「あ~ゴホン!」
なのは弄りが終了して数分後、立ち直ったなのはは一度咳払いをして場の空気を切り替える。
「さて、さっきから話に出てきた訓練の意味って言葉だけど……。
みんなは今までの訓練はどうだったかな?」
「正直な感想を言ってみろ。
別に怒ったりしねえから」
なのはの問いに首を傾げ、ヴィータの言葉に納得するフォワード四名。
真っ先に答えたのは切り込み隊長であるスバルだった。
「めっちゃきつかったです」
「ホントに正直に言いやがったな。
ほかは?」
「基礎の訓練ばっかりだなぁ、と思ってましたけど……」
「基礎の割に応用の訓練はあんまりなかったなぁと思います」
「言ってみれば、地味でしたかね」
スバル以外の意見を聞いたなのはは苦笑しながら頷いていた。
「やっぱりそう思うよね。
地味できつい、応用もしないで基礎訓練ばっかり。
みんな不満に思ってたんじゃないかな?」
なのはのその言葉に四人は躊躇いながらも頷いた。
「本当は私も応用の訓練もしっかりやっていきたいと思ってるんだけどね。
その前にしっかりと基礎を固めないといけないって考えてるんだ。
まぁ、その理由を今から話そうと思うんだけどいいかな?」
「理由ですか……」
「そう、私が今の訓練を行うきっかけになったこと。
始まりはね……」
とある世界、そのとある国の小さな町に一人の少女がいた。
その少女はいたって普通―――実家が喫茶店をやっていて武道場があるのがふつうなのかはおいておいて―――の家の末っ子だった。
その世界には魔法なんて存在しない。
科学がある程度発達した管理外世界。
そんな世界に住む一人の少女が魔法の世界に踏み込んだとある事件。
今でいう「PT事件」。
とある研究者が自分の願いを叶えるために遺失物―――ロストロギア『ジュエルシード』―――を狙ったことから始まったこの事件は、件のロストロギアがばら撒かれた世界のとある少女と管理局所属の『アースラ』の魔導師で最悪の危機を脱した。
この事件を経て、少女は魔法という自分が自分でいられる証を手に入れた。
その後、その世界でいくつか大きな事件を収束に向かわせた少女は管理局に入り、日々任務に勤めていた。
「だけど、その女の子の身体はもうボロボロだった。
碌に訓練もせずに魔導師になった女の子は、自分の限界を超えても休もうとはしなかった」
一人話していたなのはは端末を操作し、一つの映像を映し出した。
そこには茶色の髪をした幼い少女が砲撃魔法を放っている場面だった。
「あれって、砲撃魔法……!」
「あんな小さな女の子が……!?」
「そう、その女の子には幸か不幸か才能があった。
その小さな身体では受け止めきれないほどの反動のある、砲撃に対してのね。
砲撃魔法の反動の大きさは、スバルとティアナはわかってるよね?」
「はい」
「身を持って体感しました」
スバルとティアナの返事を聞いたなのはは言葉をつづけた。
「女の子は、自分の得意とする砲撃を何度も撃ち続けた。
基礎のできていない身体にとってそれは自分をも傷つける諸刃の剣だということに気づかずにね」
やがて、その時は来た。
それはとある世界での遺跡調査隊の護衛任務だった。
少女はその日、少し体調が悪かった。
だが、彼女はその不調を無視して任務に向かった。
そして、任務終了直前に傷を負った。
「その時は陸から出向していた一尉の人に庇ってもらって事なきを得たんだけどね」
これがその時の女の子の様子、と言ってなのは映像を切り替えた。
すると、そこに映ったのは病院のベッドの上で身体中を包帯でまかれた少女の姿だった。
「この時、この女の子の身体にたまった疲労と、大小の傷、その治療のためにこんなになったんだ。
女の子の身体には無茶し続けて傷ついた部分が多くあったんだ。
そして、そんな傷ついた身体で砲撃魔法を撃っていたからね、それはもう反動が身体にすさまじい影響を与えていたんだ」
なのはは苦笑しながら続きを話す。
「それで、しばらくしてさっき話した女の子……、もうわかってると思うけど、私を助けた陸の一尉の人にね、怒られたんだ。
『基礎もできていない未熟な奴が
「「ん?」」
なのはの言葉にスバルとティアナは首を傾げたが、今は彼女の話を聞くことを優先した。
「もうね、その言葉を聞いて自分でも何をしたいのかってのが決まったんだよ。
まずは自分の身体をしっかりとしたものに作り上げるってことが第一目標になって、夢が教導官になるってことになったんだ。
私みたいに、無理して大怪我をしたりする子が少なくなるように、戦場から無事に帰ってこられるようにってね」
これで私の話はおしまい、というとなのはは手元に置いてあったお茶を口に含んだ。
「あの時は本当に大変だったんだ。
私が助けてくれた男の人に怒られてるときにフェイトちゃんが来て、勘違いしてね」
「う、なのは。
あの話はしなくても……」
「いいや、言っちゃうもんね。
さっきボケボケとかさんざん言ったこと忘れてないからね」
フェイトが「そ、そんな……」と叫んでいるのを無視してなのはは話を続けた。
「それで、フェイトちゃんってばその男の人に『そこまで言うならあなたはどのぐらい強いんですか』って聞いちゃって、なんやかんやで模擬戦になってね」
「フェイト隊長と、その人がですか……?」
「うん。
結局、フェイトちゃんの惨敗。
指一本触らせてもらえなかったみたい。
私の怪我が治った後に二人してみっちりしごかれたよ……」
あはは、となのはは苦笑いしていた。
そんな彼女にティアナが質問を投げかけた。
「あの、その男の人の言葉ってもう一度言ってもらえますか、一番印象に残ってるところを」
「ん?
『戦場で生き残りたいなら基礎をしっかりと鍛えろ』……」
「「『そうすれば生きて帰ってこられる』」」
「あれ、なんで二人がその言葉を知ってるの!?」
なのはの言葉を遮り、スバルとティアナが口にした言葉を聞いたなのはは驚きの声をあげた。
そんな彼女にティアナは苦笑しながら尋ねる。
「なのはさん、その男の人って『キョウ・カーン』って人じゃないですか?」
「え!?
なんでティアナがあの人の名前知ってるの!?
確かにある意味有名な人だけど、その言葉知ってるのってあまりいないのに!!」
なのはの驚きの声を聞きながらスバルとティアナは答えた。
「あ~、カーン教官、今は第四陸士訓練校の教官で……」
「俺たちの担当教官でした。
さっきの言葉はあの人からいつも聞かされた言葉です」
「な、なるほど……。
管理局に入ってから世界が狭いなんて考えたこと初めてだよ……。
じゃ、じゃあ、あの人の教え子を私が教えることになったわけだね。
なんだ、二人が文句言わなかった理由がやっとわかったよ」
「なのはは真っ先にスバルとティアナが文句を言うだろうねって言ってたからね」
「「なのはさん……」」
「あ、あはは……。
ごめんなさい」
フェイトの告げ口を聞いた二人はなのはにジトーとした視線を向けた。
それに耐えきれなかったなのはは苦笑すると、すぐに謝罪の言葉を口にした。
「とりあえず時間も潰せたな。
この後はどうする?」
「そろそろ解散にしないとな
訓練時間はここにいていいけど、私たちも新人どもも仕事があるしな」
「そうだね、それじゃあみんな。
今日は解散!
デスクワーク、頑張ってね!」
「エリオとキャロは明日は模擬戦があるから早めに上がってもいいからね」
「はい!」
「わかりました!」
「それじゃ、失礼します」
「ありがとうございました!」
フォワードの四人はそれぞれロビーを後にした。
その後、シグナムとヴィータもそれぞれの仕事場に向かいその場を去っていった。
そしてロビーに残ったのはなのはとフェイトの二人だけとなった。
「それで、なのは。
気になることって?」
「うん、今日の模擬戦のことなんだけど……」
「模擬戦で何かあったの?」
「スバルとティアナの作戦、どこかで見たような感じがしたの。
知識としては知らないけど、こう身体が覚えてるみたいな感じで」
なのはは頭を指で叩きながらフェイトにそう伝えた。
「確かに、外から見ててもなのははティアナのスナイプシューターを紙一重で躱していたね。
まるでそこにあるのがわかってるみたいに」
「うん。
レイジングハートが警告してくれてすぐになんか身体が動いたの。
いつもなら少し隙ができるはずなんだけど……」
「気になる?」
「ううん、ちょっと不思議に思っただけ。
あの作戦はティアナが一から考えたって言ってたし、教本やほかの戦闘データを見てもあの戦術は乗ってなかった。
確実に二人のオリジナル。
だからそれを紙一重といっても躱しきった自分がなんか変に思えちゃって」
「まぁ、時間が経てば思い出すかもしれないよ。
とりあえず今日の分の仕事しないと」
「そうだね、ごめんねフェイトちゃん。
時間取らせちゃって」
なのはの言葉にフェイトは首を横に振って微笑んだ。
「別にいいよ」
「ありがとう、フェイトちゃん」
なのはは何とも言えない気持ちを胸に抱えながらも、教え子たちが自分の訓練の意味を理解してくれたことに対して嬉しさを隠しきれないまま、その場を後にした。
どうも、ちょっと批判的な感想をもらってモチベーションがダウンしてます。
いや、批判的な意見も大事だってことはわかるんですが、やっぱりそう言うことを感想で書かれるとかなりきますね。
ここでみなさんにちょっとお尋ねしたいことが。
前話での感想で『なのはの性格改変しすぎじゃね、アンチタグつけとけよ』的な意見があったのですが、つけた方がいいでしょうかね?
感想のついでに皆さんの意見をお聞かせいただければ幸いです。
あ、ちなみになのはとフェイトの最後の会話はフラグですよ?
最後に、二週間後にテストが始まるので、しばらく更新をストップさせていただきます。
それではまた次回