魔法少年リボルバースバル   作:飛鳥

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長かった夏休みも今日で終わり……。
というわけで、次回から更新が少し遅れますのでご了承を。


ティアナルート 第二十一話

「スバル!

 先行しすぎよ!!」

 

なのはに抱えられ、スバルの後を追うティアナは通信で彼に呼びかける。

 

『悪い、だけど!!』

 

ティアナとなのはの遥か先を疾走するスバル。

彼へつないだ通信が切られたことに対してティアナは眉を顰めていた。

 

「仕方ないね……。

 こういった場所じゃ、スバルの方が速い」

 

「えぇ……」

 

「大丈夫、こっちがその分急げばいいだけの話だから!」

 

ティアナはなのはの言葉を聞きながら、胸に何かがつかえたような感覚を覚えていた。

 

(何か、嫌な予感が……!)

 

 

 

 

魔法少年リボルバースバル 『ティアナルート 第二十一話』

 

 

 

荒れ狂うエネルギーの奔流の中心でスバルは静かに、しかししっかりとした声で言葉を紡いだ。

 

「もう一度言う……」

 

スバルの言葉とともにリボルバーナックルに装填されている残りの五発のカートリッジが一気に排出される。

空薬莢が地面に落ちると同時にスバルの身体に扱いきれないほどの魔力が溢れ出す。

 

「姉貴から……」

 

『ディバインバスター』

 

スバルの周囲に六つの魔力の塊が生成される。

 

「離れろ……っ!!」

 

『リボルバーシフト』

 

直後、チンクたちに向けて六つの砲撃が斉射された。

 

「ノーヴェ、ウェンディっ!!」

 

「クッ!」

 

「ちょ、危なっ!!」

 

見え見えの砲撃は戦闘機人たる彼女たちにとって避けるのは造作もないことだった。

だが、彼女たちの前方に直撃した砲撃は大量の煙を巻き上げた。

 

「逃がすか……ッ!」

 

「チンク姉、下がってッ!!」

 

その煙の中からスバルが飛び出す。

加速をつけた彼を止めるためにノーヴェがチンクの前に出て、右手を前にかざす。

その右手にはめた固有武装『ガンナックル』から広範囲にエネルギー弾が放たれる。

 

「ハァーッ!!」

 

「なッ!?」

 

だがスバルはその弾幕を障壁すら張らずに突破してくる。

ノーヴェの放ったエネルギー弾によって白いバリアジャケットのいたるところが赤く染められるが、スバルは右の拳をノーヴェに放つ。

 

退()がれノーヴェ。

 今の俺は、手加減なんか出来そうもない。

 たとえ顔見知りであってもだ……ッ!!」

 

「……ッ!?」

 

その拳をノーヴェは右腕に張った障壁で受け止めるが、スバルの瞳が一際輝くと、その障壁すら粉微塵に砕かれ右腕に彼の拳が襲い掛かる。

スバルの拳が触れた途端に、ノーヴェは自分の右腕に生じた異常を認知していた。

 

「このぉッ!!」

 

その直後にノーヴェは跳び上がり、ジェットエッジの出力を上げスバルに蹴りかかる。

 

(どんな形であれ、道は交わってるだろうが……。

 敵味方だろうと、それは変わらねぇんだよ……。

 この……馬鹿野郎がッ!!)

 

彼の言葉がノーヴェの頭を横切った。

蹴りを放ったノーヴェだったが、その言葉とともに目の前のスバルの顔を見て、一瞬だが、身体の軸がブレた。

体制が若干とはいえ崩れた蹴りの威力は本来のそれをはるかに下回った。

そして、スバルはその蹴りを回し蹴りで相殺する。

タイミング、威力、そのほかすべての要素を打ち消されたノーヴェの蹴りはスバルに完全に止められた。

 

「邪魔をするな……ッ。

 どけぇぇッ!!」

 

「―――ぁあッ!!」

 

さらにスバルの力が上がり、ノーヴェは空中から地面に叩き付けられ、その勢いのまま壁際まで吹き飛ばされる。

 

「ノーヴェッ!!」

 

「ウェンディ、ノーヴェを回収してすぐに撤退しろ。

 あれは姉が抑える」

 

チンクは指に挟んだナイフをスバルの足もとに投げつけ、即座に爆破する。

スバルは爆発の勢いに押され、後ろに下がる。

 

「でも、いくらチンク姉でも……ッ!」

 

「行けッ!」

 

「――――ッ!!」

 

ウェンディはチンクのその声と同時にノーヴェを戦闘機人の膂力を活かして肩に担ぐ。

 

「ノーヴェ、しっかり捕まってるッすよ!

 IS発動、エリアルレイブッ!!」

 

「逃がさない……ッ!」

 

「行かせんッ!!」

 

チンクはISを発動したウェンディがノーヴェとともにその区画を離脱するのを見届け、さらにナイフを追加で投擲する。

今度はナイフがスバルに接近する前に爆発するが、スバルはそれを障壁を張ってやり過ごす。

 

「―――ッ、邪魔をするな……!」

 

「チィッ……!」

 

スバルの右手がチンクに迫る。

チンクは後ろに跳び下がることで、その拳を回避する。

目標を失った拳は彼女のいた場所に大きな亀裂を生んだ。

二人の戦いはまだまだ始まったばかりだった。

 

 

 

 

 

「うぅ……!」

 

「―――ッ、ノーヴェ。

 気づいたッすか?」

 

「ウェンディ……?」

 

ウェンディに担がれた状態で目覚めたノーヴェは周囲を見回し、そして、チンクがいないことに気づいた。

 

「ウェンディ、チンク姉は!?」

 

「スバルの足止めに残ったっすよ」

 

「そんな……!

 チンク姉……ッ!?」

 

ウェンディの言葉を聞いたノーヴェは身体を動かしてウェンディから離れようとするが、右腕を中心に身体中から不具合を示す痛みが彼女を襲った。

 

「ちょ、無茶しちゃダメっすよ、ノーヴェ!!

 右腕は完全に機能停止してるし、全力で壁に叩き付けられた衝撃で基礎フレームにも歪みが出てるんっすから!!」

 

「でも、チンク姉が!!」

 

「セイン姉に頼んで助けに行ってもらってるっす。

 私たちは先に戻るッすよ!

 今のノーヴェが行っても邪魔になるだけっす!」

 

「――――ッ!!」

 

ウェンディの言葉がノーヴェの胸に突き刺さる。

彼女の言葉を否定したくても、今のノーヴェにはその言葉に対する反論の言葉が出なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「む……!」

 

はやてからの指示通りにシグナムはヴィータたちの反応があった場所に向かっていた。

そのポイントよりも地上本部に近いところで多くのガジェットⅡ型を相手にしているヴィータとリインがいた。

だが、シグナムはヴィータの動きにキレがないことに遠目からでも気づいた。

そして、彼女の後ろから迫るガジェットⅡ型の存在にも。

 

「紫電一閃っ!」

 

「――――っ!?」

 

シグナムの放った一撃がガジェットを爆散させる。

それに気づいたヴィータは彼女の顔を見るなり驚きの表情を浮かべた。

 

「シグナム……、何でここに?」

 

「主から言われてな。

 お前たちの反応が一時的に消えたことを心配なさっていたぞ。

 それより、リイン、ヴィータに何かあったのか?

 動きがおかしかったが」

 

「聞いてください、シグナム!

 ヴィータちゃんさっきの戦闘で肋骨にひびが入ってるのに戦ってたんですよ!!

 怪我人だというのに!!」

 

「おい、リインっ!!

 ――――っ!?」

 

リインがシグナムに事情を説明していた時に、ヴィータが声を上げるが身体を走った痛みに中断せざるを得なかった。

 

「なるほど、事情は理解した。

 リイン、ヴィータをしっかりと治療してやってくれ」

 

「はいです!!」

 

「待てよ、シグナム。

 ガジェットはどうする……」

 

「私がすべて落とすさ」

 

シグナムはヴィータにそういうと、レヴァンティンを構える。

構えたレヴァンティンから空薬莢が一つ排出される。

 

「烈火の将、シグナム。

 推してまいるっ!」

 

 

 

 

ノーヴェとウェンディが去った区画で、スバルとチンクは未だに死闘を繰り広げていた。

だが、スバルの身体にはすでにかなりの傷が刻まれていた。

ノーヴェの放ったエネルギー弾によってできた傷、チンクのIS『ランブルデトネイター』によって起こされた爆発によって巻き上げられた破片によって切り裂かれた腕や頬などからは血が流れていた。

対するチンクはスバルの拳に当たらないように立ち回ったおかげで傷などはなかったが、その代わりに一撃で戦闘不能にされる可能性がある攻撃を避け続けるという精神的疲労を感じていた。

 

「ハァッ!!」

 

「クッ!!」

 

二人の撤退を支援するために殿となったチンクだったが、目の前で自分たち、機械の身体を持つ者の天敵と呼べるスバルの戦い方を、彼の攻撃を紙一重で躱しながら観察していた。

スバルの戦い方として牽制で小ぶりな攻撃を続けて相手の体制を崩し、機会を逃さずに大振りの攻撃を放つということをチンクはこの数分の攻防で確認していた。

 

そして……

 

(来た……ッ!)

 

その時が来た。

魔力弾による牽制。

チンクはそれを後方に飛び退くことで回避し、指の間にナイフをはさみ、彼の現れるであろう空間に投擲する。

そして、ナイフが何かに当たった手ごたえを感じたチンクはそれを爆破させる。

 

彼女の目の前に爆煙が広がる。

チンクとしては彼を追跡不能にする程度に負傷させるつもりだった。

正確にいえば、膝を壊すということだ。

だが、その考えが間違いだった。

 

『ディバインバスター』

 

「なに―――っ!?」

 

煙を引き裂く青色の砲撃がチンクを襲う。

間一髪、チンクは固有武装『シェルコート』に搭載されているAMF発生装置の出力を最大にして直撃を凌いだ。

だが、その直後煙から飛び出してきたスバルの右手が彼女を、障壁ごと吹き飛ばした。

 

「ば、馬鹿な……ッ!」

 

地面に倒れながらチンクはスバルを見た。

そこで彼女は気づいた。

彼の服装が先ほどまでと変わっていることに。

 

『魔力量危険域』

 

スバルは先ほどまで羽織っていた白いロングコートを脱ぎ去り、黒地に青いラインの入ったインナーの姿で彼女を見ていた。

 

なんとか立ち上がろうとするチンクにスバルは駆ける。

 

魔力弾を放った後、スバルはそろそろ自分の攻撃パターンをチンクが予測できるようになっているだろうと考えた。

そこで、彼はそれを逆手にとってこの膠着状態を打破しようとした。

煙の中にわざと踏み込み、コートの裾を前にあらかじめ翻しナイフを受け止める。

ここでナイフを攻撃と判断したバリアジャケットが自動的に爆発。

ナイフの爆発と同時だったために、スバルが予想していた以上の衝撃が彼を襲ったが、彼の作戦は一応の成功を見せた。

 

そして、ついにその拳がチンクを捉える。

 

 

 

 

「まだだッ!」

 

「――――ッ!!」

 

チンクは倒れたまま、接近するスバルの目の前に数多のナイフを召喚する。

スバルはそれをすでにかなりの傷を負っている左手で払いのけようとする。

だが、それよりも早く、チンクのISによってナイフが爆発した。

 

チンクは至近距離で起こした爆発の余波を受けて地面を転がる。

うつぶせになっていた彼女は爆発の起こした炎の中、立ち上がる一つの影を見た。

 

「―――ッ、呆れるくらい頑丈だな……!」

 

彼女の見たのは、傷だらけになりながらもその場に立っているスバルだった。

だが、一目見ただけでもすでに戦闘は無理だろうという有様だった。

ナイフを払いのけた左腕は肘から先が原型を留めないほどに破壊され、さらに魔力枯渇によって、バリアジャケットを突き抜けて彼にダメージを与えていた。

だが、彼の眼はいまだにチンクを捉えていた。

 

「チンク姉っ!」

 

「セインか、助かった」

 

彼が一歩足を進めようとしたとき、チンクの背後に地面から飛び出したセインが現れる。

妹の登場に安堵するチンクだった。

 

「よっしゃ、しっかりつかまっててよ?」

 

「あぁ、任せる」

 

セインの背に乗せられたチンクはちらりとスバルのほうを見るが、すぐに視線をセインの背に向けた。

 

「IS発動、『ディープダイバー』っ!!」

 

そして、セインとチンクはその姿を消した。

彼女たちが去った後にその区画に到着したティアナたちが見たのはは、壁際で倒れているギンガと、ゆっくりと膝から崩れ落ちたスバルだった。

 

 

 




スバル覚醒&戦闘回でした。
原作スバルとは違い、怒りで我を忘れるのではなく、怒りで逆に冷静(というほどでもないですが……)になってしまうというパターンでした。
流石に肉親が傷つけられた場合はぶち切れしちゃいますよね。
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