魔法少年リボルバースバル   作:飛鳥

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ティアナルート 第九話

「博士ー、部品取りに来ましたよー」

 

スバルはとある部屋の木製の扉をノックしつつそう告げた。

最先端の技術を扱う研究所に似合わない木製の扉が内側に開かれ、中から待ってましたと言わんばかりの笑顔でサカキが顔を出した。

 

「おぉ、スバル君、待っていたよ」

 

サカキはスバルに中へ入るように促す。

スバルが部屋に入ると、サカキは部屋の奥に置いてある本棚の本の位置を変える。

すると、カチッと何かがはまる音がして本棚が横にずれ、その場所に鋼鉄の扉が現れた。

 

「いや、いつ見てもすごいですね」

 

「そうだろう?

 やはり研究所というからには、こういった秘密の部屋の一つはあった方がいいと考えてね」

 

浪漫だよ、とサカキは楽しそうに言いながら扉を開いた。

 

 

 

 

「はぁ……」

 

スバルがサカキ博士のもとを訪ねているとき、ティアナは研究所の待合室で相棒の用事が済むのを待っていた。

先ほどの戦闘の報告書を書き始めるかとも思った彼女だったが、さすがに仕事場ではないところでそれをするのは不味いだろうと考え、結果やることがなくて退屈しているところだった。

 

「ねえ……」

 

「ん?」

 

そんな彼女に声が掛けられた。

声のした方をティアナが振り向くと、そこには一人の少女が立っていた。

その少女はツナギ姿で上半身はタンクトップという、ティアナからすれば同じ女としてその格好はどうよ、と思わずにはいられない格好だった。

 

「ティアナ・ランスターさんだよね……?」

 

「そうだけど……、あなたは?」

 

「私、サカキ博士の助手をしてるリツカ・クスノキっていうの」

 

少女―――リツカ―――は「ちょっと失礼するね」と言って手に持っていた荷物を床に置き、彼女の向かい側に座った。

 

「いや、なんかサカキ博士の部屋にいたら『これからちょっと男同士の話があるから』って言われて追い出されちゃったんだ。

 で、此処に来たらあなたがいたから声をかけてみたってわけ」

 

「サカキ博士って言ったわよね?

 なら、私のことも?」

 

「うん、スバル君から聞いてるよ。

 からかうと面白い娘だってね」

 

リツカの言葉に何時ぞやのスバルの言葉が重なって聞こえたティアナは額に青筋を浮かべながらも、初対面の人にどなるのは悪いとなんとか我慢した。

 

「アハハ、やっぱり面白い娘だ。

 あ、コーヒー飲む?」

 

「……お願い」

 

ティアナがむっとしながら答えると、リツカは笑いながら待合室に備え付けられてるコーヒーメーカーのもとへ歩いて行った。

 

「あ、そうだ、コーヒーに何いれる?

 ミルク、砂糖、塩があるけど」

 

「ミルクを……って塩なんて入れるの?」

 

研究所(ここ)じゃ当たり前だよ?

 糖分と塩分のどっちをとるかでいれるのを変えるんだ」

 

ティアナの問いに「やっぱりその反応がふつうだよね~」といいながらコーヒーを淹れはじめる。

 

「スバルの知り合いってどこか普通じゃない人ばっかりね……」

 

そう呟かずを得なかった彼女だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが……」

 

スバルの目の前には一つの部品が置かれていた。

 

「そう、以前から僕が開発していた魔力変換炉(マギリングコンバーター)の超小型版だ。

 試作型の大型版がとある戦闘に使用されてからその性能に目をつけた人がいてね。

 研究費用もそちらから出してもらえた。

 で、そのうちの正式生産型の第一号を君にね」

 

サカキは部品を手に取りながらそう告げる。

 

「大型ってどのくらいの大きさだったんですか?」

 

「一昔前の冷蔵庫並みの大きさ。

 とてもじゃないが機動戦には向かない代物だったよ」

 

我ながらよくあんなものを渡したものだよ、とサカキは苦笑しながら答える。

 

「この小型版は、性能は以前のものと変わらない。

 けど、小型化の影響から使用は一回限りだ。

 デバイスにかかる負担が尋常じゃないからね、使ったらその場でパージするように」

 

「わかりました」

 

サカキは手に取った部品をスバルに手渡す。

スバルはそれをじっと見てから、マッハキャリバーの格納領域にしまい込んだ。

 

「それと、これも渡しておくよ」

 

「ありがとうございます」

 

彼が部品をしまい込んだのを確認したサカキは近くの机に置かれた箱を手に取ってスバルに渡した。

 

「いきなり部品の他にも作ってほしいものがあるって言われたからね。

 リツカ君に頼んで作ってもらったんだよ」

 

「リツカが?」

 

サカキから手渡された箱をポケットにしまい込みながらスバルは首を傾げた。

 

「そうさ、君からの頼みだからって部品を作った直後だってのにすぐにとりかかってくれたんだ。

 あとで礼を言っておくのをお勧めするよ」

 

 

 

 

 

 

「なるほど、ティアナも苦労してるんだね~」

 

「そうなのよ……。

 まったく、こっちの気苦労も知らずにさ……」

 

研究所の待合室では、ティアナとリツカが互いのスバルに対する愚痴を零しあっていた。

以前からスバルによって様々な苦労を掛けられた二人。

初対面だというのにすでに長年の友言ってもいいほどに意気投合していた。

 

「でも、そんな彼だから気になってるんでしょ?」

 

「き、気になってなんか……ないわけでも……ないけど……。

 そ、そういうリツカはどうなのよ?」

 

「どうって?」

 

リツカの言葉に顔を紅くしながら反論するも、だんだんと声が小さくなっていくティアナ。

ティアナは自分がされた質問をそっくりリツカにそのまま返した。

 

「リツカだって、スバルとそれなりに付き合いあるんでしょう?」

 

「あぁ、そういった感情はないよ。

 あたしにとってスバル君は……そうだね、言い方は悪いかもしれないけど教科書代わり、かな?」

 

「教科書……?」

 

ティアナはリツカの言葉に首を傾げる。

 

「その言葉が一番しっくりくるんだよね。

 友達を教科書代わりってのも悪いんだけど、私の夢のための勉強をスバル君でさせてもらってるってところ」

 

「リツカの夢って……?」

 

「高性能な義手義足の開発。

 そのためには戦闘機人としての技術を利用するのが一番なの」

 

「立派ね」

 

「管理局員してるティアナも立派だよ」

 

リツカは自分のカップに淹れたコーヒー(塩)を飲み干すと、立ち上がる。

 

「ティアナの愛しいボーイフレンドも来たことだし、邪魔者は退散するよ」

 

「い、愛しいって!?」

 

ティアナの抗議を笑って躱したリツカは、部屋に入ってきたスバルのもとに向かう。

 

「やぁ、スバル君。

 希望したものを渡したんだから、しっかり頑張るんだよ」

 

「わかってますよ、リツカさん。

 ちゃんと稼働データは送りますんで」

 

リツカはスバルの当たらずも遠からずな答えに苦笑する。

 

「そっちだけじゃないんだけどなぁ」

 

「え?」

 

「あぁ、なんでもない。

 それじゃ、またね」

 

リツカは笑いながら部屋を出ていった。

スバルはそんな彼女の様子に首を傾げながらソファに座っているティアナを呼んだ。

 

「ティアナ、そろそろ帰るぞ」

 

「え、えぇ!

 チョット待って」

 

ティアナは焦った様子で答えると、荷物をまとめて部屋の出口に向かっていった。

 

 

 

 

 

「あ、そうだ。

 ティアナ、これ」

 

「ん?

 何よ、これ」

 

研究所を出て、駐車場に向かう途中でスバルはポケットの中から取り出した箱をティアナに手渡した。

箱を受け取ったティアナは首を傾げる。

 

「まぁ、開けてみろって」

 

「……。

 これって……!」

 

スバルに促されて箱を開け、中に入っているものを取り出す。

彼女の手には、橙色に彩られた星形ネックレスが握られていた。

 

「ほら、俺たちって結構長いことコンビ組んでたけど、こんなものは一つも持ってなかっただろう?

 だからちょっと博士に頼んで、作ってもらった」

 

スバルはそう言って自分の手に持つネックレスを見せた。

ティアナのものと同様に青色の星の形をあしらったものだった。

 

「あんた、タイミング良すぎよ……」

 

顔を紅くしたティアナはそっぽを向いてボソッと呟く。

 

「なんか言ったか?」

 

「なんでもない」

 

その後、二人はスバルのバイクのもとまでたどり着いた。

スバルが先に乗り、その後ろにティアナが乗る。

その時、ティアナがスバルの名前を呼んだ。

 

「その、ありがとうね」

 

横目で見た彼女の微笑みはスバルの脳裏に焼き付けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は移り、スカリエッティのアジト。

 

「ふむ……。

 いい頃合いかもしれないね。

 いいだろう、トーレ。

 あとで皆を集めておいてくれるかい?

 そろそろチンクから定時連絡が入るころだから、それがすんだら始めるとしよう」

 

「わかりました。

 それでは」

 

スカリエッティの返答を聞いたトーレは一礼すると部屋を出ていった。

それを見届けたスカリエッティはウーノに話しかける。

 

「というわけだ。

 ウーノ、すまないが資料の準備を頼めるかい?」

 

「わかりました。

 どの程度のものを用意すれば?」

 

ウーノの言葉を聞いたスカリエッティは少しも考えるそぶりを見せずに答える。

 

「すべてだよ。

 私の生まれた理由から、私の計画まで」

 

「承知しました」

 

ウーノが先ほどのトーレと同じく一礼して部屋を出ていった直後、スカリエッティのいる部屋に一つのモニターが映し出された。

 

『ドクター』

 

「やぁ、チンク。

 どうだったかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やぁ、チンク。

 どうだったかい?』

 

「ドクターの言う通りでした」

 

チンクは自身のいる部屋を見回しながら答える。

そこには様々なものがあった。

大型のコンピューター、モニター、検査用機器、そして、大型生体ポッド。

 

『やはりか、例のあれがあったんだね』

 

「はい。

 対戦闘機人用戦闘機人。

 タイプゼロ・ジエンド」

 

チンクの見つめる先、生体ポッド中には、タイプゼロセカンドと呼ばれているスバルや、彼女の妹の一人であるノーヴェと同じ顔をしたモノが浮かんでいた。

 

 

『起動はしているのかい?』

 

「いえ、これは外側だけです。

 まだ中身は完成はしていなかったようで。

 しかし、プロトタイプが数体起動しており、ⅴ型をすべて失うことになってしまいました」

 

そして、彼女の足もとには、生体ポッドの中に浮かんでいるモノと同じ顔をしたモノが五体、転がっていた。

すでにその目から光は消えていた。

 

『まぁ、ⅴ型はジエンド用の保険も兼ねていたからね。

 よしとしよう。

 それで、プロトタイプはどの程度のものだったんだい?』

 

「ガジェット以上、私たち未満といったところです。

 外側は我々と同じですが、頭の中が違いました。

 あれではただの機械と同じです」

 

『そうか……』

 

「あの、ドクターはどうやってこの施設を……?

 今まで見つけられなかったものを……」

 

チンクの問いにスカリエッティは微笑みながら答える。

 

『何、その施設を作った者は私たちのことを疎ましく思う者だということ。

 そして、その連中をさらに疎ましく思う者がいる、ということだよ』

 

「連中を疎ましく思う者……、まさか……!」

 

『おっと、それ以上は口にしない方がいいよ。

 何処で誰が聞いているかわからないからね』

 

チンクを遮ると、スカリエッティはすぐに指示を出した。

 

『では、その施設は破壊してしまってくれて構わないよ。

 というか、徹底的にやってくれ』

 

「いいのですか?」

 

『構わないよ。

 私はね、娘たちを傷つける存在を許すほど心は広くないのさ』

 

チンクは彼の言葉をうれしく感じていた。

 

「わかりました。

 それでは」

 

『うん、気を付けて帰ってくるんだよ』

 

スカリエッティはそれだけ言うと、通信を切った。

通信の切れたことで、薄暗かった部屋がさらに暗くなった。

そんな暗闇の中でチンクは一人呟く。

 

「悪いな、お前たちも目的があって生み出されたのかもしれんが、私とて自分を壊す可能性のあるモノを存在させるほどお人よしではないのでな」

 

 

 

 

 

 

 

この日、一つの山が地図から消えた。

 

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