いやぁ……疲れた疲れた。昨日は時間絞り出して書いてました。
そしたら話が偉い方に流れて流れて……。
まあ、こんなのもありかなと思い投稿しました。
よろしくお願いします。
「三浦トレーナー。またですか……」
たづなさんがこめかみを抑えて眉間に皺を寄せていた。
これは怒っていると言うより呆れていると言った方がいいかもしれん。
「担当のウマ娘のレースを目前にして1週間の休養。帰ってきたと思ったら右肘の打撲と、その顔に浮かんでいるクマ。またなにか無理をしたんではないですか?」
この打撲は……野球教室でデッドボール食らって打撲やらかしたんだよね。クマは……そのまんま寝不足だ。野球少年に対しての指導の手伝い、情報整理など友人の手伝いに加えて、レース前というのもありスカイのための仕事は欠かすわけにはいかないし全部桐生院さんに押し付けるわけにはいかない。
その結果のこれなわけだが……そんなこと素直に言ったら何されるか分かったもんじゃない。
「いやだなぁ。そんなわけないじゃないですか。仕事に慣れなくて疲労がガクッときて、それで休んだだけですよ。しっかり休養できたんでこの通り元気元気……」
「全然元気に見えないです!! あと、レース目前のウマ娘に対してこの行動はトレーナーとして許されるものではありません。ちゃんと、始末書は書いてもらいますよ」
「始末書なら事前に提出しました。理事長が受理したはずですが」
俺は外出前、事前に反省して事前に始末書を出して準備は万端。ニッコニコで野球教室に出掛けたのである。
たづなさんは更に頭を痛そうにして隣を見た。
「理事長、こう言ってますけど……どういうことです? 休養届が受理されているのも疑問に思いましたが、事前に提出した始末書まで受理されたんですか?」
「えっと……それは……だな」
「それを今すぐ確認したいのですが……構いませんか?」
「それは、だな……」
「理事長?」
「わ、分かった!!」
理事長は、引き出しをガサガサと漁って何枚かの紙を取りだした。
そこには、俺の休養届に加えてそれに関しての理由が書かれた紙。そして、何枚かの書類に始末書。
ちゃんと書類などはもちろんのこと、始末書にも理事長のハンコが押してある。
さて、理事長が何故事前に提出なんて馬鹿げた始末書にハンコを押してしまったのか。
それには幾つかのピースが繋がることによって実現する。
1つ目はコネを広げるために理事長やたづなさんと積極的に話していたからだ。
それによってたづなさんがいない時間を把握していて、かつ理事長が仕事で疲れているだろう時間帯を事前に知っていた。
理事長は俺と同じくまだ子供。ウマ娘のために……っと日々気を抜くことなく仕事はするものの、疲れれば当然判断力は大幅に落ちる。すると、当然会話になった時に主導権はこちらが握りやすくなる。そこで、俺の培ってきたスキルが役に立つ。
それは上下関係が厳しく、かつ強豪チームと練習試合で切磋琢磨する野球部で鍛えた世渡り術と勝負勘。これが2つ目のピースだ。
とはいえそれがあったとしても、事前に始末書を出すなんてアホなことをして受け取るはずがない。だが、俺はそれをどうにかできる3つ目のピースがあった。
「疑問……。この紙は、一体なんだ?」
「始末書です。ちょっと……どうしても外せない用事がありまして、担当のウマ娘に迷惑をかけてしまうのも分かっているんです。反省はこれ以上ないほどできます。でも、これだけは……お願いしたいです」
「うむ……そう言われてもだな。休養届なら目を瞑らないでもないが、流石にこれは受け取れない。こちらだって無理なものは無理なのだ。特にこんなことをしては、たづなに怒られてしまう」
「そうですか……すみませんでした。――理事長、話は変わるのですがトレーニングルームを改装されたらしいですね。自分も見たんですけど、あれは素晴らしいです」
「うむ! ウマ娘の為だ!! 私は私財を投げうってでも、あの子たちのサポートが出来ればと思っているからな!!」
「そうですか。あれ、私財だったんですね」
「うむ!!」
「自分の担当のウマ娘も歓喜に振るえていました。『これは本当にすごい!! 素晴らしいっ! やる気満々ウーマンですよ!! わーっはっはっはっ』って言ってました」
こんなこと言ったってバレたらぶん殴られるだろうな。
「そうかそうか! わーっはっはっはっ!!」
「たづなさんにも感謝を伝えないといけませんね」
「む……ちょ、ちょっと待て。何故そうなる」
一瞬にして理事長の顔が曇った。
そう、これが俺の3つ目のピースだったのだ。
脅しに見せない脅し。褒めているようにしか、理事長は感じなかっただろう。
そして、見事に罠にハマった理事長。
ここからが、俺の腕の見せどころだ。
「私財を使って良いと言ったのはたづなさんでしょう? たづなさんにも、当然感謝しなければ……」
「待っ待て、たづなには言ってはいけないっ!!」
「え、なんでです?」
「えっ……うーむ……も、黙秘っ!! それには答えられない!!」
「そうですか、まあいいです。感謝を伝えるというのには変わりありません」
「ま、待て!! 言ってはいけない!!」
「え……あーなるほど。もしかして、たづなさんには内緒でやりましたね?」
「げっ……」
「まーでも大丈夫です。それなら秘密にしますよ。だからこの書類、通してくれますね?」
「むぅ……そうきたか」
「そこをなんとかお願いします!!」
「まあ、秘密にしてくれると言うのなら……」
「ありがとうございます!!」
とまあ、こんな感じで始末書が通ることとなった。
理事長は、相当焦ってたんだろうな。書類がバレても、たづなさんに怒られるという未来は変わらなかったというのに。
うん、俺ってば最低なヤツだな。
でも、しょうがない。科学に犠牲はつきものなんだ。
「理事長?」
「な、なんだたづな」
「手を……抜きましたね?」
「ひぃっ!? ち、違う!! そう、何かの間違いで!!」
「間違いだったとしても、理事長が受理をした以上もうこれは元に戻せないんですよ? すぐ再確認したのならまだしも、もう1週間も時間が経ってます。これじゃあ間違ってしまったなんて言い訳のしようがないんです。後でちゃんと、反省してもらいます」
「そんなっ……。き、キミ!! 私を謀ったなぁ!?」
涙目で訴える理事長。
罪悪感が募ってくる。今謝れば、たづなさんにまた怒られることになるだろう。だが、そこが最低限心のある人間の落とし所だと思う。
そのはずなんだ。
「俺は念の為に出しただけなんですよ。通らないだろうけど、通れば通ったで仕事が減ると思ったので。いや、その、すみませんでした」
「な……なんと……!!」
俺も一緒に怒られれば良かったんだろうなぁ……。なんて言っても、もう遅い。
「もう、理事長! トレーナーさんのせいにするのはやめてください!! トレーナーさんも、次は事前になんて訳の分からないことはやめてくださいね、私、言いましたからね!」
「はい、申し訳ありませんでした」
「分かったなら、トレーナーさんは早く部屋から出ること。私と理事長は、2人きりで話さないといけませんから」
「はい。失礼しました」
「ま、待て……!」
理事長の言葉を無視して、俺は理事長室の扉を閉めた。
「あぁぁぁぁぁ……!!」と理事長の断末魔が聞こえてきたが、まあ、どんまいと言っておこう。
「ふぅ……一仕事終えたって感じだな。とはいえ、脅して書類受理作戦はもう使えねぇか……」
「そうですね、セイちゃんに聞かれてしまいましたもんね」
「ああ、その通り……ってうぇ!!?」
待て!! なんでこんなところにスカイが!?
「トレーナーさんがようやく帰ってくると思って、ここに来てみたんです。すぐにでも練習したかったですから。でも、何やら不穏な会話が聞こえてしまいましてねー。ほんのちょっと、聞き耳を立ててたのですよー」
「ほうほう。そりゃいけないウマ娘やねー」
「そうですけど、トレーナーさんもどれだけ悪いことをしたのか、ちゃーんと理解して反省しなきゃと思うんです。理事長だって女の子です。女の子を、泣かしたんですよ?」
「はい」
やっべ……また怒らせちゃった。
「あと、なんなんです?『満々ウーマン』って。誰が言ったのか、ちゃんとトレーナーさんの口から聞きたいなーなんて」
げっ、それも聞いてたのかよ!
少しづつ追い込まれる俺。だか、まだ打開策があるはず!!
さっきも言ったが、俺には培ってきた世渡り術と勝負感がある。この場を収めるかは、直感で分かる!!
そして直感が言っている!! ちゃんと反省した姿をスカイに見せて、そして甘んじて怒られるのを受け入れろと!!
そう!! 逃げ道など、とうに無くなっている!!
「私がして欲しいこと、分かりますね?」
「……ちょっとした悪戯心からなんです。すんません」
「言う相手、間違えていやしませんか? まあ、謝ったとて私が許すかどうかはまた別の話ですけどね」
「あ……」
「私、トレーナーとしてじゃなくて、人間としてトレーナーさんを信用してました。いつも変なことばかりするけど、でも面白くて……。でもたまに真面目で……それって、全部嘘だったんですね」
俺は……どうやら泣かしてしまったのは理事長だけではなかったらしい。
「ま、私は気にしちゃいませんけどねー」
そう言って、余裕綽々な感じでスカイは背を向けて歩いていってしまった。
俺は、無言で扉に向き直した。
うん、やっぱり神様ってちゃんとみんなの事見てるんだなぁ。
やっぱ、ちょっとやりすぎたっぽい。掻き回すだけ掻き回してぐちゃぐちゃになってしまった。
俺は、やっと自分がしてしまった事の重さに気付いた。
うん、ちゃんと謝らないとダメだよな。安心してください理事長。トレーニングルームの改装は、墓場まで持ってきますよ。
俺は、理事長室の扉をノックした。
読んで頂きありがとうございます。
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