蒼天を駆ける野球バカ   作:FAKE MEMORY

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今更な話ですけど投稿開始した日にちの1月5日はセイウンスカイにまつわるとある日にちです。
そして、推しのそんな日にちが誕生日なんで勝手に縁を感じてます。

余談ですけど、サブタイトルがもはやウマ娘じゃないですね。ダイヤのAかな?


六甲おろしに焼きそばを

「1着はスペシャルウィーク!! デビュー戦を見事に制しました! 2着は……」

 

 数日前のクエパーティの余韻を残しつつ、俺とスカイは敵情視察ということでレース場に来ていた。

 敵……とは、今1着でゴールしたスペシャルウィーク。何か知らんが、他のトレーナー達曰くこの代は才能のあるウマ娘で溢れているとの事で、グラスワンダーやらキングヘイローやらとか、エル……エルなんちゃらーとかなど他にも凄い奴がいるらしい。

 多分、松坂世代的な何かだと思う。

 てか逆に松坂世代だったらどれだけマシだっただろうか。

 野球なら、才能ある人が何人かってなっても殆どが日の目を見ることになる。

 12球団あるでしょ? ってなればポジションも1つにつき12人の余地がある。で、四番打者みたいなホームラン稼ぐ人とかなれば、ファーストサードレフト、パ・リーグなら指名打者もあるのか。

 まあ、どっかしらは入れるってのが殆どだ。

 その中でも優勝……となるとまた話は変わるが、活躍してファンに愛されるという点では、実力さえ届けば……というところはある。勿論、それが難しい訳だが。

 

 それでも、レースってなると距離適性があるにしろスカイは長距離中距離の2つが走れる。

 ダートを抜くと大きくわけた4つの距離のうち半分走れるということになる。

 そして、レースで勝てるのは1人だけ。

 競技人口の差ってのもあるかもしれないが、それを考えても1人しかっていうのが非常に重い。

 スカイの注目度は未だにグラスワンダー達に比べると低い。スカイ自身、それはよく分かっているだろうし、よく分かっているからこそ焦りもするし努力だってしている。

 今日はその努力の中でも、戦略立てというのをより明確にするためにここへ来ていたのだ。

 

「スペシャルウィークは勝負勘ってのが凄いのかね。あそこのトレーナーって、結構伸び伸びやらせるタイプなんだろ? ゴルシちゃんみたいなのが上手くやれるってなるの、レースも相当自由にできるはずだし」

 

「そうですよね……。ここだって感じたところで走ってくるんでしょうけど、そこが絶妙なタイミングなんです。本当に厄介ですよ」

 

 しかも、その勘に見合う実力を兼ね備えている。

 転入前に一体どんなトレーニングをしていたのか気になるな……。某青い球団みたいに地獄のノックでトモを鍛えるのだろうか。

 いや……それはありかもしれんな。

 

「地獄のノック、スカイはやってみたくない? 多分練習になると思う」

 

「地獄ってついちゃってるじゃないですか。そんな物騒なトレーニング、誰がやりたいと思うんです?」

 

 そうだね。確かにその通りだ。

 俺はズルズルと焼きそばを啜った。

 

「ゴルシちゃん、まだだ。もっと濃くできるぞ、この焼きそばは」

 

「そうか……まだ甲子園の焼きそばには遠く及ばないか……」

 

「いや、確実に近付いてきている。この太麺が口に入った時の感覚、そして、ソースのスパイシーな香り……あともう少しだ」

 

「分かった。お互い甲子園目指そうぜ」

 

「おうよ」

 

「トレーナーさんは敵が所属するチームのウマ娘と何をやってるんですかねぇ……」

 

 ガシッと腕を組んだ俺とゴルシちゃん。

 そして、ジトっと睨むスカイ。

 何をしてるって……そりゃあ、甲子園に打ち勝つための研究だろう。

 

「分かってねぇなぁスカイ。野球場……特にこういう日差しが差し込むような、燦々と輝く球場といえば焼きそばだろ? その中でも一際輝くのが甲子園の焼きそばだ。あの味に勝つのが、俺達トレセン学園の宿命ってやつなんだ」

 

「レース場!! トレーナーさん、野球から離れてください。焼きそば作ってもレースには勝てないんですよ」

 

「うん、そうだよ?」

 

「いや当たり前だって顔で言われてもですね……」

 

 あそこの焼きそば舐めない方がいいぞ。俺、試合中5個頼んだからな。

 

「ふむ……ならもっと改良を重ねるか……あんがとな、これでまた売上が上がるぜ」

 

「おうよ、試食なら何時でも待ってるからな」

 

 焼きそばいかがっすかー。

 と、売り子に戻ったゴルシちゃん。残り3個、実はこの焼きそばが密かにレース場の名物となっているらしい。

 ゴルシちゃん程の商売上手なら、トレセン学園に来なくとも社会で生きていけるのだろうな。

 

「トレーナーさん、スペちゃんの話に戻りますよ?」

 

「ああ、うん」

 

 危ない危ない。危うく忘れるところだった。

 

「スペちゃん、これからまだ伸びそうなんですよ。皐月賞……とか最初の方はまだ隙はあるんですけど、その後は……」

 

 なんだ、珍しく弱気だな。

 

「大丈夫だろ。野球だって、コントロールアバウトな速球派が晩年技巧派軟投派なんてことして活躍するってのはよくある話だ。レースだってただ走るだけで勝てるんじゃないんだろ? それなら、こっちだって相応の準備をすれば時の運ってところまで持っていける」

 

 勝ちに不思議の勝ち有り。まあ、ここでの使い方は少し変わるが、「あれ? なんで俺はこんなミスがあったのに勝てたのだろう」なんてことはよくある話だ。

 それに則って考えれば、スカイだって勝てる可能性がゼロというわけではない。

 

「いいか、高い勝負勘ってのは使える回数が多ければ多いほど効果がある。例えばバッター。143試合あって、打席に1試合3回は絶対に立つ。それだけ数をこなせば、勘とかいう調子の波に左右されやすい不安定な能力でも効果がある。でも、使える回数が少ないと……」

 

 運悪く……なんてことが起こりかねない。

 

「勘……ではなく根拠で最善を選ぶんだ。もし、他のウマ娘は敵ではないって思うのなら、特に注目されているスペシャルウィーク、グラスワンダー、キングヘイローの3人にマーク絞り込んで、レース状況による立ち回りをミリ単位で研究して頭に叩き込む」

 

 簡単に言うと、将棋のAIと同じことをしてくださいということだ。

 そんなことを言ってしまえばアホかと、そう思わずにはいられないが、スカイには逃げウマ娘という武器がある。

 大前提として、彼女が先頭に立ってさえしまえば、戦略は自ずと絞り込まれてくる。

 相手に合わせることが必要な後続とは違って、単純明快なのだ。ペースを揺さぶる……なんてこともありかもしれない。

 案の定、スカイは唖然としていた。

 

「あ、あのー。それって、トレーナーさんがデータを集めるってこと、ですよね。……できるんですか?」

 

 おい、失礼だな。

 

「いや、そこは人に頼る」

 

 外部に丸投げする。

 レースに2勝して、経費としてある程度出費を浮かせることが出来る分、今度は投資をしていって勝利をもぎ取る。

 スカイも察したのか、そこでようやく納得をしたようだった。

 

「まあでも、覚えるのはスカイだ。六法全書みたいになったらごめんな」

 

 正直、戦略が絞られるとは言っても向こうがどの程度まで絞ってくれるかは全く分からない。なにせ、スポーツ研究所の時は走る専門家が走ることを教えていた訳だが、今回はそうでは無い。

 情報収集、整理の専門家がレースのデータを集めて共通点ごとカテゴライズするだけであって、レースの専門家がレースについて分析する訳では無いからだ。

 今回のレースの専門家は紛れもなくスカイ自身。

 俺ももちろん手伝うには手伝うが、負担でいえばかなりの負担になる。

 そして、データに頼ったとしてももちろんダメな時はダメになる。ただ、その時に役に立つのがようやく勘。

 本当に勘が必要になるのは最後の最後だ。

 

「え……そんなものを覚えろと? そういうんですかトレーナーさんは!?」

 

「いや、だって勝ちたいんだろ? レースで」

 

 ちょっと意地の悪い言葉だろうな。

 

「いや、まあそうですけど……」

 

「勝てるかどうかは、運なんだ。運を手繰り寄せるのは正確な努力。そして、その正確な努力をどれだけ数こなせたかなんだ」

 

 相手がそれを上回れば、勝利の女神はそっちにどうしても付きたくなってしまう。そういうものだ。

 

「うぐぅ……と、トレーナーさんのブラック企業!! ブラックトレーナー!! うわーん、お昼寝してやるぅ〜〜!!」

 

 訳の分からない捨て台詞を吐いて、スカイはもんのすごい速さでレース場から居なくなってしまった。

 あの……今日の練習は……あ、お休みですか、そうですか。

 

「……前途多難だな」

 

 それはそれで面白いではあるんだが。




読んでいただきありがとうございます。
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