魔法少年リボルバースバル   作:飛鳥

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ティアナルート 第十五話

「はぁ、はぁ……」

 

機動六課の訓練スペースでギンガは息を荒げていた。

彼女の周囲ではエリオとキャロが座り込み、フリードもエリオの頭の上でぐったりしていた。

 

「ねぇ、スバル……?」

 

「ん?

 なんだ、姉貴?」

 

彼女の隣で水を飲んでいたスバルは彼女の方を見て首を傾げた。

 

「これって、いつもやってるの?」

 

「たまに、だけど結構な頻度でやってる」

 

ギンガの言うこれというのは、フォワード四人対前線隊長四人の模擬戦のことである。

先日ギンガが六課に出向になった後、初めてこの模擬戦が行われたのだった。

 

「もう一ついい?」

 

ギンガの問いにスバルと、彼の隣で汗をぬぐっていたティアナが頷く。

 

「なんで二人は息切らしてないの?」

 

「「慣れました」」

 

「え?」

 

「「慣れました」」

 

二人の息ぴったりでありながら棒読みな答えにギンガは「慣れたんだ」と呟くことしかできなかった。

 

 

 

 

「はぁ~、疲れた……」

 

「私は疲れたってレベルじゃないんだけどね……」

 

「大丈夫ですよ、ギンガさん。

 次第に慣れますから」

 

午前の訓練を終えた五人は汗をシャワーで洗い流し、その足で食堂に向かっていた。

その途中でスバルは後ろから自分の名前を呼ぶ声に反応して振り返る。

 

「スバルお兄ちゃーん!」

 

「ん?」

 

スバルが振り返ると、その視線の先には彼の方に走ってくるヴィヴィオの姿が映った。

それを認めると、スバルは走ってくるヴィヴィオを受け止める体制をとり、ヴィヴィオもそこに向かって走ってくる。

 

「おっと」

 

そしてスバルは、走って彼にぶつかってきた彼女を受け止めると、その勢いのままヴィヴィオの身体を持ち上げ、その場でぐるぐると彼女を回した。

 

「わ~い!」

 

ヴィヴィオの楽しそうな表情を見たギンガは微笑みながら口を開いた。

 

「小さい子に好かれるのは相変わらずなのね」

 

「えぇ、たぶんスバルがなのはさん達以外なら一番ヴィヴィオに懐かれてますしね」

 

その後、ヴィヴィオを追ってきたなのはとフェイトも交えて大人数で食堂へ向かうこととなった。

そして、食堂にて……。

 

「ヴィヴィオ、ピーマン残したらダメだよ?」

 

「う~、苦いのきら~い……」

 

「そんなこと言わないの」

 

「いや~」

 

ヴィヴィオの頼んだチキンライスの中にピーマンが入っており、まだ小さい子供であるヴィヴィオにとってピーマンの苦さは食べられるものではなかったようだ。

フェイトが何とか食べさせようとするが、ヴィヴィオは頑なにそれを拒む。

それに困った表情をしたなのはがスバルに尋ねる。

 

「ねぇ、スバル。

 何かいい手はないかな?」

 

「そうですね……」

 

なのはに頼まれたスバルは少し考えた後、自分がスープを口に運ぶために取ってきたスプーン(未使用)でヴィヴィオのチキンライスを一口分掬って彼女の口に近づける。

 

「ほらヴィヴィオ、あ~ん」

 

「い~や~!」

 

スバルがスプーンを近づけるものの、ヴィヴィオは顔を背けてしまう。

そんな彼女にスバルはため息を吐きながら、口を開いた。

 

「ほら、好き嫌いしてると、なのはさんやフェイトさんみたいな格好良くて綺麗な大人になれないぞ?」

 

「え……」

 

スバルの言葉に小さく声を出すヴィヴィオ。

彼女はすぐ隣にいるなのはとフェイトを見る。

 

「……食べる」

 

「ほら、あーん」

 

「あーん……にが~い……」

 

ヴィヴィオはスバルから差し出されたスプーンを口に含み、我慢しながらもちゃんとそれを飲み込んだ。

 

「よし、ちゃんと食べられたじゃないか~。

 偉いぞ」

 

「ヴィヴィオ、偉い……?」

 

ヴィヴィオはなのはの顔を見る。

そんな彼女に向かってなのはは頷きながら彼女の頭を撫でる。

 

「うん、偉い偉い」

 

「えへへ……」

 

微笑ましいひと時である。

そんな光景を見ながらティアナはぼそりと呟いた。

 

「ヴィヴィオが我慢して食べてるんだから、好き嫌いするような人はいなくなるでしょうね~」

 

「……」

 

ティアナの言葉を聞いた一人の少女の肩がビクついた。

その少女は隣の少年の皿に移そうとしていたニンジンを静かに引っ込めた。

 

「頑張ります……」

 

「よろしい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「これがあぁなって、こうなって……」

 

午後、機動六課の隊舎でスバルは一人で苦手なデスクワークをこなしていた。

そんな彼のもとになのはがカップを二つ持って近づいてきた。

 

「やっほー、スバル。

 仕事捗ってる?」

 

「ぼちぼちです。

 いや、デスクワーク苦手で……」

 

「まぁ、今日はライトニングは現場検証、副隊長も別の部隊との共同任務。

 ギンガも一度108に戻って引継ぎの最終調整、ティアナも部隊長に連れていかれたしね」

 

「本局に、でしたよね?」

 

「うん。

 はい、コーヒー」

 

なのはから手渡されたカップを受け取りスバルは一口、口に含む。

一口、それだけでスバルはこのコーヒーがインスタントのものではないということに気づいた。

そして、そのコーヒーを以前飲んだことがあるということも。

 

「なのはさん、このコーヒーって……」

 

「あ、気づいた?

 そうだよ、翠屋のオリジナルブレンドコーヒー」

 

なのははカップを口に運び、一口飲む。

 

「まぁ、お父さんのに比べればまだまだなんだけどね?

 でもこれでも喫茶店の娘ですから」

 

「いや、それでもおいしいですよ。

 インスタントのものと比べるのは失礼なぐらいに」

 

「あはは、そう言ってくれるとうれしいな」

 

なのはとスバルはその後、他愛のない話をしばらくし続けた。

結果、スバルの仕事が進まなかったのは話すまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミッドチルダのはずれにある森の中に巧妙に隠されたアジトの一室で彼は周囲に立つ娘たちに顔を向ける。

 

「さて、皆。

 報告を聞かせてもらえるかい?」

 

「は~い、まずガジェットの生産ラインの方はすべて全力稼動中で~す。

 でも、ⅴ型の生産はしなくてもいいんですか~?」

 

彼―――ジェイル・スカリエッティはクアットロの質問に首を縦に振って答える。

 

「あれは対ジエンド用に保険代わりとして開発したものだ。

 そのジエンドもない今、ⅴ型は必要ないよ」

 

スカリエッティから感じられる有無を言わさない雰囲気にクアットロは驚きながらも引き下がる。

 

「私をはじめ、全員のメンテナンスは完了しています」

 

「それは結構。

 ウーノ?」

 

「はい、先ほどドゥーエからの報告がありました。

 『掃除は完了した』そうです」

 

スカリエッティはトーレとウーノの言葉を聞き、目をつむる。

そして、その瞼を開いたとき金色の瞳が怪しく輝いた。

 

「では、先行潜入組の皆は出発の準備をしてくれ。

 目標は管理局、ミッドチルダ地上本部及び、聖王の器であるヴィヴィオ君、タイプゼロ・ファースト、ギンガ・ナカジマ君。

 特に彼女(ギンガ君)の方は可能な限り連れて帰るように」

 

スカリエッティはそこで言葉を区切ると、大降りに腕を広げた。

 

「さぁ、私の夢の懸け橋への第一歩への下拵(したごしら)えだ。

 皆、頼んだよ?」

 

ウーノを除いた10人は静かにその部屋を出ていった。

彼女たちを見送ったスカリエッティは一人呟く。

 

「もう、後戻りはできないな……。

 だが、もう迷ってはいられないのだ……」

 

ウーノが見た彼の目は、人が何かの覚悟を決めた目だった。

 

 




ちょっとした日常回でした。
次回から地上本部防衛編が始まりますよ~。
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