英雄は勘違いと共に   作:風に逆らう洗濯物

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お待たせしました第十五話になります。
よろしくお願いします。


第十五話 屋敷の地下で

 薄暗い階段の下。古びた扉を開けると、そこには大量の骨が散らばる広間だった。

 大きさはさまざまで、犬猫だけでなく、人や熊なんかの物もあるかもしれない。

 

 ──“なんか不気味だねー”

 

 凛花の言う様に不気味な部屋である。

 造りは先刻迷い込んだ神殿の様な場所と似て、大理石を基調とした石造。

 部屋の隅に状態の良い骸骨が山を作り、部屋の中央に向かって砕けた骨が転がっている。

 そんな中で異様なのが、一切の汚れがない紫色のカーペット。

 入口から一直線に伸びるそれは、奥に見える祭壇らしき場所へ繋がっていた。

 

 ──“あ、馬岱さんいるよ! ”

 

 凛花の声に気がつく、不気味にも見える祭壇の前。

 少しの段差を越えたその場所で、馬岱は女性の亡骸を前に手を合わせていた。

 赤髪の女性は中華風の民族服を見に纏い、その片手には刃の砕けた薙刀が握られている。

 

「馬岱」

 

 俺が声をかけると、祭壇の彼は静かにコチラを向き、傍らの薙刀と祭壇の上に乗せられた闇色の結晶を無造作に手に取る。

 

「ルードに会った」

 

 静かに告げ、彼は結晶をコチラへ放り投げた。

 普段は口数が多く、騒がしさすら感じる彼らしくない行動に戸惑いながらそれをキャッチする。

 

「これは?」

 

「死神の腕だ。アイツはソレを貫いてそこから出て行った。会わなかったか?」

 

 ルード。つまり、あのドラゴンがこの小さい扉から?? 

 どう考えても通れないだろ……そんなふうに内心困惑する俺。

 それを見かねたのか、それとも単純に気になったのかレッドが口を開く。

 

「まって、コレをルードがやったの?」

 

 レッドの視線は俺の手の中にある結晶に向けられている。

 その目は淡く輝き、何かしらの力を使って見ているのは間違いない。

 

「あぁ、あと。儀式を終わらせるつもりらしいぜ」

 

 儀式を終わらせる? 

 なら、何故馬岱を生かしたんだ? 

 そもそも狂っていたのではないのか? 

 と言うか、そのルードはどこへ? 

 さまざまな疑問が脳裏に浮かぶ。

 

「どうやって?」

 

「元凶である願望機。その破壊だそうだ。アイツも願いがあるだろうに大したモンだよ」

 

 馬岱が他人事の様に告げる。

 その姿はいつもの様な覇気が無く、彼の戦う意味は無くなった事を感じさせた。

 そんな状態の彼が続けるように言葉を紡ぐ。

 

「まぁ、そんなわけで俺が英雄でいられるのもあと少しってわけだ」

 

「そうなのか……?」

 

 英雄とは時間制限があるのか? と思わず問いかけてしまったが、儀式が終わるからか……と思い到る。

 そんな俺の予想を肯定するわけでもなく、彼は言葉を紡ぐなり、槍を構える。

 

「あぁ、だからよ……手合わせ、願えるか?」

 

 突然の戦闘の予感に仮面の奥で冷や汗を流す、思わず軽く一歩下がり、言葉を返す。

 

「……いやだ、と言ったら?」

 

「貫かれるだけだぜ!」

 

 瞬間、炸裂音。

 祭壇の上に居たはずの彼が目前に迫る。

 ビビった俺はとりあえず距離を取ろうとして後ろに跳躍、そこに馬岱の一撃をもらい、派手に骨山へ吹き飛んだ。

 

「手ごたえがねぇ、受け流したか?」

 

「いや、偶然だ」

 

 骨粉で遮られた視界が開け、部屋の中央に立つ馬岱と目が合う。

 真剣な表情の彼は一切の油断なく、こちらへ向け槍を構えている。

 ……どうやら戦う気満々らしい。

 

「……一撃だ。全力で来い」

 

 こちらのできる事は突撃することだけ、接近戦に持ち込まれたら、何もできないだろう。

 だからこそ一撃、全力でぶつかって納得してもらうしかない! 

 

「いいねぇ! わかりやすい!」

 

 言葉と共に馬岱は構え、姿勢を低くする。

 後はこの鎧を信じて突っ込むだけだ。

 

「いくぞ。フォーカスブースト」『──―ready,〝Focus Boost〟』

 

 瞬間、凄まじい轟音と閃光。

 それに驚く間もなく、俺は馬岱に突っ込み、彼を吹き飛ばしていた。

 

 遠目に彼が祭壇に突っ込むのを見て、俺はバイザー内に浮かぶ、『警告』の2文字と鎧の全体図を見て思わず振り向く。

 まず視界に入るのはひしゃげたブースター、推進力を生み出すためのソレがまるで溶かしてから固めたかの様にぐちゃぐちゃに変形していた。

 そして、先ほどまで立っていた壁際。大量の骨が積んであったはずのそこは見る影もなく。ただ武骨石壁と巨大なクレーターに姿を変えていた。

 

「クックッ……めちゃくちゃしやがるじゃねえか」

 

 遠くで愉快そうに笑う馬岱の声が響く。

 ボロボロの祭壇を段差から蹴り落としこちらへ大股で歩いてくる。

 

「……不満か?」

 

 内心冷や汗ダラダラで言葉を返す。

 半分事故みたいな一撃、仕切り直しを願われたら受けるべきだろうが、今度はブースト無しで戦うハメになる。無理だ。

 あと、馬鹿でかい警告の字が邪魔すぎる。

 

「不満? ねぇよ、『英雄』らしくてイイじゃねぇか」

 

 上機嫌な馬岱の言葉に、一端鎧を解除する。

 ……次起動した時には、直ってるよな? 

 

「何の為に手合わせを?」

 

「俺の趣味と戦力確認ってとこだ。まぁ、いらん心配だったが」

 

 馬岱の言葉に首を傾げてると、彼は突然入口の方へ向き声を張り上げる。

 

「……ツゥわけで。俺は降りるぜ管理人さんよ!」

 

 ビビった俺が慌てて振り返ると響く足音。

 眼鏡にスーツ姿の男性……南郷さんがこの部屋に入ってきた。

 

「それは困りましたね。貴方に止めていただかないと、願望機が。いえ、この町全体が消滅してしまうのですよ?」

 

「……消滅?」

 

 南郷さんが現れた事よりも、そのスケールの大きさから思わず口を開く。

 

「えぇ、とは言え説明するよりも見ていただいた方が早い。ついて来てください」

 

 彼の言葉に思わず二人を見る。

 レッドは無言で頷き、馬岱は首を振る。

 

「言ったはずだ、俺は降りるってな。お前達は行って来な」

 

 馬岱の言葉に俺は頷くと彼へ手を伸ばす。

 なぜ急に戦う事をやめたのかは知らないが、彼が戦うつもりが無いのは確かなんだろう。

 ならば、仲間として、その選択は尊重したい。

 

「戦いが終わったらまた会おう」

 

「あぁ、じゃあな」

 

 俺はいつか彼としたように握手をし、振り返る。

 レッド達の元に向かおうとして、ふと足を止める。

 しかし、同時に衝撃。

 無言で背中を叩かれたらしい。

 

「馬岱?」

 

「行ってこい。後、コイツは土産だ」

 

 押された事でよろめくと同時に、起動する魔導鎧。相変わらず赤いバイザーには"Counter Burst"の文字。

 三度目ともなればわかる、技が増えたのだ。

 

 何故このタイミングでと思う間も無く、レッドの元へと急ぐ。

 

「では参りましょう」

 

 南郷さんの言葉と共に扉を潜る、扉の向こうは真っ暗であり、階段の段差すらも見えないが、目が慣れれば大丈夫だろう。

 そうして俺たちは扉を潜った。

 

 ○

 

 この洋館全体の魔力の流れに違和感を感じ。南郷と言う男と共に扉を潜ったボク達を迎えたのは蔦に覆われ砕けた煉瓦壁。そして、淡い光が宙に舞う森林であった。

 

 思わず背後に振り替えったボクらの前にあったのは、完全に崩れ、原型の留めていない廃墟。

 その建物は隅の方から魔力に還元され、宙に溶けている。

 

「コレは……。ッ」

 

 思わず目の前の廃墟に魔力視をするが、あたりの濃厚な魔力に邪魔され認識出来ず、ソレどころか過剰に吸収し魔力酔いを起こしかける。

 

「ン……ごめん大輝、いったんここを離れよう」

 

「しかし、馬岱は……」

 

 大輝が困惑した様子で目の前の光景を見ている。

 だが見た所、地下に続く道を探す事は難しく。コチラからできる事はない。

 

「彼女の言う通りです。離れましょう。消滅に巻き込まれますよ?」

 

 南郷が便乗する様に告げる。

 正直そんな事は無いと思うが、ボクとしても直ぐに離れたい。

 

「きっと大丈夫だよ、あの部屋自体は光に変わってる様子もなかったし、この建物が無くなってからまた来よう」

 

 大輝はボクの言葉に少し考え、自らの掌を一度見ると頷き振り返る。

 

「わかった、行こう」

 

 その言葉と共にボクと大輝、南郷の3人は光の上がっていない方向。

 南郷の大図書館へ足を向けた。

 

 

 

 




第十五話いかがだったでしょうか。
次回はいよいよこの町全体の仕組みがわかります。
十五話やってようやく世界観の説明…
リメイク版ではもっとわかりやすくしたいですね。
それでは次話もお楽しみに!
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