蒼天を駆ける野球バカ   作:FAKE MEMORY

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育成の冒頭リスペクトです。
ちょっと頭良さそうな感じをいきなり出してくるの好きなんですよね。



釣りバカ野球バカ

 ザバーン。

 堤防の上からこんにちは。俺さ、スカイはビーチとかそっちの方が好きなのかなと思ってたんだけど違ったのね。

 砂浜じゃなくて堤防。もう、何しに来たかなんてすぐ分かるわけだ。

 

「トレーナーさーん。ここですよー」

 

 スカイは既に釣りをエンジョイしているみたいだ。大きいクーラーボックスを持ってきていて、バケツには既に2匹の魚が泳いでいた。

 

「もう釣れてんの? どんくらい前からここに居たんだよ」

 

「ふふーん。こんなの、セイちゃんにかかれば朝飯前なのです」

 

「へぇー」

 

「む……なんか興味無さそうですね。釣りはお嫌いですか?」

 

「いや、そもそもやった事ないし嫌いもクソもないけど」

 

 まあ、やったことないは嘘だ。とはいえ、親のバス釣りに連れて行って貰ったのと、釣り堀でダラダラしてたのくらいしかやったことがないから、ほぼ未経験に等しい。

 あ、あとキャンプで釣りしてなんも釣れなかったのもあったか。

 川はね、釣れんのよ。下手なだけだとは思うけど。

 

「ほうほう、それなら良かった」

 

 スカイがリールを巻くと、針の先には何もついていない。

 

「あらら……餌取れちゃってたか」

 

 スカイはため息を吐いてから、魚の切り身を手際よく針に付けた。

 かなり手馴れてるところを見ると、長い間やってるんだな。この年で釣りめっちゃ好きってのは聞かないよなぁ。俺の学校にもそんな人の話は聞いたことがない。

 

「やってみます?」

 

 スカイが竿を俺に向けて突き出してきた。

 

「んじゃ少し」

 

 投げる方法は知ってるぞ。たしかここに指をかけて……しならせて飛ばす!!

 ファイヤーインパクトぉぉぉ!!! って叫びたいところだったが、そんなことすると魚が逃げるので静かにしておこう。

 うむ、なかなかよく飛んだ。

 

「トレーナーさん、実はちょっとやった事あるでしょ」

 

「初心者に草生えたレベルだけどな」

 

「そこは毛が生えたって言ってくださいよ」

 

「じゃあ鼻毛で」

 

「もう……」

 

 いつも鋭いツッコミをかましてくるスカイだが、今回に関しては非常に穏やかだった。

 俺のボケなどどうでもいい、とにかく釣りに集中、いや心を委ねたいと言ったところか。

 てことは、それだけ好きなんだろうな。

 

「私、こうやってのんびり時間が流れるのが好きなんです。特に釣りは、風が心地いいし、眠たくなるしで……ふわぁ……。凄く、のんびり出来ますよね」

 

「なるほど……」

 

 確かに、こうやってのんびりダラダラ過ごす時間も悪くないのかもしれない。

 普段から時間を効率よく回すとか、そういうことを考える訳では無いが、それでも急ぎ足になることが増えていた。

 それは、確実に仕事の影響だろう。仕事に余裕が無いから、時間も早く過ぎていく。だから、時間を大切に使わなきゃってなる。

 ただ、釣りをしてみるとこういう時間も悪くないと自然に思ってしまう。海が広がる景色も、磯の香りも、波の音も、全てが体に染み込んでいくみたいだ。

 特に最近は忙しかったからなぁ。学生だったのがいきなり社畜だもん、馬車馬の如く働いて心が廃る廃る。

 そういえば、ウマ娘の世界に馬車ってないのか? いや、人力車みたいな感じで存在するのか?

 それは普通にありそうだな。今度調べてみるか。

 

「スカイが人力車引いてきたらタクシー代浮くんだけどな」

 

「どうしたんですか急に、あと私はダラダラしたいので引くならトレーナーさんが引いてください」

 

「だよな」

 

「だよなって……あ、トレーナーさん引いてますよ」

 

「へ? こんなところ人力車通るの?」

 

「違います。ほら、竿」

 

 竿……? スカイの指さした方向を見てみると、竿がグイグイと反応している。

 

「ほんとだ、なんか動いてるな」

 

「動いてるな……じゃないですよ! ほら、ぐるぐるーって回して下さい」

 

 リールを回すと結構な重みが竿を伝ってきた。うお、ちょっと待てこいつ意外とデカいぞ。

 

「おお、これは大物の予感? トレーナーさん、バラすのはやめてくださいよ?」

 

「それ初心者にかける言葉じゃねぇ……だろ!」

 

 これってこのまま回しちゃっていいの? 糸切れない?

 わっかんね、釣り糸って割と丈夫だしまだいけるのか……?

 必死にリールを回していると、段々と魚の形が見えてきた。

 うお、やっぱりデカい。なんだアイツ、誰だ。

 

「……えぇ? もしかして、ヒラメじゃないですか。トレーナーさん、良いの当てましたね」

 

「ヒラメ……? 俺食べたことないけど美味しいの?」

 

「美味しいですよー。お刺身も美味しいですし、煮ても焼いてもたまりませんよ!」

 

「へー、そりゃ良いな」

 

 ぐるぐるぐるぐる。

 リールを巻いて暴れまくるヒラメを床にペトリと置いた。

 網あるんだし網でさっさと掬えばよかったのでは?

 にしてもマジでデカイな、こいつ。

 

「おー、45……いや、50くらいありそうな超大物! トレーナーさんもたまにはいい仕事しますね」

 

 たまにはってなんだよ。そもそも、その言葉を仕事中に聞いたことないぞ。それってさ、遠回しに俺の事使えねぇって言ってるんじゃないよな?

 

「すっげえな、ここめちゃくちゃ当たりな場所なのか」

 

「そうですよー。なにせ、トレーナーさんが来る前あっちに行ったりこっちに行ったり……あ」

 

 ふむふむ……なるほど、それで何匹も魚が釣れてるのか。

 

「ん、あんがとな。お陰でいいリフレッシュになるってもんだ」

 

 正直、釣りってわけわからんヒトデとかクラゲとか長靴とかが上がってくるイメージしか無かったから、こんなデケェの釣れてマジで満足だわ。

 

「トレーナーさん……ってお礼するんですね」

 

「いやそれ失礼すぎないか?」

 

「にゃはは、冗談に決まってるじゃないですか。でも、ちょっと嬉しかったですよ」

 

「ちょっとかよ」

 

 なんか、ここにいるとスカイの空気に飲み込まれるな。いつもの調子が出てこない。

 それに、スカイがいきいきしてる。潮風になびかれて髪が揺れて、なんか別人な感じだ。いや、正直に言おう。綺麗ですよ。年下だから認めたくはないけど。

 

「あ、そうだ。トレーナーさん。この魚達を美味しく調理してくださいよ」

 

「俺が? なに、トレーナーってそんなこともするの?」

 

「人によってはですけど、栄養管理とかもトレーナーがやってたりするんですよ? トレーナーさん、知りませんでしたか?」

 

「全く」

 

 初耳だよ。同期の人たちと絡んでないからなのか、それともただこの世界の知識がないからなのかは分からないが、そんなこと聞いたことない。

 

「ありゃー、じゃあ料理はからっきしで?」

 

「いや、作れない訳では無いけど」

 

 食トレとか言って部員でアホみたいな量の料理を作ってドカ食いしたりってのをちょくちょくやってたし、問題は無い。

 

「魚くらいならなんとかなるか」

 

「ほうほう、それなら良かったです。トレーナーさんには、ちゃーんと大物を捌いてもらわないと困りますからね。みんなも呼んで盛大にパーティです。セイちゃん的には、出来れば3回くらいはやっておきたいですかね」

 

「3回……」

 

「そう、3回です!」

 

 なんか意味深に3回を強調してくるスカイだが、ごめんな。俺じゃあその答えは見つけられそうにない。

 いや……でも3っていう数字といえばって考えれば良いんだよな? やっぱ3って言ったら……三冠王しかないだろ。

 つまり、スカイは三冠を取りたいと、そしてその時には盛大に祝って欲しいと、そういうわけか。

 

「3回と言わず7回とかやっちゃえばいいんじゃねぇの?」

 

「うわぁ……それだと休む暇ないし大変ですよ。私はあくまでもマイペースに、のんびりと練習しつつ気づいたらレースに勝ったっていうのが1番合うと思うんです。その方が気楽ですし。トレーナーさんも、そう思いませんか?」

 

「まあ……分からなくもない」

 

 俺の好きな野球選手も言ってたしな。

 

「言葉はちょっと違うけどさ、俺の好きな野球選手の言葉で、『最初から優勝を目指すんじゃなくて、何気ない試合を勝って、勝った勝った……。それで9月辺りで優勝争いしていたらさあ目指そうとなる』っていう言葉があってさ、スカイはのんびりとか言いながらも、目の前のことをちゃんとコツコツやってく人だもんな。なんか、考えが似てる気がする」

 

「野球は……余り詳しくないですけど、なんかいい言葉ですね、それ。うんうん、セイちゃん、ちゃんと覚えておきますよ」

 

 別に忘れてもいいんだけど……まあ、こういう人の心を動かすような言葉って結構大事なところあるし、良いとしよう。

 ふと、スカイのしっぽがふわりと揺れた。

 

「デビュー戦、勝っちゃいますよ。トレーナーさん」




読んでいただきありがとうございます。
感想評価、よろしくお願いします。
次の話でついにストックがなくなるので、恐らく毎日は無理だと思います。
まあでも、ゆるゆる書いていきたいと思います。
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