某感染症により、会社がゴタつき、遅れてしまいました。
次話は予定通り土日に投稿する予定です。
それでは、第十二話です。よろしくお願いします。
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洋館の一室、物の散らかった書斎のなかで。
男を一撃で倒した彼は、安息を願う様に、男の骸を寝かせつけていた。
その背中は何処か儚げで、彼の望んだ救いはこんな形では無かったのだろう事を感じさせる。
「大輝……」
思わず声をかける。
優しい彼が、どんな事を考えて居るのかはわからない。
それでも、その悲しみの半分でも背負えたら……そう思う。
「大丈夫だ」
普段と変わらぬ一言。他人の死を背負うその『英雄』らしい姿に憧れとやるせ無さが入り混じる。
「でも……」
「いいんだ! 俺が泣くわけにはいかない」
彼の赤いバイザーがこちらを睨みつける。
鋼鉄の仮面は、彼を戦士へと変えていた。
なんて残酷なんだろう。
いくつ、悲しみを背負ってきたのだろう。
そんな言葉が脳裏に浮かび、涙が流れる。
「うん……わかった」
ボクの涙に驚いたらしい彼は、ワタワタと動き、血濡れでない手をボクの頭に乗せる。
泣きたいのは彼の方だろうに。
……なんて残酷な事だろうか。
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突然泣き始めた少女にキョドり頭を撫でる。
……今になって傷が痛み出したのか!?
正直キャパオーバーである。
それでも傷つき、涙を流す少女を放っておく事はできない。
凛花はおじさんの側で手を合わせ、黙祷している。
年齢の割に強かな少女だと思うが、唯一の肉親が叔父だと言うし、壮絶な人生を送って来たのだろう。
「大丈夫か」
俺が声をかけるとレッドは涙を拭い取り、無理矢理作ったような笑顔で返す。
「ごめん、大丈夫。それより馬岱さんを探さなきゃ」
大丈夫とは思えないが。傷が痛むならすぐにでも脱出した方がいいだろう。
俺は頷くと凛花を呼びに行くべく、遺体の方へ歩み寄る。
──“ダイキさん。アレを持っていって。”
少女が指差すのは小さな錨、何の変哲もない灰色のソレは、よく見ると薄く輝いているようだった。
少し嫌な予感がしつつも、ソレに触れると小さな爆発。
灰色の閃光が辺りに散らばり、ゆっくりと鎧の中に入ってくる。
バイザーの内側に浮かぶのは“Bind anchor”の文字。
どう言う理屈かは分からないが、2回目となれば予想もつく。
攻撃用の技が増えたらしい。
「ありがとう、凛花ちゃん」
少女に感謝を告げるとゆっくり立ち上がり、レッドの方を向く。
「行こう」
そうして俺達は書斎を後にした。
○
廊下に戦闘音が響く。
音は明らかに下から聞こえ、この洋館の地下で何かが起きているのは明確だろう。
ボクは治療のため腕に回した魔力を一部、眼に纏わせる。
視界に遠く映る、以前見た倍はある黄金の魔力、そして対峙する赤と金と紫が混ざった赤銅色の魔力。
どちらも圧倒的な輝きを誇り、その存在の格が高い事は間違い無かった。
「建物中央下、何か、混ざり物と戦ってるみたい」
呟き、ボクは回復に集中する。
そして大輝は、ボクを抱えたまま早足に歩き出す。
──そう、抱えたまま。
何を思ったのか。
部屋を後にした彼はボクを……横抱きにし、歩き出したのである。
おかげで余剰魔力を身体に回し、回復に徹する事ができるが……。
……恥ずかしいんだけど!?
思わず顔が赤くなる。
なんで!? さっきシリアスな感じで心傷を心配したつもりだったんだけど!
ソレがどうしてボクが抱き抱えられることに繋がるのさ!?
「どうした?」
「な、なんでもない」
何か感じ取ったのか、心配そうに声をかけてくる彼から目を逸らす。
まぁ、彼が怪我を心配してくれているのはわかる。
ゼロ距離で結晶化した魔力が炸裂した以上、傍目から見て大怪我に見えるのは間違い無い。
……ソレにしたって!
知人を自らの手で打った後に、自分の悲しみよりも他人を気遣うなんて……!
どうして、こうも『英雄』らしいんだ!
思わず魔力操作を誤り、傷口に魔力結晶が生じる。
「いたっ」
大輝は慌てたように肩を跳ねさせると、光に包まれ鎧が消える。
ボクの体が一瞬浮き、その力強い腕に抱えられる。
「すまない、気づかなかった」
「鎧は固いよな」とボクの顔を見て語る彼。
じんわりと感じる人肌に、思わず体温が上がる。
彼の顔は近く、こんな時なのにどうしてか心が踊ってしまう。
「……あ」
頭が真っ白になり何かを口走りそうになった所で。
「カシャ」っと言う聞きなれない音。
思わずそちらを向くと、階段下で四角いキカイをこちらに向け構える女性が一人。
「お兄さんも隅に置ませんね〜」
見覚えのない女性は、戦闘音に揺れる扉を背後に、ニコニコと笑いながら立っていた。
●
長い廊下を抜け、階段を降りようと言うタイミングで響いたシャッター音。
聞き覚えのあるその音と声に思わず目を向けると、階段下で微笑む女性が一人。
「なぜ、君がここに……」
あまりに予想外な人物に呆然と言葉を紡ぐ。
その様子に何を思ったのか、レッドが警戒を深め、いつでも戦える様に俺の腕から降りる。
「お昼に言った急用です。お兄さんは、どうしてこんな所に?」
本を片手に開き返事をする彼女。
先日は日記帳か何かだと思ったソレだが、こうして見てみるとなかなかの厚みがある。
辞典か何かなのだろう。
「……。こちらも似たような物だ……」
彼女は何の目的でここに来たのだろうか。
案外、ゾンビのいない安全な場所を求めて移動する内、ここに着いたのかもしれない。
「大輝。術師だよ、あの人」
そんな俺の予想を否定する、レッドの言葉に思わず固まる。
もしかして、あの本が魔導書っぽく見えてるのか?
確かに言われてみれば……しかし、書き込み式の魔導書なんてあるのか?
そんな混乱の極みにいる俺を守るように、レッドは太刀を構え質問をする。
「キミは、何のためにそこに立ってるの?」
レッドの言葉に彼女を見る。
彼女が立っているのは、馬岱の戦っているであろう部屋の前。
確かにこんな所に居たら邪推するに決まっている。
「ここで待っていれば、質問できるかなと思ったので」
彼女の楽しそうな表情に、すごい野次馬根性だなーと、現実逃避を一つ。
せっかくなので言葉を返す。
「質問?」
「……突然動きを止めたゾンビ。心当たりは?」
ゾンビの話……
いや、オカルト現象に対して野次馬しに来ただけなのでは?
そう何処か無理矢理納得する俺の目の前で、突然の轟音、引っ張られるような風を受けたたらを踏む。
階段を落ちかけた事に冷や汗を流しつつ、何が起きたのか下を見ると、レッドがものすごい勢いで階段を駆け降りていた。
「レッド待っ」
暫定一般人の彼女に防ぐ術はない、レッドを止めなくては!
そう思うも遅く、レッドの左腕が振るわれ……
「『Activate “Iter memoriae”』」
何処からか響く電子音声。
そして、突然生じた強力な違和感に俺は意識を失った。
第十二話、いかがだったでしょうか。
今話を書いていて思ったのですが、
本小説…一話一話の区切り方、分かりづらいですね…
もしかしたら、少しずつ訂正していくかも知れません。
その時はどうぞ、よろしくお願いします。
では、また次話をお楽しみに!