蒼天を駆ける野球バカ   作:FAKE MEMORY

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タイトルがネタバレみたいなもんですね。
新しい風をビッグウェーブに乗せようと思ったんです。
まあ、若干エタる寸前みたいな話になってきましたからね、ちょっと雰囲気を……物語を進めていきます。


お兄ちゃん

「うわーん。こんなの覚えられないよー」

 

「覚えようとするからダメなんだ。この状況になった時、スカイならどう動く? さあ、想像してみよう。イマージーン……」

 

「無理無理! セイちゃんは1度、息抜きを所望します」

 

「いや、まだ30分くらいしか」

 

「所望しまーす!」

 

 スカイはぴゅーっとトレーナー室から出て走り去ってしまった。

 うん、まあそうだよな……。ウマ娘って走るのめっちゃ好きって聞いてたし、それで放課後終わってトレーニングってなると思えばまだ続く座学。

 普段朝の授業をサボったり、息をするように寝坊するスカイを考えると仕方ないのかもしれない。

 まあ、逃亡するのは理解し難いが。

 

 ピンポンパンポーン。

 

『三浦トレーナー。理事長室にお越しください』

 

 呼び出し……。

 タイミング良すぎるけど、スカイが俺の事チクったのか?

 

◇◇◇◇

 

「お久しぶりです。たづなさん、理事長。土下座ぶりですね」

 

「微妙ッッ!! なんとも言えぬ再会だ! だが良し、今回は君に催促をしようと思って呼び出したッ!」

 

 催促……なんの催促だ。

 借金をしてはいないし、別に提出書類が残っている訳でもない。忘れてたら分かんないけど。

 なんか、別件だとしても俺にそんな催促することなんてあるか?

 

「三浦トレーナーは、新人の枠のみならず、若手としても今一番結果を残しているトレーナーです。既にチームに所属するような才能溢れるウマ娘にも負けず、次は重賞を狙っていくというのも聞いています。新人……という枠では少々早い気もしますが、実績を考えると、担当するウマ娘を少しづつ増やして欲しいという考えがあるのです」

 

 新しいウマ娘の担当……。なるほど、それでこの呼び出しか。

 

「キミは、トレーニングも他のは異なるトレーニングを行い、デビュー戦、ジュニアカップと、いずれも担当したばかりとは思えない走りを見せてくれた! 実力は十分、ならば、キミは次のステップを踏み出すべきだ!!」

 

 なるほど、向こう目線で考えれば他のウマ娘もスカウトして少しでもレースの枠から溢れてしまうウマ娘を少なくしたいとか、そういうわけなのだろう。

 で、ついでに俺も成長してくれれば万々歳だと。

 確かに、チームを作るってのは考えてもいいのかもしれない。というか、のちのち考えなければいけない課題だった。

 俺は、そこらへん面倒だから控えめに動いていたってのがある。で、他の同期を見るに早くチームを作りたくて堪らないみたいな人達ばかり。

 そうなれば、俺が動かないというのは恐らく向こうからすれば予想外な出来事で、さっさと動いてくれというのが本音。2人して業を煮やしているのだろう。

 

「まあ……そうですね、そろそろ考えてみます」

 

「うむ! もし要望があればこちらからも動いて探すこともしよう!! なにか、キミの希望はあるか?」

 

 まあ、そこはスカイの担当になった時から変わらずだな。

 

「俺が居なくても何でも勝手に1人でやってくれるウマ娘ですね」

 

 この言葉を言った時の理事長のぽかんとした顔は、ちょっと忘れそうにないな。

 たづなさんの困ってる顔は……本当に困ってそうだったし、ちょっと罪悪感を感じざるを得ないんだよな。

 

◇◇◇◇

 

 さて、スカイが異次元に逃亡したのも相まってやることが本当になくなったぞー。

 ん? 使い方が違う? 良いんだよ気にするな。

 てことで、俺は気晴らしに散歩をすることにした。

 にしてもチームかー、チームってなるとやっぱ名前決めないとダメだよな。

 名前の候補って言ったら……ライオンズ、マリーンズ、ファイターズ……タイガース、Dragons……ふむ、どれにするか迷っちゃうなぁ!!

 なんなら、マリナーズとかレッドソックスとかもありだ。

 ……なんか、少年野球にありがちなチーム決めになってきたな。

 

「そんなことはどうでもいい! なんにしても、既存のチームに個性がない! 何がスピカだ、何がリギルだ、俺は俺の道をゆく、それでいいでは無いか!」

 

 ……あんま言いたい放題言ってるとまた土下座する羽目になるからな、こんなもんにしとくか。

 む、あんなところに人だかりが。

 どうせ、なんちゃら……ナンチャラッカンチャラーが人目を集めて急に演劇始めてるとかそんな感じだろう。

 

「あっ――あたなはっ!」

 

 と思ったら、どうやら違ったらしい。

 注目を集めていたらしいウマ娘がこっちにたったったっと走りよってきた。

 

「そう! そこの優しそうなあなた」

 

 ……スカイが隣にいたら「優しそう……? あ、そこに転がってるネジは優しそうですね」とか言ってきそうだな。

 まさか……流石に優しそうなネジは外れてないよな? 外れてたら人間としてどうかしてるから。

 

「あなたは……カレンの運命の人っ!」

 

「は?」

 

 俺は、この瞬間思った。

 誰だ、会った瞬間逆ナンしてくるやつは。

 まさか、自分をまともじゃないと自覚していた俺がまともにならなければならない瞬間が来てしまうなんて思わなんだ。

 

「そう! この学園のトレーナーさんだよね?」

 

「うむ、良きにはからえ」

 

「……よし。カレン、決めちゃった! 今日からあなたが――カレンのトレーナーさんね!」

 

「むっ……」

 

 待て、まあ棚ぼたというか、タイミング的にはバッチリなわけなんだが……正直に言おうか、友人くらいの間柄になるのならまだしも、勝手にトレーナーに決められるのはなんだかなーなんですよね。

 ……なんか、最近スカイの口調移ってきたか?

 とにかく、トレーナーに今すぐなるわけにはいかない。

 スカイの時は、最初向こうからトゲトゲとしながらバチバチ突っついてきたからお互い理解ができて、担当になることにした。

 だが今回はどうだ、まるで訪問販売で押し切られてるみたいじゃないか。それは……ノリと勢いな俺でもはい、いいですよとよろしくする訳には行かない。

 

「ダメ……かなぁ」

 

 ほら見ろ、情に訴えてくる感じ。お客さんを調子に乗らせる訪問販売とはまた違うが、可愛いを見せつけて勝ち取ろうとしてくる。

 こりゃなんも変わらん。だが……揺らぎそうだ……!!

 カレン……と名乗った相手はもう一押しとでも思ったのか、更に押しの一手を繰り出した。

 

「お願い、聞いて欲しいんだけどー……うるうる」

 

 ぐっ……くそ、野球で色恋沙汰も何もかも置いてきたつもりだったのに!!

 不味い、これは本当にまずいぞ!?

 ここは……あいつの……あいつの手を借りるしかない!!

 

「ぐっ……立ち上がれ、俺の分身!! ライド、ゴールドシップッッッ!!」

 

「WRYYYYY!!」

 

 お、ほんとに来た。

 

「なんだぁ? アタシトレーニングしてたんだけど」

 

 おう、そうだよな。この時間といえばトレーニングの真っ最中ってところだもんな。

 取り敢えず、後でゴルシちゃんのトレーナーに謝りに行っとくか。

 それはそうと、呼んだからにはちゃんと力になってもらわないとな。

 

「カレンとやらのトレーナー契約締結に向けての面接だ。気合い入れてけよ」

 

「お? なんか知らねーけどわかった」

 

 目の前に突然現れた机と椅子。

 ゴルシちゃんと一緒に召喚でもされたのだろうか。

 

「えっと……」

 

 うん、そりゃカレンとやらも困惑するよね。

 

「まずは名前をお願いします」

 

「はい! カレンはーカレンチャンだよ! トレセン学園には〜、もーっとかわいいって褒められたくて転入してきました!!」

 

 ほう、志望動機までちゃんと言ってくれるとは。ふむ、やりやすくて助かる。

 それにしても、さっきからかわいいかわいいと連呼しているが、カレンチャンにとってそんなに大事なこと、ということなのだろうか。

 確かに可愛いのは認めるが……。そんな固執しなくたっていいんじゃ、と思ってしまう。

 

「あのトレーナー、気に入らなかったら断るつもりなのかな」

 

「ねー、あのCurrenがあんなにお願いしてるんだし、ちょっとくらい見てあげてもいいのに……」

 

 ……外野がなんか言ってるのが気になるな。いや、別にウザイとかは思ってないからね?

 いや、さっきからあのカレンがとかあんな有名の……とか言ってるからさ、なんか有名人かなんかなのか気になるんよね。

 ほら、なんかここってモデルやってる人とかマッドサイエンティストみたいな人もいるしさ、なんかそういう系の人なのかなとか。

 

「ゴルシちゃん、この子もしかして有名人?」

 

「知らねーのか? ウマスタでフォロワーめちゃくちゃ稼いでるウマスタグラマーだぜ?」

 

 ほーん。

 なるほど、やっぱすげえやつか。

 

「アタシが結果を言おう。……合格だ」

 

「へ? カレン、まだ自己紹介しかしてないよ?」

 

「アタシが言うんだから間違いない。トレーナー……どうだ?」

 

「そうだな……合格だ」

 

「よ、よく分からないけど……今日からカレンのトレーナーってことでいいの?」

 

 カレンチャンは完全に混乱しているようだったが、それでもちょっとだけ嬉しそうにしていた。

 

「うん、いいよ」

 

「本当!? ありがとね、お兄ちゃん!」

 

 お兄ちゃん呼びより、俺的にはお兄様と……いや、マスターの方がいいだろうか。

 いや、そんなことはどうでもいい。俺が兄と言われた事実……ほれみろスカイ!! やっぱ俺が兄だ!!

 兄妹見たいなんていつか言われてたなぁ!? 俺が年上だぜ? 精神年齢がなんだってぇ? 関係ねーぜ、これが現実だあーっはっはっはっはっ!!

 

「ウマ娘から無理やりお兄ちゃん呼び……お前……そろそろ自首する気は無いか?」

 

「ゴルシちゃん、俺この子と初対面だからな?」

 

 そんなこんなで、俺は2人目のウマ娘を担当することになった。




果たして、あの距離感はどうなってしまうのか……。

読んでいただきありがとうございます。
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