蒼天を駆ける野球バカ   作:FAKE MEMORY

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毎日投稿って大変ですね。
まあでも、これが楽しくてやってるわけです。
さて、日常回を書きすぎてレースとトレーニングをすっかり忘れてますね。
気をつけます。


超大物

「ふわぁ……早起きは難しいですなぁー」

 

 スカイが釣り糸の先をボーッと見つめていた。

 俺も、竿を投げてからはやることがなく、ただただ時間が流れるのを待つだけになっている。

 でも、だからこそスカイとちゃんと話すことが出来る場所なのだ。

 

「俺は早起きは慣れてるからなんも問題ないけどな」

 

 主に野球部の朝練で鍛えられた。

 今でも仕事がヤバい時は早出で前倒しして仕事をやったりとかはあるが、それでも朝練よりかは全然マシだった。

 そもそもだな、前日に日が暮れるまで走らせた癖に朝練でアホみたいにバッティング練習するのが狂ってるんだよ。

 朝くらいゆっくり休ませろってんだ。

 今日は、未だに竿が揺れることは無い。なんか、ピクピク動いてるのは波のせいとかだろうか。以前の入れ食い状態とは間違うようだ。

 

「うーん……そろそろあげてみましょうか。なんか、餌取られてる気がするんですよね」

 

「んじゃ、ぐるぐるー」

 

 スカイの方が慣れているからか、リールをまく速度は俺より圧倒的に早い。

 上がってきた釣り針は、金属光沢がきらりと光っていた。

 

「やーっぱり取られてますね……つつかれてそうな感じで考えてみると、ちょっと小さいのが多そう……。そっちはどうですか?」

 

「なんか釣れてたわ。なにこれ、タコの子供的な?」

 

 俺の方にはタコがくっついていた。

 大きさ的には手のひら程度の大きさ。なんにも釣れた感覚無かったけど、こんなのくっついてたりするんだな。

 

「イイダコですね。そもそも小さい種類なんで、大きさはこのくらいが普通です。この子は茹でダコにしますかね」

 

 針をとって、バケツの中にポンと入れる。

 おお、なんか呼吸してるみたいに動いてる。おもろいな。

 てかさ、さりげなく発言怖いな。この子は茹でダコ……うん、釣って食べるために来てるとはいえ、なんかそういう言い方されると渋りたくなる。

 渋らないけど。

 もう一度エサをつけて、また海へ放り投げる。綺麗な放物線を描いてばしゃりと水しぶきを立てた。

 

「またヒラメとか釣れないかね」

 

「いやいや、あれ釣るのは結構難しいんですよ? 前のは結構大物でしたし、あんなのビギナーズラックだとしても凄いですよ」

 

 ほーん。寿司屋とかでよく見るし、てっきり釣りやすいのかと思ってたわ。そうかそうか、ああいうのは釣れないのか。

 まあでも、普段スーパーとかで見かけない魚を食べてみたい感もあるな。

 

「なんか、スーパーとかであまり見ないやつとか居ないのか?」

 

「うーん。カサゴとか……アイナメ、ですかね。まあ、そこら辺ならまだ釣れると思います」

 

 うん、聞いたことない名前だ。そこら辺釣れるなら興味あるかもしれん。

 まあでもそこら辺は運だよなぁ、必ずその魚がここにいるって訳でもないんだろうし、逆に他の魚だって一杯いるだろうし、そう考えると釣りってめっちゃ難しいな。

 さて……まあいつまでも話を逸らしてたら始まらないし、そろそろ本題に入るかね。

 

「そういえば、さ。スカイは、最近俺の事避けてたのか? なんか、あんまり話さなかなったけど」

 

「どうしたんですか? 急に」

 

 急なんてもんじゃない。寧ろ、よくここまで我慢したと褒めるべきだと思う。

 

「いや、なんかあんま話さなくなったから。やっぱり、気に障ってたか?」

 

 釣りをしよう。という話が上がってから何となく、距離はまた戻ってきた気がしていた。だから、まあこのまま何も無かったことになるなら、それでもいいのかなとは思った。

 てか、その方が何も気にしないし精神的に負担とかも全くないし楽でよかったんだよな。

 だが、これは有耶無耶にする訳には行かなかった。

 結局、これを放って何が原因でこうなってしまったのかが分からないままになってしまうと、次またほとんど同じシチュエーションで避けられるなんてことも起こるかもしれない。

 しかも、1度だけならまだしも2度目となれば相手の対応も変わってくる。今回のようには済まないかもしれない。

 そうだとすれば、今ちゃんとスカイが何を思ったのか聞いて、そして今後こういうことがないように対策をするのが1番だ。

 俺たちはレースに勝つために組んだわけだ。それなのに、レース以外のところでゴタゴタとか、正直二度とごめんだ。

 まあ、二度とごめん……とは言ってもトラブルが絶えないのが俺なんだけどな。今まで、何も無く時間が進むなんてことはほとんどなかった。

 

「私が話さない……とだけ言われるのは少し心外なんですよね。トレーナーさんだって、全然話しかけてくれませんでしたし」

 

「全然ってほどでもないだろ」

 

「だとしても、ですよ。前とは違って中身がないじゃないですか、気の抜けた話ばっかりで。ここまで私を引っ張ってくれたのって、誰なんですかねー。まさか、セイちゃん1人でーなんて思ってますか?」

 

 ……まあそうか、練習決めたりしてたのも全部俺だしトラブルを呼び込むのも起こすのも全部俺だったし、なんだかんだ全部俺がやらかしてたんだな。

 そうすると……当然このままでいるわけにはいかないよな。良く考えたら、避けてたのはスカイではなくて、スカイが避けてるかもと考えすぎていた俺の方だったのかもしれない。

 

「ごめん、もしかして俺が寂しい思いさせてたとか?」

 

「そんなことノンノンですよ。私は孤高にして孤独、美しきオンリーワンなのですから」

 

「そっか、そりゃ申し訳ないことをした」

 

「話が噛み合ってないですよー。私は全然……」

 

「いや、別にいいよ。なんでも」

 

「……トレーナーさん、ちょっと意地悪になりましたか?」

 

「さあな、扱いがわかってきたってのが正しいかもしれない」

 

 まあ、そんなことは絶対ないのだがな。

 寧ろ、スカイの手のひらで俺は転がされてるのだろう。

 む……なんだこれ。ちょっと竿が怪しいな。

 

「ぶーぶー。セイちゃん、また怒っちゃいますよー。怒ったら怖いの、トレーナーさんもよーく知ってるでしょ?」

 

 まて、おいお前気付いてるだろさっさと手伝えよ。

 なんか竿がグニングニン動いてる。おいこっち向けよ。ヤバいぞこれ、ヒラメの比じゃない。

 

「おい、気づけよスカイ。お前……これヤバいって折れる折れる」

 

「全く、釣れたからって大袈裟な……oh......」

 

 スカイがようやく竿に気づいた。そう、アホみたいに暴れ狂っている。

 日々トレーニングしてて良かった。これ、腕持ってかれるぞ。

 

「なんですかね……だいぶパワーありそうですけど……大きめのボラとか、あとはサメとかですかね……うーん、でもこのレベルはもうそんなのより大型の回遊魚とか……ブリとか釣れてたら面白そうですよねー。冗談ですけど」

 

 おいふざけんな。何余裕ぶっこいてんだよ。折角給料で買った釣竿なんだぞ。もうダメになるぞこれ。

 

「竿を守りたいなら……糸を切るとかですけど、そういうのは海に悪いですからね……一か八か勝負するしか無いんじゃないですか? トレーナーさんが巨大魚とバトってる姿、ウマスタに上げちゃいますね〜。にゃはは」

 

 と言って、スマホで俺の事をずーっと撮ってるスカイ。

 どうやら、助けは来ないようだ。

 仕方ない、こういう時どんな感じで釣ればいいのかは分からないが、取り敢えず糸が切れないように竿が折れないように行けばいいんだろ?

 ならやることは簡単だ。リールを緩めたり巻いたり調節しながら、ちょっとずつ相手の体力を削る。こういうのは得意だぜ? こちとら中学時代はろくに長打が出なくてカットマンだったからな。ピッチャーの体力を削りつつここぞで打ってダメージを与える。

 これも要領自体は同じだろ?

 

「とはいえ、さすがに腕が痺れてくるな」

 

 釣りで使う筋肉は、野球とはまた別だ。だから、体力の減りも全く違う。

 もう向こうとの根性勝負になりそうだな。どちらの気力が最後まで持つか。どっちが先に諦めるのか。

 

「まあ……そうなってしまえば負ける気は……しない!!」

 

 綱渡りのように慎重にリールを回し、少しづつ近づけて行く。さっきまでは糸が伸びるだけで、尽きる寸前まで糸を出してしまっていた訳だが、今は少しずつ近付いてきている。

 だいぶ回しやすくなってきた。

 

「トレーナーさん、頑張ってください! 確実に、ヤツは近づいてきてますよ……!」

 

 水面を見ると、オレンジか白かの影が見えてきた。

 うお……デカ……1メートルは超えてないか? なんだアイツ。

 いや、俺こいつ知ってるぞ。

 テレビでよく出てくる高級魚のやつだ。でも、だとしたらとんでもねぇやつが釣れたことになるぞ。

 だってこいつ……。

 

「スカイ、こいつ……クエじゃねぇの?」

 

「トレーナーさん。冗談がすぎますよ。そんなの、こんなところで釣れるわけないですし、そもそも釣るならルアーとか泳がせ釣りとか、そういうのじゃないと無理です。イソメを食べた魚を気付かず放ったらかしにしてクエってどんな確率ですか。というより、5000円の竿で耐えるのはもはや奇跡ですよ。一瞬で持ってかれますから」

 

 にゃははーと余裕ぶっこいてるスカイがスマホをを水面に向けた。

 

「どれどれー? ……Wow…」

 

「ほら、クエだろ」

 

「クエですね」

 

 スカイは言葉を失っていた。

 

「なあ、網早くしてくれ。流石に持ち上がらんだろこいつは」

 

「……あ、セイちゃんてばうっかり」

 

 取り敢えず網で捕まえて、スカイが持ち上げる。

 凄いな、さすがウマ娘の力は伊達じゃない。

 

「これは……本当に凄いですね。念の為特大のクーラーボックスを買って正解でした」

 

「うむ……こりゃご馳走だな。本当なら、重賞取ったあとなんだろうが、英気を養うって考え方も無くはないよな」

 

「そうですね……じゅるり。じゃなくて、やりましたねトレーナーさん!」

 

 スカイとハイタッチをした。

 うん、なんかこれでようやく本当の意味での元通りって感じだな。




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