蒼天を駆ける野球バカ   作:FAKE MEMORY

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キタサン出ない……なんで……。
石使ったのに……貯めてたのにダメでした。
まあカレンチャン来たので良しとしましょう。


妄想

「何かは掴んだ……のか?」

 

 いや、確実にスカイは何かを掴んだ。それも、俺の思ってた以上のレベルまで押し上げられた。

 中盤、コーナーでゆっくりと落ちていくスカイが、突然立て直した。しかも、先程とは全く違う走り方をして。

 俺的には、ギリギリまで追い込まれた時にふと見える勝ち筋っていう意味でスカイにヒントを与えたつもりだったが……。それどころか別人と入れ替わったかのような走り方だった。

 

「お兄ちゃん、今の走りは……お兄ちゃんが教えたの?」

 

「いや……俺も分からん。予想外なところの方が多すぎて何がなんだか……」

 

 まあいい、勝ちは勝ちだし。

 

「そう、勝てばよかろうなのだぁ!!」

 

「お兄ちゃんのそういうところ、カレン悲しいよ」

 

 悲しいとか言うんじゃありません。

 

「……ってスカイ!?」

 

 先程まで大喜びだったスカイがよろよろと倒れ込み、蹲った。

 ザワつく会場。

 

「ちょっと行ってくる!!」

 

「か、カレンも!!」

 

 なんだなんだ、三冠目指すって言ってたくせにいきなり故障とかやめてくれよ……? レース前の追い込みはちゃんとスカイの体調を見ながら行ったし、自主練についても無駄なことはしないってのを口酸っぱく言ってきたつもりだ。

 だから、怪我をしたなんてことは万が一でもないつもり……なんだが。

 許可を貰って、俺とカレンはスカイの元に駆け寄った。息が荒い、足がずっと震えっぱなしになってる……。さっきの走りで足を無理に使ったってことか……。

 

「スカイ、大丈夫か……?」

 

「あはは……ごめんなさい。ちょっと、力が入らなくなっちゃって……。あ、痛みとかはないんで心配しないでくださいよ? ピンピン……はしてないですけど、元気ですから」

 

「そう、か」

 

 それなら一先ずは安心か……。

 

「でも、流石にライブは無理だろうな。まだ皐月賞では無い。今日のところはセンターを譲って、次確実に勝つことだけを考えよう」

 

「……でも、センターには立ちたいです。折角、重賞で勝てたのに……」

 

「何言ってんだよ。目標は勝つことだ。ファンサービスを疎かにするなとか、なんちゃらルドルフに言われてるけどな……実際1番のファンサービスはレースに勝つことなんだ。レースを最高に盛り上げることなんだ。2つともちゃんと出来てんだから、何も気にする事はない。スカイは勝った。センターに立てなくても、それは絶対に揺るがない事実だ」

 

 なんで普段めんどい眠たいサボりたいって言ってるやつがこういう時に限って……。今こそ休み時だろうが。

 

「そう……ですね」

 

「一応タンカーが来るからスカイは大人しくしておけ」

 

「トレーナーさん……」

 

「なんだ」

 

「タンカーじゃなくて担架です。タンカー来たらまずいですよ」

 

 確かに、レース場完全に破壊されるな。

 

「までもすごい走りだったよなぁ後さ――」

 

◇◇◇◇

 

「スペのやつ……相当悔しそうだな」

 

「……ああ。ちゃんと俺たちでフォローしてやらないとな」

 

 初めての重賞、初めての敗北。2着に入れただけで十分だが……それでも、悔しいものは悔しい。

 それにしても……セイウンスカイのあの走りはなんだったんだ? 明らかに逃げに失敗してるのに、それでも逃げを打とうとして結果自爆したようにしか見えなかった。

 そして、順位もゆっくり沈んでもう終わりだと確信していた。いや、本人もあの時限界が来ていたはずなんだ。

 それなのに……最後のスパートで一気に上がってきた。

 スペが綺麗に差し切られた。しかも後半のあの走り方……スズカやテイオーによく似ている走り方だ。体がほとんどブレることなく、滑るように駆け抜ける。

 全部がフェイクだったってことか……? 逃げに失敗したと見せかけて作戦は差し……?

 いや……そんなはずは……。

 

「トレーナー。セイちゃんの走り……」

 

「テイオーも気付いてたのか」

 

「うん、セイちゃんがすごく強かった。最初からあれで行ってたら……カイチョーと一緒に走っても違和感はないよ」

 

 普段シンボリルドルフにベッタリなテイオーでも、身内贔屓をやめてまで褒めたくなる走りってことか。

 スペの世代は才能のあるウマ娘が特に集中していると言われているが……ここまで圧倒的な才能を持ってるウマ娘がいるとは思わなかった。

 下手すると、この世代を飲み込まれかねない。

 

「セイウンスカイは強い。さっき見ていた通り、圧倒的なまでに強い。でも……スペだって負けてない。今は悔しがってるが、スペはまた前を向ける。絶対に諦めない。1番のウマ娘になるって、そういうことだからな」

 

「トレーナー、たまにはいいこと言うじゃねぇか」

 

「んだよたまにはって。俺だってふざけて生きてるわけじゃねぇんだぞ」

 

「「「「ふざけてるでしょ」」」」

 

 お前らなぁ……。まあ、いいか。

 それに、悲観することばかりではない。皐月賞で1番マークしないといけない相手が分かっただけでも収穫だ。

 あのトレーナーが、またどんなことをしでかすのかは分からないが、それでもスペは勝てる。

 

 また、1から頑張らないとな。

 

◇◇◇◇

 

「――みたいな感じに騒いでたら、俺的にめっちゃ熱い展開になると思うんだけど、どう思うよ」

 

「……その想像力をほんの少しでもいいですからウマ娘の知識に割けませんかね」

 

「何言ってんだよ。ロマンはそんな○○力みたいな言葉じゃ測れない」

 

 想像力は力じゃない。ロマンだ。男として、実はダークホースってパターンは燃えるんだよ。熱い展開なんだよ。

 

「まあ……私がダークホースっていうのも面白いではありますけど」

 

 この世界にホースは存在するんだな。

 

「……てかスカイもダークホースが好みか……。あれ、実はお前男だったりぐほぉ……」

 

 

「この期に及んで何を言うんですか……っ」

 

 やべ、救護室で大人しくしてたから油断してた。

 駄目だ。スカイはどうなってもスカイだ。

 

「ふしゅぅるるるる……」

 

「スカイ、スカイ怖い」

 

 流石競馬だけあるわ。気性が荒い。怖い。

 

「怖いのは弱ってる女の子を平気でからかってくるトレーナーさんの頭です」

 

「う……ごめんしゃい。まあなんだ、取り敢えず怪我はなくてよかったな。医務室のおっちゃんも、医者にはいけって言ってたけどおそらく問題はないってさ」

 

 クソあのやろう結構脅し的やがったけどな。『ウマ娘に撮って足の怪我は選手生命に直結する。そして、その瞬間はいとも容易く訪れることになる』とか言いやがって。

 俺とカレンがどれだけビクビクしてたと思ってるんだ。まじ許さねぇからなあのおっちゃん。

 

「お兄ちゃんってば、すっごく心配してたんだよ? セイちゃんの大丈夫ほど信用出来ないものは無いだろうって」

 

「あ、あはは……それはそれは……日頃の行いが祟りましたねぇ」

 

「ほんとだよ。もうちょっと素直になればなぁ……」

 

「なんですか……それ。まるで私が素直じゃないみたいじゃないですか」

 

 だってそのまんまだろ。お前のどこが素直なんだよ。

 

「まあでも……ありがとうございます。心配してくれて」

 

「ああ。別に、心配ぐらいなら幾らでもするだろ。それより、スカイのレースの時のことについて聞きたいことがあるんだけど……体調は大丈夫そうか?」

 

「あ、はい」

 

 まあ、俺をぶん殴ったやつの体調がダメなわけが無いか。

 

「あの時、突然早くなったことに自覚はあるか?」

 

「そりゃあ……あれだけのことが起きれば自覚は起きますよ。それに、トレーナーさんがそうなるように仕向けたんじゃないんですか?」

 

「いや……俺も予想外だったんだよ」

 

 スカイがあれだけのこと呼ばわりするくらいだから、やっぱりあの現象は異常ということだな。

 体力の消費も普通に走る以上に激しかったように見えるし、やっぱり以上だな。

 基本的に、限界を突破して実力が発揮されるとしても、自分の体がボロボロになるまではならない。体が勝手にセーブするとかそういうのではなくて、単純に突然能力が上がるなんてことがありえないと言うだけだ。

 だが、スカイはそれが起きた。体を壊しかねない力が、スカイに授けられた。

 これは明らかに異常だ。

 

「……そうですか。なら……あまりこれは使わない方がいいってことですね」

 

「話が早くて助かる」

 

 レースのようにたまーに使うならともかく、それを完全にモノにしようとしてトレーニングで使うなんてのは論外だ。折角慎重にケガしないようにしてきたのに、全てが無駄になる。

 

「私も割に合わない博打はしたくないですから」

 

「だよな。とりあえずはゆっくり休むことだ。疲れをしっかりとったら、次のレースのことを考えよう。まあなんだ……初めての重賞、おめでとナス」

 

 

「ありがとうございます。トレーナーさん」

 どうやら。今回のツッコミはないらしい。




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