魔法少年リボルバースバル   作:飛鳥

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ティアナルート 第十話

廃棄都市区画での戦闘から一夜明け、六課隊舎の廊下をスバルたちは談笑しながら仕事場に向かっていた。

前日に戦闘を行ったために、今日の早朝訓練は中止となり比較的ゆっくりとした仕事開始を迎えた四人だったのだが……。

 

「さてと、報告書書かないと……」

 

「ある程度纏めたといっても、これをさらに報告書に仕上げるのは面倒よね……」

 

「まったくだ」

 

互いに隣り合わせに座るスバルとティアナは愚痴を零しあいながらも手を休めることはなかった。

だが、その進み具合には差があった。

頭を働かせて指示を出すティアナと、頭は悪くはないが、身体を動かす方が落ち着くと言って憚らないスバルだ。

仕事の進行度に違いが出るのは考えるまでもなかった。

そんな時、不意にティアナに通信が入ってきた。

 

「アレ、なのはさんからだ……」

 

ティアナはなのはからの通信に首を傾げながも会話ボタンを押す。

 

『あ、ティアナ、おはよう』

 

「おはようございます。

 あの、何か……?」

 

『うん。

 ちょっと、みんなで私の部屋まで来てもらえるかな?』

 

「なのはさんの部屋に?」

 

『そう、ちょっとお願いしたい事があるんだ』

 

「はぁ……あの、お願いって」

 

『あっ!

 ごめん、それはこっちに来てから言うから、急いで来てね!』

 

「あ、なのはさ……」

 

ティアナが言い終わる前になのはからの通信が途切れる。

なのはの慌てぶりを疑問に思いながらも隣にいるスバルや、エリオとキャロを呼んでその場を後にした。

 

 

 

 

 

「なのはさん、スバル以下四名来ましたよ」

 

『あ、ゴメン!

 今、手が離せないから入ってきて!』

 

「「「「失礼します」」」」

 

一言断って部屋へと入る四人。

すると、そこにはなのはと、彼女のスカートを握りしめている涙目の金髪の少女がいた。

 

「あれ、その子って……」

 

「エリオとキャロが保護した子だよな」

 

「うん、そうだよ。

 名前はヴィヴィオ。

 ほら、ヴィヴィオ、自己紹介しよう」

 

「……ヴィヴィオ、です」

 

なのはに促されておずおずとスバルたちを見て、小さな声で挨拶をする少女―――ヴィヴィオ。

 

「なのはさん、確かこの子ってまだ病院なんじゃ……?」

 

「そうなんだけどね。

 今朝、様子を見に行ってから離れてくれなくて」

 

なのはは苦笑しながら答える。

そして、その続きを念話で伝える。

 

(それに、この子の身辺警護もしないといけないし)

 

(あぁ、なるほど……)

 

なのはの言葉に、ヴィヴィオの特異性を思い出すスバル。

彼女のような小さな女の子が通るはずのない下水道を通り、レリックのケースを運んでいたこと。

さらに保護した彼女、もしくは同時に確保したレリックを狙ってヘリの撃墜未遂まで起こされる始末。

どこからどう見ても普通の少女ではなかった。

「私、今から少し出かけなきゃいけないんだ。

 だから、私が戻るまでヴィヴィオの相手をしてあげて欲しいんだけど……」

 

「え……」

 

なのはの言葉にヴィヴィオはこの世の終わりが来たかのような表情を浮かべる。

要は泣き出す直前である。

 

「やぁだあああっっ!

 いっちゃやだぁぁぁぁっっ!!」

 

「ああ、ごめんね。

 お願いだから泣かないで~」

 

わんわんと泣きはじめるヴィヴィオに困り顔のなのは。

スバルたちは目の前の光景に苦笑する。

 

”エース・オブ・エースにも勝てない者がいた”

 

四人の心が一つになった瞬間だった。

 

泣き止む気配のないヴィヴィオになのはがほとほと困りだしたとき、ティアナがスバルに目くばせし、スバルはそれに頷く。

ポケットから何かを取り出し泣いているヴィヴィオの口の中にそれを放り込んだ。

 

「ふぇ……」

 

「ほ~ら、甘いだろう?

 もう一個あるぞ?」

 

彼が取り出したのは一口サイズのチョコレートだった。

口の中に甘いものが入り込んだことで、泣き止んだヴィヴィオの前に彼はそれを持った手を右に左にと動かす。

その動きに合わせてヴィヴィオの視線も右に左にと動いた。

 

「ほらほら、もう一個ほしいなら、こっちに取りに来るんだよ~」

 

「ん~……」

 

なのはと離れることに不安を覚えるヴィヴィオだったが、一度知ってしまったチョコレートの味には抗えず、テテテ、とスバルのもとに歩いて行く。

 

「ヴィヴィオ確保~」

 

「わッ!」

 

スバルは近づいてきたヴィヴィオの両脇に手を入れて持ちあげた。

急に持ち上げられたことにビックリしたヴィヴィオは手足をバタつかせるが、小さい子供なうえに、日々鍛えているスバル相手には虚しく空を切るだけだった。

 

「う~!」

 

「あらら、ご機嫌ななめか……。

 なら、こうだ!!」

 

「きゃぁぁーッ!」

 

スバルはヴィヴィオをさらに高く持ち上げ、続けてその場をぐるぐると回り始めた。

はじめは怖がっていたヴィヴィオだったが、次第にその声は楽しむ声になっていき、スバルが彼女を下におろしたときにはもっととせがんでいた。

 

「な、なんかスバル、小さい子の相手に手慣れてる……?」

 

「救助部隊の時に、小さい子を落ち着かせるために勉強してましたからね、あいつ」

 

「「あ、あはは……」」

 

自分が手こずったヴィヴィオをいとも簡単に泣き止ませたスバルになのはは呆けたまま呟いた。

 

 

 

「じゃぁ、ヴィヴィオ。

 なのはさんが帰ってくるまでいい子にできるか?」

 

「いい子にしたらさっきのまたやってくれる?」

 

「おう、もっと面白いこともしてやるぞ」

 

「じゃあ、待ってる!」

 

ヴィヴィオはそう言って花のような笑顔を浮かべた。

その笑顔に安心したなのははヴィヴィオに手を振って部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

ティアナ達がなのはの部屋に呼び出されて数時間後。

ティアナは一人ため息を吐いていた。

 

「なんで私が報告書全部やらなきゃいけないのよ……」

 

そう、現在ティアナはスバルの分の仕事まで請け負っていたのだった。

理由は単純明快。

ヴィヴィオがスバルから離れなかったからだ。

なのはが去った後、仕事に戻るためになのはの部屋を後にしようとしたスバルたちだったが、ヴィヴィオが涙目で彼らを見ていたのだった。

そんな彼女を見たティアナは一言、「あんたの分まで私がやっとくから」と。

 

「あんなこと言わなけりゃよかった……」

 

そう、ティアナは失念していたのだ。

戦闘、それもレリックを狙ったガジェットのみならず、敵対勢力までいることが判明した今回。

その報告書がいつも通りに済むはずもなかった。

30%増しの量を二人分。

明らかに普通なら終わらない量である。

だが、ティアナはデスクワークに限って言えばフォワード四人の中では一番効率よく終わらせることができる。

実際、すでに自分の分は終わらせて今はスバルの報告書に取り掛かっていた。

 

「それにしても、スバルと張り合うほどの格闘技能って、このマント野郎はいったい何者なのよ……」

 

ティアナはマッハキャリバーからパソコンに転送した戦闘データを見ながら呟く。

 

(あのマントは何らかのからくりがある。

 たぶん認識阻害系の何か)

 

モニターに映るマントを着込んだ人物を見ながらティアナは手を動かしながら頭の中で相手の手札をまとめていく。

彼女が、ノーヴェの纏ったマント(正確にはサングラスにもだが)に掛けられた認識阻害の能力を見抜いたのは、単に彼女自身の持つ幻術魔法の中に認識阻害系のものがあるからである。

 

(それに、あのウィングロードに似たアレ。

 スバルはウィングロードは先天性のモノだって言ってた。

 なら、あれは別物……?

 いや、それにしては使い方から何まで似すぎてる……)

 

そこまで考えたティアナは報告書を作る手を止め頭を掻きむしる。

 

「って、あたしがそこまで考える必要はないわね。

 こういったことは上に任せるとしましょうかね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヴィヴィオ、いい子にしてるかなー」

 

「もう、なのはは心配しすぎだよ。

 エリオとキャロの話だと、スバルがずっと一緒にいてくれてるらしいから、大丈夫だよ」

 

用事を終えたなのはとフェイトは六課の寮の廊下を並んで歩いていた。

心配そうにヴィヴィオのことを話すなのはに、フェイトは苦笑しながらそう言う。

だが、その言葉を聞いたなのははさらに心配そうにフェイトに顔を近づけ口を開く。

 

「スバルがずっと一緒にいるから心配なんだよ!

 スバルがヴィヴィオに変なこと教えてたらどうするの!?」

 

「変なことって……」

 

「私やだよ!?

 ヴィヴィオがスバル張りに熱血な性格になったら!

 フェイトちゃんだって、エリオやキャロが熱血になったらいやでしょ!?」

 

「ん~。

 確かにキャロが熱血ってのは合わないかもしれないけど、エリオならあまり違和感ないかな……?

 それに、スバルと一緒にいるってことはいいことでもあるし」

 

「なんで?」

 

「最近エリオとキャロがわがまま言ってくれるようになったからかな?

 二人はスバルにもっとわがまま言うようにした方がいいって言われたからって言ってたけど。

 この間ちょっとスバルとエリオの部屋に行ったら何か作ってたし」

 

「フェイトちゃん、男子の部屋をこっそりのぞくのはどうかと思うけど……」

 

フェイトの親バカぶりに今度はなのはが苦笑しながら今度からは男子寮に入るのは遠慮するように告げる。

二人は、そんな話をしていると寮母のアイナからヴィヴィオがいると言われた部屋に辿り着いた。

 

「ヴィヴィオ~、いい子にして……『いくぞ、これが俺の全力全壊!』……え?」

 

なのはが部屋のドアを開け、声をかけるが胡坐をかいたスバルの膝の上に座ったヴィヴィオは彼女の声など聞こえていないようでテレビの画面に夢中だった。

 

『闇を切り裂く、閃光の刃……!』

 

『星よ集え、闇を切り開く刃となれ!』

 

テレビの画面に映っているのは少年たちがそれぞれの杖から必殺の魔法を放つ場面だった。

 

『プラズマ……セイバァーーッ!!』

 

『ハイペリオン……スマッシャァーーッ!!』

 

「ナニコレ?」

 

「アニメ、だよね……?」

 

「あ、なのはママ、フェイトママ!!」

 

「お疲れ様です、なのはさん、フェイトさん」

 

テレビ画面が魔法の表現でいっぱいになったときに呟いたなのはの声に反応したヴィヴィオが二人の存在に気づき二人に駆け寄った。

そんな彼女を受け止める二人に向かってスバルが声をかける。

 

「スバル、さっきのは?」

 

ヴィヴィオを抱き上げたなのはがスバルに尋ねる。

 

「あぁ、魔砲戦記マジカルバスターのことっすか?」

 

「何それ……?」

 

アニメの題名を聞いただけではわからない二人は首を傾げる。

 

「数年前にあったアニメですよ。

 とある世界で開発された強大な力を持った宝石が、魔法の文化のない世界にばら撒かれて、それを巡ってその世界のごく一般の少年と、宝石を使って大切な人を取り戻そうとする少年の物語ですよ。

 すごい人気で、放送終了後に映画化決定で、今度は実写版があるって話です。

 なんでも実際に起きた事件をもとに作ってるらしいですよ?」

 

「へ、へぇ~」

 

「すごいんだよ!

 こう、ドカーンってなってズバーンって」

 

(なんか聞いたことあるような話だな~)

 

ヴィヴィオの幼い子供ならではの擬音語を用いた会話に苦笑しながらそう考えるフェイトだった。

 

「さてと、なのはさん達が帰ってきたなら、俺は仕事に戻りますね」

 

「あ、うん。

 ありがとうね、スバル」

 

「いえ、ヴィヴィオと一日遊んで俺も楽しかったですし」

 

「スバルお兄ちゃん、もう行っちゃうの?」

 

ヴィヴィオの少し悲しそうな顔を見たスバルは彼女の頭を撫でながら優しく語り掛ける。

 

「お兄ちゃんは少しやらないといけないことがあるんだ。

 だから、今度はみんなで遊ぼうな」

 

「みんな?」

 

「そう、俺やなのはさん、フェイトさん、ティアナにエリオ、キャロ、ほかにもいっぱいの人とな。

 だから、今はなのはさん達と一緒に遊ぶんだぞ?」

 

「うん……!」

 

スバルの言ったことを子供なりに理解した彼女は笑顔で答える。

そんな彼女に背を向けてスバルは仕事場に足を向けた。

 

 

 

 

 

「ほら、あとはあんたが直接やらないといけないやつだけなんだから。

 まったく、大変だったんだから、感謝の一つぐらいはしなさいよ」

 

「うむ、褒めて遣わそう」

 

「調子に乗るな!」

 

 




ロリっ子です。
ロリっ子ですよ(大事なことなので2回ry
スバルの子供との付き合い方は必要なことなので勉強して修得したものです。

ストックが尽きたので、明後日の投稿はなしということにさせてもらいます。
それでは
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