アルビノ美少女にTS転生したと思ったらお薬漬け改造人間状態にされた上にシティーハンターの世界なんですけど?   作:らびっとウッス

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うーん、尺が足りなかった。
前中後編構成にすべきかとも思ったのですが、一部描写は次回に回します。
前半はホラー風に書いてみようと挑戦したらただのメタルギアになった奴です。
よろしくお願いいたします。


第7話「白vs危険なハーレム野郎の巻!(後編)」

在日ロキシア王国大使館。

あえて都心から離れた郊外に広い土地を使って建設されたこの建物は、外から見ると豪邸か宮殿にしかみえない。

煌びやかな外観に反さず内装も一級品。

更には嫌味な印象を持たせず落ち着いた雰囲気を纏っていることから、ここの主のセンスの良さが光る。

と、そこまでは表の顔。

この建物には裏の顔というべき一面がある。

内部は武装した兵士が行き来しているし、武器庫も用意されている。

流石に使う機会がないからか戦闘車両などは存在しないが、屋上には外から見えないように武装ヘリが置かれていた。

そう、ある種の軍事基地の様相を呈しているのだ。

そしてその裏の顔の一つが、地下に作られた独房である。

兵士に対する懲罰で使われることもあるそれは本格的なつくりになっており、今も見張りの女性兵士が一人立っていた。

独房はいくつか並んでいるが一つを除いて今は空き部屋だ。

その唯一使われている独房に入っているのが年端もいかない少女だというのだから不思議な話だ。

女性兵士は平然とした顔で見張りの任務についているが、内心穏やかではなかった。

 

(一体頭目は何を考えていらっしゃるのだ……)

 

思うのは、ここ数日の任務の内容だ。

日本に密かに入国し、大使館を拠点として行われたミッション。

それは、ロキシアからスパイによって持ち出された軍事機密の入ったマイクロフィルムを奪還すること。

日本で雇われた凄腕のスイーパーであるシティーハンターの手に渡ったらしいことがわかり、その拠点を襲撃したのが昨日。

その時に拠点内に居たのが、今独房に入っている少女だった。

天井から降ってくるなんて方法で完全に不意を打たれたのは仰天したものの、その太刀筋は甘く、突然の事態に破れかぶれの行動に出たのであろうという見立てだ。

しっかりとしたサバイバルナイフを持っていたこと、シティーハンターの拠点に居たことなどから関係者、または血縁であることが予想されたため人質として連れてこられた。

先ほど目を覚ましたようで会話……というか一方的に話しかけてみたが、やはりこちらに怯えている様子だった。

無理もない。

あのような少女が殺されかけたうえにその相手に捕まっている状態なのだから。

見目も良いし、なによりあの少女の身体的特徴からしてアルビノだ。

日の下を歩けないアルビノの人間が日常生活を送るには気を遣う事が多い。

未だ幼い彼女一人ではどうにもならないことも多いだろう。

きっと、蝶よ花よと育てられていたに違いない。

なるべく便宜は図ってやりたいが。

少女を地下の独房に入れたのも、脱走を警戒してではなくその体質に配慮した面が大きい。

この大使館の客間は全て日当たりが良いように考慮されて設計されている。

カーテンはもちろん閉められるが、どの程度の紫外線を少女が許容できるのかわからなかった。

そのため、日差しの危険のない独房が彼女の収監先になったのだ。

そもそもとしてそんな少女を誘拐監禁していることに、誇りあるロキシア軍人として罪悪感はどうしても覚えてしまう。

ロキシアへの、ひいては頭目への忠義心は絶対だ。

しかし、今回の任務においては頭目はやや手段を選んでいないようにも見える。

忠臣として意見具申すべきか、しかし。

そう考え込んでいると、独房の中から何やら苦しむような声が聞こえ始めた。

何事かと覗き窓から様子を窺うと、少女が床に蹲り腹を押さえているではないか。

すわ発作かと、慌てた女性兵士が独房の扉を開いて少女の横にしゃがみこんだ。

 

「おい、どうした。腹が痛いのか?」

 

「お、お腹が……」

 

なるべく優しい口調を意識して声をかけると、苦しそうに声をあげた少女。

蹲ったままの少女の背中に手を添えてやり、医者を呼んでくるかと思い立ち上がろうとした時。

少女が蹲ったまま横目でこちらを見上げていることに気づく。

その赤い瞳と目が合った瞬間、強い衝撃と共に気づけば女性兵士はうつ伏せに床に転がっていた。

何が起こったのか理解する前に、もう一撃が首裏に襲い掛かり完全に意識を失った。

 

 

 

 

 

在日ロキシア王国大使館に駐屯している部隊は、中隊ごとにローテーションを組まれている。

細かい仕事に分ければ多岐にわたるが、おおまかには警備、雑事、訓練、休憩の4つだ。

警備、休憩、雑事、休憩、訓練、休憩、というようにシフトを組まれて複数の中隊が持ち回りで行っていた。

雑事には炊事や掃除等も含まれており、これは大使館内にはロキシア軍人とそのトップたる頭目しか存在しないためである。

頭目は大の男嫌いで大使館内部には女性しか入れないことも関係していた。

そんな大使館内部の警備担当の中隊に所属する女性兵士が二人、連れだって廊下を歩いていた。

二人の手にはサブマシンガンが握られている。

雑談を交わすほど気を抜いてはいないが、かといって張り詰めているわけでもなく自然体で歩く姿は訓練の質の良さを思わせる。

今はツーマンセルで館内を巡回中だ。

その二人が会議室の扉の前を通過した時だった。

中から僅かに物音がした。

この時間帯はこの部屋は無人のはずである。

二人が同時に足を止め、アイコンタクトとハンドサインでやり取りする。

言葉なく十全なコミュニケーションをとった二人は扉の脇に張り付くと、蹴破るようにドアを開き同時に飛び込んだ。

室内は中央に大きな会議用のテーブルと、それを取り囲むようにある簡素な椅子。

それとホワイトボード。

一見するだけだと異常なし。

不審者の姿もない。

しかし、よくよく見ると部屋の奥のカーテンが僅かに膨らんで見える。

そのことに気づいた女性兵士の片方が、相棒にハンドサインで待機を命じるとゆっくりとカーテンに近づいていく。

手の届くところまでくれば、明らかに不自然にカーテンが膨らんでいた。

ゆっくりと手を伸ばして、一気にカーテンを開く。

……そこには、誰の姿もなかった。

どうやらカーテンのランナーへの止め方が悪かったらしく、一部よれてしまっていた。

それがたまたま膨らみのようになっていたようだ。

拍子抜けした女性兵士は後ろ手に問題なしのハンドサインを出しながら振り向くと、固まった。

さっきまで会議室の入り口に居たはずの相棒の姿がない。

一気に緊張を高めて、サブマシンガンを構えなおす。

ゆっくりと左右を確認しながら廊下に出るが、なお相棒の姿は見えなかった。

一体どこに。

と、そこで気づいた。

廊下を進んだ先の曲がり角から、僅かに見えるもの。

あれは手ではないだろうか。

廊下の先に誰かがうつ伏せに倒れており、その手だけが僅かにこちらからも見えている。

グローブをつけているように見えるので、恐らく味方のものだと思うのだが。

警戒しながら近づくと、それが探していた相棒だということがわかった。

そのことに思わず動揺した瞬間、突如上から何かが降ってきた。

両肩に急に衝撃を感じ、それが何か理解する前に強く首を絞められる。

生物の防衛本能が働いて銃を手放して首を絞めているナニカを引きはがそうとするが、抵抗空しくそのまま視界がブラックアウトした。

 

 

 

 

 

その日はやけに大使館の中が静かな気がした。

一緒に歩いている相棒に声をかける。

 

「ねえ、やけに静かじゃない?」

 

「そう?こんなものだと思うけど。」

 

特に違和感を感じていないらしい相棒の様子に首を傾げるも、気にしすぎかと思う。

と、その時視界の端を何か白いものが横切ったような気がして咄嗟に銃を構えて振り返る。

振り返った先は見慣れた長い廊下で、特に隠れられそうなところはない。

気のせいか、と銃を下すと横で相棒が苦笑していた。

 

「どうやら大分疲れているみたいね。次は休憩でしょ?しっかり休むといいわ。」

 

「そうね。慣れない国で気を張っていたのかしら。」

 

そう返した直後、コンコン、とノックのような音が響いた。

明らかに人為的な音のうえ、今度は相棒にも聞こえたのか二人で銃を音のした壁のほうに向ける。

が、そこにはただの壁があるだけ。

何が起こっているのかわからずゾッとするような寒気を感じた瞬間、横の相棒が前に崩れ落ちた。

 

「てっ……!」

 

完全に混乱状態だが、仲間に異常を伝えようと声をあげようとしたところで、側頭部に強い衝撃を受けて女性兵士は意識を飛ばした。

 

 

 

 

 

ロキシア大使館セキュリティルーム。

ここは大混乱に陥っていた。

女性士官が監視カメラのモニターを睨みつけながら残った4人の部下に怒号を飛ばす。

 

「まだ警備隊と連絡はつかないのか!」

 

「は、はい!侵入者は我々の無線を奪取して利用している模様です!通信回線に酷い雑音が流されており、連絡付きません!」

 

「カメラの復旧は!」

 

「確認に行った者が誰一人戻りません!」

 

そのやり取りをしている最中も、またひとつモニターが砂嵐に切り替わる。

カメラが破壊されたのだ。

無線は届かず、カメラは次々と沈黙。

直接伝令に走った者やカメラを確認に行った者など、この部屋を出て行った人間は誰一人戻ってこなかった。

そんな有り様でありながら、敵の姿すら捉えられていない。

 

「栄えあるロキシア王国軍がなんということだ……!」

 

「あっ!」

 

「今度はなんだ!」

 

女性士官が歯噛みしていると、監視カメラを確認していた兵士が声を上げる。

 

「こ、この部屋の前を映していたカメラが沈黙しました……。」

 

「……!総員、構え!」

 

士官の命令に、セキュリティルームに残っていた兵士全員が銃を部屋の唯一の入り口である扉に向ける。

ちょうどその時、ゆっくりと扉のノブが回った。

固唾をのんで扉を睨みつける兵士たち。

しかし扉が開くと、そこにいたのは先ほど部屋を出て行った兵士の一人だった。

その姿に気が抜けたのも束の間、そのまま兵士が前のめりに倒れる。

その陰から、白いナニカが飛び出した。

士官はその正体を見極めようとしたが、同時に顔面に向かって飛んできた飛翔物に咄嗟に顔を庇う。

軽い音を立てて地面に転がったソレは、空弾倉だった。

 

「空のマガジン……?」

 

一瞬そちらに気をやった士官がハッとして顔をあげるころには、部屋は静寂に包まれていた。

ゆっくりと周囲を窺うと、倒れている兵士、兵士、兵士。

部下は全員床に伏せていた。

ごくり、と唾をのみ呆然と呟く。

 

「一体私達は、何と戦っているのだ……!」

 

その時僅かに聞こえた、背後の着地音。

素早く振り返った士官が目にしたのは、キラリと光る赤い瞳。

その正体を見極めるだけの時間は彼女に残されていなかった。

 

 

 

 

 

一人でロキシア大使館を大混乱に陥れた白。

その当人はというと

 

(イヤッホオオオオウ!最高だぜえええええ!)

 

吹っ切れていた。

今の白はたまたま見つけた小さい段ボール箱を逆さにして被り、セキュリティルーム近くの廊下でガン待ちしていた。

箱は白が体育座りで屈みこむとぎりぎりすっぽり入るくらいの小さめの箱だ。

このサイズだと意外と気づかれないものだ。

白のテンションが振り切れているのは、不殺縛りに原因があった。

 

(思えば、殺したほうが楽なのに殺してはいけないって考え方がそもそもどうかしてたんだよ!)

 

殺してはいけない、という気持ちで思い切り力を振るった白。

最初は手間取っていたものの、人数をこなして慣れてきたあたりで徐々に心持が変わっていった。

不殺ってそもそも縛りプレイじゃなくね?という考えに至ったのだ。

『殺してはいけない』ではなく『殺さなくていい』。

 

(そうだよ、殺したくて殺してきたわけじゃないんだ。殺さずに力を振るえるこの状況が、なんと清々しいものか!)

 

白、いや、ホワイトデビルにとって、眼前の敵とは殺害対象でしかなかった。

生存者を残してしまえば足が付く。

足がついてしまえばユニオンに不利益がかかり、その結果ユニオンに始末されかねない。

そもそもが悪の秘密結社みたいなユニオンで生きていくためにはなりふり構っていられなかったし、そういう仕事ぶりを求められていたこともそうだろう。

ホワイトデビルの基本方針は見敵必殺。

殺せる奴は殺しておいて安全を確保することが当然になっていた。

しかし、殺しが絶対条件ではなくなった今。

人を殺してはならないという一般道徳に従って行動を開始した結果、白は愕然とした。

その身に沁みついた隠密と近接戦闘技術は、いつの間にかわざわざ対象を殺害しなくても容易に無力化させることができるものに昇華されていた。

敵の施設に一人捕らえられるという絶望的な状況から、誰一人殺さずに脱出を目指せるほどの力量を知らず知らずのうちに持っていたのだ。

目に入った兵士を次々と無力化し、実戦の中で殺さずに制圧する方法をどんどんとブラッシュアップしていく白。

一番優しく気絶させるなら首絞め、手っ取り早く気絶させるなら拳、と状況に分けて次々と兵士を片付けていく。

ここまででかなりの人数を無力化したが、命に係わる怪我をした人間はまだ居なかった。

何人かは急ぎで気絶させたため、顔面崩壊パンチの餌食になっているが。

加減しすぎて仕留めそこなうとこちらが危ないためご容赦願いたい。

どんどんと効率化されていく白の制圧術は、心境の変化をもたらすとともに、白に自信を与えていた。

と、白が曲がり角の先から歩いてくる兵士の気配を察知した。

すかさず壁際によって体育座りで完全に段ボールに擬態する白。

二人の兵士が曲がり角から現れてそのまま通過しそうになるが、片方が段ボールに気づいて足を止めた。

 

「誰だ、こんなところに置きっぱなしで……。」

 

これが大きな段ボールだったら疑われたかもしれない。

しかし、白がギリギリ潜り込めるサイズの段ボールだったため、兵士もまさか中に人が入っているとは思っていない。

そんなことする奴が居るわけないだろという思い込みもある。

無警戒に近づいて段ボールを持ち上げようとした瞬間、しゃがんだ体勢から勢いをつけて白が跳ねた。

白の拳がアッパーのように女性兵士の顎を打ち抜き、兵士は白目をむいて後ろに倒れる。

もう一人の兵士も異常には気づいたものの、段ボールから飛び出してきた少女が相棒をアッパーで吹き飛ばすという意味不明な光景に啞然としてしまい、反応が遅れた。

その間に態勢を整えた白が今度はもう一人に拳を放つが、ハッとした兵士が手に持っていたサブマシンガンで咄嗟にこの拳を受けようとする。

白は持ち前の動体視力でそれに反応すると、サブマシンガンを持っている兵士の腕を取り、手前に引きつつ足を払った。

兵士はこれにはたまらずバランスを崩してしまい、そこにさらに白が飛び掛かる。

倒れていく兵士の首に腕を引っかけ、そのままの勢いで後頭部から地面に叩きつけた。

 

「げぇうっ!」

 

(やば、やりすぎたか?)

 

かなり怪しい声を発した女性兵士の様子を見てみるが、白の体重が軽いことが幸いしたのだろう。

完全に気絶しているものの、生きてはいるようだった。

 

(よし、セーフ!)

 

テンションのままに大技を決めてしまったが、ちょっとやりすぎた感もある。

 

(それでも死んでないならオッケーです!)

 

新たに気絶させた二人を引きずってセキュリティルームに放り込む。

これでセキュリティルームの中には30人近い兵士が転がっている。

白がセキュリティルームの近くでガン待ちしているのは、このように次々と兵士がやって来るためだ。

監視カメラを破壊する時に通信回線に雑音を流すことで連絡網を寸断、速攻でセキュリティルームを落とす算段だったのだが、思わぬ副産物があった。

どうやら巡回警備している兵士はツーマンセルで行動しており、無線機は二人に対してそれぞれ一個しか持っていないようなのだ。

そのため、無線機が雑音を吐き出し始めた時に彼女達が真っ先に疑ったのは無線機の故障だった。

侵入者警報も鳴っていないし騒ぎも起きていなかったため、まさかこれが敵によるものだとは思わなかったのである。

どうやら無線機の予備はセキュリティルームにあるらしく、壊れた無線機の代わりを取りに次々と兵士がやってくる。

巡回中セキュリティルームの近くに来た時に立ち寄って無線機の故障を申し出ようとするパターンと、ある程度巡回して定時報告の時間にセキュリティルームに直接いくパターンに分かれているためか、やってくるタイミングもバラバラ。

二人ずつ来る分には容易く制圧できてしまうため、まさに入れ食い状態であった。

 

(しかしまあ、そろそろ限界か。)

 

大分人数を削ったので、そろそろ違和感の誤魔化しが利かなくなってくるだろう。

流石にこのまま全員のこのこやってくるなんてことはあるまい。

あまり時間をかけると目を覚ます奴も出てきそうだし。

セキュリティルームで館内図や周辺地図も手に入り、現在地もわかったので脱出も可能。

ここはロキシア王国の大使館だったらしい。

それを見た時に、ああそういえばと白が思い出したのは原作に出てきた前回の依頼の話だった。

記憶がアニメ版と混同していたようですっかり忘れていたが、マイクロフィルム奪取の依頼は原作とアニメ版で展開が異なる。

アニメ版だとマイクロフィルムを盗み出して終わりなのだが、原作の漫画版だとマイクロフィルムを盗んだ後に(リョウ)と冴子は捕まってしまうのだ。

これは冴子がわざと(リョウ)を巻き込んで捕まることで、一気に敵の首魁の元にいくためで、マイクロフィルム奪取からそのまま敵拠点での大立ち回りまで話が展開する。

その時の敵の首魁というのが、この大使館に居るロキシア王国第一王子シュロモ・ダヤン……の双子の弟で第二王子のエラン・ダヤン。

兄と瓜二つのエランは自分をシュロモと偽って軍の一部を引き連れこの日本に来ていた。

自らの手勢に盗み出させた軍事機密をスパイ天国である日本で受け取るためだ。

今回の場合、本来は原作の流れだったはずが白がセキュリティを解除してしまったため、アニメルートに乗ってしまったのだろう。

その後マイクロフィルムを取り返しに来たエランの手先の襲撃を受けて現在に至る。

不運ともいえるが、そもそも白が原作の流れを覚えていれば回避できたかもしれない話でもあった。

そもそもの話、この依頼に教授が関わるのは原作でのみだ。

アニメ版に教授は登場しないのだから、その時点で違和感を覚えるべきだった。

 

(ま、後悔先に立たず、覆水盆に返らず、零したミルクがうんぬんかんぬんっていうしな。気にしても仕方ない。)

 

持ち前の明るさ……というか能天気さで思考を振り切ると、本題の今後の行動指針について考える白。

脱出してもいいが……やられっぱなしも性に合わない。

ここまで来たら、エランをふんじばって堂々の凱旋としゃれこみたいものだ。

館内図を見たおかげでどこにエランが居るかは大体の目星もついていた。

 

(ふふふ、今回は(リョウ)に出番は渡さん!)

 

若干テンションが高いまま、白は再び段ボールを被ると廊下を駆け出した。

 

 

 

 

ロキシア第二王子エランは、広い自室で苛立ちを隠せずにいた。

椅子に腰かけたまま、指でひじ掛けをトントンと叩き苛立ちを露わにしている。

普段はそば仕えの兵士が最低一人はついているのだが、今はエラン一人だ。

というのも、その兵士が持っていた無線機が急に雑音を発するようになってしまい、予備の無線機を取りに退出したためだ。

が、その兵士がいつまでたっても帰ってこない。

一体いつまでかかっているのかとその事にイラついていることもあるが、元々朝から機嫌は悪かった。

昨夜シティー某とかいうスイーパーからマイクロフィルムを奪還したという連絡があったものの、その後の輸送が遅れているのだ。

この大使館に攫ってきた、奴の関係者と思われる子供を餌に倉庫地帯に釣りだし、その場で始末してマイクロフィルムを回収したとのことだったが、その戦闘でヘリを破壊されてしまったとかで、こちらから迎えを送ったはずだった。

そいつらが未だに帰ってこないし連絡もついていない。

 

「どいつもこいつも、一体何だというのだ。」

 

簡単なおつかいすらできないのかと、苛立ちは募るばかりだ。

と、その時部屋の扉がゆっくりと開かれた。

やっと戻ってきたのかと、苛立ち混じりに視線を向けるとそこに居たのは白い少女だった。

無表情のまま赤い瞳でこちらを見つめる少女は、美しい人形のような雰囲気を纏っている。

その雰囲気に飲まれて思わず見とれてしまったエランだが、すぐに我に返ると誰何の声を上げた。

 

「貴様、何者だ。」

 

「エラン・ダヤン。お前は手を出す相手を間違えた。」

 

「なに?」

 

言葉少なに返した少女、白はだらりと体を脱力させ、ゆらりゆらりと体を左右に振る独特な歩法でエランに一歩、また一歩と距離を詰め始めた。

それを見たエランは拳銃を抜いた。

元々少女を人質に取り、自分の国の軍を騙して動かすような男だ。

白に対して引き金を引くことになんら躊躇はなかった。

即座に発砲。

しかし、まっすぐに白に向かって飛翔した弾丸は白の体を()()()()()

 

「なんだと!?」

 

ゆらり、ゆらりと白が体を揺らしているため、白の後方の扉に当たった弾丸が扉を穿っているのがよくわかる。

驚愕に目を見開いたエランは再び発砲。

今度は二発。

これも命中するかに見えたが、再び白を弾丸がすり抜ける。

もはや驚愕を通り越して戦慄しているエランに対し、白は眉一つ動かさず体を揺らしながら距離をゆっくりと詰めていく。

人形のような雰囲気も相まって不気味ささえ感じさせるその様に、エランは白が距離を詰めるたびに一歩一歩後退していった。

どんどんと下がっていき、窓に背中が当たったことでエランはハッと我に返る。

白も、エランがこれ以上下がれないとみて体は揺らしたまま前に進む足を止めた。

 

「投降して。」

 

「くっ……ぐっ……!」

 

ちなみに本当に白の体を弾丸がすり抜けているわけではもちろんない。

白は相手の銃口の向きから弾道を予測し、その驚異的な動体視力で相手の指が引き金を引く瞬間に僅かに体を逸らして弾丸を回避しているのだ。

これを残像が残るほど高速かつ最小限の動きで行い、更には体を揺らし続けることで動きに緩急をつけて察知され辛くしている。

この技術は白がホワイトデビル時代に銃を持った相手と正面から戦うために編み出した技術のひとつだ。

本来なら初弾を避けた時点で相手の額に投げナイフを突き立てるための動きであった。

初見ではまるで弾丸がすり抜けたように見えてしまい、相手に大きな動揺を誘うことができるため相手の意識に空白を作ることができるのだ。

しかしこの技術にはいくつか問題がある。

まず単発の拳銃などにしか通用しない事。

流石に連射されてしまえば全てを回避することは不可能だ。

次にある程度以上距離を詰めてしまえば使えないこと。

距離が近すぎれば紙一重での回避ができなくなる。

いうなれば、驚異的身体能力を持って行われるこけおどし。

そのため、エランに投降を促しつつも、これ以上白から距離を詰めることができなくなってしまっていた。

今の距離感がギリギリ回避できるボーダーライン。

ナイフの一本でもあればここからエランの手足を狙って投げつけてやってもよいのだが。

 

(完全にテンションで来ちゃったから丸腰なんだよなぁ、これが。)

 

勢いだけで突っ走った結果、今の白は完全に丸腰。

適当な投擲物さえ持っていないため、手詰まりであった。

今はエランが動揺しているためこちらに銃口を向けて止まってくれているが、我武者羅に連射されると流石に回避しきれないし。

一見エランを追い詰めているように見えてそうでもない膠着状態になってしまっていた。

どうしたものかと白が考えていると、事態は急変を迎える。

エランの部屋の外、窓の向こうにぬっと武装ヘリが姿を現したのだ。

それは白を襲った際に使われたヘリと同型、ないしは同じヘリに見えた。

突然の登場にぎょっとした白だが、ヘリの横扉から上半身を乗り出すようにしている男の姿と、ガラス越しに見えるヘリパイロットの姿を見て肩の力を抜いた。

身を乗り出しているのは(リョウ)、パイロットは冴子である。

(リョウ)は不敵な笑みを浮かべると、白に地面を指さすハンドサインを飛ばした。

その意味を即座に理解した白は飛び込むように床に伏せる。

直後、(リョウ)の合図でヘリの機銃が火を噴いた。

エランの部屋の窓ガラスは防弾になっていたようで一瞬持ちこたえたが、機銃の火力の前にあえなく砕け散る。

それを見るや、すぐに(リョウ)がヘリから窓に飛び込んだ。

前転して勢いを殺し、床に伏せる白のすぐ横に着地する。

 

「無事か、白?」

 

「ん。今のが一番危なかったまである。」

 

白の減らず口に大丈夫そうだと判断した(リョウ)は笑みを消すと、真剣な表情でエランを見やった。

エランも咄嗟に床に伏せたようで、怪我はしていない。

忌々しそうな表情で(リョウ)と白を睨みつけている。

 

「き、貴様ら何者だ!」

 

「おいおい、俺が誰か知らずに喧嘩を売ったのか?」

 

エランの言葉に軽く返す(リョウ)だが、その表情は一切動いていない。

 

「俺の名前は冴羽 (リョウ)。人呼んで、シティーハンターだ。よく覚えておくんだな。」

 

「なに、貴様が!馬鹿な、昨晩始末したと報告があったはずだ!」

 

「あれは俺の声帯模写だ。どこに白が居るかわからなかったからな。そちらから迎えに来てもらった。」

 

淡々と話す(リョウ)は無手のまま、エランを鋭く睨みつける。

 

「お前はもう終わりだ、エラン・ダヤン。」

 

「くっ……!ふざけるな、ここで貴様とそこの気色悪いガキを殺せば良いだけの事だ!」

 

銃を構えているエランに対して、(リョウ)は無手。

容易く殺せると踏んだのだろう。

(リョウ)に銃口を向けるエラン。

が、次の瞬間にはエランの手の中で銃は砕け散っていた。

(リョウ)が神速で抜いた愛銃により破壊されたのだ。

(リョウ)の放った弾丸は一切のブレなくエランの銃口に吸い込まれ、エランの手の中で爆発した。

それにより右手を破壊されたエランが悲鳴をあげて蹲る。

 

「これが本当のワンホールショットってな。」

 

無残な有り様になった右手を押さえつつも未だに鋭い視線を(リョウ)に向けるエラン。

(リョウ)はその額に銃口を突きつけた。

途端にエランは狼狽し始める。

 

「ば、馬鹿な。殺すのか私を?私を殺せば国際問題になるぞ。」

 

「知った事か。お前はしてはならない事をした。プロに喧嘩を売るっていうのがどういうことか、しっかりとその身に刻むんだな。」

 

一流のみが発することができる凄みが(リョウ)から発せられ、エランは顔を青ざめたまま身じろぎすらできない有り様。

見えない緊張の糸が張り詰め、いよいよ引き金が引かれるか、という時にふっと空気が弛緩し(リョウ)が銃口を下す。

 

「だが、ここで殺しては殺さないようにしていた白の心意気に水を差すことになる。白に感謝するんだな。」

 

その言葉と、緊張が切れたことでエランは床に崩れ落ちた。

それと同時に窓の外から無数のサイレンが聞こえ始める。

どうやら、この大使館にパトカーがなだれ込んできたようだった。

その音が聞こえているのかいないのか、エランは完全に抜け殻のようになっていた。

 

「冴子のお友達が来たようだな。あとは任せていいだろう。」

 

(リョウ)はそういうと、白の前に屈みこんだ。

 

「怪我は……額の包帯くらいか。大丈夫か?」

 

「ん。軽く切っただけ。もう傷もふさがってると思う。」

 

そう答えた白の様子をじっと見て、(リョウ)は一つ頷く。

 

「何か、吹っ切れたようだな。」

 

その言葉に、白も頷きを一つ返した。

 

「もう、殺さなくても大丈夫なんだって気づいた。」

 

その言葉に(リョウ)は笑みで答えると、ガシガシと白の頭を撫でてから立ち上がる。

 

「さて、帰るぞ。香が首を長くして待ってるからな。」

 

 

 

 

 

冴子の運転する車がゆっくりとマンションに入ってくる。

(リョウ)のマンションは未だに修理が終わっておらず、ブルーシートが張られている。

車が止まり(リョウ)と白が後部座席から降りると同時に、マンションから香が飛び出してきた。

白はもう額の包帯も外れ、いつものコート姿だ。

 

「白ちゃん!」

 

そのままの勢いで白に飛びつくように抱き着いた。

 

「白ちゃん大丈夫!?怪我してない?」

 

「ん。大丈夫。私は元気。」

 

香は一回白を放してからあらゆるところをさすり怪我がないか確認し、もう一度強く白を抱きしめた。

香は安心したやら嬉しいやらで、泣きながらまくし立てる。

 

「ああ、よかった。ごめんね白ちゃん。私が一人にしたから、怖かったよね!」

 

「香のせいじゃない。私は大丈夫。」

 

無表情の白と、ぼろぼろに泣いてる香という構図でどちらがあやしているのかわからない有り様だ。

 

「無事で本当によかったわ。とっても心配したんだから。」

 

「ん。ありがとう香。もう大丈夫だから。」

 

白のその言葉にある程度落ち着いたのか白を抱きしめていた腕を緩めたが、白の顔を見た香は驚きに目を見開き、再び白を強く抱きしめた。

 

「大丈夫って、白ちゃん泣いてるじゃない!」

 

「え?ふぇっ?」

 

言われてから自分が泣いていることに気が付いた白。

自覚してしまったからか、流れる涙は止まらなかった。

なんで泣いているのか自分でもわからないまま、香に抱きしめられて涙を零し続ける。

 

「ごめんねごめんね、怖かったよね。もう大丈夫だからね。」

 

「いや、ちがっ、なんで、止まらない……。あれ、えぇ?」

 

白の内心としては困惑が大きい。

本当になんで自分が泣いているのか全くわからなかったのだ。

しかし、(リョウ)にはその気持ちがわかった。

声をかけるのも無粋だろうと、二人を見つめながら内心で呟く。

 

(嬉しいもんだろ?帰りをこれだけ喜んでくれる人がいるっていうのはな。)




冴子の謝罪描写やら、(リョウ)と冴子が裏で何してたとか、そのあたりは次回持ち越しになりました。

次回、「カジノは少女お断り?最大の敵は年齢制限の巻!」
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