アルビノ美少女にTS転生したと思ったらお薬漬け改造人間状態にされた上にシティーハンターの世界なんですけど?   作:らびっとウッス

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感想、評価、誤字報告ありがとうございます。
大変励みになり、助かっております。

前半は獠視点
後半はホワイトちゃん視点でお送りします。

つまり前半がシリアス、後半はシリアルです。

日刊ランキングに入っている……だと……!?
ありがとうございます。
作者の性癖を煮詰めたキャラなので受け入れられにくい主人公かなぁと思ってたんですけど、皆さんシティーハンター好きなんすねぇ。
ところで原作:CITY HUNTER で検索してみてくださいよ。
私が書いてるやつを含めて、
1件!!なん!!!です!!!!ね!!!!!
表記ブレで原作:シティーハンターの作品もありますが、そっちも
1件!!なん!!!です!!!!よ!!!!!!
需要はあるはず!供給しましょう!!よ!!!


第3話「泣いた悪魔の巻!」

適当な理由をつけて香を置いて家を出てきた獠は、

愛車である赤のクーパーミニを適当に都心から離れるように走らせつつ思考にふけっていた。

ホワイトデビル。

数年前から名が一気に売れた凄腕の暗殺者だ。

人種・性別・特徴一切が不明にもかかわらず、

その名前と驚異的な戦闘能力だけが凄まじい勢いで広まった。

知られているのはその暗殺方法だけ。

奴は銃を使った暗殺をしない。

直接首を切りつけられた者、心臓を一突きにされた者、毒針をいつの間にか打ち込まれた者、殺し方は様々だが銃を使ったという話だけは聞いたことがない。

なにか事情があるのか、拘りかはわからないが。

名の売れる勢いや活動基盤が不透明すぎる部分から、

どこか大きな組織の子飼いであろうと予測は立てていたものの、まさかユニオン・テオーペの傘下だったとは。

 

(藪をつついて蛇が出たな。面倒なことになりそうだ。)

 

獠の直接の知り合いは誰も戦っていないものの、裏世界では名の知れたスイーパーの数名はホワイトデビルに殺されたとみられているし、

数人のスイーパーが護衛にあたっていた要人を誰にも気づかれず暗殺してみせた実績もある生粋の暗殺者。

そんなのに狙われているとなるとゾッとする話だが、今のところ自分の周囲にそれらしい姿はない。

マンションを出るときに家の周囲も観察したが、特に気になるところはなかった。

ホワイトデビルの特徴からして狙撃の警戒は必要ないだろうから、

侵入の下準備なりこちらを観察している本人か子飼いの配下なりがマンション付近にいるかと思ったがその様子もない。

わざわざ場所と時間を指定してきている意図も読めない。

愛車のハンドルに置いた右手の人差し指で、トントンとリズムを取りながらホワイトデビルの狙いを考えてみるも、

わざわざ自分を呼び出して戦う理由はやはり判然としなかった。

 

(依頼文にユニオン・テオーペの名前ではなく、ホワイトデビルの名前を出しているということは、

恐らく用があるのは俺だけで香は関係ないはずだ。最強という自負か、それとも……)

 

香にも伝わるユニオン・テオーペではなく、裏世界の情報を持っていないと知りえないホワイトデビルの名前で依頼を出してきたということは、

香と獠ではなく獠のみを指名しているはず。

そう考えて今もあえて一人で都心から離れることで何か動きがないか探っているのだが、全く兆しが見えない。

恐らくだが監視すらついていないと思われた。

 

(わからん。なにか奴自体の事情が絡んでいるとしか思えん。誘いに乗ってみるしかないか。)

 

この誘いをふいにしてしまうと、次はどんな手で来るか読むことができない。

獠をもってしてそう思ってしまうほど、ホワイトデビルの正体は謎に包まれているし、それゆえ行動原理も不明だった。

それに、なにより。

 

(これは俺に対する挑戦でもある。)

 

挑まれた勝負から逃げる訳にはいかない。

 

 

 

 

 

4号埋立地深夜0時。

人気の果てたそこに、暗闇の中に一人立つ少女の姿があった。

ホワイトデビルである。

出で立ちは変わらず全身真っ白だが、夜のためかサングラスはかけていない。

茫洋とした瞳は焦点が定まっておらず、虚空を見つめている。

そんな静かな空間に車のエンジン音が響き、ヘッドライトが彼女を後ろから照らした。

ゆっくりと振り向くホワイトデビル。

ちょうど車から降りたのか、赤いクーパーミニの運転席の扉に体を預けるようにして、ジャケット姿の男が一人立っていた。

冴羽 獠。

シティーハンターその人である。

落ち着いた佇まいだが、その眼だけは真剣だ。

 

「まさか、噂に聞くホワイトデビルの正体がこんなに小さなお嬢ちゃんなんてな。」

 

「シティーハンター。ここで死ね。」

 

言葉少なく返したホワイトデビルと獠の間の空気が加速度的に重くなっていく。

お互いに無手のまま鋭く睨みあう。

まるで見えない風船に空気を詰め込んでいるかのように張り詰めた気配が、たまたま近くにいたカラスが飛び立ったことで弾けた。

動き出しは同時。

無手のままホワイトデビルが左腕を振るうと、袖に仕込まれていた投げナイフが3本同時に高速で獠の首、右胸左胸に迫る。

これを素早く抜いたコルト・パイソン357を3連射し見事に迎撃してのける獠。

その間に距離を詰めようとしていたホワイトデビルだが、投げナイフを迎撃した銃弾の一発がそのまま貫通して直撃コースであることを目視。

横っ飛びして小さい体躯を活かし、獠から死角になるように獠の車の助手席側の陰に飛び込む。

そのままもう一度地面を強く蹴り、跳ねながら助手席側の窓から運転席側に居る獠に向かって再び左手で投げナイフを一本投擲。

易々と車の窓ガラスをぶち抜いて投げナイフが再び獠の首へと正確に迫る。

獠は今度は迎撃ではなく回避を選択。

前方に飛び込むように避けることで、車から距離を取り、車を障害物にして近づかれるのを避ける構えを見せた。

ホワイトデビルは跳躍し一度車の上に着地すると、再び跳躍。

獠の頭上から今度は右袖に仕込まれた肉厚のサバイバルナイフを逆手に構え襲い掛かる。

頭上というのは咄嗟に銃で狙いにくい位置だが、逆に言えば空中では身動きが取れない。

獠は驚異的な反射速度で空中のホワイトデビルに狙いを合わせると、即座に発砲。

直後、響いたのは激しい金属同士の衝突音だった。

 

「なに!?」

 

思わず驚愕が口に出てしまう獠。

ホワイトデビルは空中でナイフを振るい、弾丸を逸らしたのだ。

正面から刃を当てるのではく、斜めにした刃を弾丸に添えるように置いてやることで、任意の方向に跳弾させる弾逸らし。

ホワイトデビルの強化された超人的身体能力と訓練によって成された神業である。

見事に逸らされた弾が後方に消えると同時、空中から躍りかかったホワイトデビルの刃が獠の首に迫る。

驚愕から立ち直った獠が身を反らすようにして避けるが、完全には避けきれず浅く胸を袈裟に切られた。

獠は空中からの斬撃を避けるために身を反らしたため、愛銃は外側を向いてしまっており、完全に死に体。

一方ホワイトデビルは着地の勢いそのままに跳ね上がるように獠の首目掛けてナイフを振るう。

獠が慌てて右腕を引き戻し狙いをつけようとするが、ホワイトデビルの小さな体躯は完全に懐に飛び込んでしまった。

 

「その首、貰った!」

 

「くっ!」

 

その時、獠の首目掛けて伸びる斬撃が、ほんの一瞬、ピクリ、と止まったのが獠にはわかった。

 

(……!)

 

その一瞬で、獠の対処が間に合った。

反らした体を引き起こすと同時、ホワイトデビルとの間に膝をねじ込ませ、押し出すように蹴り飛ばす。

体の小さい彼女は抵抗できず後ろに押し出され、尻もちをつくことはなかったものの、大きくたたらを踏んだ。

余りにも大きい隙。

それを見逃すシティーハンターではない。

止めの銃声が響いた。

 

カラン、と彼女の手から落ちたサバイバルナイフが地面で音を立てる。

 

「なに……が?」

 

「……さっき君が俺の弾を逸らした時に当てたのと同じところを撃ち抜いた。

流石に2発は刀身が耐えられなかったようだな。」

 

ホワイトデビルは足元に落ちた刃のなくなったサバイバルナイフに目をやる。

刃は完全に砕けてしまっていた。

 

「さすが、シティーハンター。やっぱり無理……か。」

 

「ホワイトデビル。なぜ不意打ちをせずに俺と正面から戦った。それに、さっきは動きが鈍ったな。」

 

脱力したように構えを解いたホワイトデビルに銃を突きつけたまま、獠が問いかけた。

 

「……本当は、戦うつもりはなかった。

でも、私はユニオンには逆らえない。」

 

「やはり、君は。」

 

ホワイトデビルはコートの左袖を、グイ、とまくり上げ左肘の内側を獠に見せる。

そこは夥しい注射痕で埋め尽くされている。

 

「シティーハンター。私の依頼内容を伝える。

もう、誰も殺したくはない。暗殺者としての私を終わらせてほしい。」

 

ジッと、無機質な瞳でシティーハンターを見つめるホワイトデビル。

獠はその瞳の中にうずまく、深い後悔と諦観を見た気がした。

 

(この子は俺に、殺してくれと言っているのか……。)

 

10歳程度の子供に、あれだけの夥しい注射痕。

いったいこの子は何歳のころからエンジェルダストを打たれているのか。

そして、あの技の冴え。

そこらの2流スイーパーはおろか、1流の中でも上澄みのトップクラスの腕を持っていなければ一瞬で殺されてしまうであろう技術。

正面から戦ってこれだったのだ。

彼女の本分である暗殺者として相対した時、どれほど恐ろしい敵となるか。

それは獠をもってしても心胆寒からしめるほどの腕だった。

いったいどれほどの地獄をこの少女に濃縮したというのか。

それでいて、この子は人殺しへの罪悪感と香を巻き込むまいとする善性を未だに残している。

どれだけ辛かったことだろう。

人並の感情を持ちながら、殺人マシーンとして育て上げられてしまったこの子は。

初めからそんなもの持ち合わせていないほうが、まだ救いがあるとさえ思えた。

それほどに、その少女の有り様は獠には哀れに見えた。

無意識に嚙み締められた獠の奥歯が嫌な音を立てる。

もしこの子をここで殺さずに保護したところで、エンジェルダストをそれだけ長期に投与された場合の副作用が想定すらできない。

獠自身も、過去にエンジェルダストを使われた事がある。

その後、獠は副作用で数日生死の境を彷徨った。

体が出来上がっていた獠ですらその有り様だったのだ。

この少女が耐えられるとはとても思えなかった。

ならばいっそ、この場でひと思いに楽にしてやるほうがこの子のためなのではと、獠には思えた。

 

「シティーハンター……?なぜ、何も言ってくれない……?」

 

獠の逡巡をどう受け取ったのか、ホワイトデビルの瞳に絶望の色が浮かぶ。

 

「お願い、シティーハンター。

見捨てないで……。」

 

「ッ!」

 

その言葉で、獠の腹は決まった。

ホワイトデビルに歩み寄り、額に銃口を突きつける。

 

「あ……」

 

ホワイトデビルから、緊張の糸が切れたような、気の抜けた声が漏れた。

変わらず無表情のまま、ゆっくりと瞳を閉じたホワイトデビルの頬を、一筋の涙が流れ、きらりと光る。

獠は額に突きつけた銃を素早く手の中で回すと、グリップをホワイトデビルの後頭部に強く打ち付けた。

 

「うっ……」

 

これは完全な不意打ちだったのか、一撃で昏倒し、地面に崩れ落ちるホワイトデビルを胸で受け止め支える獠。

 

「俺の前で、泣きながら死なせやしないさ。」

 

獠は優しくホワイトデビルを抱き上げると愛車の後部座席に寝かせ、ゆっくりと車を発進させた。

 

 

 

 

 

(やべええええええ!意識戻るの遅すぎたああああ!!)

 

ホワイトデビルが意識を取り戻した時は、

斜め下から跳ね上がるように獠にナイフで切りかかっているところだった。

咄嗟にナイフを止めようとしたが、もはや間に合わないタイミング。

しかし、さすがはシティーハンターというべきか。

自意識が戻った時の一瞬の停止の隙を的確に突かれてナイフを砕かれてしまった。

 

とにかく、まだ最悪の状況ではない。

一度停戦できた今、どうにか獠の同情を引くしかない。

 

「さすが、シティーハンター。やっぱり無理……か。」

 

「ホワイトデビル。なぜ不意打ちをせずに俺と戦った。それに、さっきは動きが鈍ったな。」

 

「……本当は、戦うつもりはなかった。でも、私はユニオンには逆らえない。」

 

「やはり、君は。」

 

とにかく被害者アピールをして助けてもらうしかない。

自分の体で一番同情が惹けそうなのは、やはり左腕の注射痕だろう。

とくに痛くはないのだが、見た目がまあまあ悪い。

こんなものがこの少女の体にあるというのは中々インパクトがあるはずだ。

ま、中身は会社員男性なので本人はそこまで気にはしていないのだが。

とにかくなんでもいい!同情を引くチャンスだ!

左袖をまくり獠に見せ、同時に口を開く。

 

「シティーハンター。私の依頼内容を伝える。もう、誰も殺したくはない。暗殺者としての私を終わらせてほしい。」

(そして今だ!動け俺の表情筋!!この視線!助けてビーム!!!)

 

残念ながら表情筋はピクリともしておらず、ジッと見つめるだけになってしまっている。

 

(だ、だめだ。石のように固まったこの表情筋はビクともしねぇ!

無理か……!?せめて最初から戦いになっていなければ……!)

 

エンジェルダストの投与時間の調整を忘れずにさえいれば、と後悔と若干の諦めがホワイトデビルの胸中をよぎる。

ジッと獠を見つめ続けると、何やら逡巡しているのだろう。

しかし、徐々に獠の表情が厳しくなっている……ような気がする。

 

(ま、まずい。どうにか方向修正しないと!)

「シティーハンター……?なぜ、何も言ってくれない……?」

 

しかし獠の表情は変わらない。

 

「お願い、シティーハンター。見捨てないで……。」

(オナシャス!助けてください!なんでもしますからあああ!)

 

ホワイトデビルの全身全霊の媚売りもむなしく、距離を詰めた獠が額に銃口を突きつける。

 

「あっ……」(察し

(しぬ!ころさえう!額ぶち抜かれた俺を背に止めて引いてGETWILDだああああ!)

 

死を覚悟したホワイトデビルは目を閉じる。

第2の人生の幕切れに、スッと涙が流れた。

 

(ああ、バブルの日本で美味しい思いして楽しくウハウハ暮らしたいだけの人生だった……!)

 

次の瞬間ゴン、と衝撃を感じてホワイトデビルの意識はブラックアウトした。




戦闘シーン難しすぎる……。
ホワイトちゃんの戦闘スタイルは最初から決めていたし、その戦闘スタイルのためのロングコートなんですが。
決着をどうするかが悩ましかった。
初期案だとホワイトデビルの肩を撃ち抜かせる内容で書いていたんですが、
獠に女性を撃たせたくないなぁという思いがあって難産でした。

ちなみにオーバーサイズの服の内側に武器を仕込むのも私の性癖です。
ホワイトちゃんが銃を使わない理由を獠が訝しむ描写もありますが、
理由は後々設定をちゃんと作中で説明しますが
一番の理由は私の性癖です。

次は翌日18:00に予約投稿されます。

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