去年社会人になって1年。まあ、色々ありました。
それはともかく、ハイペース……とまではいきませんが暇な時にゆるゆる書いてってます。
ということで今回もよろしくお願いします。
なんやかんやあって、ちゃんとしたトレーニングが始まった。
今はとにかくバネを鍛えるということと、スタミナをつけることを重視する。
だから練習はスプリントトレーニングが主だ。
他のウマ娘が並走やら坂ダッシュやら、将棋やらをやってる間に人間がするくらいの短い距離でトレーニングをする。
バネを鍛える時は距離がありすぎてもダメらしい。
そうなると、どうしても距離は少なくなる。トレーニングルームにはダンベルやらが置いてあったが……正しく使わないと怪我の元やコンディション低下の恐れもあるし、そもそも中学生が使うものでは無い。あれをどう使うかは慎重に考えるべきだろう。
「ふむ……暇だな」
最近買ったノートパソコンを広げて、カタカタと内職をする。研究所の相手方がセイウンスカイの適正のなどを教えて欲しい、と言っていたので入学時の身体能力検査のデータを送った。セイウンスカイには許可を貰ってないし、多分バレたらセクハラで訴えられると思う。
それから、事務作業やらをこなす。なんというか、これまでだいぶ騒がしくしていた割にはドライな関係だ。
それもこれも、俺がまだセイウンスカイに信用されていないからだろうが。
まあ、出会いと練習初日を考えれば、セイウンスカイの好感度はドン底だろう。それを何とかするなら、毎日コツコツ関係を積み上げるしかない。千里の道も一歩から、だ。
「にしてもこの黄金の宇宙船ってユーザー強すぎだろ」
仕事の傍ら将棋アプリをやっていたのだが、最近よく当たるユーザーがえげつなく強い。俺がエンジョイ勢ってのもあるだろうが、上手く守りを固めても簡単に剥がされる。
ちょっと強すぎやしないだろうか。
「ぐっ……ぬ……負けた……」
「ちょっと〜、少しくらい練習見てくださいよ」
不機嫌でムスッとしたセイウンスカイ。だが、何故か勝手に俺との契約を切る事はしない。不思議だ。
因みに、今内職している理由はこのままだと仕事が終わらないからだ。サブトレーナー時代に俺が何してたのかさっぱり分からない以上仕方がないのだが。
「この練習、フォーム自体はコツ掴んだら簡単だろ? だから、俺が何も見なくても問題ないと判断したってだけだ」
「そうですか〜。なら、すぐに終わらせてきますよ」
「ああ、さっさと次の練習にしよう。短い時間にぎっしりとだ。今の俺みたいに仕事が間延びすると後々後悔するからな」
そう、後悔するんだ。くそっ、先輩が今年トレーナーになった人へ歓迎会開くって言ってたのに……!!
奢りなのに!! 俺も飲み……飲……あ、俺未成年か。
はぁ……。仕事ってこんな疲れるんだな。ダメだ、集中力が持たねぇ。
……息抜きに俺もひとっ走りするかな。俺は元々ジャージを着てたし、丁度いい。
さて、走ってみたわけだが……これ1周長すぎねぇ? カーブもめっちゃ緩やかだし……いや、競馬だもんなそりゃそうか。
あとこれ人が走るとくっそ目立つ。邪魔にならないようにトラックの外走ってるだけでもみんな見てくる。恥ずいわこれ。
これ以上は恥ずかしいし、目標まで走ったらやめておこう。そう思ったら何故か隣を走るセイウンスカイ。
「おやおや? トレーナーさんもトレーニングですか」
「おま……今走ってフォームに癖ついたりしたらめんどいって言ったろ」
「でもこの速度、ウマ娘ならランニング程度の速さで、私にとってはなんともないんですよ」
「ほうほう、ランニング程度……か……」
なんともない……つまり俺は遅すぎてクズみたいな野郎だと(曲解)。言ってくれるじゃねぇか。こちとら意味あるかわからんほど寝坊して罰走で、一日中、アホみたいに走らされた身だ。
速さでは叶わなくとも、スタミナと根性だけはウマ娘にも負けないつもりだぜ?
「セイウンスカイ、速さは確かにそうだろう。だが、このまま一緒に走ってみろ。俺より先にこのペースで精一杯になるのは目に見えてる」
セイウンスカイの耳がピクりと動いた。
「それは、セイちゃんへの宣戦布告って思っていいんですか?」
「ああ、ただしルールがある。俺の後ろをついて来い。今の言葉が最高にダサいのは理解してるが、そんなの関係ねぇ。バテるまで走らせてやる」
俺は更に速度をあげる。自分にしては出しすぎな速度だが……これくらいしないとセイウンスカイの体力を削ることが出来ない。
「ほうほう……このペースで持つんですか? 私が丁度いいペースってことは、トレーナーさんは相当全力では?」
「ぬぉぉぉぉぉ!!」
もう話す余裕ねぇわ。俺、何と戦ってんだろ。てか、これ体力使い果たしたら仕事も何も無いのでは? おいおい、またくそ徹夜残業ペースだ。
まあでも、俺のちっぽけなプライドを守るためにも、これは必要なんでね。
何キロ走ったかは分からないが、セイウンスカイの息遣いが明らかに荒くなってきた。ほう、人間でも案外通用するんだな。スタミナだけだけど……いや、ほぼ根性だけか。
まあでもそろそろ形勢が変わるはず。いや変わってくれ。
「かかってこいやセイウンスカイぃぃい!!」
「なんのなんのぉぉぉぉ!!」
誰もが唖然と俺たちを見ている。そりゃそうだ。ウマ娘と足で張り合う人間はいないし、人間相手に必死になるウマ娘もいない。無謀……だとか、ウマ娘なのに大人気ないね……とか思ってるのだろう? だが、勝つのは俺だ。
「ぐっ……これが……箱根の坂か……」
「はぁ……凄い……平面、ですけどぉ?」
ついにセイウンスカイをバテさせることに成功した。
ふっ、ゴールのない道を走るのは初めてだろう。俺は幾度となくいつ終わるかも分からない罰走を走らされてきたんだ。まだまだ行ける。
「なんか面白いことやってんなー! ゴルシちゃんも混ぜてくれよー!」
なんだてめぇ。
「ぶっ……あ、やべぇ」
「わ、ちょっ、トレーナーさん止まらな……うわぁ!!」
スリップストリームでもと考えていたのか、セイウンスカイはピッタリと俺の後ろを着いていたようで、俺がよろけた瞬間背中に体当たりを噛ましてきた。
2人で揉みくちゃになりゴロゴロゴロゴロ転がった。
やっべ……倒れたらもう走れん……エグいわこれ。
「なんだ、もう終わりかー? ま、いっか。じゃあな〜!」
見知らぬ芦毛のウマ娘は走り去ってしまった。
「誰だよマジで……てかおま、重いんだよどいてくれ」
「女の子にそれ……ふん、もうどきませーん」
え、でもどいてくれないと巻き込むことになるぞ。
「そっか……ごめん、俺そろそろゲロリンガーになるかもしれん」
「え? ……う、うわぁぁ。分かったどくから、それだけはやめて!」
「うぷ……。あぶねぇ……」
「だ、大丈夫? 水持ってきてあげます?」
「や、そこまでしなくて大丈夫」
流石に暴走した俺がそこまでされる訳にはいかん。普通なら俺が水を持ってくる側なわけだからな。
「それにしても、トレーナーさんがここまで走れるとは思わなかったよ〜。もしかしたら、ちゃんとしたトレーニングで出走できるレベルまで……」
「なるほど、ウマ男マッスルダービーか」
「うわぁ……何そのこの世の終わりみたいな名前。あはは、なんかトレーナーさんって変わってるね」
そういえば、セイウンスカイがこんなちゃんと笑ってるのは初めて見た気がする。あれか、喧嘩した後瓦で寝転がると起きるオマエナカナカヤルナ・オマエモナイベントが始まったのか?
「……明日はフォームチェックするから、練習前に言った通りの時間に集合だからな」
「はいはーい」
さて、全力出し切った事だし仕事モードに入りますか。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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