魔法少年リボルバースバル   作:飛鳥

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ティアナルート 第十四話

広い空間でモノを打ち付ける打撃音が響く。

その音を打ちだしている二人の人物は互いに拳や蹴りを繰り広げていた。

 

「ハァッ!」

 

「デヤァ!!」

 

二人の人物―――ギンガとスバルは管理局の制服ではなく、訓練の際に着る動きやすい服装で互いの攻撃を捌いていた。

 

ギンガの拳をスバルが肘を使い逸らせば、その隙を突くようにギンガの蹴撃が繰り出される。

 

「―――ッ!」

 

「なっ!?」

 

だが、スバルはその蹴り上げられたギンガの右足を手でつかみ、そこを支点に側転の要領で彼女の側面に回り込んだ。

スバルの予想外の行動に虚を突かれたギンガだったが、スバルが彼女に拳打を放つ前にその拳を蹴り上げた勢いに乗せた左足で蹴り飛ばす。

 

「これで……ッ!」

 

「まずッ!?」

 

拳が蹴り上げられたことによって体制を大きく崩されたスバルの脇腹にギンガの回し蹴りが見事に極まった。

スバルは蹴りの勢いのまま壁まで吹き飛ばされた。

 

「あ、スバル、大丈夫!?」

 

「な、なんとか……」

 

予想以上に勢いの乗った蹴りが入ったことに驚いたギンガが彼のもとに駆け寄る。

そんな彼女に対してスバルは痛みを堪えながらも蹴られた部分を彼女の見えるように腕をどかした。

 

「あ……」

 

そこには蹴りが極まる直前にスバルが咄嗟に張った防御魔法の魔法陣が浮かんでいた。

さて、今回なぜギンガが機動六課に来ているのかというと、部隊長であるはやてが戦力不足を感じ、それをレジアス中将に相談したところ、彼女から陸士108部隊に彼女の派遣の要請が下ったという理由だった。

 

「はい、二人ともご苦労様」

 

スバルが防御をギリギリで成功させていたことに安堵していたギンガのもとになのはをはじめとした隊長、副隊長が揃って近づいてきた。

 

「どうだった、ギンガ?」

 

「そうですね……。

 魔法の使用のタイミング、方法、体術。

 どれもが以前よりも巧くなってました」

 

ギンガは壁際でティアナから受け取ったスポーツドリンクをがぶ飲みしている弟を見ながらそう答える。

 

「正直、予想以上でした」

 

「まぁ、私たち相手に組み手をやって上手くなってなかったら、逆におかしなことだがな」

 

「特にザフィーラ相手にスバルはよく組み手してたからな」

 

ギンガはシグナムとヴィータの言葉に首を傾げた。

彼女も普段二人が剣やハンマーといった得物を扱う騎士だということを知っていたために、組み手をやっている姿がどうも思い浮かばなかったのだ。

 

そんな彼女の様子に気づいたシグナムは肩を竦めながら口を開く。

 

「私たちとて時と場合によっては徒手空拳で戦うときもあるさ」

 

「狭いところじゃ得物は逆に邪魔になるからな。

 そう言った時のことも考えなきゃならないんだよ。

 特に、なのはは近づかれたときのために結構スバル相手に格闘戦の訓練してるしな」

 

「そうなんだよね~。

 スバルって基本に忠実な格闘家としてもかなりの腕だから、訓練相手に持ってこいなんだよ。

 おかげで、シグナムさん達に接近されてもそれなりに相手できるようになったんだ」

 

「そ、そうなんですか……」

 

ギンガは、自分が記憶していたなのはの戦い方を思い出し、戦慄を覚えた。

砲台役としての魔力砲撃を放つなのはにとっての弱点の一つである接近戦。

それを古代ベルカ式の使い手であるシグナムたち相手に落とされないほどの実力を持つということがどういうことなのか、それを理解してしまったギンガは引き攣った笑顔を見せるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、今回の任務もこの間と同じよ」

 

数時間後、スバルたちフォワードメンバーは地下道の入口で簡単な作戦会議を行っていた。

出向したばかりであるギンガは今回は彼らのフォローという理由でこの場にはいない。

 

「この地下道の先にガジェットと、正体不明のエネルギー反応が確認されたわ。

 で、ロストロギアの可能性があるから、私たちがガジェットを叩いて可能であればブツを確保する。

 何か質問は?」

 

地下道の地図を広げていたティアナが周りの三人に視線を向ける。

スバルたちからの質問がないのを確認したティアナは地図を収納する。

 

「さぁ、さっさと終わらせるわよ」

 

「「「おう!」」」

 

 

 

 

 

 

 

「あらら、もう突破されたか~」

 

スバルたちが地下道のガジェットを相手にしているころ、その奥の方で彼女はモニターを眺めながら困ったように呟いた。

モニターの中にはⅢ型に四本の足を取り付けた改良型であるⅢ型改も数機映っていた。

 

「やっぱりガジェットたちじゃ相手にならないか~」

 

「Ⅲ型改もあっさりやられちゃってるっすねー」

 

水色の髪の少女と、特徴的なしゃべり方の少女―――セインとウェンディはモニターに映るガジェットのやられっぷりを見ながらのんびりとした会話を繰り広げていた。

 

「まさかお前の現地稼動試験の時に連中と出くわすとはね……。

 クア姉~、どうすればいい?」

 

セインが念話で別の場所にいるクアットロに尋ねる。

すると、彼女たちの目の前にクアットロの映ったモニターが映し出される。

 

『ウェンディちゃんにもしものことがあったらまずいから、帰ってらっしゃい。

 あ、Ⅲ型改は全部出しちゃっていいわよ~。

 どっちみち、生産ラインはもうできてるし』

 

「はいよ~」

 

「あー、メガ姉、メガ姉。

 ちょっといいっすか?」

 

セインがモニターを消そうとしたとき、ウェンディがクアットロを呼び止める。

 

『なぁに、ウェンディちゃん?』

 

「あたしも一当てしたいっす!

 せっかく外に出たのに、何もしないで帰るのは嫌っす!」

 

『ん~、なら一発だけならいいでしょう。

 一発撃ってすぐに帰ってきなさい。

 あなたたちをこんなところで失うわけにはいかないってことはわかってるわよね~?』

 

「やったーッす。

 ありがとうっす、メガ姉!」

 

ウェンディはすぐに自分の固有武装である『ライディングボード』を取り出し構える。

 

「さてと……ここっす!」

 

彼女の放った弾丸は遠く離れた、スバルたちと戦闘を行っているⅢ型改の背後に直撃する。

だが、直撃しただけで爆発は起きなかった。

 

「アレ、不発か?」

 

「違うッすよ~。

 信管を遅延型にしてるだけっす。

 そして……」

 

セインに説明するウェンディが手を『ボンッ』と開くと同時にⅢ型改の中にめり込んだ弾丸が周囲に衝撃波を撒き散らす。

 

「Ⅲ型改自身のエネルギーも全部一気に爆発させるっす。

 相手が並の魔導師なら行動不能になる範囲攻撃っすよ」

 

Ⅲ型改の爆発を確認したウェンディはライディングボードに寝そべりながらセインのもとに戻ってくる。

そんな妹を見ていたセインはモニターに映る光景を見て楽しそうに笑みを浮かべた。

 

「ウェンディ、やっぱり連中、並の魔導師じゃないみたいだな」

 

「ほえ?」

 

「ほら、蒼髪のやつが前面を覆う形で障壁張ってる。

 で、爆発の瞬間にチビ騎士とチビ竜、それにオレンジツインテールの魔力弾がこっちに向かってる」

 

「は~、やっぱやるもんすね~。

 さすが、ノーヴェがお熱なスバるんっす」

 

「ん?

 何か言ったか……?」

 

「いやいや、何も言ってないっすよ~。 

 ささ、さっさと帰るッすよー!」

 

ウェンディの様子に首を傾げながらもセインはその場から彼女たちを連れて地面に潜っていった。

エリオとフリードがたどり着いたときには、そこには誰かがいたという痕跡しか残されていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局、今回ははずれだったってことか?」

 

任務を終え、機動六課の隊舎に戻ったスバルとティアナは二人で缶コーヒーを飲みながら並んで海を眺めていた。

 

「どうかしらね。

 エリオの話だと誰かがいた痕跡があるみたいだけど……」

 

「地下道だからな……。

 ホームレスなんかの可能性もあるし……」

 

スバルは缶の中に残ったコーヒーを一息に飲み干し、大きく息を吐いた。

 

「そうなのよね……。

 でも、最後の攻撃、自爆にしては様子がおかしかった……」

 

「確かに……ん?」

 

ティアナの言葉に頷いたスバルだったが、彼のポケットで端末が震えるのを感じた彼はティアナに断りを入れてその場から離れた。

 

「非通知……?」

 

端末の画面に映る番号に見覚えがなかったスバルは首を傾げながらも通話ボタンを押した。

 

「はい、スバル・ナカジマですが」

 

『……あたしだ』

 

耳にあてたスピーカーから聞こえてきた声に聞き覚えのあったスバルは驚きに目を見開いた。

 

「あぁ、あの時のメガネっ子か」

 

『眼鏡っ子って……。

 まぁいい。

 今いいか?』

 

「どうした?

 何か困ったことでもあったか?」

 

『いや、そうじゃない。

 ただ……』

 

「ただ、なんだ?」

 

スバルは相手の声が少し暗いのを感じ、ゆっくりと問いかける。

 

『こっちの事情でな、もう前みたいには会えない。

 何も連絡なしにはどうかと思って、連絡しただけ』

 

「会えない、か。

 まぁ、その事情とやらは聞かないでおくよ」

 

『すまねぇ……』

 

「まぁ、こういうこともあるさ。

 いつかまた、俺とお前の道が交わるのを祈るだけだな」

 

そう言ってスバルは一つ大事なことを聞き忘れていたことを思い出した。

 

「なぁ、名前は?」

 

『名前……?』

 

「次にあったときに名前知らなかったら不便だろ?」

 

『……ノーヴェだ』

 

「ノーヴェか、いい名前じゃないか」

 

『……あぁ、あたしも気に入ってる。

 碌に話もできなかったけど……、またな』

 

「またな、ノーヴェ」

 

時間にして数分の会話。

だが、その数分で相手がかなり悩んだ末での別れだということをスバルは直感で感じていた。

 

「出会い別れは人生にはつきものってことか。

 あぁ、あいつとは気が合いそうだったんだがな……」

 

一人呟くその声はどこか寂しさを感じさせるものだった。

 

 

 

 

 

「またな……か」

 

スカリエッティのアジトの周辺の森の中で彼女は先ほどまで使っていた端末を目に呟く。

そして、その端末を素手で握りつぶした。

 

「何を迷ってるんだ、あたしは。

 もう決めたんだろ。

 ドクターの夢を手伝うって」

 

ノーヴェは懐から一枚の紙切れを取り出す。

それは以前、スバルから渡された彼の連絡先が書かれたメモ用紙だった。

 

「さようならだ、スバル。

 もう、あたしとお前の道は交わらねぇよ……」

 

ノーヴェはそう呟き、メモ紙をバラバラに引き裂いた。

ふと不意に吹いた風にそのバラバラになった紙は吹き飛ばされ、空に巻き上がっていった。

ノーヴェはそれを見た後、森の奥に向かって歩みを進め、その闇に消えていった。

 




今回は少し短めでした。
さて、今回はギンガの六課加入とちょっとした戦闘、さらにノーヴェがスバルへのつながりを断ち切るという少し最後は重い感じになってしまった。
すまない、ノーヴェ。
君のヒロインとしての出番はノーヴェルートでしっかりと作るから。
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