魔法少年リボルバースバル   作:飛鳥

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ティアナルート 第七話

「ちっ……」

 

地下に天井をぶち抜くというとんでもない登場の仕方をしたヴィータはガリューを吹っ飛ばした方を見て舌打ちしていた。

 

「こっちもです……」

 

その横をふわふわと浮かんでいるリインも悔しそうに声を出した。

ガリューが叩き付けられたであろう壁には何物もおらず、リインの仕掛けた拘束魔法はその役目を果たすことはなかった。

 

「逃げられた、ですね」

 

リインが拘束魔法を解除すると、そこには結構な大きさの穴が空いていた。

直後、地下の空間が揺れ始めた。

 

「……大型召喚の気配があります。

 多分、それが原因で」

 

「ちっ、天井に押しつぶされる前に脱出するぞ!

 スバル!!」

 

「了解ッ!!」

 

キャロの報告にヴィータは眉を顰めながらも脱出の指示を出す。

ヴィータに名指しで呼ばれたスバルはすぐに拳を地面に叩き付け、ウイングロードを展開した。

 

「スバルとギンガが先頭で行け! あたしは最後に飛んでいく!」

 

「はい!」

 

「了解!」

 

ティアナは螺旋状に展開されたウイングロードをスバルとギンガが上っていくのを横目に、レリックのケースを持つキャロに話しかけていた。

 

「キャロ、ちょっといいかしら?

 すぐすむから」

 

「はい?」

 

「ちょっとした嫌がらせをしてやるわ」

 

ティアナの顔には悪い笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

スバルたちが地上に向かっているとき、彼らが先ほどまでいた空間の丁度真上、そこに家と同じぐらいの大きさの甲虫が鎮座していた。

名を地雷王。

ルーテシアの使役する召喚虫の一つで、今もその名の通り雷を放電していた。

 

「ちょ、ダメだってルールー!!

 これはまずいって!!」

 

地雷王を見下ろすことのできる位置、近くのビルの屋上でアギトは地雷王を見下ろすルーテシアに呼びかけていた。

故あって管理局と対立している彼女たちだったが、彼らを殺すということはしたくはなかったアギトはルーテシアに必死に止めるように叫ぶ。

 

「埋まった中からどうやってケースを探す?

 あいつらだって、局員とはいえ潰れて死んじゃうかもなんだぞ!?」

 

「あのレベルなら、多分これくらいじゃ死なない。

 ケースは、クアットロとセインに頼んで探して貰えばいい」

 

「いや、確かにそう簡単に死にそうな奴らじゃなかったけど……ってそうじゃなくて!!

 あの変態博士やナンバーズと関わっちゃダメだって!!

 さっきノーヴェに助けてもらったけどさ!!

 ゼストの旦那も言ってただろう!?

 あいつらあたしたちに隠し事が多すぎ―――」

 

アギトがそこまで言ったとき、何かが陥没する音が響き渡った。

音のした方を見ると、地雷王のいる位置を中心に円状に窪み、地雷王の発していた電撃も止んでいた。

 

「あぁ、やっちまった……」

 

その様子を見てアギトは項垂れた。

先ほどまで戦っていた相手がかなりのレベルの魔導師だということを理解していた彼女は、彼らがそう簡単に死ぬとは思っておらず、その口調は軽いものであった。

 

「ガリュー、大丈夫……?」

 

ルーテシアの問いに、彼女から少し離れたところに立っていたガリューは静かに頷く。

だが、彼(?)の左胸からは血が流れていた。

そこは丁度、最初にエリオが切りつけた場所であった。

 

「戻っていいよ……。

 アギトがいてくれるから……」

 

ガリューは返答の代わりに頭を下げ、その身体が紫に輝きその場から消える。

そして、ルーテシアが地雷王の方にも戻るように指示を出そうとする。

 

「地雷王も……!」

 

言葉を続ける前に、異変が起きた。

地雷王の真下に桃色の魔法陣が浮かび上がり、そこからいくつもの鎖が飛び出し地雷王に巻き付き拘束する。

 

「なんだ……?」

 

「召喚……」

 

脱出はするとは思っていたが、此処まで早いとは考えてもいなかった二人は動揺した。

さらに、彼女たちに向けて二本のウイングロードとヴィータが迫る。

 

「ッ……!!」

 

「くそッ!!」

 

二人が何かをする前に、彼女たちの真正面にいつの間にか現れたティアナが魔力弾を放つ。

アギトは炎弾を、ルーテシアは虚空から呼び出したダガーを放つが、ティアナには躱され、ヴィータに対しては足止めにすらならなかった。

 

「……」

 

そのままルーテシアはその場から飛び退き、高架の手摺に着地、アギトもすぐそばまで飛んできた。

だが、その直後ルーテシアには接近したエリオの手に握られたストラーダの切っ先を突きつけられ、アギトの周囲には氷のダガーが浮かんでいた。

 

「ここまでです」

 

エリオに遅れて到着したリインが二人にバインドをかけながらそう告げる。

それを追うようにヴィータ、スバル、ギンガと到着し二人を包囲する。

逃げ道を塞がれたことを理解したルーテシアは俯き、アギトももがくのを辞めて地面に降りた。

 

「子供を虐めてるみてーで、いい気分はしねーが。

 市街地での危険魔法使用に公務執行妨害、その他諸々で逮捕する」

 

 

 

 

 

ルーテシアたちが拘束された頃。

廃棄都市区画の中でも一際高いビルの屋上に二つの人影があった。

 

一人は眼鏡をかけてケープを纏った髪を二つに纏めた女性。

もう一人はマントに身を包み、身の丈ほどの大きさの何かを抱え、髪を首の後ろで一つに纏めた少女。

二人の共通した特徴は、事情を知らない者が見たら痴女と勘違いするであろうボディースーツだ。

それぞれの首のところに『Ⅳ』『Ⅹ』と刻印された金属プレートが貼り付けられている。

 

「ディエチちゃ~ん、ちゃんと見えてる~?」

 

眼鏡をかけた女性―――クアットロがもう一人の少女―――ディエチに話しかける。

クアットロよりも少し下のところに立つディエチは空を見上げながら応える。

 

「あぁ、遮蔽物もないし空気も澄んでる。

 よく見える」

 

ディエチの見つめる先、そこにはヴァイスの操縦するヘリが存在していた。

普通の人間なら絶対に認識できないそれを、ディエチの眼は確かに捉えていた。

 

「でもいいのか、クアットロ?

 撃っちゃってさ。

 ケースは平気だろうけど、”マテリアル”は破壊することになっちゃう」

 

「ふふ、ドクターとウーノ姉さま曰く、あのマテリアルが本物なら……。

 本当に『聖王の器』なら、砲撃ぐらいなら死なないから大丈夫、だそうよ?」

 

軽く笑みを浮かべながら答えるクアットロにディエチは「ふぅん」と興味なさげにヘリを見つめ、そして物体にかけた布を取り払った。

すると、小柄な少女が抱えるにはあまりにも巨大な砲身がその姿を現した。

 

「さぁて、それじゃさっそく――『クアットロ』――ん?」

 

砲撃の指示を出そうとしたクアットロの目の前に一つのモニターが映し出された。

 

「どうしました?

 ウーノ姉さま」

 

『ルーテシアお嬢様とアギト様が捕まったわ』

 

「あぁ~。

 そういえば、例のチビ騎士に捕まってましたねぇ」

 

ウーノからの報告にどこか楽しそうに答えるクアットロ。

そんな妹に呆れたようにため息を吐きながらも報告を続けるウーノ。

 

『今はセインが様子を窺っているけど……』

 

「フォローしますぅ?」

 

どこか抜けたような口調とは反対に、クアットロの視線は鋭いものに変わっていた。

 

『お願い』

 

「了解で~す」

 

ウーノの短い返答とともにモニターが閉じられた。

クアットロは眼鏡の位置を直すと、様子をうかがっているという(セイン)に念話を飛ばす。

 

「セインちゃん?」

 

 

 

 

 

 

「それで、目的は何だ?

 何でレリックを狙った?」

 

場所は移り、高架の上では拘束されたルーテシアたちに対してヴィータが尋問を行っていた。

拘束したとはいえ、危険物であるレリックを強奪しようとした二人に対して、スバルたちは周囲を囲い込むように包囲し、ケースを抱えたエリオと戦闘能力に劣るキャロの背中を守るようにギンガが立っていた。

 

「……」

 

ヴィータが強い口調で尋ねるが、ルーテシアは一向に口を開こうとしなかった。

そんな彼女に、スバルやティアナも加わって尋ねるのだが、、まったく答える気配すらも見せなかった。

 

『はぁ~い、ルーお嬢様』

 

『クアットロ……』

 

そんな彼女の頭にクアットロの声が響いた。

予想外の人物からの連絡に少し目を見開いて驚いた彼女だったが、ヴィータたちはまったく気づいていなかった。

ティアナのみ、彼女の表情の変化に眉を顰めたのみだった。

 

『何やらピンチのようで。

 お邪魔でなければクアットロがお手伝い致します♪』

 

どこか楽しそうに提案するクアットロにルーテシアは再び瞑目し頷く。

 

『お願い』

 

『はい~。

 ではお嬢様?

 クアットロが言うとおりの言葉を、その赤い騎士に』

 

 

 

 

 

 

 

「見えた!」

 

「よかった、ヘリはまだ無事!!」

 

その頃、空に現れたガジェットⅡ型の迎撃に向かっていたなのはとフェイトだったが、あからさまな陽動に相手の狙いがヘリに積んだレリックと少女にあると判断した二人は全速力でヘリの護衛に向かっていた。

少し離れたところにヘリが滞空しているのを確認した二人はほっと胸をなでおろしたが、直後に廃棄都市区画の離れたところに現れたエネルギー反応に目を見開いた。

 

『砲撃のチャージ確認!

 物理破壊型、推定Sランク!』

 

ロングアーチからの悲鳴のような報告に二人の顔に緊張が走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何かヤバイ……ッ!

 ストームレイダー、回転数上げろ!!」

 

同時刻、ロングアーチからの通信よりも早く、ヴァイスは背中を走る嫌な予感に従って自分のデバイスに指示を出す。

ヴァイスは操縦桿を握りしめ、後ろに乗っているシャマルに注意を促す。

 

「シャマル先生、しっかり捕まっててくれよ!!」

 

「え?

 きゃぁああー!?」

 

シャマルが安全ベルトをしているのを確認したヴァイスはすぐに操縦桿を倒しヘリを地上に向かわせた。

 

 

 

 

 

IS(インヒューレントスキル)・ヘビィバレル展開」

 

砲身の先に巨大なエネルギーの塊を浮かべ、ヘリを捉えたディエチが呟く。

それをディエチの後ろに立ち、眺めているクアットロが楽しそうに呟く。

 

『「逮捕はいいけど……」』

 

 

 

「『大事なヘリは、放っておいていいの?』」

 

「!?」

 

ルーテシアの言葉にその場にいた全員の顔が驚愕に染まった。

先ほどまでだんまりを決め込んでいた彼女が口を開いたと思えば、この言葉だ。

特にヴィータはその言葉に動揺していた。

 

 

 

『「貴女はまた」』

 

後ろでクアットロが何かを呟いているのを無視してディエチはカウントダウンを続ける。

だが、そんな彼女は目の前のヘリが動きを見せたことに驚いていた。

 

「気づかれた……? 

 でも、もう遅い」

 

『「守れないかもね」』

 

「発射―――ッ!」

 

刹那、凄まじい閃光とともにそれは放たれた。

物理破壊目的のエネルギー。

空を飛ぶヘリなど木端微塵にできるそれは、廃棄都市区画の空を引き裂き、そして轟音とともに空に爆炎を散らした。

 

 

 

 




今回の話はほとんどスバルが絡まないために、オリジナルの部分が出せませんでした(ちくせう

ただ、やっぱりディエチの砲撃のところなんですが、スナイパーだったヴァイスなら何かしら察することができるんじゃないかと思いまして、あのような感じにしました。
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