アルビノ美少女にTS転生したと思ったらお薬漬け改造人間状態にされた上にシティーハンターの世界なんですけど? 作:らびっとウッス
大変助かり、励みになっております。
予告と違ってしまって申し訳ないですが、前回書ききれなかったパートを含めた日常回を一度挟みます。
白ちゃんの服装がバブル風ではないのは許し亭許して。
最近仕事とプライベートが忙しくて週2更新が難しいかもしれない。
暫くは2週間かけて前後編投稿するスタイルになるかもしれません。
予約投稿の時間間違えて早めの投稿になってました。
早い分には……まま、ええか!
「この度は誠に申し訳ありませんでした。」
「いや……その……。」
ロキシア王国とのごたごたが片付き、
復元されたダイニングのテーブルについている
冴子は普段の余裕のある態度とは違い、真剣な様子で深く頭を下げて謝罪をしていた。
命の危険が大きかった白に向けて頭を下げており、白は一見いつもの無表情でそれを聞いているが、内心では結構困っていた。
というのも、白からすると自分が原作の展開をすっかり忘れて警戒していなかったこととか、どうにかする能力はあったはずなのにミスで誘拐されてしまったりだとかで、冴子のせいでこうなったという気がしていなかった。
どちらかといえば自分のミスが大きく感じられていたのだ。
普段飄々としている冴子にこのような謝罪をさせてしまっていることに罪悪感を覚えているほどである。
さらにいうなら、白としてはここで被害者としての立場で冴子に恨み言を言ってしまえば、今後
これが襲われたのが白ではなく
どちらかといえばタイミング的に香が巻き込まれなくて良かったとさえ思っている。
白の技術は単独での行動に特化しており、護衛能力はそこまで高くない。
やれて先制攻撃による敵の撃滅という、攻撃的な護衛になる。
あの場に香が居たら守りきることは難しかっただろう。
そんな白の内心を察したのか、
元から憤懣やるかたないという様子だったのは香だけだ。
その香も、冴子がここまでまっすぐに謝罪をしてくるとは思っていなかったのか面食らっているようだった。
冴子が来る前は白が襲撃されたことに文句を言いまくってやると息巻いていた香だが、今は振り上げた拳をどこに降ろしたらいいか悩んでいる風である。
少し言いよどんだ後、香がぶすっとした表情で言う。
「……今後、白ちゃんをあんなふうに巻き込むのはやめてください。」
「ええ。約束するわ。重ね重ね、申し訳なかったわね。」
その言葉を受けて一応怒りを飲み込んだのか、腕を組んで大きく溜め息をついた。
そんな香の様子を横目で確認してから白が口を開いた。
「私は気にしてない。」
「そうはいかないわ。こちらの落ち度で民間人をあんなに危険な目に遭わせたんだもの。」
「そうよ!ボロボロのマンションを見て心臓止まるかと思ったんだから!」
白の言葉を即座に否定する冴子。
さらに再び着火してしまったのか今度は白に詰め寄る香。
そういわれましても、とさらに困り顔になる白。
表情筋は誤差レベルでしか動いていないが。
そんな白を見かねてか、
「それで?結局エランはどうなったわけ?」
「彼はロキシアの法で裁かれることになるわ。今は幽閉されているけど、近いうちに刑が執行されるでしょうね。あれだけの事をしたんですもの。ただでは済まないわ。」
エランは双子であることを利用して、第一王子であるシュロモに成り代わり軍を動かしていた。
元々、第一王子のシュロモは冴子と協力して反体制派の首魁を炙り出し、敵が動いたらすぐにシュロモ率いるロキシア軍で制圧するつもりだった。
これの準備は反体制派に気取られないように秘密裡に行われ、軍に明確な目的を告げないままいつでも動ける状態で待機させてあった。
そこをエランに突かれた形になる。
今迄自分が首魁であるということを露見させずに慎重に動いていたエランがここまで大胆に動いたことで、シュロモと冴子の目論見が裏目に出てしまった。
それだけ重要な情報があのマイクロフィルムには入っていたのだろう。
なんにせよ、白としては初めからこちらに害があることを前提に組まれた策略だったならともかく、想定外の事が起きて策略が裏目に出た結果であるということも含めてそこまで怒ってないのだ。
「今回は私の不手際で大変な目に遭わせてしまったわ。何か力になれることがあれば、なんでも言ってちょうだいね。」
ん?今なんでもって……
反射的に白が食いつきそうになったが、先に反応したのは香だった。
「じゃあ、買い物に付き合ってもらおうかな。」
「買い物?構わないけど……?」
余りにも軽い条件に首を傾げる冴子。
香は隣の椅子に座っていた白の脇の下に手を通してひょいと持ち上げると、自分の膝の上に座らせた。
目的が分からないのは白も同じで、成すがままにされている。
「白ちゃんっていつも同じ服着てるでしょ。せっかく可愛いんだから色々買ってあげようと思って。」
「……!?」
その言葉に悪寒が走った白は咄嗟に逃げ出そうとするも、後ろからがっちり香に抱かれており逃げられない。
腕の中でじたばたもがいている白を適当に諫める香の様子を見ながら、冴子が笑みを浮かべる。
「そういうことなら喜んで。支払いも任せてくれていいわよ。」
「えっ、いや、そこまでは……。」
「いいのよ。これはお詫びなんだから。それに、こう見えて結構稼いでるのよ私。」
そういってウィンクする冴子。
香としてもありがたい話ではあるのだろう。
少し悩んだが、頷くことにしたようだ。
「そう……?じゃあ、今回は甘えちゃおうかな。
「げぇ!俺もぉ?いーじゃねえか女だけで行ってくれば。」
買い物の話になったあたりから興味無さそうにしていた
「だーめ!せっかくだし丸一日使って白ちゃんを目いっぱい着飾るわよ!」
「色々似合いそうよね。楽しみだわ。」
盛り上がる香と冴子の様子を見て、もはや脱出不可能と察した白は抵抗を止めて死んだ魚のような目をしている。
そして
「おい白。生きてるか?」
「……ぎりぎり。」
あれから新宿の街をあっちこっち歩き回った4人。
次々と着せ替え人形にされた白は、体力的には大丈夫だが精神的にノックアウトされていた。
今は両手に買い物袋をぶら下げた
なんならロキシア大使館の時より疲れていた。
今は次の店に向かう道中で、前を歩く香と冴子は今迄だとアレが良かったとか、こういうのはどうかとか、ソレにあうアレがなんだ、という話をしているが、白からするとチンプンカンプンだ。
そもそもズボンの呼び方で何種類あるというのだ。
それが全部違うものだというのだから、白にはついていけない。
あげくスカートやらワンピースやらも種類があって、そこに今の流行がこうで、これから先に来るであろうファッションがこれでみたいな話まで乗ってくるといよいよお手上げである。
地頭は悪くないと思っていた白だが、今日聞いた単語だけでパンクしそうな始末だった。
ちらりと前をいく二人を見やった白は、仲良さげに話す二人を見て
「仲良くはなったみたい。」
とこぼす。
すっかり香と冴子の間のわだかまりのようなものはなくなったようだ。
元々カラッとした性格の香のことだ。
謝罪を受けて殆ど許してはいたのだろう。
今回買い物に一緒に行くことで完全に水に流すことに成功はしたようである。
「それに付き合わされた俺はたまったもんじゃないけどな。今日は遊びに行く予定だったのによ。」
香と冴子の仲が良好になるのは、
しかし、その言葉は白には聞き捨てならなかった。
「私も付き合わされてる側。」
「ん?お前さんも一応女の子なんだし、こういうの楽しくはないのか?」
そういわれた白が
いつもの無表情に拍車がかかり死んだ目で
「楽しそうに見える……?」
「お、おう。悪かった。」
白を
「ちょっと
その言葉に香のほうを見やった白と
結局買い物が終わり冴子と別れた
両腕にどっさりと買い物袋を持ち、途中から白を背負っていた
一方白はというと未だファッションショーが香の部屋で続いていた。
買い込んだ服を色んな組み合わせであれでもないこうでもないと、色々と着せられては脱ぎ、着せられては脱ぎ。
色々と試されたあと、しっくりくる組み合わせが見つかったようで香は一つ頷いた。
右手の人差し指を左手の親指に、右手の親指を左手の人差し指に合わせて手カメラを作ると、それごしに白を眺めながら満足そうにしている。
「色々着てもらったけど、白ちゃんはこれくらいシンプルなのが一番似合うかもね。」
「いいと思う。」
今の恰好はフード付きの白いロングパーカーを着て、下はパーカーで隠れて見えていないものの黒いショートパンツ。
足は露出を抑えるために黒いタイツ。
フードには猫耳がついている。
ちなみに白の受け答えは途中から「いいと思う」しか言わないBOTになっているのであまり意味はない。
何はともあれ、ファッションショーは終わりを迎えたようで香が服を片付けだした。
それを見て、白もようやく気が抜けたのかふう、と息をついてベッドに腰かける。
改めて今の自分の恰好を見てみるが、まあ動きやすい服装なので悪くはないか、という程度の感想である。
フードを目深く被れば日差し避けにもなりそうだし。
試しに被ってみたフードを指先でいじりながら考えていると、ふと香が手を止めてこちらを見つめていることに気づいた。
香は少し言いよどむと口を開く。
「ねえ、白ちゃん。私達といて楽しい?」
「……?うん。」
質問の意図が分からずに首を傾げる白。
とりあえずで返した肯定に、香は表情を曇らせる。
「今回、本当に危ない目にあったじゃない?これからも、私達と居ればそういう事はいっぱいあると思うの。ならいっそ、私達から離れたほうが」
「嫌だ。」
食い気味に否定の言葉が出たことに驚く香。
しかし、驚いていたのは白も同じだった。
思わず否定の言葉が出たが、なぜ否定したのか自分でもわからなかったからだ。
確かに、
でも、自分のこの感情は保身だとかそういう部分とは違うところから生まれている気がした。
うまく言葉にできないが、ぽつりぽつりと言葉を漏らす。
「香には優しくしてもらった。
白はベッドから降りると、香の手を取った。
香は俯いたままだが、そのまま言葉を続ける。
「私はこの世界では、暗い生き方しか知らない。でも、ここでなら。生き方が知れる……気がする。」
「そもそも、この世界から離れるって選択肢だってあるのよ?もっと普通の世界で、普通の人として生きる事だって……。」
「そんなことできない。私はこの世界でしか生きられない。でも、香や
「白ちゃん……。」
香は白が、この先も知らない世界での生き方を探してもがいているようにみえた。
確かに元の暗殺者としての姿や、スイーパーとしての仕事を捨てて普通の一般人として生きていこうとしても、必ずいつか過去が追い付いてくるだろう。
白とは、ホワイトデビルとは、それほどの深みに居た存在だ。
なれば、いつか破綻する普通の生活よりもスイーパーとして自分達と居たいというのは当然の願いのようにも感じられた。
何より白自身がこの裏世界で生きていく事を望んでいる。
そう香には感じられた。
そのうえで、自分達と共に居たいと、そう言ってくれているのだ。
ちなみに白のいうこの世界とは、そのままこのシティーハンターの世界を指している。
自分は見た目こんなだし、普通に就職とか無理じゃね?と思うし、ここに居ればスイーパーとしての稼ぎ方が知れそう。
それに悪いことばかりじゃなくて、いろんな知り合いもできたし、マジラッキーって感じ。
それくらいの意味合いの言葉だ。
と、そこまでしゃべってから白はあることに気づいた。
香と
白が居るからといって、その報酬が増えたりだとか、依頼の絶対数が増えたりだとかは起こらないだろう。
それはつまり、白一人分の支出が増えただけになっているということだ。
しかも、原作では香と
さらには、今回の依頼も白がおらずに原作通りに進んでいればマンションが吹っ飛ぶこともなかったわけで。
もしかして自分はとんでもない迷惑を二人にかけているのでは?
そんな疑惑が白の胸中をよぎった。
ちょっと不安になってきたので、いい機会だと思うしそのまま香に聞いてみることにした白。
「それとも、香は私が居るとその……迷惑?」
「そんなわけっ……!」
白の言葉に反射的に顔を上げた香が白を見ると、そこにはいつもの無表情。
だが、言葉を交わすにつれて白の表情の変化が分かってきた香からすると、それは困り顔のようにも、泣きそうな顔のようにも見えた。
白の事を想って発した言葉が、白にこんな顔をさせてしまったのかと香は愕然とする。
その時香の胸中に、もし白と別れてしまったら二度と会うことが叶わないのだ、という確信めいた思いが込みあがった。
事実、
後ろ盾なくユニオン・テオーペから逃げるとはそういうことだ。
香は自分の直感の囁くまま、放してなるものかと白を抱き寄せた。
「迷惑なんてないわ。白ちゃんが居たいなら、いつまでも居ていいのよ。」
「……ありがとう、香。」
「ううん。こっちこそ、ありがとうね。」
「ん……。」
そんな二人の様子を、香の部屋の前の壁に背を預けて
昼の買い物の時、香が妙に明るく振舞っていた事に気が付いていた
そう判断して、何も言わずにその場を去った。
明けて翌日。
白は今度は
時刻は昼を少し過ぎたあたりで、未だに日は高い。
白の出で立ちは早速パーカー姿で、フードを深くかぶることで日除けにしている。
目的地を告げられず連れてこられた白が、
「どこいくの?」
「なに、お前さんにこの街の案内をしたことがなかったなと思ってな。」
そういう
白は、もしかして情報屋とか、そういうスイーパーの仕事に関わるところに白を紹介に行くのだろうかと考えた。
……考えていたのだが。
店内に入ると、すぐに
「
「いいのいいの。
「まーたそんなこと言って。香さんに怒られても……あら?」
彼女はそこで初めて白に気づいたようで、驚いた顔で白を見ている。
「あらま、こんなに小さい子連れてきて。どっから攫ってきたのよ。」
「そんなわけないだろ?まあ相手してやってよ。」
「相手してって言われても……。」
小さな子の相手と言われても何をすればよいのか。
困り顔で白を見やるが、白がフードを外すと彼女は歓声をあげた。
「きゃー!かわいい!ねね、お名前は?」
白がチラリと
関係を聞かれても答えにくいし。
「白。」
とだけ簡潔に答えた。
「白ちゃんね!じゃあお姉さんとお話しよっか!」
そういって白を抱き上げると、
「みんなー!見てみてー!」
と手の空いているキャストのところに連れて行ってしまう。
その背を見送った
「ちょっと俺の相手もしてくれって!」
「白ちゃんすごーい!」
「ふふん。これくらい朝飯前。」
それからしばらく。
白はというと、店に来ていた他の客やその店の店員も含めた人だかりの中央で芸を披露していた。
手を使わずにY字バランスをし、足の間を通すように同時に5個の空酒瓶をジャグリングするという絶技に拍手喝采でおひねりが投げ込まれている。
最初は雑談の中で、白は手先が器用だという話になり、その場で空いた酒瓶のジャグリングを始めたのがきっかけだったのだが、どんどんと数が増え、体勢が変わりと難易度が上がっていきこうなった。
難易度の上昇に比例して美女に囲まれて褒められ続けた白の調子もどんどんと上がっていく。
そこにすっかり出来上がった
「
「よっ!待ってました!」
鉄板ネタなのか、さらに盛り上がりを見せる観客たち。
白も負けじとY字バランスの状態から腰をひねって勢いをつけ、くるくる回りつつジャグリングを続けるというもはや人間か怪しい領域に突入した。
その後も一切盛り上がりは欠けることなく、むしろ日が落ちるにつれて客が増え、噂を聞きつけた人がやってきたりで、普段の店よりかなりの盛り上がりを見せた。
そして、そのまま朝まで盛り上がり続けた。
そう、
すっかり空が白んでいる中、
足音を殺し、静かに入っていく。
先頭は白だ。
こういった潜入には白のほうが向いている。
白が曲がり角の先を窺い、問題なかったのかハンドサインで
その後もアイコンタクトとハンドサインだけでやり取りしつつマンションの中を進んでいく二人。
無事にダイニングまでたどり着き、二人は顔を見合わせてサムズアップする。
と、そんな二人に背後から棘のある声がかけられた。
「お・か・え・り!」
びくりと同時に肩を跳ねさせた
「随分とお早い時間のお帰りじゃないの?二人とも。」
「落ちつけ香!これには深いわけがあるんだ!」
手を前に突き出し言い訳を開始する
「
「お、お前なんてこと言うんだ!?お前だってかなり楽しんでただろうが!」
「ふーん? 楽しいようなところに行ってたわけね?」
「い、いや違う!待て香、話を……」
「問答無用!」
ズン、と音が響き、
床にめり込んでいる100tハンマーの下でぴくぴくと動いている姿が、次の瞬間の自分の姿かと震える白。
恐る恐る香を見ると、香は満面の笑みを浮かべていた。
……怖い。
「か、香、大好き。」
「……私も大好きよ、白ちゃん。」
そういって香は優しく白を抱きしめ、そのまま抱き上げた。
ほっと息をついた白だが、その耳元で香が囁く。
「私の部屋でお尻100叩きね。」
「ひえっ……!」
涙目で
「あわ、あわわわわ……」
「お説教はそのあとね。」
その後どうなったのか、この場であえて語ることはない。
強いて言うならばその日一日白は椅子に座ろうとしなかった。
次回投稿は来週の月曜日になります。
ちょっと更新頻度が暫く落ち込むかと思いますが、書くこと自体は趣味で楽しんでやっているのでお付き合いください……。