魔法少年リボルバースバル   作:飛鳥

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ティアナルート 第六話

彼女(ノーヴェ)はそこでじっと待っていた。

光の通ることのない下水道の一つで。

 

『はぁ~い、ノーヴェちゃん。

 ちゃんとお仕事してるかしら~?』

 

「ちゃんとやってる」

 

彼女の耳にあまり聞きたくないタイプの声が聞こえてきた。

だが、自分から言い出したことなので文句は言わない。

 

『そう?

 ならいいんだけど……』

 

「あぁ、ちょっと待って。

 お嬢様たちが魔力弾に囲まれた」

 

彼女の目の前に一つのモニターが浮かび上がった。

ぼんやりと光るモニターを見つめたノーヴェが姉に指示を求める。

 

「どうすればいい?

 魔力弾(あれ)の大半は外側(かたち)だけのからっぽだ。

 だけど、お嬢様たちには」

 

『ま、わからないでしょうね~。

 こっちはディエチちゃんのサポートで動けないから、ノーヴェちゃんが助けてあげてね~。

 でも、ドクターに言われたことは』

 

「あくまでもサポートに徹する。

 わかってるさ」

 

クアットロは『それじゃあね~』と言って通信を切った。

通信が切れたことを確認したノーヴェはモニターも消し、再びその空間は闇に包まれる。

 

「IS発動『破壊する突撃者(ブレイクライナー)』」

 

呟くような小さな声で紡がれた言葉とともにノーヴェの足もとに魔法陣とは異なるテンプレートが展開する。

 

「エアライナー、展開」

 

ノーヴェが右手を振るうと同時にスバルたちのウィングロードと酷似した道が創られる。

ノーヴェは認識阻害用のマントとサングラスをしっかりと着用し、静かに駆け出した。

 

 

 

 

 

「クゥ……!」

 

大量の魔力弾に囲まれたアギトは悔しそうに唸り、ルーテシアもまた悔しそうに表情を歪めていた。

ルーテシアのそばに立つ人型―――召喚虫ガリューはどうにかして魔力弾を突破しようとするが、彼の足もとに彼らを囲んでいる魔力弾のうちの一発が撃ち込まれる。

 

「動かないでって言ってるの。

 そこの、召喚獣と同じなら人の言葉がわかるわよね?

 ご主人さまの安全のためには、動かない方が身のためよ?」

 

ティアナの言葉とともに一発の魔力弾がルーテシアの周囲に集められる。

それを見たガリューは構えを解いた。

 

「スバル」

 

「あいよ」

 

ガリューに戦闘の意思が無いことを認めたティアナは相棒の名前を呼び、スバルは彼女の言わんとしていることを察した。

スバルはすぐにレリックのケースを持っているルーテシアのもとに行き、ケースを手に取る、が。

 

「……」

 

「……」

 

ルーテシアはケースの取っ手をギュっと握っており、離そうとはしなかった。

そんな彼女の額に向けて左手を上げ、そして……。

 

「……アウッ!?」

 

デコピンを放った。

指先に魔力を込めた地味に痛い一撃だった。

 

「レリック確保ー」

 

「あ……」

 

決して後には残らないが手で押さえなければ痛いという非常に質の悪いデコピンを喰らった彼女からスバルは素早くケースを奪い取った。

 

「なんか弱い者いじめしてるみたいでいやだが、これも仕事なんだ。

 悪いな……」

 

ケースを手にしたスバルがルーテシアに背を向け、ティアナ達の方へ戻ろうとしたとき、ギンガの声が彼の耳に届いた。

 

「スバルッ!!」

 

「―――ッ!!」

 

その声に反応したスバルはすぐにその場から飛び退く。

その直後、彼のいた空間を黄色の道が貫いた。

 

「ウイングロード……!?」

 

ティアナ達のもとまで下がったスバルはティアナのばら撒いた魔力弾を砕いている道を見て目を見開いた。

 

 

 

 

 

「こいつは……!」

 

「エアライナー……。

 ノーヴェ……?」

 

スバルが離れた直後に彼のいた空間を貫いた(エアライナー)が彼らの周りに漂う魔力弾のいくつかを打ち砕いた。

その隙を逃さずに、ルーテシアたちは魔力弾の包囲から脱出した。

 

包囲から脱出した彼女たちのそばにエアライナーの上を駆けてきたノーヴェがマントを(ひらめ)かせながら降り立った。

 

「ドクターからの指示だ。

 お嬢様たちが危なくなったら助けるようにと」

 

「別にお前らの助けなんかなくたって……!」

 

「ありがとう……」

 

「る、ルールー!?

 ゼストのおっさんも言ってただろう!?

 こいつらにあまり関わるなって!!」

 

ノーヴェたちを嫌っているアギトはノーヴェに食って掛かろうとするが、ルーテシアがあっさりと礼を言ったために彼女に声を飛ばした。

 

「でも、あのままだったら捕まってた……

 アギトも……」

 

「うぅッ!」

 

ルーテシアの言葉に反論できないアギトは渋々といった感じでノーヴェに礼を言う。

 

「こっちにも目的があった。

 お嬢様たちはレリックの確保を。

 あたしはあの青髪と()るために来た」

 

「わかった。

 ガリュー、お願い」

 

ルーテシアの声に頷いたガリューが一足先に前に出た。

そんなガリューを押さえるためにギンガが拳を振るう。

それを見たノーヴェは向こう側でスバルが自分を警戒しているのを感じる。

 

「感謝する」

 

「さっきのお返し。

 あとはよろしく」

 

ルーテシアの言葉を聞いたノーヴェはスバルに目掛けて一気に加速した。

 

 

 

「てめぇ、いったい何者だ!?」

 

「……」

 

「だんまりかよ……!」

 

スバルは突然現れ、自分たちの妨害をしてきた目の前の人物に対してどこか既視感を覚えていた。

いつどこで見たのか彼自身にもわからないが、目の前の男か女かもわからない人物と彼は確かに会ったことがあるという確信を得ていた。

 

「シ……ッ!」

 

「……ッ!」

 

スバルの突き出した右手を、ノーヴェは難なく捌いた。

スバルの攻撃を捌きながら、ノーヴェはあることに気づいた。

 

(こいつ……、あたしを誘い込んでる……?)

 

スバルの攻撃を捌いた直後の一瞬の隙に、ノーヴェは周囲に視線を向ける。

自分よりも後方にいるルーテシアとアギト、そして自分と同じぐらい前に出てギンガと戦闘しているガリュー。

そのすべてがある一定の方向に向けてじわじわと進んでいることにノーヴェは気が付いた。

 

『いいわよ、スバル。

 このままひきつけて!』

 

『了解!』

 

『もうすぐヴィータ副隊長も来る。

 そしたら……』

 

『こいつらを止められるってことだな』

 

スバルはノーヴェに魔力弾を放ちながら、ティアナと作戦の確認をしていた。

そんな彼らの念話に割り込むものがいた。

 

『よし、中々いい判断だぞ。

 スバルにティアナ』

 

『『ヴィータ副隊長!』』

 

『私も一緒ですよ!

 状況を正確に把握した、ナイスな戦術です!』

 

 

 

(こいつは、そろそろ引く準備しとくか……)

 

一方、スバルとの拳打の応酬の中で、近づいてくる魔力反応に気づいたノーヴェは逃走を考え始めていた。

 

「ルールー! 何か近付いてきてる!!」

 

ノーヴェがそう考え始めたのと同時にアギトが声を上げた。

 

「魔力反応……でけぇっ!?」

 

「うおりゃあああああああっっっっ!!」

 

ミシミシと天井が軋む音を立てた途端に、その天井を何かが突き抜けた。

大量の瓦礫が落下し、周囲を煙が覆う。

そして、一拍置いて煙の中からリインが飛び出してきた。

 

「捕らえよ、凍てつく足枷!

 フリーレンフェッセルン!!」

 

リインが手をかざした先にいたルーテシアとアギトの周囲に風が巻き起こり、二人を一瞬で氷の中に閉じ込める。

ガリューは二人が閉じ込められたことにより、ギンガから意識を逸らした。

そして、その隙を逃すほど彼女は甘くはなかった。

 

「ぶっ飛べええええっっっっ!」

 

ギガントフォームのグラーフアイゼンをガリューに叩き付ける。

その力に押し負け、ガリューは壁まで吹き飛ばされた。

 

その様子を見ていたノーヴェはいち早く離脱を図る。

 

「逃がすかッ!!」

 

「……ッ!」

 

彼女を捉えようと接近しようとするスバル。

そんな彼の目の前で、ノーヴェは懐から取り出した円筒を地面に叩き付けた。

刹那、スバルの視界は閃光とノイズで埋め尽くされた。

 

(こいつ!?)

 

あまりにもの強さの閃光は、その場にいた全員の視界を奪った。

視界が回復するまでのわずかな隙。

だが、ノーヴェにはそのわずかな隙があれば十分だった。

スバルの視界が回復したときにはすでに彼女の姿はなかった。

 

(あいつ、俺や姉貴にジャミングを……。

 マジで何者なんだよ……)

 

スバルの疑問に答える者はだれもいなかった。

 




今回はかなり難産でした。
ノーヴェをこの話に食い込ませるにあたり、どのように絡ませるかがかなり難しかったです……。
ちなみに補足ですが、前回の終わりにティアナの張った弾幕がノーヴェに簡単に解析されてほとんどが外見だけのハッタリだと見抜かれたのは、彼女が戦闘機人が相手にいるとは想定していなかったためです。


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