蒼天を駆ける野球バカ   作:FAKE MEMORY

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あっさり売り切れてるウマ娘コラボ商品。
ウマ娘コラボの代わりに角ハイ〇ールで晩酌しました。
取り敢えずこれもウマ娘コラボだということにしてぐびぐび飲みました(現実逃避)
美味しかったです。
……仕事がんばろ。


デビュー戦(カレンチャン)

「カレンは、調子は良さそうか?」

 

「万全だよ。今日のためにご飯しっかり食べて、ゆっくり寝てきたから」

 

 カレンのデビュー戦。

 ここ、めちゃくちゃ大事ね。ここの勝利はカレンにも確かに大事だが、それだけのためにあるわけじゃないから。

 まず、カレンには未勝利戦で頑張ろうっていう期間がない。んなタラタラしてたら重賞に間に合わん。さっさと走ってさっさと準備、これが出来ないとカレンチャン魔改造計画は残念ながら凍結になる。

 スカイは余裕を持ってコツコツと、という理想的なルートで順調に成長してるが、カレンは転入組というだけあってそこら辺はシビアだ。

 一寸先は闇、一歩間違えたら大火傷。そんな、ほぼ不可能な目標が常に並んでいるのだ。

 そして、このレースのすぐ後は弥生賞が待っている。2人と俺をチームとして考えるのであれば、カレンのデビュー戦勝利でチームの弾みをつけて、そのままの勢いと気持ちを引き継いでスカイに走ってもらいたい。

 そうして走った経験は、皐月賞を走るってなった時も確実に力になってくれるはずだ。そういうのも踏まえて、カレンにはこのレースに買って欲しい理由っていうのがあるのだ。

 

「キンチョー〇とゴキジェッ〇と屋外用のブラックキャッ〇に殺鼠剤もちゃんとあるか?」

 

「お兄ちゃんはカレンをどこに連れていく気なのかなぁ」

 

「馬鹿言え、もうついてるだろう。今こそアースコンバッ〇で観客を大混乱に」

 

「それ立派なテロだよ!? デビュー戦無くなっちゃうから!」

 

 おっと、煙は好みじゃないかな? ちなみにああいう煙で黒光りさんをやっつける時はね、近所にも一応伝えた方がいいらしい。なんか、俺最近使ったら隣の人に通報されそうになったから。

 

「カレンちゃん、いつもより元気だね。私も応援してるから、カレンちゃんの筋肉パワーを存分に発揮して欲しいなー」

 

「セイちゃん、それ可愛くない……」

 

「スカイ、スクワットパワーの方がいいに決まってるだろ」

 

「そこはマッスルパワーなのでは?」

 

「2人ともどっちも違うからぁ!!」

 

 スカイもようやく俺のノリを理解し始めたか。

 いや、元からこんなやつだったか。俺がおかしくしたんだな。

 

「あ……! 投稿するの忘れてた。#メイクデビュー #緊張するけど頑張ります! #ドキドキ #カワイイカレンチャン」

 

 そして俺はすっとスマホを取ってポチポチといじっていく。

 

「#川井さんは、社会の虚しさを痛感した。#無念である」

 

「変なの追加しないで!!」

 

「冗談だよ。ほれ、返すから」

 

 全く、ジョークだよ。野郎のノリだから普通女の子にするもんじゃないけどさ。別に消せばなんとかなるだろ?

 

「ポチッとー♪」

 

「「あ」」

 

 スカイさん? あの、冗談通じます?

 俺は恐る恐る画面を見てみる。

 すると、そこには

 

#メイクデビュー #緊張するけど頑張ります! #ドキドキ #カワイイカレンチャン #川井さんは、社会の虚しさを痛感した。#無念である 

 

 と、写真と共に添えてある。もちろん、送信済みである。

 そして、投稿した瞬間に次々とつく返信の数々。

『カレンチャン……!?』『大丈夫ですか?』『乗っ取られた……?』『疲れてたら休んでくださいね』

 と、驚きの声から心配の声など様々な反応。

 とはいえ、個人的にはそれより気になるものもあった。

 

『無理しているのなら、レースは休んでもいいんですよ? ウマスタ更新、毎日楽しみにしてます!』『レースかぁ……カレンチャンが走るならちょっと見てみようかなー』『それより可愛い自撮り写真待ってます!』

 なんていう、カレンチャンが望んでないであろう返信も沢山来ていた。

 俺とスカイは、ふざけていたことをめちゃくちゃ反省した。

 

「カレン……その……」

 

「ううん、いいの。カレンがトレセン学園に転入した頃からこうなるのは分かってたから」

 

 ファンの人は、レースが好きでウマスタをフォローしてくれている訳では無いし、そういうのも仕方が無いだろう。

 とはいえ、今間違いなくカレンに逆風が吹いている。

 応援してくれるファンはいるが、そうでない人がいる。本気なのに、フォローしてウマスタは応援してくれるのに見向きもしない人がいる。

 かと言って、トレセン学園でしのぎを削る他のウマ娘たちはというと、カレンのことをよく思っている人は多くない。

 元々のカレンのファンであったり、すぐ仲良くなれた人なら良いのだが、そうでない人はかわいいかわいい言ってる人が舐めやがってと、そう思っている人が多い。

 今日共に走るウマ娘の中にもきっといる。こっちは苦しみながらこれだけ努力してこの場所に立ってるのに、なんでカレンもこの場所にいるのかと。

 四面楚歌とは、多分こういうことなんだろうな。レースに関しては、仲間が本当に少ない。

 

「カレン、俺からはちょっとくらいなら休んでもいいとか、そういうことは言えない。このまま終わっちゃダメだ。こんなものじゃない。出来るはずだ。そういうことしか言えないからな」

 

「うん、分かってる。カレンも、お兄ちゃんにはそうであって欲しいなって思ってたところ」

 

「私も応援してるよ。カレンちゃんは、私には勝てないけどその他の人なら勝てるもんね」

 

「うーん、その言葉は余計かなぁ……。だって――勝つのは私だから」

 

 スカイはやっぱ頭がいい。カレンの本質に気づいているんだ。努力家なのは知ってのことだろうが、なぜ努力できるのか。

 それは、カレンが根っからの負けず嫌いだからだ。

 よし、カレンにスイッチが入った。これで、あとは結果を待つのみだ。

 今回はデビューを確実にとるために短距離でのデビュー戦だ。素の状態のカレンでも十分に勝てるレース。中距離を視野に入れて全振りでスタミナ練習をしてたとはいえ、勝てる力は十分にある。

 

「お兄ちゃん、カレンが1番かわいく走れる場所はどこだと思う?」

 

「カレンの体力は他のウマ娘より断然あると思っていい。てから呼ぶんだと思ってもいい。だから……最初から最後までだ。初めからクライマックスで行こうぜ」

 

 出し惜しみ無しで開幕ダッシュから強引な逃げ。今のところ中距離のペースだとかを教えたりしてないし、多少強引に行っても何かが崩れるとかそんな心配はない。

 

「つまり、カレンは全部かわいいってこと?」

 

「まあな。ここにはカレンのフォロワーも来てるはずだ。だから、『今日しかレースを見に来れない人がいる』そのくらいの気持ちを持って走って欲しい」

 

 あんまりプレッシャーになることは言わない方が良いのだが……カレンにはこのくらい言っておいた方が寧ろ気合いが入るってものだろう。

 

「うん。お兄ちゃんとカレンのかわいいとこ、ちゃんと見ててね?」

 

「分かってる。頑張ってこい」

 

 俺達はカレンを見送った。

 その背中は凄く大きく見える。うん、なんも問題なさそうだな。

 

「スカイ、俺達もそろそろ移動しよう」

 

「そうですねー」

 

「……どうした? なんか、調子悪いのか?」

 

「いやー、今日しか見に来れないーとか、そういうの言われたこと無かったですし。なんか、カレンちゃんに思い入れとかあるのかなーと」

 

 なぜその話になる。

 

「ま、そんなことはねーよ。人によってやる気が出る言葉は違うってことだ。スカイはそういう言葉より、もっと好きな言葉があるだろ? だから、そういうことは言わないってだけ。別に特別扱いも何もねーよ」

 

「そっか……。そうですよね。うん、なんか安心しました。……でも、ちょっと油断も隙がないっていうのも分かりました。喜ぶ言葉を選ぶ……ねぇトレーナーさん、実はナンパの経験あります?」

 

「ねーよ、俺をなんだと思ってんだ」

 

 全く、俺はそんなメンタルは持ってねぇんだ。

 そんなことよりレース見るぞレース。




読んでいただきありがとうございます。
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