英雄は勘違いと共に   作:風に逆らう洗濯物

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お待たせしました。
第七話になります。よろしくお願いします。


第七話 海を眺めて

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 湖が荒れている。

 

 黄金に輝く魔力の奔流。視界を染めるほどの輝きと魔力のうねり。それが極限まで圧縮され、対峙するナニカに向けて放たれる。

 

 海を照らす巨大な砲撃は、桜色の奔流を思い出させる。

 場違いにもソレを見る俺の視界を、舞い上がった塵煙が隠した。

 

 ──バイザーが視界をクリアにする。

 遠くに映る闇色の真円。

 見覚えのある複雑怪奇な魔法陣に、思わず口を開く。

 

「フォーカス・ブースト!」

『──―Ready, 〝Focus Boost〟!!』

 

 途端、全身を打つ巨大な圧力。常日頃なら気絶して終わるソレを気合いで耐える。

 視界は流れ。立ち尽くす騎士を通り越す。

 痛みに喘ぐ口を無理矢理開き、言葉を紡ぐ。

 

「■■■■■・ブーストッ‼︎」

 

 大気の歪む、音が聞こえた。

 

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 ●

 

 

 変な夢を見て目を覚ます。

 夢の内容は覚えていないが、何となく目が覚めたので背筋を伸ばし、灰色リストバンドを腕に巻く。

 

「……よし」

 

 二人が置いてってくれたらしいサンドイッチを頬張り、武家屋敷の玄関へ。伸び切った雑草を踏み締めると、そのまま住宅街とは逆へ歩き出す。

 

 この冬木には川辺公園の他に、海にも公園がある。

 蛍が舞う静かな川辺公園とは対照的に、爽やかな風が吹き、アビが小魚を頬張る。そんな生命を感じられる癒しスポットだ。

 

「やっぱり、人はいないか……」

 

 人気のない道を歩く。

 よく育った木々、適度に置かれたベンチ。

 その見慣れた光景は、俺の心に少しばかりの不安を与える。

 

 海の見える道を進む。人の気配のしない海と、公園。

 隣人が居ないだけで、こうも変わるのかと驚き、目を伏せる。

 

 ……楽観視してたが、もしかしたらこの街は。

 

 公園の中央に着く。

 相変わらず足音一つないその様子に、心が痛む。

 自分は今どんな顔をしているだろうか……

 そう思い、鏡代わりになりそうな噴水へと体を向ける。

 そして視線を上げ……

 

 ──噴水の端に腰掛け、静かに海を見つめる幼女を見つけた。

 赤いリボンを結んだ黒髪に、赤いワンピース。

 小学生くらいの少女が、悩ましげに海を眺めている。

 

 まさかの第一村人発見である。

 俺は急かす心を落ち着かせ、少女を怖がらせない様に穏やかに声をかける。

 

「やあ、海でも見てるのか?」

 

 振り向く少女、目尻に浮かぶ涙。

 やっぱり目つきが悪いって損だなと、後悔に浸る俺。

 次の瞬間、少女が口を開く。

 

「大樹さん! おじさんを助けて!!」

 

 流れる涙、そして少女の両手は。

 俺の手を掴もうとして……。通り抜けた。

 

 ○

 

 馬岱さんと和解し、そのまま稽古を少ししたボクは機嫌良く縁側を歩く。

 

「やっぱり強いね! 馬岱さん。大剣とか使ってみない?」

 

 ボクの提案にいつも通り顔を顰めると、首を振って呆れた様に言葉を返す。

 

「どこにあんだよ、そんなもん。それに、俺はコイツでいいのさ」

 

 彼は薙刀を軽く揚げてみせた。

 朱色に染まる柄は、随所に傷が残り、年季を感じられ。

 穂の根元には、馬の尾を彷彿とさせる飾りがつけられており、無骨な槍に芸術性を与えていた。

 

「そっかぁ、じゃあ仕方ないね」

 

 彼の返しに、笑みをより深くしたボクは機嫌良く襖を開け……。

 ──もぬけの殻となった布団を視野に入れる。

 玄関へ向かう襖は開け放たれ、彼が出て行ったのは確実だろう。

 

 ボクは一瞬呆然とすると、念のため急いで部屋中を探し回る。

 布団! 

 ……いない! 

 押し入れ! 

 ……いない! 

 タンス! 

 ……いない! 

 

「馬岱さん!! どうしよう! 大輝がいなくなっちゃった!!」

 

「落ち着け!」

 

 ボクの頭に馬岱さんの手が振り下ろされる。

 いたい。

 

「ガキじゃあるまい。タンスに入るわけねぇだろ」

 

 それはそうだ。ボクは袋棚にかけた手をそっと戻し、馬岱さんに向き直る。

 

「でも!」

 

「それに、見て見ろ。用意しといた昼飯がねぇ」

 

 彼の指差す先には、空になったお盆が一つ。

 どうやら残さず食べてくれたらしい。

 少し嬉しい。

 

「飯を食うってのは健康の証だ。自暴自棄とかじゃねぇさ」

 

「だから待ってやろうぜ」と語る馬岱さんはニカっと笑うと台所に向かう。

 どうやら、夕食を用意するつもりらしい。

 

 まだ、心配は抜けないが、ワタワタしていて仕事がなくなるのも癪に触る。

 急いで立ち上がったボクは、台所へと駆けて行った。

 

 ●

 

「つまり、おじさんが偽物に騙されて、儀式に挑戦していると」

 

 ──“そうなの。”

 

 俺の言葉に頷く黒髪リボン少女。名を凛花と言うらしい。

 気づいたら、幽霊状態でここに居た彼女は、唯一の肉親であるおじさんが、自分の偽物に騙される所を見たと言う。

 

 ──“頼れるのはダイキさんだけなの。お願い! ”

 

 しかし自分では何も出来ず、どうにか出来ないか考えていた所に、運良く見える俺が登場。

 もともと知り合いだった俺に、おじさんを助けてほしいらしい。

 

 ……人違いじゃないかなぁ……。

 心の中でそう呟く。

 俺は少女に見覚えも無ければ、死霊術師だと言うおじさんに面識はない。

 

 ──“やっぱり、ダメ……? ”

 

 落ち込む少女の姿が見える。弱々しい半透明な少女はやはり見覚えがない。

 本当なら断るべきだろう。

 義理もなければ、危険が伴う。

 

 ──しかし。

 今の俺には力がある。『仲間』と言う力が! 

 それにおじさんは死霊術師と聞く。

 であれば、あの時のゾンビが彼の仕業である可能性も0では無い。

 よって……

 

「任せてくれ」

 

 力強く頷く。

 打算あり気の他力本願だが、この幽霊っ子を見て、助けたいと思う心もある。

 

 危険極まりないこの町で、戦場に向かう理由はそれだけで構わないのだ。

 




第七話 いかがだったでしょうか。
今話は、貴重な日常パート。に、なってるといいなぁ。
年が明け、忙しくなる頃合いですが。
無事完結できるように頑張って参ります。
皆様の評価、感想、ご質問など。お待ちしてます。

それでは、次話をお楽しみに!
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