がここに……」

 

 あまりに予想外な人物に呆然と言葉を紡ぐ。

 その様子に何を思ったのか、レッドが警戒を深め、いつでも戦える様に俺の腕から降りる。

 

「お昼に言った急用です。お兄さんは、どうしてこんな所に?」

 

 本を片手に開き返事をする彼女。

 先日は日記帳か何かだと思ったソレだが、こうして見てみるとなかなかの厚みがある。

 辞典か何かなのだろう。

 

「……。こちらも似たような物だ……」

 

 彼女は何の目的でここに来たのだろうか。

 案外、ゾンビのいない安全な場所を求めて移動する内、ここに着いたのかもしれない。

 

「大輝。術師だよ、あの人」

 

 そんな俺の予想を否定する、レッドの言葉に思わず固まる。

 もしかして、あの本が魔導書っぽく見えてるのか? 

 確かに言われてみれば……しかし、書き込み式の魔導書なんてあるのか? 

 そんな混乱の極みにいる俺を守るように、レッドは太刀を構え質問をする。

 

「キミは、何のためにそこに立ってるの?」

 

 レッドの言葉に彼女を見る。

 彼女が立っているのは、馬岱の戦っているであろう部屋の前。

 確かにこんな所に居たら邪推するに決まっている。

 

「ここで待っていれば、質問できるかなと思ったので」

 

 彼女の楽しそうな表情に、すごい野次馬根性だなーと、現実逃避を一つ。

 せっかくなので言葉を返す。

 

「質問?」

 

「……突然動きを止めたゾンビ。心当たりは?」

 

 ゾンビの話……

 いや、オカルト現象に対して野次馬しに来ただけなのでは? 

 そう何処か無理矢理納得する俺の目の前で、突然の轟音、引っ張られるような風を受けたたらを踏む。

 

 階段を落ちかけた事に冷や汗を流しつつ、何が起きたのか下を見ると、レッドがものすごい勢いで階段を駆け降りていた。

 

「レッド待っ」

 

 暫定一般人の彼女に防ぐ術はない、レッドを止めなくては! 

 そう思うも遅く、レッドの左腕が振るわれ……

 

「『Activate “Iter memoriae”』」

 

 何処からか響く電子音声。

 そして、突然生じた強力な違和感に俺は意識を失った。




第十二話、いかがだったでしょうか。
今話を書いていて思ったのですが、
本小説…一話一話の区切り方、分かりづらいですね…
もしかしたら、少しずつ訂正していくかも知れません。
その時はどうぞ、よろしくお願いします。

では、また次話をお楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。