昨日……飲んでしまって……オンラインで……。
いやぁ、早くまた収まって欲しいですよね。そのうちまた自由に外に出られるように……。
心を入れ替えよう大作戦が見事頓挫した次の日。
休日に何にも進まずに、地獄の時間がやってきてしまった。
「まだ蹴り出す足に改善の余地はあるって話だ。練習メニューも、それに伴って変更が幾つかあるけど、問題ないか?」
「うん、大丈夫ですよ」
「次のレースは遂に重賞を狙ってくことになるだろうし、以前の調整と比べてもっと繊細にやっていかないとな」
「そうですねー」
「……聞いてる?」
「はいはい聞いてますよー」
なんて言いながら、スカイは資料をじーっと眺めている。こういうところは結構真面目だったり……というか根はめちゃくちゃ真面目だよな、努力もすごいし。……てかそうじゃない。
気まずい!!
トレーニングならほとんど見るだけでなんとかなるというのに、ミーティングメインだと話さなきゃいけないからこの距離感が気まずすぎる!
こう……避けてる感がすごいのよ。敢えて話しかけるなオーラを出してる感がすごいのよ。
「口数……少なくない?」
「いやいや、いつも通りですよ」
「そうか……」
こう……言ってることはまあ普通のレスポンスだけど……声のトーンがちょっと低い。怖い。
なんだよ。さすがにこんなに態度変えることなくなくない? Hey、俺はとっても寂しいYO!
……心做しかスカイの目がさっきよりも冷たくなった気がする。何? 心読めちゃうの?
「……取り敢えず、今日はこのくらいにしておくか」
まだ帰るには早いものの、一応のところ落とし所はついている。重賞に向けてのトレーニングメニューや、フォームのチェックについてのスケジュールは目処がついている。
これに関しては研究所の人とのすり合わせを行って、決まる。だから、今の段階ではスカイの同意さえ取れていれば問題は無い。
話した感じだと次のレースまではトレーナー契約を破棄するなんて自体にはならなそうだし、こっちについてもひとまず安心だ。
残業は……まあ少なくなったとはいえ相変わらずだが、スカイとの関係修復に注力しても問題は無いはずだ。というか、今はそれが最優先事項で最重要項目だ。
そして、それを打破するためには俺だけの力では絶対にダメだ。他人の力を借りないと、確実に関係を修復するというのは無理がある。
「ということで狙うは大当たり。ホワイトボード用イレイザーを生贄に、桐生院さんを召喚!!」
と言って俺はトレーナー室の扉ににホワイトボード消しをぶんな投げた。
「わぷっ!?」
俺のイメージでは扉にゴツンとぶつかって何も起きないってのを予定していたのだが、ジャストタイミングで扉が開き、誰かの顔面に直撃してしまった。
当たったのが消す部分でよかった。まあ、ウマ娘なら俺が投げたくらいのじゃなんともないのかもしれないけど。
いや、ちょっと待てよ? 俺は桐生院さんを召喚しようとしてたわけで、桐生院さんに当たってたら……それこそ詰みだったな。
「おはー。スペちゃんどうしたの?」
そうか、スカイはもうスペシャルウィークと会ってたのか。
「な、何……!? スペ体質のスペちゃん!?」
「なんか、意味は分かりませんけど褒められてる気がしないです……。それより、痛いですよ!? いきなり何するんですか!!」
いやぁマジでタイミング悪いな。なんでこのタイミングで現れやがった。
「……あれ、ゴルシちゃん? どしたの」
何故かサングラスをかけて仁王立ちをしているゴルシちゃん。なんというか、えげつないレベルのオーラを放っている。これがバケモンクラスのウマ娘のオーラか……。
その後ろには見知らぬウマ娘が2人立っている。そういえば、ゴルシちゃんってチームに入ってるんだっけか。なんか、そんな感じのことを聞いた気がする。
「ゴルシちゃん?」
「……討ぅぅぅち入りじゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「は?」
声と同時に昔懐かしスカイを突っ込んだずた袋が現れた。
もう嫌な予感しかしない。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺ごときがウマ娘の力に叶うはずもなく、あっさりずた袋に入れられ、そのままゆっさゆっさと揺られながらどのかへ運ばれる。
何処だ……何処へ運ばれるんだ……?
段々と酔ってきて気持ち悪くなってきた位でようやくどこかの部屋に入り、ドサッと落とされた。
「おい、急に何しやがんだ」
と思えば勝手に椅子に座らせれて、目の前に何やらホコリの被った机とデスクライトを置かれた。
そして、向かいにも椅子を置かれて座ったのは眉間に皺を寄せたスペシャルウィークだった。だいぶ怒ってるようだけど、そんなにスペ体質が気に食わなかっただろうか。
確かに、怪我は逆にしなさそうで丈夫なイメージの方があるけど、そんな怒ることないだろ。
「セイちゃんを……泣かせたそうですね」
そっちかー……。てか、なんで広まってるんだ。
「え!? このトレーナーウマ娘のを泣かせたの!?」
「こいつサイテーじゃねぇか」
後ろでなんか言われてる。心が痛い。
「なにぃ!? そいつはふてぇ野郎だな!!「ゴールドシップさんは静かにしててください」おう」
多分、今ゴルシちゃんがおちゃらけてくれたのは俺への援護射撃みたいな何かなのだろう。なんの援護射撃なのかは全く意味がわからないけど。スペシャルウィークの雰囲気でうっ……ってなりかけてたところでちょっと心が楽になったのは確かだ。
「スペラン……スペシャルウィークは、なんかその、怒ってる?」
「今はまだ怒ってないです。でも、それはトレーナーさんが何をしたのかの内容によると思います」
あこれ、そういうやつなの。ようやくなんで連れてこられたのか分かった気がする。
最近転入してきたスペシャルウィークが、恐らく同学年であろうスカイと仲良くなり、仲良くなった辺りで丁度理事長とたづなさんとの一悶着あったところでスカイが立ち去ったとのろをスペシャルウィーク見てしまったと、そういうことなんだろう。
「話さないとダメ?」
というと、後ろから関節を鳴らす音が聞こえた。
え、怖い。逃げられないやつだ。
これ、話さないとダメなのかぁ……。
「いやその……理事長を……泣かせてしまって……」
「トレーナーさん……とぼけないでくださいっっっ!!!」
スペシャルウィークは机を思い切り叩き、ゴルシちゃん達がビクッと動いた。
俺は逆に固まった。もう怖すぎて固まった。おれ、殺されるんじゃないの?
「私は今セイちゃんの話をしているんです! 理事長を泣かせたなんて話、今はなんの関係……え? 理事長を……? えっと……すみません、もう一度聞いてもいいですか?」
「あ、うん。理事長を泣かせちゃって……」
キョトンとするスペシャルウィーク。
「それで……その話がどう繋がるんです?」
「いやその……スカイがそんな人だとは思わなかった。さよならみたいな感じに……なんか、言われて……」
「「「痴話喧嘩かよ」」」
は、違ぇよ。違ぇに決まってるだろ。まあ、今のちょっと盛ったけど、だいたいニュアンスはほぼ一緒だったよな。
だって、スカイの言葉をまんま言うのは恥ずかしいもん。
「おいスカーレット、とんでもなくしょーもない喧嘩に首を突っ込んだんじゃないか?」
「な、何の話かしらね」
「はあ? スカーレットが「事件の香りが……」とか言い出したんだろ? 全く、スカーレットの鼻はアテになんねーなー」
「なんですって!?」
ほらそこ、絶賛巻き込まれている俺がいるところで喧嘩するんじゃない。
「ゴルシちゃん。なに? これ」
「いや、その前にどうやって理事長を泣かせたのか気になるな」
「それは……理事長を脅してやらかす前にと思って事前に作って提出した始末書を受理してもらって……その後たづなさんに詰められてて、なんか涙目になってて……最後俺が逃げる前に一言置き土産に残したら絶望してた」
「お前マジで最低な野郎だな」
「うっ……いや、でもちゃんと謝ったしたづなさんにも理事長のこと弁明して始末書の書き直しと反省文まで書いたんだぞ」
「いや、そのくらいするのは当たり前だろ。そもそも、理事長を脅すなんてことした時点でアウトなんだよ」
「あ……確かに」
「それで、スペ。スカーレットにそそのかされたとはいえ、首を突っ込んだ以上は何らかの落とし前はつけないとカッコがつかないぜ。どうする?」
「え、えーっと……2人が仲直りするのを手伝う……ってことでしょうか」
「よし、あとは頑張れスペ。アタシらは先帰ってっかんな〜」
「え、え〜〜〜〜〜〜〜!?」
そして置いてかれたスペシャルウィーク。
うん……最大の被害者はスペシャルウィークだったか。
なんかごめんな、これ事の発端は全部俺に繋がるもんね。ほんとごめん。
読んで頂きありがとうございます。
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