9月12日 PM5:57
公開意見陳述会が開始されすでに数時間がたった。
すでに日も傾き、その姿を地平線の向こう側へ隠そうとしている。
そんな中、スバルたち四人とギンガ、ヴィータ、リインは南側のエントランスに集合して互いに報告を行っていた。
「とりあえず、異常なしか。
だが、最後まで気ィ抜くんじゃねえぞ」
「「「「「はい!」」」」」
「残りの時間はそんなに長くないので、此処からは全員で一緒に警備するですよ!」
リインの言葉にティアナが疑問の声を上げる。
曰く、一か所で固まって警備しても意味がないのではと。
その問いにヴィータが頭を掻きながら答えた。
「ほかの陸士部隊の人がな、お前らが仕事してる中で休んでられるかって言ってきてな。
で、こっちとしてもお前らが疲れていざというときに何もできないのは困るから、ありがたく手伝ってもらってる。
もうすぐ公開意見陳述会も終わりだから、まぁ問題はないだろう」
ティアナはヴィータの答えを聞いた後に周囲を見回す。
すると、先ほどまで彼女とスバルが回っていたところあたりに、確かに別の部隊の局員が歩いているのを確認した。
「あぁ、ギンガ。
ちょっと
「わかりました」
ヴィータの指示に従ってギンガは地上本部の中へと向かっていった。
そんな彼女の背中を見ていたスバルはなぜか、胸に突き刺さるような悪寒を感じていた。
「やぁ、マリー君。
どうしたんだい?」
地上本部からさほど離れていない研究所の一室で、サカキは本局の第四技術部にいるマリーからの通信を受けていた。
『いえ、少し気になることがありまして……』
「気になること……?」
マリーの言葉に首を傾げる彼の端末にいくつかのデータが送られてくる。
それはつい先日、検査を受けたギンガの身体データだった。
「これは、ギンガ君のデータじゃないか。
これがどうかしたのかい?」
『いえ、今送ったのはこの間の検査の時のものです。
そして、これがその前のもの』
サカキの端末にさらにデータが追加で送られてくる。
そのデータを見たサカキは目を見開いた。
「これは……!」
『はい、ギンガの機械的な部分と生態的な部分。
その一部の数値がずれ始めているんです。
こんなこと今までなかったことだったので、サカキ博士の意見も聞きたいと思いまして……』
「ふむ……」
サカキは自分の頭の中で立てた仮説を彼女に話そうと口を開くが、その直前に彼の部屋が微かに揺れた。
その直後、彼の部屋に研究員の一人が飛び込んできた。
「博士!!」
「何事だい?
そんなに慌てて……」
「それが……!!」
彼の口から出てきた言葉を聞いたサカキはマリーに断りを入れて、通信を切った後にすぐさま部屋を飛び出した。
「ナンバーズ、No.ⅢトーレからNo.ⅩⅡディードまで、全機配置完了」
スカリエッティのラボの一室。
そこでウーノは鍵盤の形をしたコンソールを叩きつつ、準備が整ったことを告げる。
『お嬢とゼスト殿も、所定の位置につかれた』
『攻撃準備も全て万全。あとはGOサインを待つだけですぅ~』
「ええ」
妹たちからの報告に頷き、ウーノは後ろに座っているスカリエッティに視線を向ける。
彼女の視線の先には椅子に深く座り、静かに目を閉じているスカリエッティの姿があった。
「ドクター、合図を。
皆、待っています」
「あぁ……」
スカリエッティはゆっくりとその瞼を開いた。
そこには静かに燃える金色の瞳が鈍い輝きを放っていた。
「私のこの行いで、一つの歴史が終わる。
それはある意味で愚かで、不適当な選択なのかもしれない……」
音を立てずに立ち上がったスカリエッティは通信を繋げている彼の娘たちに語り掛ける。
「だが、私はもう決めたのだ。
さぁ、我々のスポンサー諸氏に見せつけてやろう。
私たちの思いと、その覚悟を」
スカリエッティは大きく右腕を振り、そしてその言葉を言い放った。
「さぁ、奏でよう。
崩壊への序曲を……!」
「むふふ~、さぁ電子の織り成す嘘と幻の銀幕芝居をお楽しみあれ~」
地上本部から離れた地点でクアットロはコンソールを叩きながら地上本部の中央指令室のサーバーを乗っ取り、そこの電子的な目をすべて潰していた。
『中央指令室制圧完了したよ~』
『こちら地下の電源室の破壊を完了した』
チンクとセインからの報告を聞いたクアットロは彼女たちに次の指示を出しながら、地上本部のカメラを乗っ取りその中の様子を覗いていた。
同時刻―――
地上本部の公開意見陳述会の開催場所となっていた部屋では先ほど襲った揺れの原因を一人の局員がレジアスに伝えているところだった。
「恐らくは……」
「そうか、始まったか」
局員から報告を受けたレジアスは立ち上がり部屋の出口へと向かおうとする。
すると、そんな彼女を呼び止める声が部屋に響いた。
「会を中止になさるおつもりですか、レジアス中将閣下」
その声を上げたのは所謂反レジアス派と呼ばれる派閥に属する少将だった。
「緊急事態だ。
会なぞいつでも再開できるだろう」
「いえ、この会は日程の調整から準備まで多くの時間を費やしてきたものです。
それを……」
男の言葉が続く途中で、部屋を一際大きな揺れが襲い、出口の隔壁が下ろされ、照明も非常灯を除きすべて消え、部屋から明かりが消えた。
「な、なんだ!?」
「はぁ、話が長いから閉じ込められたじゃないか。
高々照明が落ちただけだ、びくびくするな。
それにすぐに元に戻る」
レジアスが目の前でおびえる男の様子にため息を吐きながらそう告げる。
彼女がそう言った直後に部屋の照明がすぐに復活した。
「ほらな」
レジアスは鼻で笑い、彼から背を向けて出口へと歩みを進めていった。
「ダメです、どこも開きようがありません」
「外では戦闘が起こってるっちゅうに……!」
彼女が手近な出口に辿り着くと、そこには六課の部隊長であるはやて、聖王教会代表であるカリム・グラシア。
彼女たちの付き添いで会議に参加していたシグナム、シスターシャッハが出口の前で苦虫を潰したような顔をしていた。
「どうした、小娘」
「あ、レジアス中将」
レジアスの声に反応した彼女たちはレジアスに向けて敬礼をしようとするが、レジアスがそれを手で制した。
「緊急事態だ、そう言ったことはやらないでいい。
それで、扉がまだ開いていないのか?」
「はい。
まだ、ということは開く手段があるのですか?」
カリムがレジアスに向けて尋ねる。
「あぁ、地上本部が外部からハッキングを受けた際に、カウンターを仕掛けるように別の施設に頼んでいたのだがな。
まぁいい。
そこをどけ、小娘」
はやてはレジアスの言葉に従ってその場から少し離れる。
扉を何とか開こうとする局員も下がらせたレジアスは懐から筒状の物体を取り出した。
「ふっ……!」
レジアスがそれを一振りすると、その筒状の先端が伸び、一振りの剣と同等の長さになった。
彼女はそれを扉に向けて一閃する。
「な……!?」
彼女が腕を振るった直後、扉が斜めに切り裂かれ、上半分が床へと落ちた。
分厚い扉が落ちる重い音が部屋の中へ響き渡る。
「ほら、出口ができたぞ」
「え、あ、あの、レジアス中将?
それは……?」
はやては驚きながらも彼女の手に握られている棒を指さす。
それはかなり小さいが甲高い音を連続して出していた。
よく見ればその棒そのものが高速で振動しているようにも見える。
「私が作らせた。
質量兵器と言われようが、物は使いようだ」
「作らせたって……「レジアス中将っ!!」……?」
彼女の言葉に呆れた表情をするはやてだったが、彼女の後ろから聞こえてきた怒鳴り声に驚き振り返る。
そこには先ほどレジアスが鼻で笑い飛ばした男が怒りの形相で詰め寄ってきていた。
「それは質量兵器ではないですか!!
なぜそのようなものを!!」
「騒ぐな、そんなどうでもいいことを今は話している状況でもないだろう」
「どうでもいいこと……!?
質量兵器を使用するという重大な違法行為をどうでもいい……!?」
「この戯け者がッ!!」
グチグチといつまでも言葉を連ねる少将にレジアスがついにキレた。
「いいか、我々のすることはなんだ!?
ここで役に立たない大砲の話をすることでも、防衛計画の話をすることではない!!
今、この場所を守らんとする局員の被害を押さえつつ、このバカ騒ぎを早急に終わらせることだろうがッ!!
それすらも忘れたか、この馬鹿者がッ!!」
レジアスの怒声に続いたのは、痛いほどまでの静寂だった。
レジアスの怒気を直に受けた少将はその場でへたり込んでいた。
「いつまで突っ立っているつもりだ!!
各々持ち場につけ!!」
彼女の雰囲気に当てられ動くことすらも忘れていた周囲の局員に指示を出す。
その傍らで、はやてに言葉を送る。
「行け、今こそお前たちの本領を発揮する時だ」
「はいっ!
シグナム、行くよ!!」
「はッ!」
はやてとシグナムがその場を去っていくのを見届けたレジアスは会議の会場を臨時の指令室として地上本部の外で奮戦している局員の指示に向かうのだった。
なんかいつの間にか最後にレジアスさんがすべてかっさらっていった……。
この小説のレジアス中将はかなりまともな人格です。
原作では襲撃があったというのに会を中止させないって、トップがそれじゃいかんでしょって思いましてこうなりました(まぁ、結局最後には中止になってるんだけど)。