蒼天を駆ける野球バカ   作:FAKE MEMORY

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ようやく、ようやくレースが見えてきました。
とはいえ、レース回が懸念なわけなんですけど。
なんでみなさんあんなにレースの描写書けるのか不思議です。

あ、ですがまだ次がレースという訳でもないです。


反省会

 桐生院さんとハッピーミークとのレースが終わり、俺達は学校のベンチで少し休んで話すことにした。

 スカイも今日の練習で思うこともあっただろうし、今後の目標を作るのにも、ちゃんと言語化するのが1番だ。

 自販機で適当に飲み物を買って、スカイのいるベンチに戻ってみるとちょっと俯いてるのが見えた。

 

「熱々のおしるこ買ってきたぞ」

 

「トレーナーさん、全っ然気が利かないですよね」

 

「冗談だよ。普通の500ミリのお茶」

 

「あ……ありがとうございます」

 

 スカイはごくごくとお茶を飲み始めた。

 ここはグラウンドから離れているので、練習の声こそ聞こえるが集中を切らすほどではない。適当に選んだ割には反省会としてぴったりな場所だ。

 

「口にも出てたけど、やっぱ悔しいよな。でも、俺がちゃちゃ入れたから悪い方にはいかなかったろ」

 

 そう、からかうのもちゃんと計算してるのだ。

 ……ていうことにしておいた方が後々いい方に転がる、といいなぁ。

 

「なんでからかってきたのに偉そうなんです? 確かに、ネガティブにはなりませんでしたけど」

 

「なら全て良しだな。取り敢えず、反省会を始めるか」

 

「反省会の情報ダダ漏れじゃないですか。もっとこう……ちゃんと部屋でやるとかないんですか?」

 

「……焼肉屋とか?」

 

「それ忘年会とかと間違えてません?」

 

「ごめん、草野球の反省会だから」

 

「ウマ娘!! レース!! 一緒にしないでください!」

 

 よく考えたら草野球終わりは反省会(飲み会)だから、またちょっといや大分違うか。

 

「まあいいや、めんどいからさっさと始めよう」

 

「切り替え早!?」

 

「まあ切り替えは大事だからな。取り敢えず、このレースだけでの反省となると一つだけになる。自分のペースを乱すなってところだな。特に今日はテンション上がりすぎだ」

 

「うぐっ……」

 

 スカイはあまり走らせることはなく基礎ばかりで溜め込んだ走りたい欲があそこで爆発した。

 それだけならまだいいが、フォーム矯正や基礎練習の効果も相まってかスカイにとっていい方に転がりすぎてさらに爆発してしまった。

 要するに、速く走れるのが嬉しすぎてどんどんペースが上がってしまったわけだ。それが招いた結果がスタミナ不足。以前と比べて走る効率が上がっているとはいえ、流石に飛ばしすぎだった。

 俺はそれらをスカイに説明しながらパソコンに打ち込んでいく。くそほどパソコン出来なかったのに慣れるもんだな。前より絶対早く打てるようになった。

 

「中々手厳しいですなぁ」

 

「仕方ないだろ、外から見てて明らかだったし。まあ、こんな感じで、ペース配分は後々の課題になるわけだが、逆にいいこともあった。今言った通り、フォーム矯正や基礎がちゃんと成長に結びついているということだ」

 

 基礎練なんてコツコツやってほんの少しずつ成長するから実感するまではかなり時間があるもので、そもそもそれが基礎のお陰だったのか分からないのがほとんどだ。

 それがフォームが良くなったのも相まって短期間でここまで成長した。悪くいえば早熟って感じだが、それならそれで次のステップをそれだけ早く踏めるから好都合だ。

 俺でも名前を知っているようなレースが来るまでには、スカイの得意とする逃げでの経験を最大限高めていきたい。

 

「なるほどなるほど。つまり、トレーナーさんの見立てだと、順調ってことなんですね?」

 

「そうだな。順調……」

 

 順調どころじゃないんじゃね?

 スカイが空飛ぶんやろ? 馬が牛から翼を授けてもらうんやろ?

 ……すんごいことになりそうだな。

 

「30馬身差でデビュー圧勝とか……」

 

「いくら覚醒したとしてもそれは無いです。それよりも、歌とダンスですよ。私、触りくらいしか練習してませんよ?」

 

「んだよさっき言ったろ? 骨は拾っておいてやるから大丈夫って」

 

「だから全然大丈夫じゃないです! 諦め入ってるじゃないですか!!」

 

「たりめぇだろ」

 

「当たり前なんですか!?」

 

 中学生の走りを何とかしたりするくらいならともかく……歌とダンスって誰に教えて貰えってんだよ。

 そこら辺のダンス教室ってのもおかしな話だし、かと言って走りならともかくダンスをプロからって訳にもいかん。あのライブって正直、かなり微妙な立ち位置な気がするんだよ。

 うーむ……。でも、それなら案外そのまんまでも何とかなるのでは?

 

「……どうしたんです? 私の顔じっと見て」

 

「いや、容姿がよけりゃもうダンスとかプロじゃねぇしどうだって良くね? スカイは最低限まともに動いてりゃ『ヒャーカワイー』とか言ってくれるぜ?」

 

 知らんけど。

 

「適当!? ダンスも手は抜いちゃダメなんですってば!」

 

「いや、だってなぁ……」

 

 無理なもんは無理よ。

 だって、どうしようもないもん。逆にどうしろってんだ。

 

「……あれ? トレーナーさん、さっきなんと?」

 

「ん? いや、だってなぁ……」

 

「そこじゃなくて……その、前の……セイちゃんの聞き間違いですかね」

 

「うむ?」

 

 俺変なこと言ってたっけか。えーとだな、ダンスの話をしてて、それで俺がスカイの顔をた時になんとなーく思いついたやつだよな。

 

「ああ……容姿がよけりゃってやつか。そのまんま、そこそこ出来てりゃ容姿補正がかかるってこった」

 

「……おやおや? もしかして、私の魅力に気づいちゃいましたか?」

 

「いや、気づくも何も見た目のことなら一瞬で判断できるだろ。人の好みなわけだからな」

 

「っ……! と、トレーナーさん、それ以上は何も言わないでくださーい」

 

 スカイは顔を隠してアワアワとしていた。

 多分、褒められてむず痒いんだろうな。俺もこんなの面と向かって言われたら恥ずかしいし、そもそも今言ったこと後悔してるし。

 だが、こんな面白いものを見ておいて引き下がるわけにはいかない。

 

「いやいや、別に容姿でそんな恥ずかしがることないだろ。そんなの人の好みですぐ変わるし、別に褒めてるとかってレベルじゃないぞ?」

 

「あ〜〜!! も、そういうのいいですから!」

 

「そういうの……よう分からん」

 

 だいたい分かってるんだがな……って痛い痛いポカポカ殴るんじゃない。やばい、ニヤニヤしてるのバレたか。

 

「もう、そういう意地悪するトレーナーさんなら話は聞きませーん」

 

 何故か拗ねたスカイ。ぷいと視線を外して目を合わせてくれなくなってしまった。

 

「え……ちょっと待てこれからのことについての作戦会議も兼ねてるんだが……?」

 

「つーん」

 

 つーんって本当に言う人初めて見たよ。ってそうじゃない。折角予定色々準備してたのに全部だめになるんだが。

 

「え、あの、ちょっとスカイさん?」

 

「……」

 

 これは……いや、マジで怒ってたら普通帰るしそれは無い。とすると、スカイは何かを求めている。

 何か言葉をかければいいのか、それとも実はスカイは俺をからかってるだけで何かに引っかかって欲しいのか……。

 いいやそうじゃない、大切なのは和の心。即ちボケとツッコミ他ならない。それは……空が、宇宙が言っている。

 

 ――つまりスカイが言っているってことだ。そうだそうに違いない。

 

「わさびか?」

 

「……へ?」

 

 つーんはわさびなんだよな!? そうなんだよな!?

 

「スカイ、わさびだろ!? 分かってる、それはわさびなんだ!!! わさびでしかないんだ!! 大丈夫わさびなら一過性のものだから心配ない!! 頑張れわさび!!」

 

「う、うるさーい!! ……もう、トレーナーさんはどうしてそうなっちゃうんですかー? 普通、今のは謝っても無視されて何も出来なくなる場面じゃないですか」

 

「いや、だってボケとツッコミは宇宙の心理だってスカイが」

 

「言ってないですよ!? トレーナーさんは私のことなんだと思ってるんですか!?」

 

「そりゃあ、光の星からやってきた「それはもういいです!!」うん、そうだね」

 

「むー、調子狂うなー。セイちゃんの調子が乱気流みたいに荒ぶってますよ」

 

「お、上手いねスカイだけに? あ、すいません」

 

 耳のすぐ隣にビュンと風が吹いたと思えば、そこにはスカイの拳があった。馬鹿野郎、ウマ娘が殴ったら骨イカれるんだからな。

 

「トレーナーさん。もう、セイちゃん怒りました」

 

「過去形ってことはセーフだね。ほとぼりが冷めてからまたすることにs「まだ継続してます」あ、はい」

 

「セイちゃんの機嫌を取るには明日、セイちゃんとお出かけするしかありません」

 

「どこ行くの? うんこミュージアムとかごふぅ!!」

 

 やばい……腹が……なんかせり上がってきてる。

 

「トレーナーさん、明日海行きませんか?」

 

「あ、うん……行くから……セイちゃんの為なら、どこにでも行くから……」

 

 トレーナー蹲ってるんだぞ。何勝手に話進めてんだよ……って言いたいけど余裕が無いんだよなぁ。

 

「……っ。いやー、そんな状態でも私のことを一番に考えてくれるなんて、セイちゃんは良いトレーナーに恵まれました」

 

「よく分からんけど……まあ、海行くんだな、分かった」

 

 意識を何とか平常に保とうとしながらだったが、取り敢えずスカイのご機嫌取りに海に行くらしい。

 海……なんで海なんだ? スカイは海が好きなのか?

 まあ、いいか。ちょっとトレーナー、限界だよ。意識が……あー……。

 

「グッバイ……」

 

「へ……? わっ、と、トレーナーさーん!!」




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