アルビノ美少女にTS転生したと思ったらお薬漬け改造人間状態にされた上にシティーハンターの世界なんですけど? 作:らびっとウッス
返信が追い付いていませんが、全て目を通させていただいてます。
どんな感想であろうと、嬉しく読ませていただいております。
これを機に原作を読み直したという方や、知らなかったが興味が出たという方もいらっしゃって、嬉しい、嬉しい。
誤字報告も大変助かります。
タイプミス、変換ミスは自分で読み直してもなぜか気づけないものですね……。
なにより驚くのが日本語の誤用。
誤字指摘を頂いて、いや、それはあってない?と思って検索すると誤用で、はぇーとなり続けております。
拙い文章ではありますが、精進してまいりますのでご容赦ください。
アンケートご協力ありがとうございます。
前編・後編形式で、毎週月曜日と木曜日の18:00に更新するようにしようかな、と思ってます。
よろしくお願いいたします。
今回は後編のほうが長くなるかも。
香の部屋で、段ボールに向き合う白と香。
白が中身を取り出して香に見せる。
「……これは?」
「ダメ!」
「……こっちは。」
「ダメ!」
「む、むう。これも?」
「これは……そもそもなに?」
箱の中身は白が元々持っていた装備類である。
前回の依頼に白が参加したことで、今後も手伝うこととなった白。
それに伴い、装備を一部返してもらうこととなったのだが。
「これは手首につけるフックショット。腰にベルトをつけることで、バックルに仕込んだハンドルを回して巻き取ることができる。」
「……うーん、ダメ!」
「香。この調子じゃ殆ど丸腰になる。」
香がオッケーしたものだけ持ち出すとのことで選別していたのだが、今のところの選別状況は酷いものだ。
まず刀剣類は全部ダメ。
この時点で箱の中身は半分以上ダメなのだが。
他のツール類も、危険そうなのはダメだ。
オッケーに分類されたものをチラ、と見ると針金、ペンライト、聴診器、パチンコ玉。
ダメに分類されたのは刀剣類を始め、フラッシュバン、ドライバー、ペンチ、金槌、糸鋸、フックショット。
許可されたものの中で唯一武器に使えそうなゴツ目のペンライトを片手で軽く素振りし、しっくりこなかったのか頭を振る白。
「せめて、ナイフを一本。」
「ダメ!怪我したら危ないでしょ!」
「……香。私、16歳。気にしすぎ。」
刃物どころか、なるべく尖ったものすら持たせようとしない香の徹底振りに流石にどうかと思った白が不満を訴える。
香は気まずそうに目を逸らして頬をかいた。
「うーん、頭ではわかってるんだけど。白ちゃんってどうも見た目だけじゃなくて立ち振る舞いも幼いから、そうは見えないのよね。」
「立ち振る舞いが……幼い……!」
ショックだったのか、白が手に持ったペンライトを取り落とす。
一方香は、そういうところよ、と苦笑している。
白としては表情に出ない分ボディーランゲージを大げさにやっているつもりだったのだが、それが幼い印象を与えていたようだ。
中身が元会社員男性の白としては、これは大変遺憾である。
どうにかこの誤解を解かねばならぬと思ったところで、不意に妙な気配を感じて顔を上げた。
意識を集中すると、どうやら
白の様子が変わったのがわかったのか、香が怪訝そうに尋ねる。
「どうしたの、白ちゃん?」
「
「え?」
無論厳重にロックされており、鍵の管理は
無理に押し入ろうとすれば警報が鳴るようになっており、それらを潜り抜けるのは白でも少々骨だと言わざるを得ない。
「香は
「ダメよ、一人でなんて。危ないわ!」
とっとと出ていこうとする白を慌てて香が止めるが、白は取り合う気はないようだった。
「大丈夫。地下のほうは強くても素人に毛が生えた程度。むしろ、
その言葉を聞いて不安になったのだろう。
香は少し躊躇ったものの地下を白に任せると、自分の銃を取り出して駆け足で
(今の言葉に嘘はないが、
改めて地下の意識に集中すると、素人のような気配でありながらも、どこか油断ならないような気がしてならない。
(誰だ、この妙な気配は。素人っぽさもあるけど、どこか鋭い気配。何が飛び出してくるかわからない、暗い洞窟を覗き込むような不安感がある。)
チラリと部屋に残された自分のナイフに目をやるが、結局手に取らずに地下に降りることにした。
気配を殺して滑るように階段を下りていくと、地下射撃場の扉は開いており、警報などもオフになっていた。
それも、全て正規の手段で。
侵入者はここの鍵を持っていることになる。
ということは、
警戒を保ったまま射撃場の扉の陰から中を窺い、そこに居た人物を確認した白は、驚きで固まってしまう。
そこにいたのは教授と呼ばれる
教授は射撃場にあったのだろう、自動拳銃を片手に持ち、構えるでもなくしげしげと眺めている。
白が驚いたのは、その雰囲気のためだ。
以前は感じなかった鋭い気配に、一瞬別人かと疑ってしまうほどだった。
声をかけるべきか白が悩んでいると、教授は白を見もせずに
「誰じゃ?」
と誰何の声をあげた。
(気取られた……?そこまで本気で潜んでいなかったとはいえ……)
バレてしまっては仕方がない。
観念した白があえて足音を立てながら射撃場に入ると、教授が白を見やる。
「おお、元気でやっとるか。」
「はい、教授。」
教授は入ってきたのが白だと気づくと、鋭い気配が霧散した。
手に取っていた銃を壁の収納ラックに戻すと、笑みを浮かべて振り返る。
(何者だよこの爺さん。確か、
うすぼんやりとした記憶を掘り起こすが、これだ、という答えは出ない。
(まあ、敵じゃないしいいか。)
深く考えるのが面倒になった白は思考を放棄すると、気を取り直した。
「
「うむ。ツレが
(ということは、
教授の知り合いのキャラって誰だったっけ?と頭を悩ませていると、教授が白に近寄ってしげしげと白を眺めた。
「なに?」
「お前さん、相変わらず表情が出んのう。」
そういうと、教授は白の顔に手を伸ばして両頬をぐいっと持ち上げる。
「あにをふる(なにをする)」
「ほれほれ、こうやって表情を作る練習をしたほうが良いぞ。」
白の頬を上げたり、眉を寄せたりと好き勝手に弄り回す教授。
特に悪意を感じないため、どうにも振り払い難い。
そんなことをしていると、
そこに居たのは、妙にキリッとした表情の
タイトなスカートに胸元が開いたスーツルックのその女性は教授と一緒にいる白に不思議そうに首を傾げている。
その姿を見て、白はピン、ときた。
(ああ、野上冴子か。ということは、この話はワン・オブ・サウザンドか。)
野上冴子。
凄腕の女刑事で、
そしてこれは、野上冴子初登場のシナリオだ。
確か、どっかの外国から持ち込まれた王冠の展示イベントだかがあって、その王冠に重要な情報の入ったマイクロフィルムが仕込まれているからそれを盗む話だったはず。
そのうえで、盗むのに
王冠はガラスケースの中に展示されており、ケース内部のセンサーが振動を検知すると周囲に高圧電流を流すという殺意マシマシトラップが仕込まれている。
そのセンサーを破壊する必要があるのだが、王冠を展示しているガラスケースが特殊なフィルムに覆われていて、破壊が困難。
銃撃されたとしても、弾をフィルムが包み込んで無力化してしまうため、弾丸の勢いが殺されてしまう。
そこで、
一撃目で開けた穴に連続で弾丸を通すことでセンサーを破壊する、という具合である。
しかし、この作戦には大きな穴がある。
いくら
まったく同じ条件で射撃しても僅かな弾道のズレが発生するため、
今回のセンサーの電撃範囲外からの銃撃を行う場合、距離は50mにもなり、いくら
ほんの僅かでもズレてしまえば弾丸はフィルムに衝撃を吸われてしまう。
ところが、
その解決方法が
機械で大量生産される銃の中で、稀にどんな名工でも作ることができないほどの凄い精度を持った銃が生まれることがある。
千丁製造するうち一丁できればいいといわれるところから、その銃は
そして
それを用いて見事にセンサーを撃ち抜き目的のマイクロフィルムを回収する。
これが原作の流れである。
(あれ?この話って教授出てきたっけ?)
白の記憶の中では特に教授が出てきた覚えがない。
記憶違いか、それとも原作とズレが出ているのか。
(今回の依頼、なるべくついて回ったほうがいいかもしれない。)
もしかしたら、原作と大きなズレが起きているかもしれない。
道子の時も原作に登場しない不審者が道子を狙っていた。
白が張り付いていなければ、最後に親子は再会できなかっただろう。
よっぽどのイレギュラーが無ければ
さて、どうやってついていったものか。
白が考えを巡らせていると、冴子が白を指さし、
「
「あー……こいつは、なんというか。」
相手が警察ということもあり、白の正体をどういったものか
その間に、白が自分で答えた。
「冴羽 白。よろしく。」
「冴羽……?
「違う違う。ちょっと訳ありでな。うちで保護してるだけだ。」
「ふ~ん?」
冴子は訝し気に
「野上冴子よ。よろしくね、白ちゃん。」
「ん。」
ひとつ相槌を返した白は、上から下まで冴子をジロジロと見つめる。
その視線の目的が分からなかったのか、首を傾げる冴子。
「なぁに?」
「……
原作通りの素晴らしいプロポーション。
これは
まさか見た目10歳程度の少女にそんなことを言われると思っていなかったのか、目が点になる冴子。
お、おほほ、なんて愛想笑いをしている。
気を取り直したのか、気にしないことにしたのか、冴子は立ち上がると
依頼内容は記憶と概ね同じ。
違いといえば、この依頼が冴子と教授の連名であるということだ。
冴子の依頼報酬未払を理由に
「今回の依頼を受けてくれれば前回の貸しはチャラじゃ。」
とウインクをひとつ。
前回の貸しとは白の事を言っているのだろう。
それを言われると弱いのだろう、
「それと白。今回はお主にも参加してもらいたい。」
「私も?」
依頼内容としては
というか、実際に原作ではその二人でやり遂げた内容だ。
疑問に思った白がオウム返しすると、教授は頷いて続けた。
「今回の依頼はいうなれば潜入と破壊工作じゃ。お主が居てくれればありがたいのじゃが。」
「ん。そういうことなら。」
一も二もなく頷いた白に、香が声を上げる。
「ちょっと、白ちゃんにそういうのは……。」
「香、大丈夫。
香の言葉を半ば遮るように白が言う。
「それに、教授への借りは本来私のもの。
白は香に屈むように手振りで伝えると、屈みこんだ香に耳打ちする。
「
「……!……う~ん、ぬぐぐぐ、わかった、わかったわよ!」
かなりの懊悩がある様子の香だが、最後の言葉が決め手になったのか折れたようだ。
勢いよく立ち上がると、
「白ちゃんに怪我させない事!いいわね!」
「わかった、わかった。」
ある程度話が纏まったと見たのか、教授がぽんと手を叩く。
「では、まずは下見からお願いしようかのう。」
同日、夜。
冴子は元から一般公開前のレセプションに潜り込むことで下見を行うつもりだったようだ。
そのまま一般公開が行われる前に王冠に仕込まれたマイクロフィルムを回収する腹積もりなのだろう。
レセプション会場ということもあり、冴子は胸元が大きく開いたパーティドレスを。
香と白は普段着のままだが。
これはパーティドレスなどを着るのを香が恥ずかしがったことと、香が着ないことを理由にそのままの服装で行くことを白が主張したためだ。
白としては敵地にいつものコート以外で行くことが嫌だという部分もあったが、ヒラヒラのパーティードレスに抵抗があった。
香は白にドレスを着せたがったが、自分が私服で行く分強く主張できなかった。
会場内には様々な宝飾品や美術品が展示されている。
中央に件の王冠が展示されており、ちょうど今なら周囲が空いているようだ。
香が物珍しそうに近寄っていくので、白もついていく事にした。
「うわー、すっごい。綺麗ねぇ……」
どこかうっとりとした様子で王冠を眺める香。
王冠は大きな宝石がちりばめられており、豪奢なつくりになっている。
それを見た白の感想としては
(意外と防御力高そう。)
であった。
流石にマイクロフィルムは内側に仕込まれているのだろう、見えはしない。
そして、王冠のショーケースの内側にあるアンテナのような機械。
これが例のセンサーだと思われた。
(撃ち抜くだけなら訳ないか。このショーケースも原作のままっぽいな。変な障害物もないし。)
ふと、自分ならこのセンサーをどうやって攻略するだろうかと考える白。
(例のフィルムのせいでナイフの刃も止まるだろうしな。投げナイフじゃ刺さったまま止まって穴も開かないだろうし。そもそも近寄れないんじゃなぁ。)
中々どうして難しい。
自分がやるなら、この会場にある時ではなく輸送中を狙うことになるだろう。
当然
と、そんな事を考えていると不意に白の体が持ち上げられた。
(おっ?)
後ろに人が居るのは気づいていたのだが、素人丸出しの気配だったため一般客だろうと気にしていなかったのだが。
襟の後ろ側を掴まれて猫のように吊り下げられる形になった白。
その首元にナイフが突きつけられる。
「白ちゃん!」
「騒ぐな!このガキの命が惜しかったら離れろ!」
遅れて状況に気づいた香が声をあげるが、白にナイフを突きつけた男が大声を上げた。
その横に居た男も仲間のようで、こちらは懐からサブマシンガンを取り出した。
(しまった。完全に油断してた。)
まさかこんな事になるとは。
素人丸出しの男たちの様子からして、依頼の件とは関係なし。
恐らく、たまたまブッキングしただけでこいつらは依頼とは無関係の強盗だろう。
この世界の治安悪すぎんか。
どうせなら殺意やらなんやらをもうちょっと滲ませてくれたら気づけたのに。
目的が捕獲ではなく殺害、もしくは傷を負わせることだったら気づけたとは思うのだが。
(余りにも気配がモブすぎて気づかなかったぞ素人め。)
心のうちで悪態をつく白。
正直気が緩んでいた部分もあったのだろう。
少なくとも、ホワイトデビル時代ならこうはならなかったはずだ。
チラリと目線を巡らせると、
(正直すまんかった。)
目線で謝りつつ目を逸らすと、
その横に居た冴子は人質に取られた白をどうにか助けようと動こうとしたところを
(自分のケツは自分で拭けってね。これでもプロだ。)
さて、どうするかと周囲の状況を窺う。
警備員もすぐに駆け付けたようだが、白が人質に取られているため強く出られないようだ。
客とひとまとめに会場の隅に追いやられていく。
香も逃げる人の波に飲まれたようで姿が見えない。
(どうせならスマートに二人を倒せるタイミングで、だな。)
白を人質に取っている男はナイフ、もう一人は銃だ。
素人が撃つ弾なんてどこに飛んでいくかわかったもんじゃない。
万が一でも一発たりとも撃たせてしまうことはないようにしたい。
無関係の一般客や警備員にあたることもそうだが、最悪なのはショーケースにあたった場合だ。
即座に電撃トラップで全員丸焦げなんてこともありうる。
ナイフ男は王冠の前。
銃を持った男は一般客を誘導するため部屋の隅のほうで一般客たちに銃を向けている。
投げナイフの一本でもあれば違ったが、咄嗟の遠距離攻撃手段を持たない白にとっては距離がありすぎた。
どうにか二人揃うタイミングで仕掛ける必要があった。
が、その時だ。
「白ちゃんを放せ!」
「このアマッ!」
一般客の集団から抜け出してきたのだろう、香が声を上げながら飛び出した。
それも、近くにいる銃を持った男ではなく、白を捕まえているナイフを持った男に向かって。
その瞬間、複数の事が同時に起こった。
まず、ナイフを持った男が咄嗟に向かってくる香にナイフを向けた。
首元からナイフが離れた瞬間、白の鋭い肘鉄が男の胸部に炸裂。
強制的に酸素を吐き出させられた男の意識が朦朧とし、白とナイフを取り落とす。
空中でナイフを掴み取りながら着地した白が、着地と同時にもう一人の男に向かってナイフを投擲しようと振りかぶる。
と、同時になにがあったのか、白の動きが硬直してしまう。
一方銃を持った男のほうも香に銃口を向けたところで銃を取り落としていた。
銃を構えていた右手の甲に鋭いナイフが付き立っている。
冴子が投擲した投げナイフだ。
何が起こったのか男が理解する前に素早く接近した冴子が男の襟を取り地面に向かって投げ飛ばす。
悶える男の鼻先に男が取り落とした銃を突きつけた。
そのまま事前に取り出しておいたのであろう警察手帳を開いて見せた。
「警察よ。動かないで。」
懐に手を入れて銃を抜けるようにはしていたものの、特に問題は無かったのでその手を引いた。
白はその様子をみて、後ろ側に仰向けで倒れたまま意識が朦朧としている男の顎を蹴り上げて完全に意識を奪った。
香は飛び出した勢いのまま、突進するように白に抱き着いた。
「ぐえっ」
「白ちゃん怪我してない!?大丈夫!?」
香は白の肩を掴んでガクガクと揺らしながら問いかける。
「おっあっかっうぇっ」
返事を返そうとする白だが、激しく揺さぶられてしまい言葉が出ない。
そこに
「落ち着け香。白は傷一つない。そんなに揺らすと、目を回しちまうぞ。」
その言葉に幾分か落ち着いたのだろう、白を揺らすのをやめると大きく息をつく香。
「ごめんね白ちゃん。大丈夫?」
「うん。香も怪我はない?」
「私は大丈夫よ。」
そういって、優しく白を抱きしめる香。
白も心配をかけた分、特に抵抗するつもりはないようで香の好きにさせていた。
そうしていると、銃を持った男に手錠をかけて警備員に引き渡した冴子がこちらに歩いてきた。
「応援を呼んでおいたから、こっちのも拘束しちゃうわね。」
そういって完全に伸びているナイフ男に手錠をかける冴子。
冴子は男の様子を観察すると感心したようにため息を漏らし、未だ香に抱きしめられたままの白に話しかけた。
「見事な動きだったわ。……あなた、本当に何者?」
その問いに白は無表情のまま、どこか満足気に答える。
「今はただの冴羽 白。」
「ふーん?」
その返答に面白そうな笑みを浮かべた冴子は、ひとまず納得しておくことにしたようだった。
レセプション会場を後にし、着替えや用意のため一度マンションに帰ることとした
冴子はあの後駆け付けた応援の警官と共に強盗の男たちをしょっ引いていった。
今は
香は騒動で気疲れしたのだろう。
助手席で寝息を立てている。
特に会話もなく車を走らせる
赤信号で車が止まった時、
「お前さん、さっき躊躇したろう。」
「……ん。」
冴子が止めたから良かったものの、白が躊躇っているうちに香が撃たれていたかもしれなかった。
実際のところ、
白は窓の外に目線をやったまま答えた。
「殺し方しか、わからなかった。」
あの時、白が躊躇したのは、男を殺さずに制圧する方法が瞬時に思いつかなかったからだ。
発砲させずに男を止めるためナイフを投擲しようと構えた時。
白の頭に過ったのは複数通りの殺害方法だけだった。
どこにナイフを投げれば、男がどのように死ぬか。
白の経験と知識から導き出されたのはそのようなものだけで、では殺さずに撃たせずに制圧するには、というのがわからなかったのだ。
冷静になった今なら、腕を狙うなり足を狙うなりして痛みで動きを止めるだとか、いくつか方法は思いつくのだが。
こと戦闘中となると、刃物を使って殺さない程度に制圧する方法がわからない。
それが白の硬直の正体だった。
「
「俺なら殺しただろうな。」
「む。」
一切の迷いなく返された言葉が意外だったのか、白が
「自分が躊躇ったせいで誰かが撃たれるかもしれないなら、躊躇わず殺す。俺はそういう人間だ。」
「でも、
「冴子が動くのがわかっていたからな。意味もなく殺すほど冷酷でもないさ。」
「白。お前さんは今、冷酷な暗殺者ホワイトデビルから、普通の少女に戻ろうとしているように見える。いざという時に躊躇ってしまっては、この世界では生きていけない。それはよくわかっているだろう。」
「……。」
白には言葉もなかった。
全くもって
実際、今まで生きてきて白が、ホワイトデビルが躊躇ったことはない。
薬の影響ということもあるだろう。
暗殺の依頼で人殺しに対する呵責のようなものを感じたことはなかったし、それに対する疑問も覚えなかった。
今にして思えば妙な話だ。
(俺は前世で、そんなに冷酷な人間だったか?)
自分が生き残るためとはいえ、機械的に人を殺して生きてきた。
今迄何人殺したかなんて思い出せやしない。
幸い正体不明で通っていたため復讐者と相対したことはないが、それでも死に際の怨嗟の表情は見たことがある。
それに何も感じないほどドライな人間だっただろうか。
ふと前世がどうだったか考えようとしたが、殆ど思い出すことはなかった。
靄がかかったように記憶が霞んでいる。
自分は前世で、どんな人間だったのだろうか。
考え込むが、一向に思い出せなかった。
信号が青に変わり、ゆっくりと車が走り出す中
「今回の依頼、君は手を引いてもいい。今後も荒事には手を付けず、家で普通の暮らしをしてもいい。」
「それは。」
白は反射的に否定の言葉を吐き出そうとして、ルームミラー越しに真剣な目で見つめる
少し考えてから、白は再び口を開く。
「やらせてほしい。
「……そうかい。」
真剣な目をふっと緩ませた
香は助手席から後部座席に身をよじるようにして手を伸ばす。
「白ちゃん、これ。」
「これは……」
香が差し出したのは、白の使っていたサバイバルナイフだった。
「
「……うん。ありがとう、香。」
「ただし!絶対怪我をしない事!いいわね?」
「うん。」
本番の潜入は本日深夜。
潜入ルート構築から射撃ポイントまでの一番槍は、白に任された。
フックショットの元ネタは有名なヤツです。
あの説明でピンとくる人いるのだろうか。
今回、白が漫画とアニメをごっちゃになって覚えていますが、コレは作者のミスではなくわざとです。
今後もこんな感じで白の記憶違いは出てくると思います。
次回は木曜日の18:00に投稿されます。