蒼天を駆ける野球バカ   作:FAKE MEMORY

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最近、ウマ娘界隈の名前してる馬が多いですね。
ウマピョイ、アゲマセン、ハッピーミーク……。
そのうちアマメコイメマシマシみたいなの出るんじゃないですかね。



階級上げ

「カレンに問題! スタミナをつけるなら走りと泳ぎどっちが最適でしょーか!!」

 

「えっ……うーん。泳ぎ、かなぁ」

 

「じゃあスカイ、正解をどーぞ!」

 

「え、私何も聞かされてないんですけど!?」

 

「はいどーん!! 正解は、場合によるでしたー!!」

 

 と、まあこれがトレーニング前のミーティングである。

 

「ぶー。お兄ちゃんのいじわる」

 

「さっすが、トレーナーさんは腐ってますよねー」

 

 トレーナーに対してのこの言い草である。

 和気あいあいとか、アットホームとか、もはやそう言うレベルじゃないよね。もう、舐められてるというか、ゆるゆるしてるというか……。

 

「因みに、負担で言えば圧倒的に泳ぎが少ない。特に、ウマ娘は走る競技。体力をつけるなら、やっぱり同じ運動である走りが効率よく体力は鍛えられる」

 

 泳ぐだけでマラソン走れるようになるか? と聞かれたら圧倒的にノーである。

 当たり前だ。競技が違う。

 

「とはいえ、それを鵜呑みにして走りまくっているとどうなるかは、トレセン学園から去る人又はレースを断念する人を見ればお察しであると」

 

 俺はホワイトボードにスラスラと図と文字を書いていく。

 

「同じことばっかりで怪我をする。なんてことが起きないように、そんな日には水泳で別の体力を鍛えると。まあ、全体的な基礎体力向上ってのが主になるのか? 知らんけど。まあ、そんな感じで上手い具合にローテーションを組んでいこう」

 

「なるほど……。なんかトレーナーらしい言葉ですね。珍しい」

 

 それ、なんか俺がトレーナーじゃないみたいな言い方だな。

 

「そんで、プランはこんな感じになる。カレンは最早体力がない。お前はこんにゃくだこんにゃく……ちげぇ、豆腐だ」

 

「む……っ」

 

 怒ってもダメです。

 

「中距離走るってなると……豆腐なわけだ。だから、当分は体力作りに前振りしながらレースも挑戦って感じだ。幸い、トリプルティアラの最初は桜花賞、マイルだから……何とかなりそうな気もしなくもない。とはいえ最初が重要、これが無理なら短距離路線に変更ぐらいの覚悟で言ってもらわなきゃ困る」

 

 桜花賞を取れば、他もトレーニング次第では取ることは可能ということになる。だが、取れないとトリプルティアラの目標は断念だ。

 大人しく現状適正のある短距離勝負がベストだし、選択肢もそれしかなくなる。

 

「いいかカレン、仮に出たとしてもカレンに注目するやつなんか一人もいない。短距離ならまだあるが、それ以外になるとそのレベルの実力だ。トリプルティアラを目指すならそれを覆すくらいの努力を、カレンには求めないといけない」

 

「分かってるよ。でも大丈夫。カレンは誰にも負けないから」

 

「……トリプルティアラ? トレーナーさん、正気?」

 

 おっと、そういえばスカイにはまだ伝えてなかったな。

 

「正気だよ。とある野球選手も言ってたし。エゴを通せないなら他行っても成功しないってな。中途半端じゃないなら、そっち行くしかないんだよ」

 

「……そっか。トレーナーさんも、ちゃんと考えがあっての事なんだろうし、私は応援するよ。と、なると……」

 

 スカイは顎に手を当てて考え込んだ。

 

「……カレンちゃんともそのうち当たることになるかもだね」

 

「……絶対トリプルティアラを取って。セイちゃんにも、絶対負けないから」

 

 バチバチ。

 カレンとスカイの間で謎なまでの火花が散っている。

 心臓に悪いからやめて欲しい。

 

「じゃあ、トレーニング始めるから……睨み合うのはやめような?」

 

 現実路線で考えると、その可能性は間違いなく低いからな。

 でも、まあ、対抗意識があるのはいいことだな。そのまま成長してくれるなら良いことづくしだ。

 

◇◇◇◇

 

 ということで、スカイはこれまで通りの練習を追い込みって感じで負荷を上げて行ってく。

 対してカレンはひたすらインターバルとシャトルランと……みたいな感じで、とにかく体力作りに精を出す。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「がんばれー」

 

「お兄……ちゃん……応援適当すぎ……」

 

「がんばれー」

 

 だって、俺が熱血野郎みたいになったってどうしたの? ってなるだけだろ。

 

「ご褒美あるなら頑張れるみたいなのは聞かないからな。まだ初日だし、そもそも自分が決めたことだからな」

 

「うう……お兄ちゃ……んがこんな……スパルタ……だったなんてぇ」

 

「はーい、十秒前ー。3、2、1」

 

 ピー、とストップウォッチの電子音が響いてカレンチャンが走り出す。

 取り敢えず1キロを10本頑張ってもらおう。

 このトレーニングさ、マジきついんだよね。俺の場合、一日のメニューが終わって最後に監督が持ってきやがるからさ、マジ気力全部吸い取られる。

 とはいえ、インターバルって体力作りの定番だからな。取り敢えず、これになれてもらわなければ困る。こっちとしてはもっと長い距離も考えてるわけだからな。

 

「三浦トレーナー。こんにちは」

 

「ああ、桐生院さん。偵察?」

 

「ち、違います! その、カレンチャンさんがずっとスタミナを鍛えてるみたいで、ちょっと気になったので」

 

 そうか、トレーナーなら大体の人がカレンチャンの適正について知ってるのか。

 

「これは魔改造です」

 

「……はい?」

 

 おっと、説明不足だった。

 

「カレンチャン、短距離辞めるってよ」

 

「……ええ!? じ、じゃあ距離適正を上げる為のスタミナアップってことですか?」

 

「まあ、そういうとこですね」

 

「そんな……。そんなことできるんですか?」

 

「まあ出来ると思いますよ。カレン自身の問題ではありますけどね」

 

 元々中距離が得意なウマ娘達に、中距離が走れないウマ娘が追いつく、いや追い越さなければならない。

 そんな馬鹿なことをさせようなんて、普通のトレーナーはやらない。

 作戦を変更とか、そのレベルの話じゃない。根本的におかしなことを言ってるのだ。

 

「でもほら、ボクシングとかはちゃんと入念な準備が出来れば階級上げて……みたいなことしてますから。まあ、カレンチャンもヘビー級までとはいかなくてもミドルならなんとか」

 

「ええ……」

 

 だいぶ引いてらっしゃる。

 

「それはそうと、ハッピーミークは順調ですか?」

 

「あ……ええ、セイウンスカイさんが話し相手になってくれるので。私のところに預けてくれて、本当に良かったです」

 

 うん、そういう感じで預けた訳じゃなくて、単純に俺がサボるから預けただけなんだよね。

 そこまで感謝されると困る。

 

「ミークったら、セイウンスカイさんに対抗心燃やしちゃって。今はジャパンカップで打ち勝つ……て、普段は静かな子なんですけど息巻いてますよ」

 

 おい、敵多すぎたろ。

 ただでさえカレンとスカイでバチバチなのに、そこにハッピーミークまで混ざってきたら大変なことになるぞ。

 

「お、帰ってきた」

 

 さすがはえぇな。軽く走っても人の全力疾走だもんな。1キロなんて一瞬で帰って来れるわな。

 

「はぁ……はぁ……むぅ……」

 

 早速いじけてるよ。

 

「なんだよ」

 

「女の子と話してる」

 

「トレーナー仲間だよ。なんも悪くねぇだろ」

 

「私が良くないの」

 

 ……あんまりつっかがってくるとこっちにも考えがあるぞ。

 

「休憩時間縮めてやるか」

 

「わー! 待って! ごめんなさいぃ!」

 

「冗談だよ。んな事して怪我されたら困る」

 

「……お兄ちゃんのいじわる」

 

 ……本当に縮めようとしたことは黙っておくか。

 

「ごめんなさい、トレーニングの邪魔をしてしまって」

 

「ああ、まあ気にしないでいいですよ。借りはきっちり返してもらうんで」

 

「抜かりないですね……」

 

 桐生院さんは苦笑いだった。

 

「また、今度お話してくださいね」

 

「え? うん、はい」

 

 なんのお話すんの?

 

「……まーた女の子だ」

 

 同期なんだよ悪いか。




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