アルビノ美少女にTS転生したと思ったらお薬漬け改造人間状態にされた上にシティーハンターの世界なんですけど?   作:らびっとウッス

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改行が見にくいというご意見を頂いていたんで、改行頻度変えてみています。
日本語って難しい……

アンケートありがとうございました。
獠が多数なのでこのままいきます。
試してみたところ、獠にルビでリョウと振ってあげれば最低限ルビだけは出たので、申し訳ないですが環境の問題で字が出ない方はこれで耐えていただきたく……。

長い……長くない?
一話あたりがこの長さだと毎日更新は難しい……。
ということで再びアンケートを行います。
今度は一本当たりの長さと頻度に関するものですね。
アンケート結果の反映は6話以降となりますが、気が向いた方だけで結構です。
ご協力をお願いします。


第5話「ロリコンスレイヤー白の巻!(前編)」

「……て、……きて、白ちゃん。」

 

「ん、むう。」

 

優しく体を揺らされて起こされた白。

目を開くと、体を揺らしていたのは香だった。

 

「朝ごはんできてるわよ。

そろそろ起きて。」

 

「うん……起きる。」

 

もぞもぞとベッドの中で体勢を変え、上半身だけ起こしてベッドの上で大きく伸びをする。

 

「じゃあ、ダイニングで待ってるから。

着替えてからおいでね。」

 

「……うん。」

 

香が出て行って静かになった部屋で、ふう、と一度息をつく白。

ベッドから降りてパジャマから着替えつつ、今の状況をぼーっと考えていた。

 

(結局(リョウ)のマンションに世話になることになったなぁ。

当初の予定とは違うけど、まあ生きてるだけ儲けものってね。)

 

教授の家を辞して3人でマンションに帰ってきた後、(リョウ)は適当な空き部屋を白の部屋としようとした。

白もこれに賛同していたのだが、香が猛反発。

半ば強引に白の寝床は香の部屋となった。

それが一週間前の出来事だ。

当然ベッドも一つしかないので、当初は無表情の裏で密かに大興奮した白。

しかし、アレやコレやいたそうにも股間の相棒は前世に置き去り。

結局感触を楽しむ以外にできることはなく。

しかも、少し白の中で心境の変化が起こっていた。

 

(体に心が引っ張られているのか、なんなのか。

香に抱きつかれてると興奮とかよりも安心感が勝つんだよなぁ。)

 

寝るときは後ろから香に抱きしめられて抱き枕状態で寝るのだが、香の温かさを感じるとすぐに眠気に襲われて寝てしまうのだ。

そのこともあって、この一週間特に香に手を出したりはしていないし、その気も起きなかった。

 

(というかこの一週間家でテレビ見て本読んで新聞読んで食って寝てるだけなんだけど。

そろそろなにかせんと、いよいよニートから抜け出せなくなりそう。)

 

パジャマからいつもの無地白シャツとホットパンツ姿に着替え終わった白は、トレードマークの白いコートを羽織ると姿見の前に移動した。

このロングコートは室内で着ていると香は良い顔をしないものの、着ていないと白が落ち着かないのだ。

コートに仕込まれた武器に常に触れながら生きてきた白にとって、このコートこそが生命線ともいえる唯一の装備だった。

武器の類は外されたまま没収されてしまったので、丸腰に変わりはないのだが。

気分的なものである。

この一週間、(リョウ)と香は、どちらかがマンションに居ないことはままあった。

しかし、必ずどちらかは家に残っていたうえに白の外出は許して貰えなかった。

恐らく白の容態の確認と、ユニオンの動きの確認のためだろう。

その間、白が家でしたことといえばだらけること以外だと一応身体能力の簡単な確認程度。

まず、今の白が着ているコート。

これを暗器フル装備で着るのは難しい。

着られなくはないが、よたよたとしか動けなくなる。

動体視力も低下しているようだ。

(リョウ)が射撃訓練する様を眺めたことがあるが、昔のように弾丸見てからパリィ余裕でした、は無理そう。

銃口の向きから弾道予測くらいはできるかも。

投擲術も衰えているんだろうな、とは思っているのだが。

これは刃物の類を持つと香が烈火のごとく怒るので試せていない。

あとは聴覚や嗅覚。

元から聴覚は(リョウ)に劣るが並み以上という程度だったので、そこまで違いはわからない。

嗅覚も同様に。

ただ、暗殺者としての本分でもある気配の察知能力に関してはそこまで衰えた気はしてない。

今も部屋を出て行った香がダイニングまで到達したのが気配でわかる。

さらに1階に住んでるお姉さんが今日は男を三人連れ込んでお楽しみ中なのがわか……三人!?

……お盛んですねぇ。

と、身体能力に関してはこんな感じだ。

総じて、正面戦闘能力は著しい低下をしているが、暗殺能力はさして変わっていないといったところ。

完全な不意打ちならまだまだ捨てたものではないだろう。

 

(フフン。

今日もパーフェクト最強美少女白ちゃん爆誕。

朝日が眩しいぜ。)

 

なおアルビノの白を気遣って常にカーテンは閉め切られており、朝日は見えない。

姿見に渾身のドヤ顔(ほぼ変化なし)を決め満足気に頷くとダイニングに向かう。

ダイニングに行くと(リョウ)と香がテーブルについて待っていた。

朝食は目玉焼きとソーセージ、あと白いご飯だ。

こういうのでいいんだよ、こういうので。

 

「白ちゃんおはよう。」

 

「おはようさん、白。」

 

「うん。

おはよう、(リョウ)、香。」

 

改めて香と(リョウ)に朝の挨拶を返し、ちょっと高い椅子に飛び乗るように座る。

二人は白を待っていたようで、白が着席すると朝食が始まった。

香は女性らしく上品に、(リョウ)は豪快に大口で食べ進めていく。

白はそんな二人を見比べながら、ちまちまと少しずつ朝食を食べ進めた。

 

(口が小さいからあんな勢いで食えないんだよなぁ。

まあ、体が小さいせいか小食にもなってるからそんなに面倒もないんだが。

美味いものを量食えないのはちょっと損した気分かもしれん。)

 

今までの生活が生活だったため、女になったことを意識することはそんなになかった。

精々が排泄の仕方とかその程度。

体の成長が止まってるせいか月のものも来ないし。

これから日常を送るにつれて、性差によるギャップなんかも感じるのだろうか。

そんなことを考えながら食べ進めていると、ペースが早い(リョウ)はもう食べ終わったようだ。

コーヒー片手に新聞を読みながら、まだ食べている香に話しかける。

 

「そういえば香。

今日から依頼受けていいぞ。」

 

「えっ、もう大丈夫なの?」

 

ちら、と香の視線が白に飛ばされる。

反応しようとも思ったが、口が埋まっていたため諦めて咀嚼に戻った。

 

「ああ。

当面は大丈夫そうな裏付けが取れた。

しばらくは通常業務だ。」

 

「よし、そうと決まれば早速依頼確認してこなくちゃ!

そろそろヤバかったのよね!」

 

(リョウ)の言葉を聞いた香は食べるペースを一気に上げて猛然と朝食を片付けていく。

それを見た白はというと、

 

(バブル期ってみんな金持ちで札束持ち歩いてるイメージがあったけど。

そんな良い話はないんだなぁ。)

 

なんてことをのほほんと考えていた。

 

 

 

 

 

香がさっさと掲示板を確認に飛び出していってややあって。

白はゆっくり食べ進めた朝食をようやく食べ終わり、箸をおいた。

洗い物くらいはやっておこうと、空いた食器を下げようとしたが(リョウ)に止められた。

 

「俺がやっておこう。

お前は座ってろ。」

 

ひょい、と重ねた食器を持ち上げるとさっさと流しにもっていってしまう。

すぐ洗うのではなく、水を溜めた洗い桶に食器を沈めてテーブルにすぐ戻ってきた。

それをぼんやり眺めていた白だが、(リョウ)からの視線を感じ目をやると、(リョウ)が口を開いた。

 

「白。

お前さん、箸使うの上手いよな。」

 

「……?

そう?

普通だと思う。」

 

「ああ、そうだ。

普通に使えている。」

 

(……?

何が言いたいんだ?)

 

質問の意図がわからず首を傾げる白の様子を見て、(リョウ)は訝しそうに眉根を寄せるが、苦笑して首を横に振った。

 

「いや、なんでもない。

うがちすぎだな、気にしないでくれ。」

 

「……うん?

わかった、気にしない。」

 

よくわからなかったが、(リョウ)の中で何か結論が出たっぽいし気にしないでいいだろう。

なにかあれば言うだろうし。

と、会話をしていると依頼を確認に行った香が帰ってきたようだ。

マンションの敷地内に彼女が入ってきたのがわかる。

思わずチラと、視線を扉に向ける。

(リョウ)もそちらに視線を向けると、感心したような声を出した。

 

「わかるのか。

流石だな。」

 

「うん。

これくらいは。」

 

少しすると香が扉を開けたのだが、じっとこちらを見ていた二人に面をくらう。

 

「ただいま、って、え、なに?」

 

「お帰り香。

まともな依頼はあったか?」

 

「ああ、うん。

1件だけね。」

 

視線の件は気にしないことにして気を取り直したのか、話を続ける香。

だが、依頼の詳細についてのところで、白に目をやり言いよどんでしまう。

どうやら依頼内容を白に聞かせていいのか悩んでいるようだ。

 

「白、仕事の話をするから部屋に戻っておいて。」

 

「ん。

聞いちゃダメ?」

 

「ダメ、ってことはないけど……ねえ、(リョウ)。」

 

言葉に窮したのか、(リョウ)に話を振る香。

(リョウ)は白をじっと見つめる。

白が視線を受けてひとつ頷くと、(リョウ)は香に視線を戻した。

 

「白も聞いておいたほうがいいだろう。

依頼となれば俺達二人ともいなくなる事もあるだろうしな。」

 

「それはわかるけど、その……今回の依頼は。」

 

それでも言いよどむ香。

普通に内容が気になるし、なんなら内容によっては手伝ってもいいと思っている白は香の話を促すことにした。

香の横まで歩いていき、服の端をクイクイと引っ張る。

 

「香。

大丈夫だから。」

 

それを受けて、香は一度参ったな、と顔に浮かべたものの、諦めがついたのか(リョウ)に向き直る。

 

「今回の依頼は殺しよ。

それも、少し厄介なね。」

 

 

 

 

 

白にお留守番を指示した(リョウ)と香は二人で(リョウ)の愛車のクーパーミニに乗り込んだ。

香の指示した待ち合わせ場所は都内の某所にある公園である。

ハンドル片手に、(リョウ)が助手席に乗っている香に依頼の詳細を尋ねる。

 

「で、誰をどうしろって?」

 

「今回の依頼人は萩尾直行さん。

依頼の詳細は……」

 

「ちょっとまて!」

 

(リョウ)が声をあげて急ブレーキをかける。

シートベルトはつけていたものの、急制動に助手席でつんのめった香が(リョウ)に文句を言う。

 

「ちょ、なによ!

危ないじゃないの!」

 

「萩尾直行だとぉ?

つまりはあれか、男の依頼か。」

 

「……そうだけど。」

 

「行かん!

俺は絶対にやらんぞ!」

 

その言葉に眉を吊り上げる香。

 

「依頼の選り好みをしとる場合か!

白ちゃんだって食わせなきゃならないのよ!?」

 

見た目少女の白の名前を出されると弱いのか、すねたようにそっぽを向く(リョウ)

 

「そうはいっても(リョウ)ちゃん、気がのりましぇん。

久々の依頼なのに男の依頼かよぉ。」

 

「あ、あんたってやつは……!」

 

狭い車内でどこから取り出したのか、器用に100tハンマーを振りかざす香。

それに気づいて慌てて防御態勢を取ろうとした(リョウ)だが、突如表情が真剣なものに切り替わった。

瞬時に愛銃を引き抜くと、後部座席に突きつける。

 

「伏せろ香!」

 

「えっなに!?」

 

驚いて頭を抱えて助手席で蹲る香。

(リョウ)は後部座席に銃口を向けたまま、誰何の声をあげる。

 

「誰だ、そこにいるのは?」

 

その言葉にはすぐに反応があった。

後部座席の座面がパカっと開くと、そこから見慣れた無表情の少女が顔を出した。

 

「白!?

いつの間に、こいつ。」

 

「白ちゃん!

ついてきちゃったの?」

 

「見つかるとは、不覚。」

 

「不覚、じゃないわよ!

ダメじゃない、こんなことしちゃ!」

 

香はこっそりついてきた白にお冠だが、(リョウ)はかなり驚いていた。

さっき香が100tハンマーを振りかざした一瞬だけ息遣いのようなものが聞こえたから気がついたが、それまで白の存在に全く気が付かなかった。

 

(この俺が同じ車内の気配に気づけないとは。)

 

これがホワイトデビルか、とその力量を再認識する。

そもそも後部座席にあんな仕掛けをいつの間にか施してあることといい、油断ならない少女である。

まあ、その少女も香には頭が上がらないようで、めちゃめちゃに怒られていれば形無しだが。

そんな様子を見ていたら毒気が抜けてしまった(リョウ)は、はぁ、と溜息をひとつ吐き出すと前方に向き直りハンドルを握る。

 

「白、普通に座ってシートベルト付けとけ。

香もだ。

さっさと集合場所に行くぞ。」

 

「ちょっと、白ちゃんも連れて行くの?」

 

「しょうがねえだろついて来ちまったんだから。

今から戻ったんじゃ時間に間に合わねえよ。

それに、今日は顔合わせだけなんだろ?」

 

香はその言葉に少し迷った様子だったが、お財布事情もあるのだろう、まあいいか、とひとりごちた。

 

 

 

 

 

公園についたのは夕暮れ時だった。

まだ日があるので白はいつものコートに帽子とサングラス姿だ。

もうすぐ日が沈むとはいえ、付近に団地や民家なども多い住宅街にあるこの公園は数人の遊んでいる子供たちの姿が見える。

まだ指定の時間まで多少の余裕があるので、そこらの花壇の淵に適当に腰かけて待つ3人。

並び順は香、白、(リョウ)だ。

ここまで来てしまったものの待ち時間があると思うとまた面倒になってきたのか、(リョウ)の機嫌は右肩下がりだ。

 

「はぁー、やっぱ帰ろうぜ。

気が乗らねえよ。」

 

「ここまで来てそんなこと言わないでよ、(リョウ)。」

 

文句たらたらで、横目に香を睨みつける(リョウ)

 

「なんだって俺が男のために仕事なんてしなきゃいけないんだよ。

俺は女の依頼しか受けないの!」

 

「いつまでもうるさいわねぇ!」

 

「じゃあ、私の依頼を受けたのは、私が女だから?」

 

(リョウ)が依頼をあまりに渋るので疑問だったのだろう。

白が聞くと、(リョウ)は即座に否定した。

 

「いいや?18才未満は対象外だ。」

 

「じゃあ、なんで?」

 

そう聞かれた(リョウ)は白に向き直ると真剣な表情で口を開いた。

 

「俺が依頼を受けるのは、俺の心が震えた時、さ。」

 

「心が……。」

 

よくわからなかったのか、コートの上から自分の心臓のあたりをぎゅ、と握ってみる白。

 

「ぷ、くくく……似合わねー!

急にマジになって何を言うのかと思えば、何言ってんのよ!

お、おなか痛い……!

あは、あはははは!」

 

「こ、こいつ……。」

 

一方香は(リョウ)の態度がツボに入ってしまったようで、大笑いしている。

そんなやり取りをしているうちに気づけば日が沈み、あたりは電灯の明かりに包まれた。

白も帽子とサングラスを外すとポケットにしまいこむ。

子供たちも一人、また一人と迎えがきて家路についていく。

時間は19時30分を少し過ぎたあたりだった。

 

「おっせえなぁ。

もう30分過ぎたぜ?」

 

「あの子の迎えも、遅れてるみたいね。」

 

香のその言葉に(リョウ)と白がブランコのほうに目をやると、一人ブランコに座る女の子の姿があった。

小学生くらいだろうか。

寂しげにブランコに揺られている。

 

「あと10年経ったら俺が迎えに行ってやるよ!

中々のモッコリ美人になりそうだしなぁ。」

 

そんな発言をして下種笑いをする(リョウ)を香が

 

「変態。」

 

の一言で切って捨てる。

その言葉に鼻白んだ(リョウ)は、ガクッと肩の力を抜いたあと立ち上がると、

 

「帰るぞ!」

 

と香と白に声をかけた。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ(リョウ)!」

 

(リョウ)。」

 

慌てて立ち上がり(リョウ)を引き留めようとする香と、座ったまま声をかける白。

(リョウ)は香の言葉は無視して帰ろうとしていたようだが、白には肩越しに振り返った。

白は顔の向きを変えないまま、目の動きだけで公園の外延部の雑木林に一瞬だけ視線を送る。

 

「いいの?」

 

「……大丈夫だ。

悪いようにはせんよ。」

 

「わかった。」

 

その言葉に納得したのか、座っていた花壇の縁から勢いをつけて飛び降りる白。

香は二人の会話の意味が分からず、聞こうとしたところで暗い表情に猫背でこちらに歩いてくる男性の姿が目に入った。

 

「あら、あの人かしら?」

 

「あん?」

 

香の言葉にそちらに視線を送った(リョウ)が大きく顔を歪める。

 

「暗っ!

まさかでしょ!?

俺嫌だよあんなの!

俺は暗い男が嫌いなんだ!」

 

そんな二人のやり取りを横目に、白はぽつりと

 

「あれがクライアント……。」

 

と呟いて観察しているようだ。

男性は(リョウ)の嘆きが聞こえていないのか、聞こえていて無視しているのか構わず距離を詰めてきた。

 

「冴羽さんですね?」

 

「……あんたが萩尾さん?」

 

「はい、遅くなってすいません。」

 

抑揚のない声で話かけてきた男性に愛想笑いを浮かべる(リョウ)と香。

白は相変わらずの無表情でただじっと見上げている。

男性……萩尾は依頼したスイーパーが子供連れであることに驚いた様子だ。

香は話を聞くために萩尾をクーパーミニの車内に誘った。

後部座席に香、助手席に萩尾が乗り込み、運転席の扉に手をかけた(リョウ)は動かない白に目をやった。

 

「話を聞かないのか?」

 

「うん。

あの子を見ておく。」

 

白はブランコの女の子が気になる様子だ。

それを見た(リョウ)は一つ頷くと、運転席に乗り込んだ。

萩尾が語った依頼内容はこうだ。

 

天地宗像(アマチソウゾウ)という男がいる。

日本国民なら誰でも知っているような、次期総理大臣ともいわれる大物政治家だ。

1年前、その男の運転手をしていた男が遺書を残して青函連絡船から投身自殺をしている。

飲酒運転で子供を轢いてしまったからだ。

その運転手こそが、萩尾だという。

実際は、運転をしていたのは天地で、萩尾は身代わりに偽装自殺を行った。

こうして公的には死人になってしまった萩尾。

そのせいで娘に会うことすらできなくなってしまった。

そして、先ほどから白が気にしているブランコの少女こそが、萩尾の娘だという。

いつか迎えに来るからと、別れ際にした約束を信じて、毎日遅い時間まで公園で父を待っているのだ。

それに耐えきれなくなった萩尾の依頼は、天地達に萩尾が本当に死んだと勘違いさせるための偽装殺人だった。

依頼内容を聞き終わった(リョウ)は二人を車内に残して車から降りると、ブランコに向かっていく。

女の子の座るブランコの隣に腰かけて、女の子にいつもより優しい声色で声をかけた。

 

「君、もしかしてお父さんを待ってるのかな?」

 

「おじさん、パパを知ってるの?」

 

「お、おじ……。

"お兄さん"が見つけてあげる!

だから、今日はもう帰りな。」

 

「ほんと!?

約束よ!」

 

父の話をしてくれる人が周りに居なかったのか、大喜びでブランコから立ち上がる女の子。

(リョウ)と指切りをすると、駆け足で公園を飛び出していった。

 

「白。

念のためエスコートしてあげな。」

 

「合点、承知。」

 

と、いつの間にやら(リョウ)の後ろに立っていた白に、(リョウ)が声をかける。

真顔のままおどけて返した白が駆け出して公園の茂みに飛び込むと、すぐに(リョウ)にすら集中しないと気配が掴めなくなった。

恐らく、姿を見せないまま女の子の後を追っているのだろう。

そこに車から降りてきた香がやってきて(リョウ)に声をかけた。

 

「あれ?

白ちゃんは?」

 

(リョウ)は公園備え付けの公衆トイレを指さす。

 

「慌てて駆け込んでいったからでっかいほうじゃねえか?

ちょっと待ってようぜ。」

 

「あ、あんたね。

デリカシーってもんが無いのか己は!」

 

その(リョウ)の言葉は香の沸点を容易く超えたようで、お馴染みの100tハンマーが振りかぶられていた。

 

 

 

 

 

(リョウ)と香が依頼人のもとに向かうため家を出た直後。

白は行動を開始した。

コートのポケットに予め突っ込んであった帽子とサングラスを装着し身支度は万全。

開いた窓から跳躍、壁にある雨樋に片腕を引っかけて滑るように地上に降り立つ。

家の中でこっそり回収した針金でちょちょっとクーパーミニのドアを開くと、後部座席に滑り込んだ。

そしてこの一週間で同様の手口で仕込みをした後部座席の座面下の隠しスペースに潜り込む。

今回白がこの行動に出たのにはいくつか理由がある。

無論、あまりにも何もしていない居候状態は良心が咎める、ということもあるのだが。

第一に、野次馬根性。

前世で見たシティーハンター世界なのだから、(リョウ)たちの活躍を見てみたいという思いが一つ。

第二に、原作とのズレがないかの確認だ。

白自身がユニオン・テオーペの所属だったことから、この世界はアニメ版ではなく原作漫画の世界かと思われる。

しかし、実際のところは確認してみないとわからない。

もしかしたら混ざった世界かもしれないのだ。

それこそ、アニメ版ユニオン・テオーペである赤いペガサスがユニオンと同時に存在している可能性すらある。

あとはそもそも白の存在によってアニメ、漫画、両方からズレてしまっている可能性もあった。

原作知識はだいぶ薄れてきているものの、現場を見れば思い出すこともあるだろう。

そう考えて、こっそりついていく事にしたのだ。

ちなみにこの隠しスペースを作った時はそこまで考えていたわけじゃない。

暇つぶし代わりであり、強いて言うなら悪戯である。

流石に家から出ると(リョウ)には気づかれそうだったので、香しか居ない時に隙を見て少しずつ作ったスペースだった。

外からわからないように覗き穴まで作られているし、後部座席に座っても気づかれない本気仕様である。

隠しスペースに潜り込んで少しして。

車外から(リョウ)達の気配を感じ取った瞬間、白の意識がスイッチを入れたように切り替わる。

呼吸は薄く長く。

身じろぎ一つせずに瞳は虚空を見つめる。

極端に存在感が希薄となる、白の本気の隠密モードだ。

なんとあの(リョウ)すら気づいていない。

この状態だと体を動かしたりも難しいが、潜むだけなら誰にも見つからない自信が白にはあった。

そのまま暫く車を走らせていた(リョウ)だが、依頼人が男だと聞いて車を急制動させた。

白は一人隠しスペースの中で訓練で培った強靭な体幹で耐えつつ二人の様子を眺めていたが、香がハンマーを振りかざした時にびくっと体が跳ねた。

一瞬集中が乱れてしまったため、(リョウ)に気づかれてしまった白は渋々姿を現すことにした。

 

「見つかるとは、不覚。」

(というかあのハンマーどうなってるんだよ。

隠密モード中は銃口突きつけられても動揺しない自信があるのに。

スケベ男への特攻概念武装かなんかですかね……。)

 

「不覚、じゃないわよ!

ダメじゃない、こんなことしちゃ!」

 

後部座席に振り返り怒ってくる香。

その剣幕にたじろいでしまう白。

 

「う、ごめんなさい。」

 

「さみしくてついてきちゃったの?」

 

「いや、さみしいとかでは、ないけど……。」

 

どうも怒ってる香相手には弱い。

おどけたりする余裕が無くなってしまう。

なぜかはわからないが、白は香に頭が上がらなくなってしまっていた。

看病してもらったことを本人も無自覚に恩に着ているのだろうか。

そんなやり取りをしていると、(リョウ)が車を発進させた。

どうやら諦めて依頼人のところに向かうようだ。

香は白を連れていくことを少し渋っていたが、一度帰る時間はないようでそのままついていけることになった。

やったぜ。

 

 

 

 

 

車を走らせること暫く。

依頼人が指定した公園に到着した。

夕暮れ時とはまだ日があるので帽子とサングラスを装着して車から降りた白。

花壇の縁に腰かける3人。

(リョウ)は男の依頼を受けるのがまだ納得いかないらしい。

 

「はぁー、やっぱ帰ろうぜ。

気が乗らねえよ。」

 

「ここまで来てそんなこと言わないでよ、(リョウ)。」

 

文句たらたらで、横目に香を睨みつける(リョウ)

 

「なんだって俺が男のために仕事なんてしなきゃいけないんだよ。

俺は女の依頼しか受けないの!」

 

「いつまでもうるさいわねぇ!」

 

(男の依頼じゃテンション上がんないよなぁ。

てか、俺の依頼はなんで受けてくれたんだ?

ぶっちゃけ普通にぶち殺される展開だと思ったんだよなぁ。)

 

ふと疑問に思ったので、(リョウ)に直接聞いてみることにした。

 

「じゃあ、私の依頼を受けたのは、私が女だから?」

 

「いいや?18才未満は対象外だ。」

 

「じゃあ、なんで?」

 

そう聞かれた(リョウ)は白に向き直ると真剣な表情で口を開いた。

 

「俺が依頼を受けるのは、俺の心が震えた時、さ。」

 

「心が……。」

 

(リョウ)の言葉に、思わず自分の胸の上に手をやってしまう。

そういえば、この世界に転生してから、大きく感情が動いたことがあったろうか。

確かに内心おどけたり、慌てたりしたことは多々ある。

むしろ、表情に出せないぶん内心は荒れているような気がする。

しかし、感動したり熱く燃え上がったりとか、心が震えるような想いはしたことがない。

(リョウ)は香に笑われてご立腹だが、もしかしたら(リョウ)と一緒に居ればそういった感情を感じることができるかもしれない。

確かに、そんな予感がした。

そんなやり取りをしているうちに気づけば日が沈み、あたりは電灯の明かりに包まれた。

白も帽子とサングラスを外すとポケットにしまいこむ。

子供たちも一人、また一人と迎えがきて家路についていく。

時間は19時30分を少し過ぎたあたりだった。

 

「おっせえなぁ。

もう30分過ぎたぜ?」

 

「あの子の迎えも、遅れてるみたいね。」

 

香のその言葉に(リョウ)と白がブランコのほうに目をやると、一人ブランコに座る女の子の姿があった。

小学生くらいかな。

寂しげにブランコに揺られている。

 

(てか、あれ大丈夫か?)

 

白はさっきから気になっていた方向を顔を向けずに目線だけで確認した。

それは公園の外縁にあるちょっとした雑木林だ。

雑木林に身を隠すようにしてずっと気配があったので、気になっていたのだ。

身を隠しているものの気配は丸っきり素人なので、そこまで危険度は高くないと放置していたのだが。

白たちが公園についた時には既に居たし、今もまだ居る。

流石に不自然だ。

視界の端で気配の正体を捉えた白は、思わず内心でたじろいだ。

 

(あ、怪しいっ!?)

 

その影は小太りの30代くらいの男性。

マスクとサングラスで顔を隠しており、ブランコの少女に熱い視線を送っている。

 

(うっそだろ。

不審者の擬人化じゃん。

逆にあそこまで不審な奴おるか?)

 

万が一を考えて、花壇から拾った小さな石を一つ拳に握りこんでおく。

投擲用だ。

そっちを気にしていると、(リョウ)は見切りをつけたのか帰ろうとしている。

香が声をかけても無視して帰ろうとしているが、そこに声をかける。

 

(リョウ)、いいの?」

 

一瞬だけ目線を雑木林に送ると、(リョウ)も当然気づいていたんだろう。

軽く頷いた。

 

「……大丈夫だ。

悪いようにはせんよ。」

 

「わかった。」

(おいおいおい、あいつ死んだわ。)

 

(リョウ)にちゃんと考えがあるなら大丈夫だろう。

白には加減やらがよくわかっていない節があるので、投げっぱなしで任せることにした。

と、そんなやり取りをしていると香が声を上げた。

 

「あら、あの人かしら?」

 

「あん?」

 

香の言葉にそちらに視線を送った(リョウ)が大きく顔を歪める。

 

「暗っ!

まさかでしょ!?

俺嫌だよあんなの!

俺は暗い男が嫌いなんだ!」

 

その言葉に白も目をやると、猫背で暗い表情をした男がこちらに歩いてきている。

 

「あれが暗いアント……。」

(なんちて。)

 

フフン、と内心ドヤ顔を浮かべていると、ふと白の脳裏に原作のシーンが想起された。

思い出した。

この依頼は、あのブランコの子の父親からの依頼の話だ。

偽装自殺をして公的に死人になってしまった萩尾を再度偽装殺人することで、大物政治家を騙す……ような話だった気がする。

最終目標はあの女の子と萩尾を再会させることだったと思う。

漫画だと以前に助け出した別の女の子が香と一緒にパートナーとして参加する話だったはず。

アニメ版だと今回同様に香のみがパートナーとして依頼をこなすので、この話はアニメ軸で進んでいることになる。

となると、恐れていたように赤いペガサスとユニオン・テオーペが同時に存在する可能性すらあった。

他に可能性はないか考えてみると、思いつくのは一つ。

ホワイトデビルが存在したことで、本来(リョウ)達がこなすはずだった依頼をいくつかスキップしてしまっている可能性だ。

実際、ユニオンとの闘いは本来将軍を倒した時に一旦終わっているはずだった。

そのあとにホワイトデビルと闘い、更には白を保護してからしばらくは依頼を受けないようにしているようだったし。

(リョウ)に本来は助けられるはずだった誰かを犠牲にしてしまっている可能性がある。

そのことに気づいた白は、背筋が凍る思いだった。

これは、なるべく早くに確かめる必要がある。

そしてもう一点。

今回の依頼にあんな風に依頼人の娘を見張る不審者なんて出てこなかったはずだ。

細かいところは覚えていないが、流石にそんな奴がいれば覚えているはず。

あの不審者も白が現れたことによるバタフライエフェクトの結果なのか。

それとも描写がないだけで原作にも存在はしていて、画面外で(リョウ)が始末をつけているだけなのか。

どちらにせよ、放ってはおけないか。

と、その時(リョウ)に車に乗らないのかと声をかけられるが、自分の中での引っ掛かりを優先したかった白は断りを入れた。

 

(創作物の世界のテンプレ不審者だろ?

……行動もテンプレだったりするんだろうか。

エロ同人みたいに?)

 

(リョウ)にあの子を見ておくよ、と伝えると(リョウ)は一つ頷いて車内に消えていく。

白は女の子が視線が気にならないように、視界の端でとらえるように観察する。

女の子は時折公園に設置された時計に目をやり、俯いてブランコを漕ぎ、また時計をみやり、を繰り返している。

チラ、と雑木林に視線をずらせば、未だに不審者がハァハァしている。

 

(というか、アイツさっきまではブランコの子しか見てなかったけど、今はこっちと交互に見てない?)

 

多分、さっきまでは香と(リョウ)が近くにいたからだろう。

一人になった白にも熱烈視線を送ってくるようになった。

 

(やべぇよやべぇよ。

いよいよ犯罪者だってあの視線は。)

 

今迄感じたことがないタイプの視線にたじろぐ白。

なんか気持ち悪いしこの石投げつけてやろうかと思っていると、話が終わったのか車から(リョウ)が降りてくる。

ブランコの子のもとへまっすぐと向かい、話しかけている。

すると、それを見た例の不審者の視線の種類が変わった。

 

(憎悪?

いや、嫉妬か?)

 

一気に負の方向に変わった視線に、何かあった時に女の子の前に割って入れるように気配を消して(リョウ)の後ろ側に回り込む。

(リョウ)と女の子の会話を聞いた感じどうやら依頼人の萩尾氏は記憶通りこの子の父親のようだ。

記憶と大きな相違は無さそうだ。

(リョウ)に帰宅を促された少女が家路に向かうと、雑木林の不審者も動いた。

やはり狙いはあの子のようだ。

 

「白。

念のためエスコートしてあげな。」

 

「合点、承知。」

 

適当におどけて答えてから、公園の茂みに飛び込む。

そこから息を殺し足音を立てず、地面すれすれの超前傾姿勢で駆け出した。

このように走ることでただでさえ小さな白の体は周囲から完全に視線が通らなくなる。

そのまま走り公園横の電柱から近い2階建ての民家に狙いをつけると、大きく跳躍。

三角飛びの要領で電柱と民家の壁を交互に蹴ってあっという間に屋根に登った。

そこから周囲を窺えば、先ほどの女の子が小走りに帰路をいっており、その後ろ数m離れて例の不審者が後をつけていた。

白はすぐに割り込めるように、女の子の近くの民家まで屋根から屋根に飛び移り移動。

そのまま屋根の上から追跡を開始した。

子供の足で5分ほど行ったところだろうか。

迷わず一軒家に入っていく女の子。

不審者はその後方からじっとそれを見つめている。

家の中から気配はするので、家人はいるのだろう。

不審者も踵を返して去っていくのをみて、今日はもう大丈夫だと判断した白は屋根伝いに公園に戻った。

(リョウ)に女の子と不審者の様子を一応話したほうがいいかと思っていたのだが、公園には変わり果てた姿の(リョウ)が。

100tハンマーに完全に押しつぶされており地面に半ば顔面がめり込んでいる。

 

(いや、死……んでない!?)

 

どうなってんだこれ、と(リョウ)の横にしゃがみこんでペチペチと頭を叩いてみるが、割と元気そうだ。

香はそんな白を後ろから両脇の下に手を入れて抱き上げる。

 

「ほーら、白ちゃん。

ばっちいから触らないようにしましょうねー。」

 

「えぇ……。」

 

「俺はバイキン扱いかよ……。」




(リョウ)達の視点、ようは今回の話の前半のような原作よりの描写を表パート
白視点のシリアルを裏パートとした時、今回のように一話で纏めるとだいぶ長くなっちゃうんですよね。
なので、今回のお話は長くなりそうだぞ。
って時は分割も手かな、と思ってます。
アンケートをつけておくので、気が向いたらご回答ください。

ちなみに第5話「ロリコンスレイヤー白の巻!」は
前編・後編の2部構成です。

後編は明後日の18:00に投稿されます。

投稿頻度とどこで区切るか、というアンケートです。毎日投稿だと6000文字くらいが限度になります。文字数が増える方式にするにつれて、2日、3日と間隔が開く感じです。大体1話辺り2万~3万文字の間だと思うので、それをどれくらい分割するかご意見をください。毎日投稿だと4部構成、2部構成だと2日か3日に一度の構成となります。

  • 前編・後編の2部構成
  • 前編表・前編裏・後編表・後編裏の4部構成
  • 表・裏の2部構成
  • 前編表・後編表・前編裏・後編裏の4部構成
  • 統一せずにできてる分を毎日投稿しろッ!
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