「おーい、ティアナ」
ヴァイスと別れたスバルはすぐに林の中で訓練をしているティアナの元に向かい彼女に話しかけた。
そんな彼の呼び声に反応したティアナは視線だけ彼に向けながら訓練を続けていた。
「なに、見たとおり忙しいんだけど……ッ!」
「いや、何もくそもお前、ちょっとオーバーワーク気味じゃないか?」
「別に、これくらい、大したことないわよ……ッ!」
彼女はスバルの話を聞きながらもクロスミラージュを操ることをやめない。
そんな彼女の様子にスバルは大きくため息を吐き、疑問に思っていたことを尋ねる。
「なぁ、なんでそんなに自分を苛めるように訓練するんだ?」
「決まってるじゃない、
ティアナは一度訓練を中断し汗をタオルでぬぐいとりながらスバルの問いに答える。
「足手まとい……?」
「えぇ、だってそうでしょう?
隊長陣は全員Sランク以上、副隊長でもニアS。
エリオはあの年でもうBランク魔導師資格を持ってる。
キャロも特別な竜召喚というスキル持ち。
あんたに至っては可能性の塊。
ほかにも前衛だけじゃなく後衛のバックアップ要員まで未来のエリート揃い。
この中で凡人は私だけだもの……」
ティアナは俯きながらそう答えた。
そんな彼女にスバルは先ほどよりも大きなため息を吐く。
「話にならないな……。
まったく、お前、今
「はぁ?
あんたの目の前にいるじゃない……」
スバルの言葉に怪訝な表情を浮かべるティアナ。
そんな彼女を見てスバルは「ハッ」と鼻で笑った。
「幻影魔法じゃない方だよ、まったく。
3年も一緒にやってきたんだ、見破れないわけないだろうが。
というか、ここらへんにあるもの全部フェイク、で」
スバルが目の前にいるティアナに手を触れるとその手は彼女に触れることなく彼女の身体を通過する。
それを確かめたスバルはある方向に歩いて行った。
「あれだけの数を使いながら、自分の姿をオプティックハイドで隠すとなると……ここらへんか?」
スバルは林の中にある一本の木の前に立ち、徐に手を伸ばした。
そして……
―――フユン―――
「……ッ!」
「フユン……?」
彼は手のひらに伝わる感触に首を傾げた。
彼としては隠れているティアナの肩に触れたつもりだったのだが、どうやら違うところに触れていたらしい。
そう判断した彼はその手に納まる柔らかいものを特定するべく二度三度と手を動かした。
「あっ……ック……ちょッ!」
その感触を再確認した彼は記憶の中からそれと同じものを呼び出す。
(確か、お袋に抱かれてた時に……)
「ッいつまで触ってんのよ、この……」
それはいくつもの偶然が重なった結果だった。
オプティックハイドでティアナが姿を隠していること、彼の手にティアナのある部分が収まったこと。
そして、その感触を彼が記憶の中から引きずり出すことに夢中だったこと。
そのすべてが一致した故に……。
「バカスバルーーーッ!!」
「グハッ!?」
オプティックハイドをとき、顔を怒りとほかの感情で真っ赤に染め、片手で自分の胸を隠しながら放たれた渾身の右ストレートが彼の顎に直撃したことは偶然でしかなかった。
だが、その偶然にも彼の顎にぶち当たった拳から伝わった衝撃は彼の骨を通じ、そして、脳を揺らした。
所謂脳震盪を起こしたのである。
見事に直撃を喰らい、しかも脳を揺らされたスバルは仰向けにぶっ倒れたのだった。
気を失う直前に彼が目にしたのは顔を真っ赤にしながらも慌てて彼に駆け寄る相棒の姿だった。
「ん……?」
その後、スバルが目を覚ましたのは六課の隊舎のロビーだった。
「ここは……、ロビーか……?」
その時、彼は後頭部に柔らかさを感じていた。
彼が視線を上にあげると、端末を片手にモニターを弄っている相棒の姿が映った。
「あ、起きたのね」
「……いや、なんでこの格好?」
スバルは自分たちの格好……俗にいう膝枕の状態にあるのかを尋ねる。
「なんでって、あんた覚えてないの?」
「確か……、お前の幻影見破って、何かに触れたのは覚えてるんだけど……」
「あんた、いきなり倒れちゃったのよ。
疲れでもたまってたんじゃないの?」
身体を起こしながらスバルは頭を掻き大きく伸びをする。
「いや、しっかり休んでるはずなんだが……。
というか、なんかめちゃくちゃ顎が痛いんだが……」
「前のめりに倒れたからね。
木にぶつけたのよ」
「いや、でもなんか柔らかいモノに触れた気も……」
スバルはそこまで口にして背後からの冷たいモノを感じ口を噤んだ。
「忘れなさい」
「え、いや……、でも……」
「忘れなさい」
「はい」
逆らってはいけない。
そう告げる何かが今のティアナにはあったと後のスバルはほかの人にそう言っていたらしい。
「それで、お前なにしてたんだ?」
「何って、模擬戦に向けた訓練よ」
「訓練?
幻影魔法の?」
スバルの問いにティアナは首を縦に振った。
「ここ最近の訓練でわかったんだけど、今は射撃魔法の伸びしろが見当たらないのよ。
何かきっかけがあればいいんだけど、模擬戦までには無理だと判断したから、あたしはあたしにしかできないことを伸ばそうと思ったの」
「それで幻影魔法ね……。
で、俺が見破る前に幻影に言わせたあの言葉は何なんだ?」
ティアナは苦笑しながら口を開いた。
「あ、あれね。
なんというか、夢の中で見たあたしが言ってたのよ……。
なんか思いっきり思いつめた様子だったんだけど。
あ、あとあんたがなぜか女だったわね」
「あ?
俺が女、冗談はほどほどにしてくれよ……」
スバルは彼女の言葉に大きく肩を落としながらそう答えた。
「まったくよ、あんたと仕事だけじゃなくて部屋でも一緒なんてこっちの胃がいくつあっても足りないわよ」
「ヘイヘイ、わる~ございましたね」
「「……」」
なんてことない他愛のない話。
だが、彼らにはそれが非常に心地よかった。
「「プッ!」」
一瞬の沈黙の後、二人は同時に吹き出し笑った。
一通り笑いとおした後、ティアナはスバルに尋ねる。
「それにね、幻影の練習であんな風にしてたのは敵を欺くには味方からっていうくらいだからね。
誰か騙されてた?」
「あぁ、ヴァイスさんが見事に騙されてた。
というか、俺も近づかなきゃ気づかないぐらいのモノにはなってたぞ」
スバルの答えにティアナは「ならこの魔法はもう十分ね」と呟いた。
そんな彼女に向かってスバルは疑問をぶつける。
「それで、なんか作戦は浮かんだのか?」
「まぁ、作戦って言っていいのかわからないけどね。
あんたにも結構負担がかかるけど、それでもいいなら話すわよ?」
ティアナの試すような視線にスバルはニヤリと笑い答える。
「どんと来い。
できる範囲でやってやるさ」
「わかった、ならあんたは……」
その後、ティアナが話した作戦内容を聞いたスバルの顔は驚きに満ちていた。
奇しくも、作戦を聞いた側が驚きに表情を歪めるという関係は、二人が六課に入るきっかけとなったBランク試験の時とは逆のものだった。
スバルぇ……。
またやらかしました。
幻影を見破るのはコンビならではの出来事だと思ってやったんですけど、その先の話は勝手に彼が動き回ってしまいました。
ギンガの回といい、今回といい何かついてるんでしょうね、彼には。
今回はスバルとティアナのみの登場となりました。
登場人物が二名だけの話ってのは初めてのような気がします(笑)。
人物紹介は槍使いのあの人です。
名前 ゼスト・グランガイツ
性別 男
年齢 50代前半
最近の悩み 特務一課の追手がしつこいこと
槍使いのナイスガイ。
レジアスの旦那。
かつては首都防衛隊隊長としてブイブイいわせていた。
とある研究施設に突入する際、レジアスから突入を止められるが、違法研究者を逃がすことを良しとしなかった彼は部隊を率いて突入。
結果、戦闘機人やガジェットとの戦闘に陥り一度は命を落とした。
だが、スカリエッティによって蘇った後は、レジアスに突入の際、引き止めた理由を尋ねることを目的に日々を過ごしている(彼はレジアスが違法研究に手を出しているのではと思っている)。
ちなみに、レジアスとは結婚はしたが、籍を入れるだけで式もあげず名前すら変えていなかった。
理由は周りにそのことでからかうものがどちらにもいたので恥ずかしいということだった。
とある海の提督からは、親分と呼ばれたり、槍よりもでかい剣を持ってた方が似合うといわれたこともあるらしい。
余談だが、家庭内ではレジアスにほぼすべての選択肢を持ってかれていた。(拒否権なし)
スパロボ風精神コマンド
「不屈」「必中」「加速」「気迫」「直撃」「熱血」
スパロボ風特殊能力
「レリックウェポン」:気力130以上で発動。HPの5%を減らす代わりに攻撃力50%アップ。
「尻に敷かれるもの」:レジアスに対する攻撃50%ダウン
スパロボ風エースボーナス
「レリックウェポン」発動時にHPの減少がなくなる。