そんなに見る人いないで埋もれるものだと思ってたのでちょっと嬉しいですね。
皆さんありがとうございます。これからもゆるゆるですが投稿していこうと思います。
「スカイよ。これから作戦会議を始める。いいか、緊急事態だ」
「元はと言えばトレーナーさんのせいなんですよね」
「まあな」
トレーナー室に連れてきて、ホワイトボードにでかでかとダンスについてと書いてある。
先程クソ寒ダジャレ魔神もといシンボリルドルフに言われた、踊りを何とかしろというお叱り。本当ならレースの反省を元にトレーニングといきたいところだが、今はこれが最優先事項だ。
「スカイって知り合いにダンス好きな人とかダンス上手い人居ないのか?」
「うーん……でも、友達にダンスの練習見られるのはなぁ」
くそ、こいつ早速贅沢言いやがったな。いや分かるんだよ分かるんだけど、難しいんだよ。
「四の五の言ぅんじゃねぇ……っていいたいところだがか、まあ俺自身そんなこと言えた立場じゃないからなぁ。まあ、なんだ。めんどいから取り敢えずスカイに似合うきゃわいいダンスを教えてくれるやつを探してくればいいんだろ」
「適当過ぎませんか……? まあ、トレーナーさんが探してくれるならそれに越したことはないですけど」
任せろ。最高にダンス上手いやつを探してきてやる。
◇◇◇◇
とは言ったものの……ダンス上手いやつってどうやって探すかだよな。正直言って、桐生院さん以外まともな知り合いがいないというのもあって情報網が少なすぎる。
レースの実力なら桐生院さんに聞けばすぐだがダンスに関してはどうしようもない。
どうせ、同期に聞いてもひたすら練習して慣れろとかで上手い人なんて教えてくれないだろう。
今回のミッション。かなり難しいかもしれない。
「はぁ……」
学園に居てもろくな考えが生まれないと思った俺は、スカイを桐生院さんに預けて外に出てきた。
スカイは終始「ずるいー、私も練習休みたーい!」とか言ってついてこようとしてたが、俺は別に仕事をサボってる訳では無い。新たなインスピレーションをだな……うん、これは言い訳だな。
ベンチに座り、ひたすら考え込む俺。まるでどこかの石像みたいだ。ここって考える人のならぬ考えるウマ娘みたいな石像あるのかな。
……暇過ぎて死にそう。いや、詳しくは何すればいいのか分からなくて死にそうだ。
案の定、ダンスの上手い人を探すのに苦労している。
まず、俺自身まともにウマ娘が踊っているところを見た事ないのだ。
「はちみー甘め濃いめ多めで」
「はあ、甘め濃いめ多めね〜」
む……はちみーってなんだ。そういえば、漢方薬で似たようなのあったな……。
葛根湯じゃない、えーと、思い出した。八味地黄丸だ。
ってんなわけないよな、普通にはちみつだよね分かります。
丁度キッチンカーが止まっているようで、何やらウマ娘がスイーツを頼んでいるみたいだ。
いや、あれスイーツってレベルじゃねーぞ。甘々だよ、糖尿病になるよ。んだあのバケモンみたいな飲み物。
「いや、でも一周まわって逆に気になるな」
ほら、よくあるだろ? 最近とか昆虫食の動画よく出てくるだろ? あれさ、見ててうわぁ……こんなもん食えねぇよって思いながら見るんだけど同じようなの何度か見てると「あれ、実はマジで美味しいんじゃね?」みたいに思えてくるっていう。そんで、ちょっと食いたくなる。食わないけど。
まあ、今回ははちみつだ。くそほど甘い以外はまだいけるだろう。
「粉落としで」
「はーい粉落としねー」
え、ちょっと待てマジであるの? コールから家系かなとか思ってたけど博多ラーメンかよ。
てか、はちみーで粉落としってどうやるよ。はちみつに粉なんてついてないけど。
と、思ってたら店員さんがコップに注いだはちみーにアラザンやらカラースプレーやらを入れ始めた。
なるほど、粉落としってそのまんま振りかけるのね。……ってそうじゃない。おい待て、これ以上甘くしてどうするつもりだ。
「どうぞー」
――地獄かよ。
手に持ったのは琥珀色をしたやべぇ液体。正直、まともな脳みそをしたやつが食べるものじゃない。
まあ、アラザンがキラキラ光っててカラースプレーも綺麗だしインスt……ウマスタで映そうな感じではある。
まあ、俺の場合は某字幕が流れてく動画サイトでゆっくりでおふざけしながらが『はちみー 博多ラーメン風に頼んでみた』が妥当なとこか。
……なんか、さっきのウマ娘がめっちゃ見てくるんだが。飲みにく……。
まあ、見て見ぬふりだ。
ストローでは吸いにくいので全力で吸いにかかる。ドロっとした甘い液体と、はちみつの香り。何やら口の中にジャリジャリとする歯ごたえ。
まあ、不味くはない。どちらかというと美味い。でも、甘い。ゲロ甘だ。
「美味しい?」
「……うん?」
「ボク、それ飲んだことないんだー。どう? 美味しい?」
このウマ娘、すんごいグイグイ来るなぁ。
「うん……まあ、非常に前衛的な飲み物だな」
「本当? じゃあ今度ボクも頼んでみるよ!」
甘め濃いめ多めの粉落としになるのか。混沌としてるな。そのうちクリームマシマシとか出てくるのではなかろうか。
あと、なんかノリノリに頼もうとしてるけど、俺は美味しいとは一言も言ってないからな?
「いやーまさか、カイチョーに怒られてたトレーナーさんがはちみーのファンだったなんて思わなかったよー」
いや、俺ははちみーのファンなんかじゃねぇ。飲むんならまだタピオカの方がマシだ。それより焼肉が食いたい。
「……あれ、お前生徒会室にいたの? どこに?」
「えー? 気付いてなかったの? ボク、カイチョーの後ろにずっと居たけどなー」
後ろに……? あ! もしかして、シンボリルドルフの後ろから手がビュンビュン生えて動いてたやつお前か!!
「え、ちょっと待てふざけるなよ。俺、笑いそうなのめっちゃ我慢してたんだからな」
「にしし、カイチョーに怒られてる人初めて見たから面白くなっちゃって。でも、その後エアグルーヴに怒られたんだけど」
エアグルーヴ……ああ、あのダジャレにやられてげんなりしてた人か。
「あれ、そういえばお前……」
「ちょっとー。お前呼びはやめてよね。ボクにはトウカイテイオーっていう立派な名前があるんだから」
えっへんって言ってるんじゃないかってくらい自信満々なトウカイテイオー。そうだな、こっちもこっちなりの自己紹介といこうか。
「トウカイテイオーか。俺は……あれ、思い出せない」
「どうしたの?」
「名前が……名前が思い出せないんだ!?」
「ええ!? もしかして、記憶喪失……?」
「いや全然、至って普通の健康体だ。因みに俺の名前は三浦悠介な」
「うえぇ!?」
なんか、ちょろそうだからすぐ引っかかるんだろうなーと思ったんだよ。
「あっはっは。全く君は人騒がせだなぁ」
「それ、ボクのセリフだからね!?」
「いやぁごめんごめん。悪気はあったんだよ」
「そっかーならしょうがな……ってならないからね!? んもぅーーーー!!」
牛かな? ウシ娘かな? まあ、牧場ってところは共通点あるけど。
「……ふんだ。せっかくこのボクがダンスの先生してあげてもいいかなって思ったのに」
「え……? おま、踊れるの?」
「当たり前だよ。だって、ボクは無敵のテイオー様だよ? レースでもライブでも無敵だからね!」
なるほど……やはりこれは天の巡り合わせか。うん、仕事サボって正解だったな。
「えっと、お願いがあるんだけど」
「ダンスのことでしょ? でも、いじわるするなら教えてあげないもーん」
ちっ、めんどくせぇなぁ。
そういうことするのか。そうかい分かった分かりましたよ。
「無敵のテイオーさん。お願いが……」
「聞こえなーい」
こ、こいつ……俺をコケにしやがってぇ……。
この感覚は、屈辱。そして、目の前のやつは俺の次の行動をひたすらに待ち焦がれている。
俺は、もはやそれから逃げることは出来ない。
頭を地面に付けて、土下座で頼み込まなければならない。
やつの言葉は、それを暗に意味しているのだ。
俺は、土下座をしてやらねばならない。この会社を存続させるには……この憎きA社の社長に一度ひれ伏さなければならないっっっっっ!!
俺は手を握りしめ震わせて、地に足をつけて――土下座した。
「テイオーさんっっ!! 一生のお願いです!! ダンスを、教えてやってくださぃぃぃぃっ!!」
「え、いや流石にそこまでしなくても」
「くっ……これ以上何をしろというのか!! 社長!! 俺に……俺にこの会社を畳めというのかっっっ!!!」
俺の会社から甘い汁をすすり「わーはっはっはっはっちみー」と高笑いしながら市場を独占しようと企む。
そういうことだな!?
「モウワケワカンナイヨー!! 分かったから!! トレーナー落ち着いてよ、みんな見てるからぁ!!」
「うん、ありがとね」
「……ボクもう疲れたよ」
こうして、スカイとトウカイテイオーのダンスレッスンが約束されたのだった。
読んでいただきありがとうございます。
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